経営戦略を問いなおす の商品レビュー
不確かながらも一人歩きしてしまう「戦略」という言葉。 市場取引を創造し、それにより人の幸福度を増進させるものと定義付け、 戦略という考え方を見直す本。 観と経験と度胸が必要であるとし、かなり精神論に寄っている内容は、 これまでの戦略論の本とは一線を画す。 しかし、奇抜な内容では...
不確かながらも一人歩きしてしまう「戦略」という言葉。 市場取引を創造し、それにより人の幸福度を増進させるものと定義付け、 戦略という考え方を見直す本。 観と経験と度胸が必要であるとし、かなり精神論に寄っている内容は、 これまでの戦略論の本とは一線を画す。 しかし、奇抜な内容では決して無く、人の重要性を言及してことからも、 むしろオーソドックスなのかもしれない。 ビジネスパーソンとして何を意識して仕事に当たるべきかも触れられており、 個人的にはこれから社会人になる人にお勧めの内容だと思う。
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「戦略という言葉を使っている皆さん、あなたは戦略という言葉を、腹の底から意味がわかった上で使っていますか」との問いかけから始まる本書は、著者が言うように読みやすい本だった。 同時に、著者が言うように「再読に耐えうる」本でもあった。 筆者は次の3つの視点から、世の中に流布する戦...
「戦略という言葉を使っている皆さん、あなたは戦略という言葉を、腹の底から意味がわかった上で使っていますか」との問いかけから始まる本書は、著者が言うように読みやすい本だった。 同時に、著者が言うように「再読に耐えうる」本でもあった。 筆者は次の3つの視点から、世の中に流布する戦略論の扱われ方に疑義を発する。 ①戦略は汎用的なのだろうか?本当の戦略は、戦略の限定性を認識するところから始まるのではないか? ②本当の戦略は成長戦略へ必ず結び付けられるものなのか?本当の戦略は、売り上げを伸ばすことを目指すのではなく、売り上げを選ぶものではないのか? ③戦略は客観性と普遍性に溢れているのか?本当の戦略は主観に基づく特殊解ではないのか? そして、この問いをもとに筆者は独自の戦略論を展開する。そのキーワードは ①立地 ②構え ③均整 特に③の均整の考え方は非常に参考になった。 次に、「なぜ日本企業では戦略が有効に機能しないのか」について分析する。日本企業に戦略がないわけではない。問題は建てられた戦略が機能しない、つまり戦略の不全にあると筆者は主張する。 ①日本企業は全員経営を美徳とする。押し付けられてやる仕事ではなく、自らやるべき仕事を自分で決めるという点では良いのだが、戦略まで決めろとなると行き過ぎだ。経営者がそこを勘違いしている。 ②日本企業は、本社経営陣とミドルに挟まれた事業部長の職に矛盾が集中する仕組みになっている。ここで責任の分散を防がないと戦略不全に陥る。 ③戦略とは、現実には、受動的なものである。刻一刻と情勢の変わるビジネス界においてその都度対応を図る、その一貫性にこそ戦略がある。 更に、「戦略は人に宿る」と筆者は言う。戦略とは所詮は紙の上のことであり、時代を読み日々の変化に対応し組織を束ねるのは人である。この観点から人選こそが戦略の選択であるとして、次の3点を述べる。 ①GEの事例。日本でも人選が戦略好転を生んだ事例はあるが、共通することは前任者の急逝に伴い、予定外の早い登板となったため長期政権を担えたことである。ならば、GEの事例に習ってその仕組みを構築できないのか。 ②人選の基準は何だろうか。何を身につけるべきなのか。 ③人事は間違った基準で人選を行っている。これが戦略不全の根本でもある。ここで、筆者は具体的なアイデアを提出する。 最後に筆者は3つの世代に向けてメッセージを発する。 ①これから就職する大学生 ②30代前半の中堅社員 ③40代の幹部社員
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某社の新社長が「事業の立地を替える」と言いはじめたが、中国からベトナムへ工場の場所を変えることではない。神戸大学の三品教授によれば、業種や売り先(産業・官公・量販など)、「誰を相手に何を納めるか」が立地の本質。立地によって業界の利益率に大きな差があり、荒廃した”立地”では神様でも...
某社の新社長が「事業の立地を替える」と言いはじめたが、中国からベトナムへ工場の場所を変えることではない。神戸大学の三品教授によれば、業種や売り先(産業・官公・量販など)、「誰を相手に何を納めるか」が立地の本質。立地によって業界の利益率に大きな差があり、荒廃した”立地”では神様でも高い利益率をあげることは無理だという。 難しいのは、事業戦略にサイエンス的な普遍性があるとすれば、誰が考えても理詰めで理論展開すると、同じ結論にたどり着くことになるので、同じ戦略をもつ企業だらけになって、同質競争も招く。 戦略が合理的であればあるほど、誰もが同じことを考えるから、長期的な利益に繋がらない。一方で、戦略が非合理であると、うまくいくはずがない。 実際、人口構成を合理的にみて「新興国」「ボリュームゾーン」という戦略をとる企業ばかりになっている。戦略にサイエンス的な普遍性・再現性があるから、同じ戦略がまたたく間に普及する。新聞メディアや経営コンサルタントが、さらに同じ戦略の普及を加速する。 コンサルタントといえば、SWOT分析やポートフォリオ分析も、そこから導かれる結論に意味はないと言い切る。先に事業の構想やアイデアがあって、それを簡単に説明するためのツールではあるが、分析から事業の構想を導きだそうとするのは危険である。 松下幸之助、本田宗一郎、井深大、現代ではカルロスゴーン、ジャックウェルチ、サムヲルトン、更に稲盛和夫、スティーブジョブズなど、経営はいつの時代も人に依存する。 経営は普遍的なサイエンスではなく、ダビンチやモーツアルトなど、人の才能や生き様と密接なアートに近い。 以上がこの本の前半で、後半は、だから人材の育成が必要だという。日本企業では有能な管理職がそのまま経営者になることが多い。だからバランス重視の調整型経営に終始する。 しかし、管理職にもとめられるものと、経営者にもとめられるものは、異なる。 協調性が重視される管理者は、普遍性・再現性のあるサイエンス的な仕事だ。一方、経営者に求められるのはアートに近い「その人ならでは」の独立心とアイデアだ。
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これと言って目新しさはないかな。と思った。 ただ、経営戦略をアートと同列にしているという発想、経営戦略は経営者によるというのは、なるほど。と思い面白かった。
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経営塾の講師である三品さんの人に対する思いがたくさん読みとれる一冊。 やはり過去の経験が将来のパフォーマンスに大きく影響するという意見。 また、それなりのことをやるにはバックデータ(知識)はないと明らかに差がつくという戒め。 勉強はやっぱり必要だなと反省させられる。 ひとつうれ...
