プリンシプルのない日本 の商品レビュー
戦後日本国憲法制定にかかわり、吉田茂とも親交の深い白洲次郎による短編エッセイ集(ノンフィクション集)。最初の方と、表題作とその周辺作品のみ読んだが、白洲のいう「プリンシプル」は、「その人の(モノの)機能・本分・役割」ということなのだろうと思う。全体の中で自分の・そのモノの機能・本...
戦後日本国憲法制定にかかわり、吉田茂とも親交の深い白洲次郎による短編エッセイ集(ノンフィクション集)。最初の方と、表題作とその周辺作品のみ読んだが、白洲のいう「プリンシプル」は、「その人の(モノの)機能・本分・役割」ということなのだろうと思う。全体の中で自分の・そのモノの機能・本分・役割をよく考えて、それに基づいて行動せよ、という目的志向の考え方のことたが、その態度は簡単には取れないのかもしれない。 白洲の議論で、日本の政治家は、イデオロギーは勉強して暗記するモノだと思っているから、自分の普段話していることと、政治的イデオロギーが乖離しており、だから実のある論争は期待できず、思想と思想の落とし所を見つけたりできない、という箇所があった。ここで思想の不在を白洲は批判するが、これもプリンシプル(本来の機能・本分・役割)不在の政治論争ということか。前提としては政治論争は空虚な理論ではなく生活や意思に根差すべきだ、そうして初めて意味のある議論ができる、ということなのか?白洲のすごいところはこういった、「どうあるべきか」の機能を考えていることなのではないかと考える。 白洲のプリンシプルの特徴は、国際的に日本がどう立場取るべきかという視点を持っていること、なのだろう。他はわからない。
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新憲法もデモクラシーもかりものの域を脱していない。我々のほんとうの自分のものになっていない。それらが本当に心の底から自分のものになった時において、はじめて「戦後」は終わったと自己満足してもよい。p.203▼新憲法は占領軍に強制されたものであるが、その原則は立派だ。とくに戦争放棄の...
新憲法もデモクラシーもかりものの域を脱していない。我々のほんとうの自分のものになっていない。それらが本当に心の底から自分のものになった時において、はじめて「戦後」は終わったと自己満足してもよい。p.203▼新憲法は占領軍に強制されたものであるが、その原則は立派だ。とくに戦争放棄の条項など圧巻である。押し付けられたものでもいいものは率直に受け入れるべき。p.212。ただし、安保を廃止して国際協定下において無防備になるのはダメ。予算を割いて国家の防備に当たるべき。p.209 *************** ホイットニー准将(民政局長)「あなたの英語は、実にみごとですな」 白洲「閣下の英語も、練習したらもっと上達しますよ」 ※武相荘ぶあいそう、旧白洲邸、東京都町田市。
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白洲次郎は、全てにおいて格好良すぎる(妬み嫉み?)。顔も良くて身長も高い、お金に不自由なく、奥さんも才女、名前だってカッコいいし年取ってからも髪の毛もフサフサしていてロマンスグレーな紳士そのもの。 共通点を何一つ見出す事の出来ない自分としては、「全くもってけしからん!」として、...
