クライマーズ・ハイ の商品レビュー
2006年(発出2003年) 471ページ 1985年8月。日航ジャンボ機墜落事故発生。この未曾有の航空機事故の全権デスクに任命された北関東新聞の遊軍記者、悠木和雅。事故前夜、悠木は同僚と衝立岩に登るために谷川岳に向かう予定だった。一方、一緒に登る予定だった安西が、その夜、病...
2006年(発出2003年) 471ページ 1985年8月。日航ジャンボ機墜落事故発生。この未曾有の航空機事故の全権デスクに任命された北関東新聞の遊軍記者、悠木和雅。事故前夜、悠木は同僚と衝立岩に登るために谷川岳に向かう予定だった。一方、一緒に登る予定だった安西が、その夜、病院に搬送されたという知らせが……。 新聞記者、悠木の日常と人生を変えた暑い夏の激動の七日間。 安西の息子、燐太郎と衝立岩にアタックすることになった57歳の悠木の現在と、日航機事故の全権デスクだった一七年前の回想を交互に描きながら物語は進みます。 著者の横山秀夫さんは、群馬県の上毛新聞の元記者だったそうです。さすがリアリティ溢れる新聞社内部の描写。男たちの怒号や汗の匂いが伝わってくるようです。いつか読もうと思っていた作品。とても読みごたえのある小説でした。 日航機墜落事故は、私が中学生の時に発生しました。毎日ニュースで見聞きしていたため、圧力隔壁などの言葉は頭に焼き付いています。当時はテレビや新聞などのメディアでしか情報を得ることができませんでしたが、今は情報収集の範囲が広がりました。この日航ジャンボ機墜落事故にまつわる謎について、ネットなどで取り沙汰されています。当時は知ることが出来なかった新たな情報に接し、複雑な気分になります。多くの人の運命を変えてしまったであろうこの日航ジャンボ機墜落事故の原因は、公にはボーイング社の修理ミスとなっていますが、真実は何だったのか? しかし、1985年当時は、これこそが報道の真実だったであろう、と思いました。それほど小説中の描写はリアルで、実際に横山秀夫さんは記者として同じような体験をしたのでしょう。 上層部からの圧力、昔の栄光を引きずっている者から足を引っ張られたり、他部署との対立、現場に立った若い記者の記事が降版に間に合わなかったことへの若い記者からの不信感。全権デスクとして采配を振るわなければならない悠木へ次々と問題が起こります。人間ドラマが繰り広げられます。重くてしんどい小説ですが、読む手が止まらない、といった感じでした。 作中で一番心に残った悠木の言葉です。 『俺は「新聞」を作りたいんだ。「新聞紙」を作るのはもう真っ平だ。忙しさに紛れて見えないだけだ。北関は死に掛けてる。上の連中の玩具にされて腐りかけてるんだ。この投稿を握り潰したら、お前ら一生、「新聞紙」を作り続けることになるぞ』
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昭和60年8月12日。小学校生活最後の夏休みに起きた日航機墜落のニュースに衝撃を受けたことを今でもよく覚えています。 長いこと本棚に積んでいたままだったこの本を手に取ったのは、8月の暑い夏に日航機墜落をテーマにした本を読みたくなったことと、直前に、平出和也さんのK2で滑落事故の...
昭和60年8月12日。小学校生活最後の夏休みに起きた日航機墜落のニュースに衝撃を受けたことを今でもよく覚えています。 長いこと本棚に積んでいたままだったこの本を手に取ったのは、8月の暑い夏に日航機墜落をテーマにした本を読みたくなったことと、直前に、平出和也さんのK2で滑落事故のニュースが入ってきたことが重なって、読みたくなりました。 事故が起きた1週間を全権デスクに任じられた主人公の目を通して描かれています。著者は上毛新聞社に勤務していた方ですので、リアリティをとても感じられる内容です。デスクとして事故にどう向き合うべきかという葛藤や、事故をめぐる地方新聞社の中で繰り広げられるパワーバランス、全国紙に対する地方紙の在り方、主人公の家庭問題などが散りばめられています。中でも、最後に提起される「大きい命と小さい命、重い命と軽い命」の件は考えさせられました。命は平等だということには誰も異論はないはずですが、実際にはメディアに取り上げられる記事の大きさには差があるのは明らかです。でも、遺族にとって、その差は理解できないものというのはよくわかります。 主人公が友人の息子と谷川岳の衝立岩に登るシーンも出てきます。谷川岳は世界一遭難者が多い魔の山として知られている山ですよね。衝立岩の写真を見ながら読み進めてました。 酷暑のせいか、この夏はがっつりと重いテーマのものを読みたくなっています。
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テーマがテーマなだけにネガティブな感想は気が引けるが……、 物語としては事実の羅列ばかりで単調。 主人公も失敗ばかりで滅入る。 親子関係もこの時期のあるある感は否めない。 報道側から事故を読み解く程には緊迫しないし、人物の掘り下げも物足りない。 物語として唯一読めたのは安西との...
