ミーナの行進 の商品レビュー
どこか懐かしい世界観。読み進めるうちに想像力が刺激される繊細で豊かな表現力に自然に物語に引き込まれました。
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最初、我儘なお嬢様なのかと思いましたが、繊細な、芦屋一利発な少女・ミーナでした。 ほんの一年でしたが、ミーナと朋子の大切な時間だったのでしょう。 思いがけず、懐かしい『ミュンヘンへの道』が出てきてワクワク感を共有してしまいました。 あの時もテロがあったのですね…… ポチ子やマ...
最初、我儘なお嬢様なのかと思いましたが、繊細な、芦屋一利発な少女・ミーナでした。 ほんの一年でしたが、ミーナと朋子の大切な時間だったのでしょう。 思いがけず、懐かしい『ミュンヘンへの道』が出てきてワクワク感を共有してしまいました。 あの時もテロがあったのですね…… ポチ子やマッチのイラストが可愛くてページをめくるのが楽しみになります。
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小川さんって回想の描き方がすごくいい。 主人公が少女時代にすごした親戚の芦屋のお屋敷での一年の物語。 登場人物たちは現在はもう老いたり死んでしまったりしていることが最初に明らかにされているので、描かれている一年がとても濃密に、貴重なものに感じられる。 みんなが深く愛しあって...
小川さんって回想の描き方がすごくいい。 主人公が少女時代にすごした親戚の芦屋のお屋敷での一年の物語。 登場人物たちは現在はもう老いたり死んでしまったりしていることが最初に明らかにされているので、描かれている一年がとても濃密に、貴重なものに感じられる。 みんなが深く愛しあっていて、お互いを思いやりながらしずかに暮らしている。 大会社の社長であるお父さんには大人の事情もあって不在がちだったりするんだけど、そして中学生の主人公はそれがどういうことがうすうす気づいていたりもするんだけど。 それでもこの家族のしあわせは大きくは崩れない。 あたたかくて、愛にみちていて、安心できる場所。 読んでいると、一緒にそこにいるようなしあわせな気持ちになります。 時間とともにさまざまなものが失われ、そのかわりにまた得るものもあったり、確実にうつろっていくんだけど、記憶のなかの幸福な時間というのは一生そこなわれることはなく。 カバに乗って登校していた病弱なミーナは、やがて勇ましく世界にはばたいていく。 守られたままではいられないけど、完璧に守られているしあわせな子ども時代があってこそ時がくればはばたけるのかもしれないなあ。 それにしてもフレッシー、ってすごくいい名前。 なんだか味が想像できてしまう。おいしそうだなあ。
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ホテルアイリス以来遠ざかっていた小川洋子さんを久々に読んだ。 ちょっと苦手だったのでホテルアイリス。 芦屋の叔母の家で過ごした宝物のような1年間を描いた作品。 豪邸での日常を淡々と描きながらも、家族がそれぞれに抱える問題を描いている。 主人公の回想が無くしてしまったものを慈しむ感じに溢れていたので、何か不吉な予感がしつつ読み進めて行ったが、最後は物質的な豊かさはないかもしれないけど、幸せに暮らしている感じが良かった。 ミーナがマッチ箱に描く独創的なお話と挿絵がとてもマッチしていた。
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一年間、芦屋の叔母夫婦の元で暮らすことになった朋子と、喘息もちで美しい叔母夫婦の一人娘ミーナ。バレーボールに熱狂し、本を愛し、恋をする、ふたりの少女の物語。 芦屋に暮らす社長一家だし、お手伝いさん付きだし、おばあさんはロシア人だし、ペットはカバのポチ子だし。とても私の暮らしなんか...
一年間、芦屋の叔母夫婦の元で暮らすことになった朋子と、喘息もちで美しい叔母夫婦の一人娘ミーナ。バレーボールに熱狂し、本を愛し、恋をする、ふたりの少女の物語。 芦屋に暮らす社長一家だし、お手伝いさん付きだし、おばあさんはロシア人だし、ペットはカバのポチ子だし。とても私の暮らしなんかとは結びつかないようなのだけれど、それなのに、私と同じようななにげない日常がそこにある。そのことが愛おしく、ほっとする。寺田順三さんの描くレトロなイラストのなんとかわいらしいこと。絵本のような贅沢さが味わえます。
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従兄弟のミーナの住む芦屋の家に、居候することになった主人公の朋子。10代の女の子2人の交流と成長を描いているのですが、芦屋の家に住む人たちの、お互いを思いやる温かい空気に包まれた物語です。 ミーナと朋子の2人がはまる、男子バレーボール。舞台は1972年ミュンヘンオリンピックです...
