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誠実な詐欺師 の商品レビュー

3.9

49件のお客様レビュー

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2021/11/02

ムーミンの作者の長編小説。 北欧の冬から春にかけての景色が美しい。 読んでいる間ずっと「誠実な詐欺師」とは何のことか考えていた。 数字に疎い老女性画家アンナと実務的な若い女性のカトリ。カトリは雑貨店や出版社にアンナが「ちょろまかされていた」ことを明らかにしていく。 他人の悪口を言...

ムーミンの作者の長編小説。 北欧の冬から春にかけての景色が美しい。 読んでいる間ずっと「誠実な詐欺師」とは何のことか考えていた。 数字に疎い老女性画家アンナと実務的な若い女性のカトリ。カトリは雑貨店や出版社にアンナが「ちょろまかされていた」ことを明らかにしていく。 他人の悪口を言わず、人の好かったアンナは段々猜疑心が強くなっていく。 猜疑心の虜になったアンナは美しい春の訪れも感じられなくなってしまう。 教訓的に読む話ではないのかも。 世の中には芸術的気質の人間と実利的な人間がいるってことだろうか? トーべ=ヤンソンが実際に陥ったジレンマの話なのかはわからない。

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2022/10/22

 カトリとアンナの両者ともに、自分の内面に近いものを感じて、2人に自分を重ねながら物語を読んだ。アンナは本来の自分に近くて、カトリは大人になるにつれて飼い始めた自分に近い。物語では、2人のエゴは相容れない性質であるが故に互いに悪影響を及ぼし合う。自分の中ある2つの性質も互いに反発...

 カトリとアンナの両者ともに、自分の内面に近いものを感じて、2人に自分を重ねながら物語を読んだ。アンナは本来の自分に近くて、カトリは大人になるにつれて飼い始めた自分に近い。物語では、2人のエゴは相容れない性質であるが故に互いに悪影響を及ぼし合う。自分の中ある2つの性質も互いに反発し合っていて、似ているなと思った。だからこそ、読んでいて他人事とは思えなくて、2人から目が離せなかった。  この訳者さんが『誠実な詐欺師』を読んだときに、「人と人が近づきすぎると必ず傷つくのだけれど、逆に言えば、傷つかない人間関係には意味がない。」ということを伝えたい本だと思ったと言っていた。  私は、傷ついてもなにかしらの意味があるとは思える。エゴの衝突で、強い絆が生まれることもあれば、最悪の関係性に終わることもある。ただ、エゴとエゴが衝突したからこそ分かることが確かにあると思う。でも、傷つかない人間関係には意味がないとまでは、まだ思えないな。だからこれからも私は、傷つかない人間関係に留まらせることは幾度もあると思う。それでも、人と近づくことに前向きな気持ちにさせてくれた、この訳者さんの一言にはとても感謝している。  多様性を受け入れることや、異質なものに対して寛容であることが、美徳とされつつあるように思う。でも、他者のエゴへの寛容って、あるんだと認めることと、行動で反発しないことくらいが限界だと思う。変に納得や共感を目指すと、似たような性質をもつ人間ばかりになって、かえって多様性を失う気がする。  自分のエゴがある以上、それと反発するエゴがあることは仕方のないこと。エゴには正しさはないし、人によって違うのは当たり前。自分とは異質なエゴについては、存在は認められても、感覚的に納得できないし、共感もできない。自分が自分を見失わないような範囲でしか、受け入れることはできないって割り切ることも必要なのかな。    自分の抱いていた誠実に対するイメージと照らし合わせるなら「正しくて、媚びへつらわない」カトリは誠実じゃない。逆に、人の心を思えるアンナはかつて誠実だったように思う。タイトルでカトリが誠実であることになってるから、カトリは誠実なんだろうけど。  なんか、「誠実」っていう言葉に対して抱いていたイメージと、実際の意味は違ったのかもしれない。正しさと正直さは、私のイメージしていた「誠実」の、高潔で優しいイメージとは必ずしもリンクしないって教えてくれた本だった。カトリに捉われ続ける必要はなくて、もっと柔軟に生きていいんだなって思えた。

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2021/04/14

誠実とは何ぞや。 知的で計画性のある主人公・カトリは、携える自らの欲望に実に忠実に、 誠実に、従う。その姿は用心深く、しかし大胆であり続け、事が成就することを確信をもって狙いに行く。生きることに対して、愚直であるが故の在り方であろう。だが、そんなカトリのこの小説の中での願いの結末...

誠実とは何ぞや。 知的で計画性のある主人公・カトリは、携える自らの欲望に実に忠実に、 誠実に、従う。その姿は用心深く、しかし大胆であり続け、事が成就することを確信をもって狙いに行く。生きることに対して、愚直であるが故の在り方であろう。だが、そんなカトリのこの小説の中での願いの結末は、不気味なほど静かに、カトリが相対する現実にするりと顔を出していく。 是非、途中で投げ出さず最後まで読んで欲しい。それと、カトリが連れている犬に注目しながら読むと吉。 この小説が一貫として主張するものは何だったのか、読み手である貴方自身が貴方の内面と共に誠実に向き合い、考え、ラストを眺め見て欲しい。 多様な人間関係を鋭い感性で以て捉えることに長けていた、ムーミンの作者トーベが送る、一つの傑作を是非あなたに。 (読プロ現役学生・アメンボ)

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2021/04/18

飯能市にあるトーベヤンソン あけぼの子どもの森に行った。キノコの家、鱗のある家など、川と森の佇まいがいい。そのことから、トーベヤンソンの本を読みはじめた。フィンランドのムーミン物語の作者として有名である。フィンランドのイメージは、サンタクロース、オーロラ、サウナなどである。フィン...

