誠実な詐欺師 の商品レビュー
カトリは25歳の女性で、人生の邪悪さを理解していて誰に対しても誠実だ。愛想や礼儀の欠片も持ち合わせていない。迎合や追従は自分の中から極力排除したいと思っている。真に誠実であるとは、そういうことなのだろう。 老女性画家のアンナは、カトリとは対照的だ。ウサギのキャラクターが登場する...
カトリは25歳の女性で、人生の邪悪さを理解していて誰に対しても誠実だ。愛想や礼儀の欠片も持ち合わせていない。迎合や追従は自分の中から極力排除したいと思っている。真に誠実であるとは、そういうことなのだろう。 老女性画家のアンナは、カトリとは対照的だ。ウサギのキャラクターが登場する絵本の挿絵を描いて人気を博しており、ムーミンの作者であるヤンソン自身を思わせる。 全く異なる性質の2人が関わりを持つことで、良い効果が生まれることもあれば悪い効果が生まれることもある。この物語は後者を描いているように思われる。 雪深い海辺の村で、人々は長い冬を耐えているのだ。
Posted by
白夜の北欧、雪に覆われた寒村。あるたくらみを胸に秘めた娘カトリと、年上の画家アンナの共同生活を描く。一方が心に宿した猜疑心が、相手方の心を波立てる様子が、憂鬱に語られていく。 終始、異物をまぶたの中に転がされているような印象。面白いとか面白くないとか、そういう地平とはなれた場所に...
白夜の北欧、雪に覆われた寒村。あるたくらみを胸に秘めた娘カトリと、年上の画家アンナの共同生活を描く。一方が心に宿した猜疑心が、相手方の心を波立てる様子が、憂鬱に語られていく。 終始、異物をまぶたの中に転がされているような印象。面白いとか面白くないとか、そういう地平とはなれた場所に漂う、不思議で気がかりな一冊。 ところで、ヤンソン自身による装画が素晴らしい。
Posted by
ムーミンの作者トーベ・ヤンソンの中篇。子ども向けに書かれたムーミンシリーズとは一線を画するヤンソンさんの大人の顔。長く暗い北欧の冬、凍える湖と古い屋敷、村の人々。心理描写はもっぱら情景描写から汲みとらせる。拾いきれなかったぶん、時間をおいてまた読み直せたらいいなと思う。 2014...
ムーミンの作者トーベ・ヤンソンの中篇。子ども向けに書かれたムーミンシリーズとは一線を画するヤンソンさんの大人の顔。長く暗い北欧の冬、凍える湖と古い屋敷、村の人々。心理描写はもっぱら情景描写から汲みとらせる。拾いきれなかったぶん、時間をおいてまた読み直せたらいいなと思う。 20140104SUN
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
[ 内容 ] 雪に埋もれた海辺に佇む「兎屋敷」と、そこに住む、ヤンソン自身を思わせる老女性画家。 彼女に対し、従順な犬をつれた風変わりなひとりの娘がめぐらす長いたくらみ。 しかし、その「誠実な詐欺」は、思惑とは違う結果を生み…。 ポスト・ムーミンの作品の中でもNo.1の傑作として名高い長編が、徹底的な改訳により、あざやかに新登場。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
Posted by
図書館で。 なんというのか陰鬱な本。人間に日光って大事なんだなあってぼんやり思いました。 特にこれといった問題が起きるわけではないのですがいつこの薄氷を踏むような感じが決壊するのかドキドキします。そしてまるで次元が違う世界に生きている人間同士は同じ言葉を使ってもいつまでたっても相...
図書館で。 なんというのか陰鬱な本。人間に日光って大事なんだなあってぼんやり思いました。 特にこれといった問題が起きるわけではないのですがいつこの薄氷を踏むような感じが決壊するのかドキドキします。そしてまるで次元が違う世界に生きている人間同士は同じ言葉を使ってもいつまでたっても相互理解はなく平行線なんだなあなんて思いました。 面白くはないですがなんとなくさみしくて不安になるお話でした。
Posted by
誠実ということに対して考え方が変わった。 当たり前に交わしていたあいさつや何気ない日常会話が嘘に満ちていることに気がついて、自分が汚く思えた。 自分にだけは正直でありたい。
Posted by
ムーミンの作者と気軽な気持ちで読んだら圧倒されました。 タイトル的にも惹かれるものがあったのですけど、シンプルな文体でしっくりくる感じが自分の偏見と葛藤してて楽しかったです。 sound of silenceといい二律背反の単語に惹かれるのは人間が出来ていない証拠でしょうかね。
Posted by
私、「ムーミン」って、実はほとんど読んだことがないのだ。 途中で挫折。 アニメのキャラは好きだったのだけれど…… ま、ヘルシンキに行くなら、ヤンソンの1冊くらい、読んどかなきゃねってことで読み始める。 しかも帰りの飛行機で……(行きは寝ちまった 爆) ……良かった。 ……ムーミ...
