闇の守り人 の商品レビュー
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「守り人」シリーズ第2弾は、アラサー用心棒であるバルサの来歴を辿り、彼女の心に向き合う。 幼少期から長期の逃亡生活を続けてきたという、余りに過酷なバルサの来歴。それは過去と向き合うことでしか癒せないのか。いや前巻で体験したチャグムとの関わりが、バルサをして「親」の意味と養父ジグロの想いを自覚させ、新たな行動を呼び起こさせたはずだ。 確かに「怒り」持たずに未来へ向き合い、新たなものを紡ぎ出すのは難しい。しかし、怒りだけでもたらされる未来は不毛だ。 その矛盾を正面からうたう本巻は、疾走感と緊張感ある描写とが相俟って、明快かつ骨太な伝奇ファンタジーに昇華している。逸品である。
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2016/11読了。前作より話が分かりやすく、一気に読めた。バルサが自分の過去と向き合う旅。養父ジグロをめぐる陰謀が実はバルサが思っていたより巧妙だったこと、ジグロや王の槍たちの行き場のない怒りと哀しみ。バルサの怒りと哀しみ。それぞれの心情が交差して描かれ、心うたれました。
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◆女用心棒バルサは、幼い頃に養父ジグロとともに出国して以来、25年ぶりに生まれ故郷に戻ってきた。かつて、地位も名誉も、おのれの人生のすべてを捨てて自分を守り育ててくれた、養父ジグロうためだ。ところが、バルサの帰郷は、山国の底に潜んでいた闇を目覚めさせることになってしまう。 短槍に刻まれた模様を頼りに、カンバル王国へと続く、雪の峰々の底に広がる洞窟を抜けていく途中で、バルサはヒョウル<闇の守り人>に襲われた少年カッサとその妹ジナをたすけるが、そのことから帰国を知られてしまう。その後、叔母のユーカを訪ねたバルサは、ジグロが卑劣な反逆者に仕立てあげられていたことを知る。ジグロの汚名をそそぐために、またカンバル王国の命運をかけて、バルサはジグロの実弟ユグロの偽りを暴き、<闇の守り人>との<槍り舞>にのぞむ! 険しい山々に囲まれるカンバル王国が舞台。国土や気候に根ざした人々の暮らしぶりや、闇の中で輝く宝石ルイシャ<青光石>の幻想的な描写も見どころ。 壮大なスケールで語られる魂の物語。読む者の心を深く揺さぶるバルサが過去とむかいあうシリーズ第2弾。 (^^)<Comment シリーズ第1巻の「精霊の守り人」がすごくおもしろかったので、すぐに2巻も読み始めました! 1巻は割合チャグムに焦点が当たっていたけれど、2巻はバルサがメインの物語。 作家さんがあとがきに書かれていたのですが、第1巻は子どもたちに人気があるみたい。 その理由が、バルサやタンダと旅をしている気持ちになれるから。 子どもたちは少年チャグムに自分たちを重ね合わせて、物語を楽しんでいるんだな、と思いました。 一方、第2巻は大人に人気があるのだとか。 かくいうわたしも、3巻まで読み終わった段階では、2巻が1番好きですね。 バルサに年齢が近いので、自分を重ね合わせていたのかな〜。 1巻の終わりを読んで、もしかするとバルサとタンダは一緒に暮らし始めるのでは…?という淡い期待があったのですが、2巻はバルサが生まれ故郷のカンバル王国に旅立つシーンから始まります。 現状では、愛か情か…といえば、タンダは愛。バルサは情…?という描かれ方をしているのですが、どちらにせよ、両想いであることに変わりはないのに、なんとも煮え切らない2人(笑) カンバル王国から逃げるときにジグロと通った洞窟をあえて通り抜けて、故郷に戻ろうとしていたバルサは、洞窟の中で闇の守り人である≪ヒョウル≫に襲われていたカッサとジナの兄妹を助けます。この2人の登場が、この後の展開に彩りを加え、物語を面白くしてくれます。 カッサの視点からは、一族の階級社会や血筋の問題などが事細かに描かれていき、読者をカンバル王国の世界観へ引き込むと共に、バルサが自分たち家族やジグロを取り巻いていた陰謀の実態に徐々に深く迫っていく様子と対比されて、とてもドキドキします。 バルサの運命とジグロの運命がどのように交錯していくのかー。「王の槍」「ルイシャ贈りの儀式」「山の王」とはー。闇の守り人≪ヒョウル≫の正体とはー。そして、本当の黒幕は誰なのかー。 読み進めるうちに、その謎が1つひとつ解き明かされていきます。 バルサとジグロの親子愛・師弟愛にも、また泣かされます。 自分を憎んでもいたであろうジグロの想いを幼いながらに身にしみて感じていたバルサ。 でも、前作の「精霊の守り人」でチャグムと関わったことで、バルサがチャグムに感じていた気持ちを、ジグロもバルサに感じていたであろうことが理解でき、バルサは心の重荷から少しずつ開放されていく…という描き方もすばらしかったです。 最後に、バルサが闇の守り人≪ヒョウル≫と「槍り舞」をし、闇の守り人≪ヒョウル≫を鎮めたところでは、すべてがすとんと収まるべきところに収まって、拍手を送りたい気持ちになりました。 前作の「精霊の守り人」でバルサがチャグムに語り聞かせていた自分の生い立ちが、より深く、詳しく描かれ、前作で深く触れられていなかった部分をうまく補完していて、バルサという人物を前作よりもさらに知ることができてよかったです。 ジグロの人物像もちゃんと描かれていて、彼がどれほど有能だったのか、そして、その文句のつけようもない立場を捨ててバルサを育てる決心をしたのかがわかって、ジグロが好きになりました。 複雑に絡み合ったそれぞれの登場人物の策略が物語を面白くしていると思います。