経営塾の講師である三品さんの人に対する思いがたくさん読みとれる一冊。 やはり過去の経験が将来のパフォーマンスに大きく影響するという意見。 また、それなりのことをやるにはバックデータ(知識)はないと明らかに差がつくという戒め。 勉強はやっぱり必要だなと反省させられる。 ひとつうれしかったことにK(観)K(経験)D(度胸)が出てきたのはうれしかった。 ただしカンは”感”ではなく”観”であることに関心。でもどっちも大きく解釈すれば同じ意味かも。
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社会人になってから著者の名前をよく耳にするようになったことと、またここのゼミで一人非常に魅力的な学生にお会いしたことがあって、三品教授とは一体どんな方なのだろうと気になって手にとってみた。 結論から言うと、自分の感性に近いものの書き方をされていて、とても面白かった。20代は修練、...
社会人になってから著者の名前をよく耳にするようになったことと、またここのゼミで一人非常に魅力的な学生にお会いしたことがあって、三品教授とは一体どんな方なのだろうと気になって手にとってみた。 結論から言うと、自分の感性に近いものの書き方をされていて、とても面白かった。20代は修練、30代は手口、40代でアウトプットという考えは、前々から30~40代の時こそが本番と思っている自分の考えとも合致していた。 また科学的手法に対して敬意を払いながらも、その限界などもしっかりと踏まえているあたりのバランス感覚が、社会人にも受け入れられ易いのではないかとも感じた。 戦略は人に、特にその中でも事業観に宿るというのも納得のいくところだ。だからこそ幼少から学生時代の多感な時期に何をすべきなのかということが決定的に重要になってくる。 新書ということで内容も非常にコンパクトになっているが、だからこそ読みやすく、導入としてはとても良いと思う。またの機会に他の著書も読んでみたい。
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経営戦略に普遍性を求めるのは間違い、常に成功を再現できるわけではない。 外部環境を観察し、流れに乗ることが大切。流れに逆らって前に進むためには、より多くの時間と労力を要する。 機を見る。
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KKDのカンと経験と度胸のカンは,「観」. 勘:ヤマカン.感:チョッカン.ではなく, 事業観,歴史観,世界観,人間観の観. 人の受けた教育を投影するモノの見方として「観」.なるほど. 社長の在任期間と営業利益を重ねてPlotすると 面白いんじゃないかと思っていたが, この本の...
KKDのカンと経験と度胸のカンは,「観」. 勘:ヤマカン.感:チョッカン.ではなく, 事業観,歴史観,世界観,人間観の観. 人の受けた教育を投影するモノの見方として「観」.なるほど. 社長の在任期間と営業利益を重ねてPlotすると 面白いんじゃないかと思っていたが, この本のなかで,実際にやっていた. エポックグラグと呼んでいる. 「利益率が大きく動く節目には流れを変えた経営者が存在する」とか.
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戦略の目的 長期利益の最大化 戦略は汎用性がない 成長戦略 売上を伸ばすのでなく、売上を選ぶ 成長は目的でなく結果 戦略には客観性、普遍性がない 主観に基づく特殊解 判断を下すのは結局のところ人 観(K教育を投影するモノの見方)経験(K)度胸(D) 戦略の本質は「為す」ではなく「読む」 立地 事業の選択 構え/組織論 均整、パッケージング/ボトルネック 戦略の所在 経営者のあり方 ミドル 受動的な戦略観 人選 GE 人選基準 幼少期や学齢期に身につける「気質」30代の仕事を通して身につける「手口」 膠着からの脱却- 経済学 自己選択 「暇を持てあますのは学生時代だけの特権」戦略論-ロンド・キャメロン、ラリー・ニール経済史とリチャード・テッドロウ経営史 40年 部長昇進からがダイナミックに動かせる トーナメントに勝ち進んでこそ就職した醍醐味が味わえる
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三品さんの他の著書(経営不全の~)に比べて、圧倒的に読みやすい、わかりやすい。さすが新書。 「戦略はサイエンスではなく、アート」 この表現、個人的には結構面白かった。戦略が人に依存する、という部分の内容に関しては、「いやいや!」ってつっこみたくなるような極論もあった気がするけど、全体を通して、戦略論をこういう風に見ることもできるんだあ、って意味で、すごく新鮮でおもしろかった。
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