白洲次郎は、全てにおいて格好良すぎる(妬み嫉み?)。顔も良くて身長も高い、お金に不自由なく、奥さんも才女、名前だってカッコいいし年取ってからも髪の毛もフサフサしていてロマンスグレーな紳士そのもの。 共通点を何一つ見出す事の出来ない自分としては、「全くもってけしからん!」として、彼について触れているもの全てから遠ざかっていた。 先日、久我山のある方のお宅の蔵書にこの本があった事をきっかけに購入してみたのだが、あたかも現政界・経済界について書いてあるのかと思うほど。逆に言えば、人間のやる事というのは、たかが7・80年では何も変わらないのだろうか…いや、旧約聖書の時代から根本的に何も変わらずに、同じ事を繰り返しているだけか、と情けなくなる… 物事を利害関係抜きに判断すれば、大抵のものは合理的帰結に行き着くものだが、そこに私利私欲が絡んでくる事で色々な不具合・不都合が出てくる。そしてそれをカバーしようとして話がどんどんややこしくなってくる。今回の東京オリンピック開催についても同様。 叶わぬことではあるが、白洲次郎が日本国家のためにと人肌脱いで政治の世界で活躍してくれていたら、もしかしたら日本も今とは違った姿になっていたのかもしれなかったのではと思う。「そんなバカな事を言ってもらっては困る」と返されるだけだろうが……
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白洲次郎の唯一の直言集のことです。 致し方ないことですが、実際の雑誌等で原稿になったものを集めたため編集や改編ができないこともあり、繰り返しが多くまた冗長な感じもあります。 「風の男」ほどはすらすらとは読めませんでした。 【手に取った理由】 「風の男」を読んで興味をもったため
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『プリンシプルのない日本』白洲次郎、新潮文庫 これまで実生活で交流のあった人たちは誰も白洲次郎の凄さを教えてくれませんでした。ベントレーだかブガッティに乗っているケンブリッジ留学中の写真の印象が強くて「どうせ上級国民でしょ」と彼の勉強をすることを避けてきたというのも否定できない...
『プリンシプルのない日本』白洲次郎、新潮文庫 これまで実生活で交流のあった人たちは誰も白洲次郎の凄さを教えてくれませんでした。ベントレーだかブガッティに乗っているケンブリッジ留学中の写真の印象が強くて「どうせ上級国民でしょ」と彼の勉強をすることを避けてきたというのも否定できないところです。 知らないということは恐ろしいことで。 とても愛に溢れた、踊るような鮮烈な文章を書く人でした。 かっこいい日本人です。
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白洲次郎について知りたいと思い「本人が書いた文章」ということで、本書を購入し拝読しました。 サンフランシスコ講和会議に全権団顧問として随行し、吉田茂首相の日本語での演説文を起草した人。 と言う程度の理解しかありませんでした。 この一件も、公式には「もともと外務省が用意していた文章...
白洲次郎について知りたいと思い「本人が書いた文章」ということで、本書を購入し拝読しました。 サンフランシスコ講和会議に全権団顧問として随行し、吉田茂首相の日本語での演説文を起草した人。 と言う程度の理解しかありませんでした。 この一件も、公式には「もともと外務省が用意していた文章」ということになっているそうです。謎が残ります。 白洲次郎についての解説も、二次的な評価が多く、ハッキリしません。 と、言うわけで、本人が書いた文章が良いと思い、本作品を選びました。 アタリでした。 本書は、2001年5月にメディア総合研究所から刊行された同名の単行本の文庫化(2006年)です。 単行本の解説に相当する辻井喬による「プリンシプルのあった人」が文庫にも収録されていますが、 その冒頭で、本書が、1997年11月青柳恵介、序文白洲正子 で刊行された『風の男 白洲次郎』 新潮社が評判であったため「本人が書いた文章が読みたい。」と希望する読者に応えるために企図されたものである、と解説されています。 なるほど、本人がどのように吉田茂に接したのか、わかったような気がします。また、本人の人となり(プリンシプルのあった人となり)も感じられました。 本人の言動として(wikipediaなどでも)部分的に本書から引用されていますが、おそらく、部分的な抜粋では、何が言いたいのか、よくわからないと思います。 でも、本書を一冊読めば、本人の意図するところがわかります。 読んで良かった。と思いました。 強く人に勧めたい一冊ですが、この一冊を読んで、教わったことは「自分のプリンシプルを持て」と言うことです。人に勧めるのではなく、自分のプリンシプルを構築し、納得のいく生き方をしたい、と思いました。 本書構成は下記の通りです。 