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阿Q正伝・狂人日記 他十二篇 の商品レビュー

3.8

70件のお客様レビュー

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2018/12/13

魯迅はJ.ジョイスのダブリナーズを読んでいたのだろうか?ダブリナーズが世に出たのは1915年。一方でこの本に収められた短編のうち最初となる「狂人日記」発表は1918年。 ダブリナーズは短編15編から成り、幼年、思春期、成人、老年といったあらゆる階層のダブリン人を題材とし、人間の...

魯迅はJ.ジョイスのダブリナーズを読んでいたのだろうか?ダブリナーズが世に出たのは1915年。一方でこの本に収められた短編のうち最初となる「狂人日記」発表は1918年。 ダブリナーズは短編15編から成り、幼年、思春期、成人、老年といったあらゆる階層のダブリン人を題材とし、人間の欲望や宗教観など、目に見えない人それぞれの精神的な内面について、ダブリン人の日常から切り取り抽象化することで普遍性を描き出そうと試みている。 ジョイスがダブリン人に執着したのは、その底流にダブリン人共通の「パラリシス=知的麻痺」から発散される「腐敗の特殊な臭い」を見出したからだという。 だがジョイスはダブリン人から湧き上がるような鬱々さだけを描きたかったのではない。彼が「エピファニー」と言うところの「言葉や所作が俗悪であっても、その中から突然姿を見せる精神的顕示」に注目し、「美の最高の特質を見出すのは、まさにこのエピファニーにある」と述べている。 一方で、魯迅のこの短編集の多くは、辛亥革命前後の中国民衆の日常的風景が題材にされ、纏足、辮髪、科挙といった旧弊の悪習をはじめとして、民衆の迷信、我欲、現状への盲従などの否定的要素がこれでもかと書かれている。 序文で魯迅は、中国人民の文化的覚醒の必要性を痛切に感じ、この作品集を出したというが、あまりに文化的に停滞した人民の姿(つまり目をそむけたい人間の陰の部分)が次々と出てくるため、「故郷」を読みたくてこの本を手にした人の多くを戸惑わせ、魯迅不信に陥らせるのではと心配さえしてしまう。 中国の精神上の進歩を目指すという序文での強い意志と、民衆のありのままの、ある意味下卑た面の描写と、どちらが魯迅の“本心”かを図りかねていたが、「屈折に満ちた文学」という文字をある時目にして、腑に落ちた。 きれい事や説教じみた、文学的に“整った”作品なら、作家自身はそれで満足なんだろうけど、そんな“お高い”作品が、清濁相持つすべての人心の進歩をもたらすなんて簡単にいくと思えない。そう考えると魯迅の一連の作品は、まるで一見泥だらけの中国人の精神の中に手を突っ込み、そこに埋もれて見えない光源を取り出そうとしているように思える。泥を探って光を掘り出すには、自らが泥にまみれる覚悟がないとできない。魯迅の泥臭いとも思える作品群は、見た目からも魯迅の心情面からも、屈折という言葉が言い得ている。 しかしいくら魯迅が光を抽出しても、読む側が光を光と感じられるだけの“心の鏡”を磨くこと、つまり、真実に対して謙虚で、受け入れるだけの豊かな態度がなければ、見えてこないだろう。出版後90年近くを経たこの作品から、今の私たちは光を感知するだけの心の鏡を持ちえているのだろうか? まるで阿Qのように他人の尻馬に乗って騒ぎを起こし、そして隣国を罵り否定して満足し、そんな愚かな方法でしか自分の優位性を見出しえない現代人(もちろん中国人の話だけではない!)は今一度、魯迅を精読すべき。そいつらのやっていることの空虚さは、すでに魯迅によって明らかにされている。(2012/10/22) ※以下を参考にしました。 「ダブリン市民」(安藤一郎訳)新潮文庫解説 「新・魯迅のすすめ」(NHK人間講座) 藤井省三著

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2015/08/22

・狂人日記…よくこれほど狂人心理を精緻に洞察し入り込めるなあ。「孔乙己」なんか憎めないし勿体ない哀れな人間。こんな人、いる。序章で書かれている寂寞感をまさに感じる作品。「明日」は号泣した。読み終わった時の息苦しさ、本当に現実に宝児が死んでしまった悲しみで打ちひしがれる母親の姿、そ...