従兄弟のミーナの住む芦屋の家に、居候することになった主人公の朋子。10代の女の子2人の交流と成長を描いているのですが、芦屋の家に住む人たちの、お互いを思いやる温かい空気に包まれた物語です。 ミーナと朋子の2人がはまる、男子バレーボール。舞台は1972年ミュンヘンオリンピックです。 喘息もちで身体の弱いミーナの、空想バレーでは、憧れのセッター猫田選手の美しくて謙虚な動き、バレーボールの奥深い魅力が、小川さんならでは、美しく表現されています。 そしてドイツ人のローザおばあさんが、主人公朋子の名前に使われている「朋」の漢字について語る台詞が印象的。 「同じ大きさで、上と下じゃない。横に並んでる。そこがいいのね。平等なの。一人ぼっちじゃないの」 芦屋の家で暮らす人たちの、お互いを思いやる優しさやあたたかさが、静かに心に響く一冊です。
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子どもの頃の1年間は、大人になってからは想像もつかないほど、重みがあってわすれられないものだな、って改めて感じた。
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とても楽しめる作品だった。 「偶然の祝福」や「博士の愛した数式」のような、不思議な世界観はそれほど無く、著者の作品の初めて読む人にオススメ。 ミーナの行進。 それはあまりにも特殊で、際立っている。 何故ならポチ子の背に乗って登校するのだから。 そして、その登校も終わりを迎える。...
とても楽しめる作品だった。 「偶然の祝福」や「博士の愛した数式」のような、不思議な世界観はそれほど無く、著者の作品の初めて読む人にオススメ。 ミーナの行進。 それはあまりにも特殊で、際立っている。 何故ならポチ子の背に乗って登校するのだから。 そして、その登校も終わりを迎える。 永遠なんて、所詮存在しないのだ。 過去には閉ざされた記憶が未だに残っている。 己の記憶だけがいっときの永遠なのかも。
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マッチ箱の箱、図書館の貸し出しカード、庭で撮影した記念写真、 今でも手元にあるそれらがあるだけで自分が、過去の時間によって守られていると、感じることができる。 経済的な理由で伯母の家に一年間住むことになった朋子。 伯父さんに伯母さん、ローザおばあさん、小林さん米田さんにコビトカバのぽち子に、従兄のミーナ。 見るもの触れるもの感じるもの、すべてが初めてで新鮮でキラキラと輝いていた、 傍には家族と、隣にはいつもミーナがいた。 オトナになっても忘れはしない子供の頃の大切な思い出。 今はもう、ふと思い出してそれに浸ることしかできないけれど、愛しくていつまでも胸の奥にしまっておきたいあのとき。 愛しい話。 何年か前に途中まで読んでたんだけど、 いまさらになって読み返して最後まで読んだ。 ほんとに愛しい。あー、好きだなあ、と思った)^o^(
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中学1年生の朋子は、母の仕事の都合で、芦屋の伯母の家に1年間預けられることになった。その大きなお屋敷にはドイツ人のローザおばあさん、ハンサムでスマートな伯父さん、美しく聡明だけれど病弱な従妹のミーナ、お手伝いの米田さんに、庭師の小林さん、そしてコビトカバのポチ子というバラエティに...
中学1年生の朋子は、母の仕事の都合で、芦屋の伯母の家に1年間預けられることになった。その大きなお屋敷にはドイツ人のローザおばあさん、ハンサムでスマートな伯父さん、美しく聡明だけれど病弱な従妹のミーナ、お手伝いの米田さんに、庭師の小林さん、そしてコビトカバのポチ子というバラエティに富んだ家族が住んでいた…。 ドイツ製の真鍮の乳母車の話から始まる、一見ファンタジックな物語だが、朋子とミーナの目線でシビアに大人の世界を見つめていて、時々物語を現実世界に引き戻す。 コビトカバ(なんて可愛らしい響き)のポチ子。彼女のお葬式の場面には泣かされた。
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