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ミーナの行進 の商品レビュー

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228件のお客様レビュー

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2012/08/17

中学1年生の朋子は、母の仕事の都合で、芦屋の伯母の家に1年間預けられることになった。その大きなお屋敷にはドイツ人のローザおばあさん、ハンサムでスマートな伯父さん、美しく聡明だけれど病弱な従妹のミーナ、お手伝いの米田さんに、庭師の小林さん、そしてコビトカバのポチ子というバラエティに...

中学1年生の朋子は、母の仕事の都合で、芦屋の伯母の家に1年間預けられることになった。その大きなお屋敷にはドイツ人のローザおばあさん、ハンサムでスマートな伯父さん、美しく聡明だけれど病弱な従妹のミーナ、お手伝いの米田さんに、庭師の小林さん、そしてコビトカバのポチ子というバラエティに富んだ家族が住んでいた…。 ドイツ製の真鍮の乳母車の話から始まる、一見ファンタジックな物語だが、朋子とミーナの目線でシビアに大人の世界を見つめていて、時々物語を現実世界に引き戻す。 コビトカバ(なんて可愛らしい響き)のポチ子。彼女のお葬式の場面には泣かされた。

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2012/07/29

中学生になったばかりの朋子が、芦屋の、コビトカバを飼うちょっと不思議な家で過ごした時のお話です。 悲しいこと、楽しいこと、いろんな思い出の詰まった1年間が、とっても柔らかな空気感を持って語られています。 ミーナが集めたマッチ箱に書いた小さなお話たちも、とっても素敵。 本の...

中学生になったばかりの朋子が、芦屋の、コビトカバを飼うちょっと不思議な家で過ごした時のお話です。 悲しいこと、楽しいこと、いろんな思い出の詰まった1年間が、とっても柔らかな空気感を持って語られています。 ミーナが集めたマッチ箱に書いた小さなお話たちも、とっても素敵。 本のところどころにちりばめられた挿絵も、ものすごく素敵。

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2012/07/28

小川洋子さんの言葉で語られる芦屋の洋館の日々は、一つ一つが大切な宝物のよう。これと言った山場がないので上り詰める感覚はないけれどじんわりと余韻が残ります。 特にマッチ箱の物語の美しさ。シーソーする象や、タツノオトシゴや星を集める少女のお話の完成度の高さ。 他の作品同様、どこか...

小川洋子さんの言葉で語られる芦屋の洋館の日々は、一つ一つが大切な宝物のよう。これと言った山場がないので上り詰める感覚はないけれどじんわりと余韻が残ります。 特にマッチ箱の物語の美しさ。シーソーする象や、タツノオトシゴや星を集める少女のお話の完成度の高さ。 他の作品同様、どこか陰がある儚い世界観なので病弱なミーナの身によからぬことが起きるのではないかとハラハラしながら読み進めたけど、危惧した展開にはならずホッとした。 コビトカバの背に乗って登校していた痩せっぽちの少女は、自分の足でしっかりと踏み出していける大人になれたのだなぁ。

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2012/07/27

朋子が芦屋の親戚の家で過ごした物語。 病弱なミーナを中心に、その家族と屋敷に住まう人々は、味がありいい人たちだ。その人々の日常の中でゆっくりと話が進んでいく。 どこか少し影があるところや静謐でキレイな文章は、小川 洋子の世界を残しつつ、読後は『ほっこり・・』するような作品でした...

朋子が芦屋の親戚の家で過ごした物語。 病弱なミーナを中心に、その家族と屋敷に住まう人々は、味がありいい人たちだ。その人々の日常の中でゆっくりと話が進んでいく。 どこか少し影があるところや静謐でキレイな文章は、小川 洋子の世界を残しつつ、読後は『ほっこり・・』するような作品でした。 マッチ箱の物語は著者の得意とするところでしょう・・

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2012/04/16

10年以上変わらなかった、大好きな本ベスト3に割って入った1冊。 死や喪失の匂いにむせ返るような小川洋子さんの作品の中では異彩を放つ物語です。 他の小川さん作品に登場していたら、絶対に途中で儚く亡くなってしまいそうな病弱なミーナ、学校まで歩いて通えずに、コビトカバのポチ子に乗...