序文 野人・白洲次郎-今 日出海 本文(主に「文藝春秋」に掲載された1951年から54年までの投稿) カントリー・ジェントルマンの戦後史-白洲次郎直言集 付録的な 日本人という存在-座談会(白洲次郎・河上徹太郎・今 日出海) 単行本の解説的な プリンシプルのあった人-辻井 喬 文庫の解説(本書の概要が簡潔に記されていて、立ち読みするなら、この文庫の解説がオススメです。) 青柳恵介 読んで、思うところが沢山ありましたが、一つに絞って述べます。 近年の首相や県知事などの首長の言動について。 例えば、白洲次郎を呼んで同行させた吉田茂などと違い、自分で判断、決断し、実行を指示するのがトップの役割だと思っているのではなかろうか、と言うことでした。 無知の知ではありませんが、経済とか、医療のこととか、軍事とか、国際関係とか、それぞれ優秀な専門家や実務家が官僚にも民間にも(現代においても)いらっしゃることでしょう。 首相や県知事が、自分で判断して決断して、命令を下すことは不要です。任せて指揮を執らせれば良い、と思いました。 本書では政治家の仕事振りについても触れていて、いろいろ勉強になりました。 最近SNSで池田勇人の失言を最近取り上げている人の発言をちらほら見かけましたが、 (経済の優先順位を説明する際に、優先順位の低い職域の人に自殺者がいてもしかたがないとか、米が足りないのにみんなが米を求めるのは無理がある。麦も食えとか、) 人の揚げ足を取るのは容易であり、結果に責任を持つ政治を行う人の苦労がうかがい知れました。
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社会人になって間もない頃、何かがきっかけで白州次郎に興味を持った。 文章に勢いがあり、ご本人の人柄も大いに出ているのだろう。読んでて気持ち良いが、自分自身叱咜されている気持ちにもなる。 日和見ではなく、一本、竹のようにスッと軸の通った考え、それに基づく行動と振る舞い。 そうい...
社会人になって間もない頃、何かがきっかけで白州次郎に興味を持った。 文章に勢いがあり、ご本人の人柄も大いに出ているのだろう。読んでて気持ち良いが、自分自身叱咜されている気持ちにもなる。 日和見ではなく、一本、竹のようにスッと軸の通った考え、それに基づく行動と振る舞い。 そういう人間が見た戦後日本の政治や国民生活、経済、その他諸々。 タイトル通り、プリンシプルのない日本、未だに続いています。
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いつも怒っているような言葉遣いには驚かされました。 私がこれまで彼にもっていたイメージとは違っていました。 白洲次郎のいう「プリンシプル」とは? 目の前の現状をありのままに認識し、その認識に基づいて自分の考えや言動を組み立てる際の方針や基準のことではないかと、私は今は考えていま...
いつも怒っているような言葉遣いには驚かされました。 私がこれまで彼にもっていたイメージとは違っていました。 白洲次郎のいう「プリンシプル」とは? 目の前の現状をありのままに認識し、その認識に基づいて自分の考えや言動を組み立てる際の方針や基準のことではないかと、私は今は考えています。 この本を読んでいる時、今の状況とよく似た状況が何度かでてきました。当時と今と大きく変わっていると思います。でも、変わらない部分も多くあるということを改めて感じました。 今回この本を読んで印象に残ったことばは、「占領」でした。 白洲次郎とはどんな人物だったのか、まだまだ理解にたどり着けそうにありません。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
GHQから『従順ならざる唯一の日本人』と呼ばれた白洲次郎。日本国憲法に天皇が『国家の象徴』と記されているのも、白洲次郎の何気ない一言による。 誰に対しても歯に衣着せぬ物言いをするのは、当時にしてはかなり珍しかっただろうと思う。決してそれは傲慢なものではなく、飾らず、素直で温かみがあったようだ。 それもこれも、裕福な環境で伸び伸びと育ち、思春期を英国で過ごしたことで紳士的なスピリットが養われたことの影響が大きいように思う。 先見の明があり、己の利益には頓着せず、敗戦下の貧しい国民のために尽力する姿勢は尊敬に値する。また彼が政治家や実業家に向けて放った鋭い指摘は、現代にも通じるものがある。 白洲次郎、その容姿端麗さもあって、実に興味深い人物である。
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時評として書かれている部分については、その前後の事情がよくわからないところもあるが、題名にあるように「プリンシプル」な事柄については、時代を超える汎用性があるといういうことを、昨今の政治状況に照らしても、再確認することができる。
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