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イラクサ の商品レビュー

3.6

38件のお客様レビュー

  1. 5つ

    4

  2. 4つ

    11

  3. 3つ

    10

  4. 2つ

    2

  5. 1つ

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2024/07/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

短編集だけど、どの話も濃く重くて生々しく、読みごたえがある。どの話も恋愛や夫婦の関係(というか、不倫?)が軸になっていて、常に誰かの嫌味や悪意が見え隠れしているのがあんまり好みの感じではなかった。登場する夫婦たちも、横柄な夫とあんまり気の合わない妻という組み合わせ、そしてそこからの不倫ばかりでちょっと飽きたかも。でも小説から放たれる登場人物たちの存在感というか、ちょっとした描写から登場人物の人生や生活そのものが立ち上がってくるような密度はすごかった。

Posted byブクログ

2024/06/15

ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)は個人的にはあまり好きになれない。もちろんジョニがその詩作に関して非凡な才能の持ち主であり、自分の体験を創作にうまく織り交ぜて独特の世界観や恋愛観を構築していることは否定しない。でもジョニのように女性心理の表と裏の両面性を聞き心地良...

ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)は個人的にはあまり好きになれない。もちろんジョニがその詩作に関して非凡な才能の持ち主であり、自分の体験を創作にうまく織り交ぜて独特の世界観や恋愛観を構築していることは否定しない。でもジョニのように女性心理の表と裏の両面性を聞き心地良く示されても、素直に受け止められないのだ。 「カナダ生まれ」という共通項だけでジョニとアリス・マンローを結びつけるのは少し大雑把過ぎでは、という声も出るかもしれない。だが女性視点による女性の生理や心理からの描写が特徴的という点に着目すれば、あながち的外れでもないのではと考える。しかしそれをカナダという土地や人間性に結び付けるには、私はカナダに行ったことがないしカナダ人の知り合いはいないのでそれ以上深くは切り込めないのだが。 個々の作品に触れると、“The bear came over the mountain”が私には一番よかった。これは本編収録のその他の作品が女性を主人公にした女性視点からの構成なのに対して、男性のグラントの視点から物語られているからでもある。 あらすじはこうだ。2人は若くして周りがうらやむような結婚をしたが、そのうちグラントは、妻のフィオーナが悪気なく物忘れをすることがよくあるのに気づく。それが次第にエスカレートし、年月を経て彼女はいよいよ施設に入所することに。 夫が妻に会うためには施設へ面会に訪れなければならない。何度かの訪問でグラントは気づく。フィオーナがある入所者男性(オーブリー)といつもいっしょにいて、せっかくの夫の訪問よりもむしろオーブリーの機嫌をうかがうことに意識が向いているのではと。 ある日、オーブリーの容態が急変して彼が自宅療養することになり、グラントは彼の自宅を訪問することになる。初対面であるオーブリーの妻(マリアン)の所作にグラントは一種の拒絶感めいたものを感じるものの、マリアンが着ていたピンク色のセーターの胸の部分を豊かに上向きに押し上げていたふくらみが、彼女と別れた後でも頭から離れない。 そしてまた時は流れ、グラントはフィオーナに会いに施設を訪れる。フィオーナがその両腕でグラントの身体を抱えたとき、グラントは今までかいだことのない香りを彼女から感じる。一方で記憶が日に日に薄らぐかのようなフィオーナがグラントに対してある言葉を発する。それは彼の身体から発せられる別の女性の香りを察知したからなのか。それとも夢遊病者のように認知症患者に特有の病的な所作に過ぎないのか。憎いことにマンローは明らかにしない。…この結末を創作しえたことこそが、マンローがノーベル文学賞作家であることを証明するのかなと推測する。 このように、マンローの持ち味は、どこにでもいるような女または男が、白昼夢におちいった時のような、あるいは一瞬の稲光(いなびかり)に目をくらまされた時のような、甘い罠についての描写なのだ。 今、罠と書いたが、それに対する罰や転落は描かれないのも、この作家の特徴と言えるのではないか。だから私は一瞬間の出来事としてその後現実に戻っても何も影響が残らない「白昼夢」や「稲光」と例えたのだ。 だが単刀直入に言ってしまうと、描かれるのは「不倫」であり「性的欲求」であり「ゆきずりの行為」だ。その意味ではポルノ小説だ。だから私はこの作家がノーベル文学賞を受賞したというのは簡単には受け入れがたい。私はこの作家のストーリー作りのうまさやオリジナリティは認める。認めるが、ブクログでは「自分の好み」による評価も可能なので、そういう意味で星3つ。 ※蛇足だけれど、私の雑感も書いておきたい。 1 冒頭の短編“Heteship,Friendship,Courtship,Loveship,Marriage”は「恋占い」と訳されているが、本文を読むと「嫌い、友だち、求愛、恋人、結婚」という意味らしい。それってつまり、日本でも昔よく少年少女雑誌とかに載っていた「あきすとぜねこ」のことだよね。 「あきすとぜねこ」は確か(うろ覚えですが)2人の名前の画数を調べて、愛してる(あ)、嫌い(き)、好き(す)、友だち(と)…のどれに当たるかを導き出して、2人が恋仲に進めるか、あるいは逆なのかを占ってそれをネタにワーワー言い合うための遊びだった。今の日本の小中学生はそんな遊びは知らないと思うけれど、カナダでも同じかな?どうかな? 2 ほかの読者は、この翻訳者の日本語をどう感じたのだろうか? 私が1点引っかかったのは、P132の「いちばん最後」という日本語。言うまでもないが最後は「いちばん」と付け足さなくても一番うしろを意味する。つまり「馬から落馬」と同じ誤った言い回し。校正者も何も感じなかったのだろうか。

