月光ゲーム Yの悲劇'88 の商品レビュー
学生アリスシリーズ一作目。好きなシリーズなのだが、これだけは読み返すことがほとんどなく、二度目の読了。登場人物が多すぎてなかなか頭に入らなかった。
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※このレビューにはネタバレを含みます
矢吹山にキャンプに向かった英都大学推理小説研究会の4人は、同じくキャンプに向かっていた雄林大学と神南学院短期大学の学生らと知り合い、共に過ごすことになった。 キャンプ3日目の朝、神南学院短期大学の山崎小百合が先に帰るという手紙を残して姿を消す。小百合を探そうとした時、突如矢吹山が噴火し、下山ルートが塞がれてしまった。そして、4日目の朝、雄林大学法学部生の戸田文雄が刃物で刺され、遺体で発見される。 すなわち、クローズドサークルでの殺人が起きてしまったのである。そこには、「Y」というダイニングメッセージのようなものが残されていた。 さらに4日目の深夜に噴火が起き、雄林大学の一色尚三が失踪した(噴火の前から失踪したのか、噴火後に失踪したのかは不明)。 続いて5日目の夜、雄林大学の北野勉の遺体が発見される。そこには、「y」のダイニングメッセージがあった。 翌朝、犯人から「もう誰も殺されはしない」とのメッセージがあり、食糧がなくなってきたため、一行は翌日一か八か下山することを決意する。 下山中、再び噴火が起き、吊り橋が落ちて、ルートが閉ざされた。立往生を余儀なくされた彼らに対して、推理小説研究会部長の江神は推理を始めた。その推理によると、犯人は雄林大学の年野武であり、戸田、一色、北野を殺害したのは、山崎小百合との恋愛をバカにされたからであった。 事件で不可解な点として挙げられた事象全てに対して、理由があり、それらを明確かつ論理的に江神が推理していく形となっている。 さらに、本書では、ミステリーの基本を整理している箇所がいくつかあるため、勉強になる(例えば以下の通り)。 クローズド・サークルの特徴は、容疑者の限定、犯人と一緒に閉じ込められたためのサスペンス、科学捜査の不介入(128頁) 被害者が伝達しようとする情報が捜査側に伝わらない三つのケースは、第一に、メッセージが完成されぬまま被害者が絶命し、中途半端な形になった場合。第二に、被害者と捜査側の間に知識のギャップがあり、受け手に理解不能な場合。第三に、犯人がまだその場にいるうちにメッセージを残さねばならなかったので、犯人には意図を悟られず、捜査側にだけ解読できるようにと凝ったメッセージを遺した場合」(140頁) 殺人が連続して起き、一つ目の事件に残されたダイニングメッセージが捜査側を悩ましている場合、二つ目以降の事件で同様のダイニングメッセージが残された場合は、犯人の偽装工作の場合が多いこと。なぜなら、捜査側が悩んでいるメッセージを遺しても、解読されない可能性が高いから。(316頁)
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日本ミステリー界の重鎮有栖川有栖先生のデビュー作にして、学生アリスシリーズ第一作品です。 論理的な謎解きと言えば有栖川有栖先生をリンクするのは私のだけでしょうか⁈ あっと驚く要素は無いものの、論理的に推理しながら謎を解き明かすところがまた堪らないです。 さて、この作品の最高の見ど...
日本ミステリー界の重鎮有栖川有栖先生のデビュー作にして、学生アリスシリーズ第一作品です。 論理的な謎解きと言えば有栖川有栖先生をリンクするのは私のだけでしょうか⁈ あっと驚く要素は無いものの、論理的に推理しながら謎を解き明かすところがまた堪らないです。 さて、この作品の最高の見どころはやはり、読者への挑戦状じゃないですか?王道なクローズドサークルもので、読者に対して完全にフェアです。 鋭い方ならトリックを解けるのではないでしょうか(私はダメダメでした)。 また、主人公が探偵役ではなくワトソン役というところもこの作品の魅力の一つだと思います。 登場人物がやや多くて混乱しがちであるため、分けて読むよりは一気に読む方をお勧めします! 探偵役の江神先輩のロジック的な推理はかなりの見どころです! 推理に自信を持っている方、まだ未読の方は是非ご覧になって下さい!
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ダイイングメッセージの写真を見て、これってそう見えるかなー?とは思った。わかればああそうなのか、とは思ったが。 でも、火山の噴火で閉じ込められしまうという状況下での殺人事件はハラハラもあり面白かった。
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完っ全にやられた. ネタバレを避けなければおいけないが,雪山も嵐の中も,火山も同じことが言えるのか...。 学生みんながタフ.
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衝撃。 ロジックの美しさといったらない。 この作品は、所謂「クローズドサークルもの」だ。 推理小説を読むのは好きだけど、ジャンルについてはあまり詳しくはない。しかしこの作品を読むと、ミステリ用語の知識が増えていく。なぜなら主人公ら4人は推理小説研究会という大学サークルのメンバーだ...