・狂人日記…よくこれほど狂人心理を精緻に洞察し入り込めるなあ。「孔乙己」なんか憎めないし勿体ない哀れな人間。こんな人、いる。序章で書かれている寂寞感をまさに感じる作品。「明日」は号泣した。読み終わった時の息苦しさ、本当に現実に宝児が死んでしまった悲しみで打ちひしがれる母親の姿、そこにいる登場人物すべてが自分の世界にぽっと立ち現れ、人物に憑依してしばらく呆然としたり、哀しくて絶叫してしまった。あまりにリアルな描写で呼吸が苦しくなる作品だった。題名は「明日」だ。たとえどんな残酷な現実があろうとも容赦な「く暗夜だけが明日になり変わろうとして静寂の中を疾走し続けるばかり」なのである。

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2015/06/16

狂人日記が印象的。他の短編も、当時の中国の農村の様子が目に浮かぶ佳作。翻訳もとてもこなれていて読みやすい。 (2015.6)

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2015/04/26

狂人日記は多分家制度ムラ制度を狂人の目を通して批判するために書かれたものなんだろうけれど、狂人の語りが迫真であるが故に、まーそりゃあ迫害されちゃうよね狂ってるんだしってなってしまった。 阿Q正伝はコメディー。ダメ人間はいつの世もダメ人間なので現代日本にも阿Qはいて我々は阿Q的なも...

狂人日記は多分家制度ムラ制度を狂人の目を通して批判するために書かれたものなんだろうけれど、狂人の語りが迫真であるが故に、まーそりゃあ迫害されちゃうよね狂ってるんだしってなってしまった。 阿Q正伝はコメディー。ダメ人間はいつの世もダメ人間なので現代日本にも阿Qはいて我々は阿Q的なものになってはいけないとインテリ崩れが言いそうではある。とはいえ、死の寸前までは不幸を不幸と思わなかった阿Qは割と幸福な部類かもわからんよ。

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2014/05/31

二十世紀初頭の中国民衆が抱えていた前近代性に対する作者の強い危機意識が全編に貫かれている一冊です。 本書の登場人物は多くが今日か明日くらいまでのことしか考えていません。革命が起ころうとも、彼らの関心はせいぜい辮髪を切るべきか切らざるべきかという程度のもの。そんな彼らの生き様が面白...

二十世紀初頭の中国民衆が抱えていた前近代性に対する作者の強い危機意識が全編に貫かれている一冊です。 本書の登場人物は多くが今日か明日くらいまでのことしか考えていません。革命が起ころうとも、彼らの関心はせいぜい辮髪を切るべきか切らざるべきかという程度のもの。そんな彼らの生き様が面白おかしく描かれているのですが、そこにはこんなんじゃダメなんだという強いメッセージが込められています。 歪ながら大衆化の進む今日の中国を見て、魯迅は何を思うでしょうか…

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2014/03/11

中国文学史のレポート用に。 ほとんど使わなかったけど。 狂人日記、故郷は高校時代に読んでいた。故郷は教科書に載ってたかな。 タイトルメモ忘れましたが、白光かな?ようは科挙浪人が半ば狂気により死ぬ話とか。孔乙子だったかな…元漢学徒て落ちぶれた人の有様とか。 昔狂人日記が儒教批判...