飯能市にあるトーベヤンソン あけぼの子どもの森に行った。キノコの家、鱗のある家など、川と森の佇まいがいい。そのことから、トーベヤンソンの本を読みはじめた。フィンランドのムーミン物語の作者として有名である。フィンランドのイメージは、サンタクロース、オーロラ、サウナなどである。フィンランドは3年連続で、2020年幸福度1位である。日本はなんと62位。 老いた女性画家アンナ、従順な犬を従えた姉カトリ、寡黙な弟マッツの物語。 海が近くにある雪深い寒村。ウサギの顔のような表情をしたウサギ屋敷に住む老いた独り身の画家アンナ。人付き合いもあまりせず、ファンレターがたくさん届く画家で、精密に森の土を描き、その中にウサギの絵を書き込む。食べるものや郵便を届けてくれる人たちがいるので、あまり外に出ない。 カトリは、飼っている犬の目が黄色で、彼女の目の色も黄色だった。野生に生きる力を持っている。数字に強く、純文学を読み知性的である。交渉力もあり、村の人の困った時に相談に乗っている。誠実な人間として評価されているが、村の人たちとは距離感がある。弟マッツは、寡黙な少年で、姉カトリは、なんとかボートを贈ってやりたいと思っている。カトリは、老画家のアンナに手伝いをして、泥棒の真似をして、ひとりであることを怖がらせる。アンナは周りの人からは、独り住まいはよくない、カトリと住みなさいと忠告を受け、カトリ姉弟といっしょに住むことを決める。 カトリは、家の中を片付け、冷蔵庫を片付け、整理整頓をして、次第にお金の管理もするようになる。アンナの収入を増やす中で、その増えた中から、マッツにボートを買うお金を確保することを始めた。アンナは、ひとりであることに慣れているので、カトリの足音や整理しすぎることに不満を募らせていく。そして、アンナは、弟マッツに冒険小説を進めたり、カトリの犬を調教する。 アンナ、カトリ、マッツの3人の関係がくづれていく。犬がカトリとアンナの主人を持つことで、変化し野生を取り戻して、吠え続ける。そして、ボートがやっと手に入るが。 アンナは多分老いたトーベヤンソン自身であり、またカトリは若い頃のトーベヤンソンなのだろう。 二人の私が同居することで、化学的な変化が少しづつ起こっている。厳しい自然の中で、孤独でありながら、自立して生きていこうとする姿勢が屹立した人間を描き出す。 誠実であろうとして誠実とみなされない「私」を描き出そうとする。厳しい自然の中でたくましく生きている。

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2020/04/16

なんともせつなく、もどかしい。 詐欺師、詐欺師の弟、詐欺師のターゲット、それぞれに才能があり個性があり弱点があり希望があり未熟な点があり、それが作用し合って、「喰いあって」しまう、その一部始終。 読むのがつらい話でした。

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2019/09/13

誠実さ故に放言が言えず、人を疑い孤立してしまうカトリと表面上人当たりがよいが何でも信じて、真に誰とも打ち解けていないアンナが衝突する物語。正反対の世界観を持つが、2人とも孤高である。互いに影響を受けながらも最終的に相入れなかった2人だが、自らのアイデンティティが否定された後に何が...

誠実さ故に放言が言えず、人を疑い孤立してしまうカトリと表面上人当たりがよいが何でも信じて、真に誰とも打ち解けていないアンナが衝突する物語。正反対の世界観を持つが、2人とも孤高である。互いに影響を受けながらも最終的に相入れなかった2人だが、自らのアイデンティティが否定された後に何が起こるのだろうか。

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2019/01/04

トーベ・ヤンソンの小説、初めて読んだ。雪の風景が目に浮かぶような、浮かばないような。北欧映画を見て、生活の様子を知ってから次を読みたいかも。

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2018/01/28

誠実な詐欺師。現実にあり得そうだけれど、あり得なそうでもある。そんな不思議なお話。読めば読むほど続きが気になってあっという間に最後まで読み終えてしまいました。

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2018/01/10

何かに執着していた人達の足場が崩されていく。特にカトリがアンナにそれまで守っていた秩序を乱される場面にはカタルシスがある。

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2016/08/04

25歳の女性カトリ・クリングは10離れた弟マッツと雑貨屋の2階を間借りして暮らしていた。 そこを出ていかなければならないカトリは、村の兎屋敷に住む老女性画家アンナに目をつける。 誠実でありながら果たそうとするカトリの思惑は・・・。 ムーミン・シリーズのトーベ・ヤンソン作の小説。...

25歳の女性カトリ・クリングは10離れた弟マッツと雑貨屋の2階を間借りして暮らしていた。 そこを出ていかなければならないカトリは、村の兎屋敷に住む老女性画家アンナに目をつける。 誠実でありながら果たそうとするカトリの思惑は・・・。 ムーミン・シリーズのトーベ・ヤンソン作の小説。 カトリとアンナ、マッツと名もない犬の共同生活は思惑を外れ互いに影響を与えていきます。 随所随所に現れる北欧の冬の描写はムーミンの世界に通じるものを感じさせられました。 この後、カトリは同じ目の色の犬と同じように生きていくのだろうか。 幸あれと願わずにいられない。

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