衝撃。 ロジックの美しさといったらない。 この作品は、所謂「クローズドサークルもの」だ。 推理小説を読むのは好きだけど、ジャンルについてはあまり詳しくはない。しかしこの作品を読むと、ミステリ用語の知識が増えていく。なぜなら主人公ら4人は推理小説研究会という大学サークルのメンバーだからだ。メジャーなものや初めて聞いたタイトルまで幅広く、彼らはかなりマニアックなミステリーマニアと伺える。 主人公の有栖川有栖は大学1年生。たまたま推理小説研究会の部長江神と出会い、サークルに入会することになる。サークルには口の立つ望月、ハードボイルド好きの織田がおり、日々ミステリ談義に花を咲かせている。 彼らが夏合宿(何の?)と称して矢吹山へ向かう道中、同じキャンプ地へ向かう大学生たちと親しくなる。総勢17人でキャンプファイヤーを囲み楽しくすごしていたが、そのうちの一人、女子大学生の山崎小百合が行方不明になってしまう。さらに矢吹山が噴火したことで救助を待つことになるが、そのなかで殺人事件が発生し…。 犯人が分かったときにびっくりし、犯人を探偵役の江神部長が特定した過程にもびっくりした。推理物として、論理的な犯人当てを楽しむためには警察が介入できない必然性が要求される。それがこの噴火なのだけど、その噴火でパニックになった状況も利用して事件が起こるのが面白い。指紋や、正確な死亡推定時刻などが分からないなか、犯行の状況を論理的(ロジカル)に推理していく江神部長かっこいい…。 推理物なのでもちろん人が死ぬ。でもなんと言うか、優しいんです。おそらく作者の有栖川さんが優しいからだと思う。読んだ後、「犯人分かったー!まじかー!」ではなくて切なさが残る。でもちゃんとパズルがカチッと嵌るカタルシスもあって、正直癖になりますね。そして学生アリス2作目へ日を置かず飛び込むことに成ります。 作家アリスシリーズとはまた違う面白さ。作家アリスシリーズを読んでいると学生アリスシリーズが読みたくなり、学生アリスシリーズを読んでいると作家アリスシリーズが読みたくなる…。どうしよう、エンドレスです。
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有栖川有栖のデビュー作である。 「学生アリス」としてシリーズ化される最初の物語でもある。 噴火によって孤立したキャンプ場を舞台としたクローズ・ド・サークルもの。 本格推理小説を意識しすぎたためか幾分固さを感じるけれど、ミステリーとしてのロジック的完成度は高いと思う。 登場人物が...
有栖川有栖のデビュー作である。 「学生アリス」としてシリーズ化される最初の物語でもある。 噴火によって孤立したキャンプ場を舞台としたクローズ・ド・サークルもの。 本格推理小説を意識しすぎたためか幾分固さを感じるけれど、ミステリーとしてのロジック的完成度は高いと思う。 登場人物が多く個々に描ききれていない部分もあるけれど、いかにも推理小説研究会らしい会話などは読んでいて楽しかった。 すべてが明らかになったときに思ったのは、「そんな馬鹿な!!」ということ。 反面、案外こんな人っているかもしれない・・・という気もした。 人とは理解しがたい存在だ。 だからこそより相手を知り、互いに理解しあいたいと願うのではないだろうか。 短絡的な恋をする人は、短絡的思考をする人かもしれない。 悲観的にしか未来を見ることができない人は、悲劇的な未来が待ち受けているだろう。 危急のときには、その人間が本来持っている資質のようなものがあらわれると言う。 青春ミステリーといった感じが強く、初々しいアリスが可愛らしい。 読みやすさという点からいっても、推理小説初心者でも楽しめる物語だと思う。
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久しぶりに本格ミステリを読んだ。不幸にも隔離されてしまった場所で17人から生存者の数が減っていく。よくあるミステリと言えば、を体現したかのような小説。ありきたりと言えばそれまでだけれど、それでもワクワクしてしまうのはミステリ好きの性というものだろうか。 人が死んでいく緊張感、その...
久しぶりに本格ミステリを読んだ。不幸にも隔離されてしまった場所で17人から生存者の数が減っていく。よくあるミステリと言えば、を体現したかのような小説。ありきたりと言えばそれまでだけれど、それでもワクワクしてしまうのはミステリ好きの性というものだろうか。 人が死んでいく緊張感、その中でも求められ、実現される虚構の安息がちゃんと描かれていて、読んでいて取り込まれる。 誰がどのようにどうやって、を考えながら読み進めていたが、皆目見当がつかない。不可解なことを起こした動機が綺麗に回収されて、そこでやっと自分の視野の狭さを実感した。 一発逆転のどんでん返し物ではない。単純で、複雑で、見抜くには論理的思考と感情的想像、多くの目線を必要とする本格ミステリ本。 苦言を呈するならば、殺人に至る動機が少し弱い気がしないでもない。まぁ、ミステリはすぐ人を殺すからね。こんなものでも不満は大きくないけれど。 シリーズ物だそうなので、続編も読んでいきたい。
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登場人物が多い…キャラクターをたてるという流行は最近のものなのだなぁと改めて思う。キャラクターをたてるより、容疑者としての行動を明確に記述する。 久しぶりの本格推理ということで、間に挟まる挑戦状でしっかりじっくり考えてみたが…いけないなぁ。しかし、傍点のつくたった一文で否定されて...
登場人物が多い…キャラクターをたてるという流行は最近のものなのだなぁと改めて思う。キャラクターをたてるより、容疑者としての行動を明確に記述する。 久しぶりの本格推理ということで、間に挟まる挑戦状でしっかりじっくり考えてみたが…いけないなぁ。しかし、傍点のつくたった一文で否定されてしまうとぐぬぬ。。ってなるね!いやでもちゃんと否定してくれたことをありがたく思うべきか。 ミステリの部分ではない地の文に魅力があると思う。江上シリーズはまた挑戦しても良いかなぁと思いました!
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