10年以上変わらなかった、大好きな本ベスト3に割って入った1冊。 死や喪失の匂いにむせ返るような小川洋子さんの作品の中では異彩を放つ物語です。 他の小川さん作品に登場していたら、絶対に途中で儚く亡くなってしまいそうな病弱なミーナ、学校まで歩いて通えずに、コビトカバのポチ子に乗って登校していたお嬢様の彼女が、いろんなものを喪いながらも、自分の選んだ道を生き生きとしっかり歩ける女性に成長しているラストに感動! 表紙をはじめ、中のイラストも、本の背表紙からマッチの意匠に至るまで、お話にちゃんとリンクしていてすばらしいので、これから読まれる方はハードカバーで読むことをおすすめします!

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2012/04/12

乳母車から始まる、少し変わった想起的な文章。 思い出のはずなのにまるで幻みたいな感覚が妙に 現実の思い出を思い出す感覚と一致する。 この本にはあらすじもあとがきもない。 意図されたことかは知りえないが それがこの本を思い出として本当に閉じ込めている。 物語に煽られる焦燥感では...

乳母車から始まる、少し変わった想起的な文章。 思い出のはずなのにまるで幻みたいな感覚が妙に 現実の思い出を思い出す感覚と一致する。 この本にはあらすじもあとがきもない。 意図されたことかは知りえないが それがこの本を思い出として本当に閉じ込めている。 物語に煽られる焦燥感ではなく 自分が体験した時の焦燥感を感じた。

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2012/03/05

途中まで、なんとなく物足りなくてなかなか読み進むことができなかったのだが、読み終えてみれば何ともいえない味わいと余韻の残る作品。 父を亡くし母親の女手ひとつで育てられていた朋子が、母の洋裁の勉強のために、芦屋に住む裕福な伯母の家に中一の一年間預けられた三十数年前の暮らしを、朋子...

途中まで、なんとなく物足りなくてなかなか読み進むことができなかったのだが、読み終えてみれば何ともいえない味わいと余韻の残る作品。 父を亡くし母親の女手ひとつで育てられていた朋子が、母の洋裁の勉強のために、芦屋に住む裕福な伯母の家に中一の一年間預けられた三十数年前の暮らしを、朋子が回想するという物語。 私の想像でしかないが、多分に小川洋子さん自身が投影された作品であったような気がする。 ちょっと変わったものを集めてみたり、マッチ箱のイラストから物語を紡ぎだしてみたり、オリンピックに夢中になったり、図書館係に淡い恋心を抱いたり、著者自身の作家としての入口であったアンネ・フランクを通して知ったであろうアウシュヴィッツの悲劇についても、ローザおばあちゃんや朋子が借りた本を通して少し触れてみたり…。 ユーミンの「ジャコビニ彗星の日」を思い出し、きっと著者もその時、ちょうどミーナくらいの年齢でその日を迎えていたのだろうなと想像したりして、岡山の子でもあるし、ああきっと朋子とミーナは小川洋子さんなんだなと、勝手に納得してしまった。

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2012/02/12

イラストがかわいくてバツグン。 主人公朋子が親戚の芦屋の家で暮らした、短い期間の夢のような…。従妹のミーナは病気がちで可愛くて本が好き。ドイツ人の叔父さんは格好良くてー。少女2人のクスクス笑いが今でも聞こえてきそうな、不思議で素敵なお話。

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2012/01/23

主人公・朋子は家庭の事情で、ミュンヘンオリンピックの年の一年間、芦屋の裕福な叔母の家で過ごす。そこには一歳年下の従姉妹、ミーナがいた。 小学校の卒業式を終えた翌日に1人で新幹線に乗り、岡山から神戸までやってきた朋子。父を病気で亡くし、残された母と娘1人だったのだが、これからの生活...