私、「ムーミン」って、実はほとんど読んだことがないのだ。 途中で挫折。 アニメのキャラは好きだったのだけれど…… ま、ヘルシンキに行くなら、ヤンソンの1冊くらい、読んどかなきゃねってことで読み始める。 しかも帰りの飛行機で……(行きは寝ちまった 爆) ……良かった。 ……ムーミンも深いとは聞いていたが、ヤンソン、すごい。 ほとんど改訳だそうだが、文体が良い。 余分なものがない感じ。 それが小説の世界と響き合う。 25歳のカトリは数字に長けた、明晰な女性。 兎屋敷に住む、ヤンソンをモデルにしたらしき老画家アンナは裕福で、穏やかな女性…… 大雪に閉ざされたその冬、カトリは最愛の弟マッツのために、或る計略を以てアンナに近づく…… 春の始まる頃、アンナとカトリに、思いがけない展開が…… これが不穏な、張り詰めた空気に満ち満ちていて、実に怖い。 孤独。 人と人との関係。 欺瞞と潔さ。 自分の大事にするもの。 そういったものが真っ白な村を舞台に、冷徹な観察眼であぶりだされていく。 読んでいくうちに、胸がしんとするのは、私にとって、良い本の証拠。 フィンランドの冬も、かくやあらん……と思えるほど、胸がしんとした。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
人間社会は少なからず嘘で成り立っている。 正直であることは、必ずしも相手を満足させない。友達に「きのうパーマかけてきたの~! どう? 似合う?」と言われて「全然似合ってないよ」と本当のことを言ったら、たぶん嫌われる。人間関係を円滑に保つには、社交辞令やおべっかも大切だ。もちろんそればっかりだと、これまた嫌われるのだけど。 『誠実な詐欺師』の主人公カトリ・クリングは、そういう世渡りの方便を必要としない女性だ。彼女は「数字と弟のことしか頭にない」(p.6)。数字は清らかで嘘をつかない。そう信じているカトリは、無愛想だけれども、まごうことなく誠実だ。カトリが数字、そしてお金を信頼するのは、彼女が貧乏だから、というのが大きいのだと思う。 いっぽう、画家のアンナ・アエメリンは森を描くことにしか興味がない。しかしながら、花柄の兎を書き込んで絵を台無しにする。この兎は読者の子供や出版社の要請によって付け加えられるもので、つまり絵本を売り上げるための方便なのだ。その収入は出版社によって過剰にピンハネされているのだが、カトリに指摘されるまでお人好しのアンナは気づかない。彼女は生まれたときから裕福で、お金に無頓着なまま生きてこられたのだ。 二人はどこか一方向のベクトルにしか関心が向いていない似たもの同士だけれど、お金に対する考え方は随分違っているようだ。そしてそれは、人間関係に対するスタンスの違いとして顕著に表れる。近づきすぎた二人は互いに強い影響を及ぼし合い、それぞれの信条を激しく揺さぶる。その破裂点はカトリの犬にあらわれる。カトリは他人を信じ続ける平穏をアンナから奪った。代わりにアンナはカトリから犬を、つまり犬から服従し続ける平穏を奪った。 カトリが信じるお金の公平さはさみしい公平さだな、とわたしは思った。カトリがマッツのためにボートを作ってやっても、そのお金の出所がアンナなので、簡単にアンナからの贈り物になりうる。そこにカトリの愛情を差し挟む余地はない。 原題:Den ärliga bedragaren 【メモ】 2013年5月2日、札幌・くすみ書房「なぜだ!?売れない本フェア」にて購入。とても楽しい本屋さんだったので、また行きたいです。 くすみ書房公式HP: http://www.kusumishobou.jp/
Posted by
話に入り込めなくて(退屈で)途中で断念。 評価が低い訳ではないので、自分には合わないんだろうなぁ。残念。
Posted by