テーマがテーマなだけにネガティブな感想は気が引けるが……、 物語としては事実の羅列ばかりで単調。 主人公も失敗ばかりで滅入る。 親子関係もこの時期のあるある感は否めない。 報道側から事故を読み解く程には緊迫しないし、人物の掘り下げも物足りない。 物語として唯一読めたのは安西とのくだりか……、あとは物語というよりドキュメンタリーの雰囲気。 多分、私が未熟なんだ。私の読む力が足りないのだ。
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2024.7.8 読了。 日航機の墜落事故は小さな頃の大事故なので、自分のリアルな記憶は乏しいけれど、夏に放送される特番などで何度か見てきた本当に大変な事故。 この大事故が起こってしまった際、現地の新聞社で日航機事故の全権デスクとなった男が主人公。 事故がメインの物語かと思えばそ...
2024.7.8 読了。 日航機の墜落事故は小さな頃の大事故なので、自分のリアルな記憶は乏しいけれど、夏に放送される特番などで何度か見てきた本当に大変な事故。 この大事故が起こってしまった際、現地の新聞社で日航機事故の全権デスクとなった男が主人公。 事故がメインの物語かと思えばそうではなく、地方新聞社で働く人たちの(きっと)リアルや、40代のちょっと影のある男性の自身との向き合い方や家族との関係などを描いていた。事故後1週間の新聞社の動きを縦軸に据えつつ、主人公のプライベートの問題を横軸に絡ませていく。おもしろかった。 解説も良かった。 このあたりの時代の小説にありがちなパワハラ(新聞業界今もそうだったり!?)、女性の扱いに対する描写が少し気になるところはあるけど、全体としてはすごいなと思った。
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再読でした。ちょっと自分語り。 私が以前働いていた某国の協会で事務をしていた頃、協会の会員の方がお亡くなりになり、本を寄付してくださるとのことで選別と引き取りにと上司に同行した際。某国関連以外は廃棄するから、欲しい本があれば持っていって構わないと伺い、いくつかある日本の小説を頂...
再読でした。ちょっと自分語り。 私が以前働いていた某国の協会で事務をしていた頃、協会の会員の方がお亡くなりになり、本を寄付してくださるとのことで選別と引き取りにと上司に同行した際。某国関連以外は廃棄するから、欲しい本があれば持っていって構わないと伺い、いくつかある日本の小説を頂戴した中の1冊。 本好きなので廃棄されるなんて、勿体無い。どれもこれも綺麗に保管されて、しおりの様子でちゃんと読まれていた事も想像がつく。亡くなられた方はお会いしたこともなかったのですが。自分の趣味云々問わず、持てるだけ持ち帰ったのです。 この『クライマーズ・ハイ』は、特にあらすじを見て自分では選ばない本の筆頭でしたが、読み始めて改めて思い出す、記憶に残って消えない日本航空123便墜落事故を一翼にした小説で主人公は事故機が墜落した群馬県の新聞社のデスク。もう一翼は、主人公が亡き同僚の息子と衝立岩に挑む心境も挟まれる。 新聞社の毎日、大事故・大事件が起きた時の新聞社の動向だったり、大切な人を亡くした人々の気持ちに向き合うことだったり、山に登るということの意味を探し求めたり、主人公は私からするとイライラするほど、間違う。でも、それは間違った人にこそ、響いてしまう。再読の方が刺さった。多分、10年は経ったから。10年おきくらいに読むといいかもしれない。 ただ、この本のせいか、クリフ・ハンガーのせいかは知らないが時々とんでもない山に登り、降り方が解らず途方に暮れる夢を見る。そんな経験ないんですけど。
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御巣鷹山の事故が重要な出来事であるものの、あくまでそれを報道する記者の視点で書かれた一冊。描写が生々しいと感じたが、著者自身が元新聞記者であるとこのとで納得。恐らく当時の(今も?)地方新聞社のリアルだったんだろうなぁ。主人公と息子のギクシャク感もリアルだと思った。どの家族にも多少...