主人公・朋子は家庭の事情で、ミュンヘンオリンピックの年の一年間、芦屋の裕福な叔母の家で過ごす。そこには一歳年下の従姉妹、ミーナがいた。 小学校の卒業式を終えた翌日に1人で新幹線に乗り、岡山から神戸までやってきた朋子。父を病気で亡くし、残された母と娘1人だったのだが、これからの生活のため、母が一年間だけ東京に洋裁の修行に行くことを決意したゆえだった。 何年かぶりの再読です。 初読時には、ゆったりした文体の中にどこか哀しみが感じられ、何か悪いことが起きるのではないか、(従姉妹が意地悪だったら? 喘息に苦しむミーナが儚くなってしまうのでは? 火事で家が焼けてしまうのでは? 海水浴に行って叔父さんと従兄弟が溺れてしまうのでは?などなど)と、先周りをして心配してしまい、終始、ハラハラしていたような気がするのですが、今回は、突然、とんでもないお金持ちの家に住まいすることになった少女の素直な気持ちにしっくりと寄りそいながら楽しんで読むことができました。 ミーナは、ドイツ人のお祖母様を持つ、美しいクォーターの女の子。血管ばかりか、その中を流れる血液さえ見えるような白い肌、と朋子によって描写される佇まい、そして、病弱なゆえに小学校までの道のりをコピトカバのポチ子に乗って行くという、童話の世界のような、また、別の見方をすれば、人と違うことをしても気に病まないという気持ちの強さが深く心に残る女の子です。 朋子とミーナはとても良い友だちになり、特に、朋子は年下の彼女から大きな影響を受けます。 マッチ箱集めに情熱を傾けるミーナ(そのマッチ箱を持ってきてくれる“フレッシー”の配達員の若者との淡いエピソードも好きでした。)が、その絵柄に合わせて紡ぎだす短いお話の数々。森田・猫田・大古・嶋岡らがいた時代の男子バレーボールに熱中する様も、同じ時代を生き、同じ試合に声援を送った身として、不思議なくらいにあのころの匂いや色が蘇る思いでした。 朋子から見るミーナの家族はみな好ましく、素敵な人たちではあるのですが、優しくハンサムな叔父さんは別に家庭を持っているらしく、叔母さんは小説でも新聞でもチラシでも、と印刷されたものの校正に一日の多くの時間を費やしているのが哀しい・・。そして、そんな中でも(たぶん)意識して穏やかに暮らしてくる家族を、途中からの同居人として心の中でまっとうな感情を吐露している朋子。 このお話は、一年間の同居から三十年後に朋子から語られているという趣向のため、時に大人の視点が入り、その整理された気持ちがいい具合に読者に落ち着きをもたらしています。 一枚の美しい絵のような家族にも、もちろん変化は訪れなければならない。人と人とのつながりや状況は変わっていくものなのだなぁ、と感じさせられつつ、それは悪いものではないのですよ、と優しく教えられたようなお話で、うん、やっぱり小川洋子さん、好きだなぁ、と改めて思わされました。(*^_^*)

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2012/01/22

小川洋子にしては、癖がない。はじめて小川洋子を読むなら、これくらいがいいとおもう。わたしはとても好きな感じ。『博士の愛した数式』や、『ブラフマンの埋葬』における彼女が描く悲劇って、すこし強すぎる。『妊娠カレンダー』や、『沈黙博物館』からは、あまりに強く身体のにおいが立ち昇りすぎる...

小川洋子にしては、癖がない。はじめて小川洋子を読むなら、これくらいがいいとおもう。わたしはとても好きな感じ。『博士の愛した数式』や、『ブラフマンの埋葬』における彼女が描く悲劇って、すこし強すぎる。『妊娠カレンダー』や、『沈黙博物館』からは、あまりに強く身体のにおいが立ち昇りすぎる。『猫を抱いて象と泳ぐ』も、そう。これは、すこしもの悲しくて、身体のにおいもきちんとするんだけれど、それで息苦しくなったり、胸がしめつけられるようなことはない。ただすこし、つきんと、きゅうっと、なるだけ。それは小川洋子という人の物語の本質に触れることができる一方で、それに強く押し流されてしまう心配はなくて、とても居心地がよかった。

Posted byブクログ