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上橋菜穂子『闇の守り人』(新潮文庫、2007年)読了。 O山さんにいただいたもの。 シリーズ第1作とは趣が異なり、バルサ(女用心棒)が四半世紀ぶりに戻った生まれ故郷カンバルでの話で、とくに養父ジグロの汚名を晴らすための活躍が描かれています。 バルサがなぜジグロに養われることになったのか、その秘密が描かれると同時に、カンバルでの覇権争いやドロドロした人間関係が描かれます。登場人物が多数いますが、それぞれに個性的に特徴付けられていますので、白と黒がはっきりして読みやすく、分かりやすかったです。 今回の「守り人」は地底。 これがいい。まさに単なる愛憎物語ではなく、ファンタジーらしさを醸し出しています。 シリーズ第1作を読まなくても、充分楽しめる内容で、このあたりが上橋氏の筆力の凄さなのでしょうね。 読んで良かったです。 O山さん、ありがとうございました。
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短槍使いの名手、女用心棒バルサのお話第2弾。 「精霊の守り人」では幼いチャグムを追手から遠ざけ守り逃亡、その成長に貢献したバルサだった。 今回「闇の守り人」では、バルサが自らのつらい過去に決別するため、幼いころ脱出した自らのルーツの地に足を踏み入れる。 その地カンバル国では、国を滅ぼすほどの一大事がおきており、否応なくその救済にかりだされ、その救済が自分と育ての親であるジグロの魂の救済になることとは知らず、バルサは闘いの渦中に投げ出される。 過酷な闘いの中で浄化されるバルサの魂。闇の中でうごめく精霊の正体を知った時、読んでいる者も心がぎゅっとしめつけられるように哀しくなる。 バルサよ、早くあたたかいタンダの家の囲炉裏にあたってくつろいで欲しいと願う。
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338ページに、現首相のことかと思う記述があって受けてたら、その後の展開で不覚にも泣いてしまった。著者のあとがきでは、闇の守り人はどちらかというと大人に支持者が多いとのことだけれど、さもありなん。クライマックスの書き込みはすごい。さあ、次も読むぞー。
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バルサがただ故郷に行ってジグロの親族たちと話して帰るだけだと思っていた。だから、正直に言うと「えっ、それだけ?」と思い、あまり読む気にならなかった。しかし、私の想像をはるかに凌ぐレベルで面白い話だった。バルサのジグロに対する思い、牧童たちとカンバル国民の関係、ユグロを中心としたムサ氏族のドロドロした関係……! 児童文学なのにここまで汚い人間関係を書いてしまっていいのか? と心配に思うほど深く突っ込んで書かれていて、それが興味深く、どんどん読み進めてしまった。大人の事情に翻弄されながらも、自分の意志を通して強くなっていくカッサの姿、バルサとジグロの槍舞いは、涙なしては見られないものだった。 個人的に、19ページ「バルサは、これまでずっと、故郷を忘れようとしてきた。バルサにとって、故郷は、ふれれば痛む古傷のようなものだったからだ。 身体についた傷は、時が経てば癒える。だが、心の底についた傷は、忘れようとすればするほど、深くなっていくものだ。それを癒す方法はただひとつ。――きちんと、その傷を見つめるしかない。」という言葉が印象的だった。鳥頭なこの私が、付箋を貼らずとも、何ページにこの文章が書かれているのか覚えているほどに。
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あっという間にはまってしまいました。このシリーズきっと最後まで読んでしまうだろうな。作者は文化人類学者だそうでとても緻密に登場人物の文化や国と国の違いを描き読んでるだけでまるで映画を観てるように色鮮やかな映像が浮かんできます。
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儀式が終わった後、シシームとかドムとか嫌なヤツがどうなったか、ちょっと気になる(笑)カッサ・カーム・ユグロを中心に続編があるかな?
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全編通してだけど第四章は特に、静かに映像が頭の中に流れてきた。(ので、実写化されたものはイメージが上書きされてしまいそうで怖くて見たくない) 槍舞いのシーン、、泣いてしまった。 古事記を並行して読んでいるから余計にだと思うのだけど、日本の神話の世界と通じるものをひしひしと感じる...
全編通してだけど第四章は特に、静かに映像が頭の中に流れてきた。(ので、実写化されたものはイメージが上書きされてしまいそうで怖くて見たくない) 槍舞いのシーン、、泣いてしまった。 古事記を並行して読んでいるから余計にだと思うのだけど、日本の神話の世界と通じるものをひしひしと感じる。神の体の一部から氏族の祖先が生まれたところとか。 あとがきにも書かれていたけれど、私も、旅をして帰ってきたような、そんな気持ちでいる。
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