クライマーズ・ハイ の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
日本航空123便墜落事故を受けて、地元群馬の地方紙の記者である悠木が同事故の全権デスクに任命され、仕事に家庭に翻弄されながら戦う話。並行して、事故から17年後、谷川岳の衝立岩に当時の同僚の息子と挑む話が挿入される。 この本を読んで抱いた気持ちは、脂身たっぷりのリブロースステーキをドカ食いしたような背徳的満足感。 荒々しさと義理人情、繊細さ弱さを持つ男性像。仕事に対する凄まじい使命感、熱量。魂をぶつける、と言えば的確な表現だろうか。 恐らくあらゆる面で「かつての王道」であり、これぞ男の美学!といったものだったのだろうと想像する。今の価値観からすると相容れない面もあり、私自身この小説の舞台(1985年)にはまだ産まれていなかったこともあり、読んでいて頭にノイズが入ることは多少はあった。 だから、胃もたれによる若干の後悔と、古さもありつつの明快な王道を平らげた静かな満足を得た。 以下ネタバレ。 なぜ山に登るのか?という主人公の問いに対し、主人公の同僚は「下りるために登るんさ」と、謎めいた言葉を発する。 この謎の答えは物語の終盤、会社で馬車馬のように、かつ浅ましい仕事を命ぜられ、新聞社を辞め山の世界に戻るつもりだったのだ、と主人公の口から示される。そして、下りることも下りないこともできない中途半端な状態の主人公にやんわりと生き方の選択を迫っていたのだと。 そして、下りない選択をした主人公。小説の表題である「クライマーズ・ハイ」のように、「一心に上を見上げ、脇目も振らずにただひたすら登り続ける。そんな一生を送れたらいいと思うようになった。」(p.462) そんな生き方は憧れると同時に、燃え尽きた時の圧倒的な虚無への恐ろしさもある。私の周辺にも、周囲に激務から解放された途端にバーンアウトして心を壊した者がいる。人は一度壊れたらそうそう元には戻れない。だから、燃え方は本当に気をつけなければいけないと強く感じているところだ。 登山も、得てしてどんどん前衛的になってゆくものだし、登山家は死によって完成する感すらある。 それでも、ひたすら登り続ける一生というのは魅力的な言葉でもある。主人公の生き方は自分の人生観に近いものではなかったけれど、ここ数年で人生のステージが大きく変動した私にとって、生き方について立ち止まって考えるひとつの契機になったとおもっている。
Posted by
山登りの物語として、すがすがしさは あるものの、新聞記者、新聞社 のことを考えればほぼおもしろく ないと思せてしまう。ダラダラと 失敗が続くのだ。
Posted by
主人公の仕事へのモチベがレベチ、アツい話だった。 小さい頃にテレビの特集で日航の事件見て、それから飛行機のように自分の意思で脱出できない乗り物に乗るのがめちゃ怖くなったな、、
Posted by
実際記者だった作者のリアルな視点の面白さ。 販売、広告、印刷、カメラ、記者、編集、部長、現場、社長、専務、読者、同期、事故。 事故の悲惨や詳報をまさに新聞を通して読んでいるようだった。 こんなに社内の調整が多すぎる新聞は大変だなぁと。ふとした瞬間に大事なことに気付かされて、純粋な...
実際記者だった作者のリアルな視点の面白さ。 販売、広告、印刷、カメラ、記者、編集、部長、現場、社長、専務、読者、同期、事故。 事故の悲惨や詳報をまさに新聞を通して読んでいるようだった。 こんなに社内の調整が多すぎる新聞は大変だなぁと。ふとした瞬間に大事なことに気付かされて、純粋な新聞を作りたいと原点に立ち返る姿カッコよい。 親と子、夫婦。 小さな命と大きな命。 クライマーズ・ハイ。 タイトル絶妙。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
新聞社のゴタゴタ感がリアルで良かった。汗とか泥の入り混じった匂いがした気がするぐらい。時折はいる登山のシーンでほどよく心が凪いで、最後まで苦痛なく読み進められた。
Posted by
力強いプロローグから鷲掴み! 人生、仕事における選択で正しい道を選べるか? 自分にとっての正しい道の基準とは? 道を進む中で恐怖を忘れ、変な方向に突き進んでいないか? 問いを突きつけられる名作!
Posted by
主人公の心の動きや、新聞社内のゴタゴタがささっと読んだので、ちょっと掴みにくかった感じです。 親子関係は皆、悩みながらかなあと。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
日航機墜落事故、毎年夏になると必ず思い出す。 望月彩子が言ったことは、以前私も考えたことがあった。命を落とし、テレビや新聞で報道されて多くの人にその死を知られ悲しまれる人と、そうでない人がいる。この違いはなんなのかと。重い命と、軽い命…。 彩子は、「泣きません」と読者投稿に綴ったが、いざ掲載されると、遺族に申し訳ないと涙を流した。 「肉親を失った人間が、あの娘の気持ちをわからないはずがないだろうが!」 彩子だってそうだろう。怒りや憎しみで強がっていたが、本当は遺族の気持ちを思い、一緒に涙を流したかったのではないか。 仕事、家族、仲間。いろいろな思いが込み上げ、終盤はずっと泣いてた。いい終わり方だった。 事故当時、群馬県で新聞記者をしていた横山秀夫さんだからこそ、描けた作品だと感じた。とてもリアルで、これが当時の新聞業界であり、日航機墜落事故を報道するということなんだろうなと。 また、1985年と2024年、様々な面から時代の変化を感じた。スマホってすごい。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
新聞記者にはなれない。 芝選書!気になったので。 大きな事件を担当し、スクープことがステータス。大きな事件を扱った過去に縋り、威張る上司たち。 出てくる人たちみんな嫌いになっちゃいそうなくらい、喧嘩してた! こんなにぶつかり合いながら新聞って作られていた(いる)のだろうか…!! なんかこう、もうちょっと上手く立ち回ることはできないのかな?と。 主人公の行動にあまり感情移入できなかった。もぉ〜、言葉足らず! 多くの犠牲が出ている事件だけど、それを扱うことに喜びを覚える感覚は、きっと記者にしかわからない気がする。 純粋な、「伝えたい」の気持ちだけではないような気もする。 携帯やスマホがない時代の描写がアナログで好き。通信手段発達してない方が、ロマンチックじゃない? 「山に登ると、正直になれる」それは、「この世で最後の会話になるかもしれないと無意識に思っているから」。たしかに。 その、人の正直な部分が見えるから、山岳小説を読むのは楽しいんだよね。
Posted by
仕事に対するモチベーションが熱い! 日航ジャンボ機墜落事故をモチーフに記者の壮絶なスクープのせめぎ合い。目が離せない位のめり込めた。漢としてのプライド,自身も仕事に対する物を此の小説と向きあってクライマーズ・ハイを突き詰めてみようと思う。
Posted by