Posted byブクログ

2024/06/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

イラクサ ちょっとした子供達の悪意から幸せな結婚に至った最初の短編「恋占い」に始まって、認知症になってしまった妻を思っての行動から不幸な結末を迎える「クマが山を越えてきた」まで、9編の短編が収められています。 批評家好きの心の襞を描いた良質の短編集だと感じました。悪意、善意、運、不運、愛情、憎しみ、あてこすり。こういったものが随所にちりばめられているので、どうしても他人の悪口を聞いてしまったような後味が残ります。 個人的には人の悪口を聞いたり、醜い感情を痛感したりするために本を読んでいるわけではない竹蔵にはちょっと辛すぎる物語でした。 女性ってこんなことばかり考えているのかなーなどと思い、ちょっと怖くなってしまった竹蔵です。 竹蔵

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2024/04/03

読んだ後しばらく考え込んでしまうような、読み応えがある話だらけ。 情景の描写が細かくて、個人的にはとても入り込める時と間延びして感じてしまう時があった。 なんだかもどかしい気持ちになる話が多かった。

Posted byブクログ

2023/02/04

心理描写、情景描写が面々と生々しく続き、あたかも作者の描くそのワンシーンの中に、わしづかみで同席させられたかのごとく。何とも言えない圧迫感。 三人称書きであるが、神の視点ではない。映画のカメラワークのように、視点となる登場人物が急にすり替わったり、時間軸が一足跳びに飛んだり。そも...

心理描写、情景描写が面々と生々しく続き、あたかも作者の描くそのワンシーンの中に、わしづかみで同席させられたかのごとく。何とも言えない圧迫感。 三人称書きであるが、神の視点ではない。映画のカメラワークのように、視点となる登場人物が急にすり替わったり、時間軸が一足跳びに飛んだり。そもそも関係性が分からないまま語られ始め、会話などからそれらがようやく読み解けるなど、読者にとって親切設計ではない 笑 結構、読みにくいので、気持ちや時間にゆとりのある時にお薦めしたい。 ある一時に焦点を当てて、そこに主人公の人生を濃縮させて語るスタイルなのでしょうか? 読後感は悪くはないが、どの話も「そーなのよ、そうなんだわ」と主人公が合点する姿に、呆気にとられつつ終わりみたいな・・・。 物語としてのオチがない。 唯一、オオッ!と言って読み終えられた「恋占い」が1番好きだ。特に、ヒロインがブティックにドレスを買いに行った時の描写が素晴らしい。この本の最初の作品だったので、金の鉱脈でも発見したかのごとく期待が高まったのだが。 どの作品のヒロインにも、火山のマグマのようなフツフツとした感情のエネルギーがある。作者に嫌味や意地悪さを感じるという書評を目にするが、抑えきれないマグマはおのずと世界を斜に見させる。作者自身もそのマグマの持ち主なのでは? また、病院や介護施設の訪問、学者や教師である男性登場人物といったストーリーの共通性が多く、読んでいて混乱を覚えた。 「恋占い」みたいな作品があればまた読みたいのだが。

