商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 新潮社/新潮社 |
発売年月日 | 2006/03/30 |
JAN | 9784105900533 |
- 書籍
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イラクサ
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イラクサ
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商品レビュー
3.6
38件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
短編集だけど、どの話も濃く重くて生々しく、読みごたえがある。どの話も恋愛や夫婦の関係(というか、不倫?)が軸になっていて、常に誰かの嫌味や悪意が見え隠れしているのがあんまり好みの感じではなかった。登場する夫婦たちも、横柄な夫とあんまり気の合わない妻という組み合わせ、そしてそこからの不倫ばかりでちょっと飽きたかも。でも小説から放たれる登場人物たちの存在感というか、ちょっとした描写から登場人物の人生や生活そのものが立ち上がってくるような密度はすごかった。
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ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)は個人的にはあまり好きになれない。もちろんジョニがその詩作に関して非凡な才能の持ち主であり、自分の体験を創作にうまく織り交ぜて独特の世界観や恋愛観を構築していることは否定しない。でもジョニのように女性心理の表と裏の両面性を聞き心地良...
ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)は個人的にはあまり好きになれない。もちろんジョニがその詩作に関して非凡な才能の持ち主であり、自分の体験を創作にうまく織り交ぜて独特の世界観や恋愛観を構築していることは否定しない。でもジョニのように女性心理の表と裏の両面性を聞き心地良く示されても、素直に受け止められないのだ。 「カナダ生まれ」という共通項だけでジョニとアリス・マンローを結びつけるのは少し大雑把過ぎでは、という声も出るかもしれない。だが女性視点による女性の生理や心理からの描写が特徴的という点に着目すれば、あながち的外れでもないのではと考える。しかしそれをカナダという土地や人間性に結び付けるには、私はカナダに行ったことがないしカナダ人の知り合いはいないのでそれ以上深くは切り込めないのだが。 個々の作品に触れると、“The bear came over the mountain”が私には一番よかった。これは本編収録のその他の作品が女性を主人公にした女性視点からの構成なのに対して、男性のグラントの視点から物語られているからでもある。 あらすじはこうだ。2人は若くして周りがうらやむような結婚をしたが、そのうちグラントは、妻のフィオーナが悪気なく物忘れをすることがよくあるのに気づく。それが次第にエスカレートし、年月を経て彼女はいよいよ施設に入所することに。 夫が妻に会うためには施設へ面会に訪れなければならない。何度かの訪問でグラントは気づく。フィオーナがある入所者男性(オーブリー)といつもいっしょにいて、せっかくの夫の訪問よりもむしろオーブリーの機嫌をうかがうことに意識が向いているのではと。 ある日、オーブリーの容態が急変して彼が自宅療養することになり、グラントは彼の自宅を訪問することになる。初対面であるオーブリーの妻(マリアン)の所作にグラントは一種の拒絶感めいたものを感じるものの、マリアンが着ていたピンク色のセーターの胸の部分を豊かに上向きに押し上げていたふくらみが、彼女と別れた後でも頭から離れない。 そしてまた時は流れ、グラントはフィオーナに会いに施設を訪れる。フィオーナがその両腕でグラントの身体を抱えたとき、グラントは今までかいだことのない香りを彼女から感じる。一方で記憶が日に日に薄らぐかのようなフィオーナがグラントに対してある言葉を発する。それは彼の身体から発せられる別の女性の香りを察知したからなのか。それとも夢遊病者のように認知症患者に特有の病的な所作に過ぎないのか。憎いことにマンローは明らかにしない。…この結末を創作しえたことこそが、マンローがノーベル文学賞作家であることを証明するのかなと推測する。 このように、マンローの持ち味は、どこにでもいるような女または男が、白昼夢におちいった時のような、あるいは一瞬の稲光(いなびかり)に目をくらまされた時のような、甘い罠についての描写なのだ。 今、罠と書いたが、それに対する罰や転落は描かれないのも、この作家の特徴と言えるのではないか。だから私は一瞬間の出来事としてその後現実に戻っても何も影響が残らない「白昼夢」や「稲光」と例えたのだ。 だが単刀直入に言ってしまうと、描かれるのは「不倫」であり「性的欲求」であり「ゆきずりの行為」だ。その意味ではポルノ小説だ。だから私はこの作家がノーベル文学賞を受賞したというのは簡単には受け入れがたい。私はこの作家のストーリー作りのうまさやオリジナリティは認める。認めるが、ブクログでは「自分の好み」による評価も可能なので、そういう意味で星3つ。 ※蛇足だけれど、私の雑感も書いておきたい。 1 冒頭の短編“Heteship,Friendship,Courtship,Loveship,Marriage”は「恋占い」と訳されているが、本文を読むと「嫌い、友だち、求愛、恋人、結婚」という意味らしい。それってつまり、日本でも昔よく少年少女雑誌とかに載っていた「あきすとぜねこ」のことだよね。 「あきすとぜねこ」は確か(うろ覚えですが)2人の名前の画数を調べて、愛してる(あ)、嫌い(き)、好き(す)、友だち(と)…のどれに当たるかを導き出して、2人が恋仲に進めるか、あるいは逆なのかを占ってそれをネタにワーワー言い合うための遊びだった。今の日本の小中学生はそんな遊びは知らないと思うけれど、カナダでも同じかな?どうかな? 2 ほかの読者は、この翻訳者の日本語をどう感じたのだろうか? 私が1点引っかかったのは、P132の「いちばん最後」という日本語。言うまでもないが最後は「いちばん」と付け足さなくても一番うしろを意味する。つまり「馬から落馬」と同じ誤った言い回し。校正者も何も感じなかったのだろうか。
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※このレビューにはネタバレを含みます
イラクサ ちょっとした子供達の悪意から幸せな結婚に至った最初の短編「恋占い」に始まって、認知症になってしまった妻を思っての行動から不幸な結末を迎える「クマが山を越えてきた」まで、9編の短編が収められています。 批評家好きの心の襞を描いた良質の短編集だと感じました。悪意、善意、運、不運、愛情、憎しみ、あてこすり。こういったものが随所にちりばめられているので、どうしても他人の悪口を聞いてしまったような後味が残ります。 個人的には人の悪口を聞いたり、醜い感情を痛感したりするために本を読んでいるわけではない竹蔵にはちょっと辛すぎる物語でした。 女性ってこんなことばかり考えているのかなーなどと思い、ちょっと怖くなってしまった竹蔵です。 竹蔵
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