中国文学史のレポート用に。 ほとんど使わなかったけど。 狂人日記、故郷は高校時代に読んでいた。故郷は教科書に載ってたかな。 タイトルメモ忘れましたが、白光かな?ようは科挙浪人が半ば狂気により死ぬ話とか。孔乙子だったかな…元漢学徒て落ちぶれた人の有様とか。 昔狂人日記が儒教批判て言われてもピンとこなかったのが、同時期の作品と並べて読んでようやく腑に落ちたのが良かった。

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2019/01/03

教科書で読んだときも寂しい風と、潮の厳しい香りが立ち昇るような話だったけど、いま読んでも虚しさは変わらず。 可笑しみを湛えた阿Q正伝はなおのこと憐れさが増した。阿Qという男が馬鹿で愛嬌がある分なおのこと……。 どの物語にも下の場所で生きる人たちのどうしようもない運命がざくっと切り...

教科書で読んだときも寂しい風と、潮の厳しい香りが立ち昇るような話だったけど、いま読んでも虚しさは変わらず。 可笑しみを湛えた阿Q正伝はなおのこと憐れさが増した。阿Qという男が馬鹿で愛嬌がある分なおのこと……。 どの物語にも下の場所で生きる人たちのどうしようもない運命がざくっと切り取って並べられていて、読んだあとなんだか虚しい。これで奮起できる人間は偉い。

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2014/01/04

魯迅の代表作。辛亥革命期における何の変哲もない一民衆の姿が描かれている。抑揚のない筋書きの中で愚劣な民衆のありようが淡々と表現されている。

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2013/10/31

ほとんどの話が短編だった。 ほんと超短い。10ページくらいで終わるのとか。 短編だけど、ちゃんと内容はある。 岩波はやはり何か読みづらいと感じてしまう。 昔の中国の話で、背景がよくわからないので楽しめないというのもあった。 何か終始あまり読む気ないままサラッと読んでたから、レビュ...

ほとんどの話が短編だった。 ほんと超短い。10ページくらいで終わるのとか。 短編だけど、ちゃんと内容はある。 岩波はやはり何か読みづらいと感じてしまう。 昔の中国の話で、背景がよくわからないので楽しめないというのもあった。 何か終始あまり読む気ないままサラッと読んでたから、レビューも超適当。

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2013/06/26

魯迅の短編集です。魯迅は短編集がほとんどで、唯一の中編小説がこの「阿Q正伝」だそうです。14作品おさめられています。短編はほんとに短くて、10数ページのものがほとんどでした。 内容は全体的に当時の時代背景や登場人物などある程度知らないと難しいです。何度も読み返しつつ、なんとか読...

魯迅の短編集です。魯迅は短編集がほとんどで、唯一の中編小説がこの「阿Q正伝」だそうです。14作品おさめられています。短編はほんとに短くて、10数ページのものがほとんどでした。 内容は全体的に当時の時代背景や登場人物などある程度知らないと難しいです。何度も読み返しつつ、なんとか読んだという感じ。訳注ももちろんありますが、いちいち全部訳注を見るわけではないので; 少しこころに残った作品を紹介します。 「狂人日記」 題名の通り狂人からの視点を描いたもの。周囲が人食いとし、自分も食われる恐怖を感じ、さらに自らも人食いをおかしてきたと自覚し絶望する。ふと、映画の「The sixth sense」を思い浮かべました。 「阿Q正伝」 中国の最下層の人物「阿Q」の話。当時の中国社会を描いている。 「故郷」 魯迅が北京に引っ越すときのことが題材となっているようです。高校の国語の教科書にあったのを思い出しました。整った作品でこの中では読みやすいもののひとつでした。 「あひるの喜劇」 それまでとは雰囲気が変わって、読みやすかったです。 ロシアの方が日本から追放され北京に住んでいた時に魯迅とともに住んでいたらしく、その時のことが題材になっています。6ページくらいの非常に短いもの。どこかせつない。 最初に自序が書いてありますが、小説を読んだ後にも自序を読むといいかなぁと思います。

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