御巣鷹山の事故が重要な出来事であるものの、あくまでそれを報道する記者の視点で書かれた一冊。描写が生々しいと感じたが、著者自身が元新聞記者であるとこのとで納得。恐らく当時の(今も?)地方新聞社のリアルだったんだろうなぁ。主人公と息子のギクシャク感もリアルだと思った。どの家族にも多少いろいろあるよね。仕事に熱くなれることへの羨ましさと家族関係の難しさを感じる本だった。
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社会を作り維持するためには仕事と家庭、両方の営みを回し続けていかなくてはならない。しかし、その道が平坦であることはない。上りと下りを繰り返し、時には曲がりくねり、時には落とし穴がある。自分という車が故障しない限り進み続ける。そうすることによって社会の歯車が回り、機能していく。主人...
社会を作り維持するためには仕事と家庭、両方の営みを回し続けていかなくてはならない。しかし、その道が平坦であることはない。上りと下りを繰り返し、時には曲がりくねり、時には落とし穴がある。自分という車が故障しない限り進み続ける。そうすることによって社会の歯車が回り、機能していく。主人公の悠木もそんな歯車の一つとしてもがき苦しむ。物語は難攻不落の衝立岩の征服と日航機墜落事故に関わる新聞社の顛末を描く。同僚の謎の死、上司部下との軋轢、息子との関係などミステリアスな部分があり作品に引き込まれる。スカッとするようなことも起こらない。そこにあるのはリアルな現実。揺れる感情にワインディングロードを疾走するスリルを感じ、大切なことに気づいて、仲間と気持ちが繋がった瞬間に感動した。衝立岩を登った先に見える景色。どこまでも深くて遠く全てを無にする。降りるために登る。人生そのものだ。大好き度❤️❤️❤️
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読みづらい部分もあったがのめり込んで読んでしまった。本編とは関係ないが悠木が安西のことを「人生の浪費家」と評していたのが自分と当てはまりズンときた。。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
日本航空123便墜落事故を受けて、地元群馬の地方紙の記者である悠木が同事故の全権デスクに任命され、仕事に家庭に翻弄されながら戦う話。並行して、事故から17年後、谷川岳の衝立岩に当時の同僚の息子と挑む話が挿入される。 この本を読んで抱いた気持ちは、脂身たっぷりのリブロースステーキをドカ食いしたような背徳的満足感。 荒々しさと義理人情、繊細さ弱さを持つ男性像。仕事に対する凄まじい使命感、熱量。魂をぶつける、と言えば的確な表現だろうか。 恐らくあらゆる面で「かつての王道」であり、これぞ男の美学!といったものだったのだろうと想像する。今の価値観からすると相容れない面もあり、私自身この小説の舞台(1985年)にはまだ産まれていなかったこともあり、読んでいて頭にノイズが入ることは多少はあった。 だから、胃もたれによる若干の後悔と、古さもありつつの明快な王道を平らげた静かな満足を得た。 以下ネタバレ。 なぜ山に登るのか?という主人公の問いに対し、主人公の同僚は「下りるために登るんさ」と、謎めいた言葉を発する。 この謎の答えは物語の終盤、会社で馬車馬のように、かつ浅ましい仕事を命ぜられ、新聞社を辞め山の世界に戻るつもりだったのだ、と主人公の口から示される。そして、下りることも下りないこともできない中途半端な状態の主人公にやんわりと生き方の選択を迫っていたのだと。 そして、下りない選択をした主人公。小説の表題である「クライマーズ・ハイ」のように、「一心に上を見上げ、脇目も振らずにただひたすら登り続ける。そんな一生を送れたらいいと思うようになった。」(p.462) そんな生き方は憧れると同時に、燃え尽きた時の圧倒的な虚無への恐ろしさもある。私の周辺にも、周囲に激務から解放された途端にバーンアウトして心を壊した者がいる。人は一度壊れたらそうそう元には戻れない。だから、燃え方は本当に気をつけなければいけないと強く感じているところだ。 登山も、得てしてどんどん前衛的になってゆくものだし、登山家は死によって完成する感すらある。 それでも、ひたすら登り続ける一生というのは魅力的な言葉でもある。主人公の生き方は自分の人生観に近いものではなかったけれど、ここ数年で人生のステージが大きく変動した私にとって、生き方について立ち止まって考えるひとつの契機になったとおもっている。
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山登りの物語として、すがすがしさは あるものの、新聞記者、新聞社 のことを考えればほぼおもしろく ないと思せてしまう。ダラダラと 失敗が続くのだ。
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