Posted byブクログ

2022/09/08

久しぶりに読み応えのある本に出会いました。 9つの短編それぞれが、何処にでもいるごくごく普通の人達の物語。 それぞれの物語が映画のシーンのように突然始まって、この人誰?この人何者?ここで何やってるの?と疑問が生じ、読んでるうちに一つ一つ謎が解けていく。 日本語版の表題は『イラ...

久しぶりに読み応えのある本に出会いました。 9つの短編それぞれが、何処にでもいるごくごく普通の人達の物語。 それぞれの物語が映画のシーンのように突然始まって、この人誰?この人何者?ここで何やってるの?と疑問が生じ、読んでるうちに一つ一つ謎が解けていく。 日本語版の表題は『イラクサ』ですが、原作の表題は『恋占い』、個人的にその話が一番面白かった。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 主人公は老人と孫娘だけで暮らす家の家政婦。決して美人とは言えず…というか醜いと思われる事が多い。離れて暮している孫娘の父親と密かに文通していて、それが心の支えになっている。ところが父親からの手紙は孫娘の友達の悪戯だった。 ーーーーーーーーーーーーーーーー どの話も予想外の終わり方をするが、↑の話は驚きの展開でした。

Posted byブクログ

2021/05/26

しみじみ、良い物語を読みました。 短編なんだけれどどのお話も長編小説みたい。人間模様がほろ苦く現実的に描かれていました。 ドラマチックなようで普遍的なようで、外国のお話だけれど隣の人はこんな人生歩んできたのかも、みたいに思わせる身近さがあります。 映画化される短編もあるみたいで楽...

しみじみ、良い物語を読みました。 短編なんだけれどどのお話も長編小説みたい。人間模様がほろ苦く現実的に描かれていました。 ドラマチックなようで普遍的なようで、外国のお話だけれど隣の人はこんな人生歩んできたのかも、みたいに思わせる身近さがあります。 映画化される短編もあるみたいで楽しみです。

Posted byブクログ

2020/03/02

ビブリオバトルで高田先生が紹介した。ボタニカルな表紙が印象的な仮フランス装。表題作の他に8作品を収めたアンソロジーだ。作者マンローはカナダのノーベル賞作家。ビブリオバトルで紹介された「イラクサ」から始め、あとは掲載順に読んだ。途中で気づいた。掲載順に読むべきだった。掲載順が対話の...

ビブリオバトルで高田先生が紹介した。ボタニカルな表紙が印象的な仮フランス装。表題作の他に8作品を収めたアンソロジーだ。作者マンローはカナダのノーベル賞作家。ビブリオバトルで紹介された「イラクサ」から始め、あとは掲載順に読んだ。途中で気づいた。掲載順に読むべきだった。掲載順が対話の流れを作っている。こんな感じだ。作品を読み終えるたびに、どうでした、とマンロー。それに僕が答える。すると、おや、泣いてらっしゃるのね。じゃ、次はこれね。それが終わると、おや、少し軽かったかしら、じゃ、こんなのは如何。最後の「熊が山を越えてきた」には、他の8作品の中に色々な参照点が見つかる。対話を振り返りながら、アンソロジー全体に、複雑な余韻を残してくれた。

Posted byブクログ

2019/10/26

加文学って意外と読むの初めてか・・・??? なんてーか・・・空気感が穏やかなんだけどどっか独特だな・・・

Posted byブクログ

2018/10/18

短編の中の「クマが山を越えてきた」。44年間連れ添った妻が認知症で施設に。次第に夫を忘れ、他の男性と親密になっていく妻。夫はどうしていくのか。映画ではアカデミー賞など多くの賞を受賞しました。

Posted byブクログ