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流れよわが涙、と警官は言った の商品レビュー

3.5

75件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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  3. 3つ

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2012/06/23

 人気絶頂のタレントのタヴァナーが、地位も名誉も社会の保護もないどん底に落とされる。それでもこだわりや執着を捨て、生きる為に全力をつくすタヴァナーが格好よくて好きでした。  でもそれは「離別が辛いから、人を愛さない」という彼の弱さの一部を表しているのかと思い至ると、悲しくもあって...

 人気絶頂のタレントのタヴァナーが、地位も名誉も社会の保護もないどん底に落とされる。それでもこだわりや執着を捨て、生きる為に全力をつくすタヴァナーが格好よくて好きでした。  でもそれは「離別が辛いから、人を愛さない」という彼の弱さの一部を表しているのかと思い至ると、悲しくもあってやりきれないです。  ちなみにジャケットとタイトルだけならは、私の1番好きな本です。黒背景に一色でデザインされたアイコンと文字・枠組みとか、イカす。

Posted byブクログ

2012/05/29

タイトルに惹かれて買った。 ディックの小説はSF独自の舞台道具小道具を使って人間の本質を突き詰めて行くのが面白い。彼の作品はあまり読んで無いけれど、どれも鬱屈とした世界観だよね。ただそんな押しつぶされそうな世界において、決して諦めようとしない人間の強さ、意思を感じ取れる。

Posted byブクログ

2013/05/11

三千万の視聴者を持つ人気タレントのタヴァナーは、ある朝見知らぬ安ホテルで目覚める。そしてこの希代の名タレントのことを誰も知らないことが判明する。彼のマネージャーや愛人でさえも・・・。さらに出生記録といったあるとあらゆる彼に関する情報が国家のデータバンクから消失していたのだ!&qu...

三千万の視聴者を持つ人気タレントのタヴァナーは、ある朝見知らぬ安ホテルで目覚める。そしてこの希代の名タレントのことを誰も知らないことが判明する。彼のマネージャーや愛人でさえも・・・。さらに出生記録といったあるとあらゆる彼に関する情報が国家のデータバンクから消失していたのだ!"存在しない男"となった彼は、警察に追われながらこの不条理に対する突破口を探そうと必死になる。 話を読めばわかりますが、タイトルが深くて素晴らしいですね! 人間は涙を流すことができる。そんな当たり前に思えることを改めて考えさせられます。 悲しみこそが最も高尚な感情なのかもしれません。 是非読んでみて!!

Posted byブクログ

2012/04/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本当は☆×4.5。 以下、ネタバレを含むかもしれない。 この本の真の主人公は、スイックスのジェイソン・タヴァナーではなく、涙を流すことのできる、様々なものや人を愛することのできる、人間の警察本部長フェリックス・バックマンなのだ。 人生の敵であった警察の人物を人間として存在せしめたフィリップ・キンドレッド・ディックという人物にさらに興味と親近感めいたものが湧いた。 彼は現実世界に傷つけられ、苦しみ、悲しみ、怒り、時には逃避したりもしたけれど、小説を書き続けることによって、本当に生きた人だったんだな。

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2012/04/17

歌手でタレントのタヴァナーは、ある女性から殺されかけて、病院に搬送される。だが、目覚めた時、彼は一切のID、身分証を失っていた。かつての知人は彼を知らず、彼の存在を証明する全ては喪失している。 掴みはバッチリ。展開も面白い。落ちが残念。

Posted byブクログ

2012/03/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

解説込みで一冊と見積もったほうがよいかもしれません。 何故なら、これが作者の自伝的小説であること、愛の形というテーマが根底にあるということを頭に入れて読むとまた違った視点から見れると考えるからです。 すべての人から忘れられた孤独、愛する妹を失った孤独、それにたびたび登場する薬物。それらは作者の胸のうちの吐露といい得るでしょう。 それらを加味することで、この小説を本当に味わうことができると私は思います。

Posted byブクログ

2012/03/01

描写されたものを単純に追っていると、 わけがわからなくなる。 脳が作り出す世界が現実だとは限らない。 座標系の異なる世界間のトリップが、 気持ち悪いが心地よい。 人間のみが涙を流す生き物なのだ。 1975 年 ジョン・W・キャンベル記念賞受賞作品。

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2012/03/11

なんという人間らしいSFだろう? この物語の主人公は稿の8割方を彼が占めるところのタヴァナーではない、語られる世界を生み出した主体たるアリスでもない、愛する者を失い崩れ落ちるバックマンだ──そして同時に三者いずれもが主人公であり得る。 中ほどでルース・レイが語る悲しみと愛につい...

なんという人間らしいSFだろう? この物語の主人公は稿の8割方を彼が占めるところのタヴァナーではない、語られる世界を生み出した主体たるアリスでもない、愛する者を失い崩れ落ちるバックマンだ──そして同時に三者いずれもが主人公であり得る。 中ほどでルース・レイが語る悲しみと愛についての言葉は、コンテクストから切り離された状態でさえ主題と深く関わっていることを悟らせる力がある。「悲しみは自分自身を解き放つことができるの。(略)愛していなければ悲しみを感じることはできないわ(p198)」「悲しみはあんたと失ったものをもう一度結びつけるの。同化するのよ。離れ去ろうとする愛するものや人とともに行くのね(p200)」工藤直子の詩──好きになるとは心をちぎってあげるのか、だからこんなに痛いのか──を思い出す。心を動かす軋み、つらくてもやめることの叶わない人の営み。 アリスの見た夢にタヴァナー他が巻き込まれたという構図はまさに、「鏡の国のアリス」でディーとダムに「あんたはこの赤のキングの見てる夢さ」と宣告されるアリスを思い起こさせて暗示的だ。物語の世界設定と各所に鏤められたガジェットがSFであるだけで、その実は普遍的な文学を描いていることが感じられる。この逆転したアナロジー(夢を見たのはアリス)はもう少し突き詰めても面白いかもしれない。

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2012/02/15

 1974年作。早書きディックにしては珍しく長期スパンで描かれた本書の成立については、巻末の大森望の文章が詳しい。  ディックの作品は人間が人間として成立することの危うさと同時に、人間が人間であることを強く証明する瞬間も織り込まれている。本作は特に後者にあたる「人間の悲しみ」およ...

 1974年作。早書きディックにしては珍しく長期スパンで描かれた本書の成立については、巻末の大森望の文章が詳しい。  ディックの作品は人間が人間として成立することの危うさと同時に、人間が人間であることを強く証明する瞬間も織り込まれている。本作は特に後者にあたる「人間の悲しみ」および「愛情」の表現を力強くぶち込んで、設定のみ煩雑なハードSFとはかなり違う、人間同士のドラマとして展開している。普通エスタブリッシュメント側のイヤな人間として扱われるべきバックマン本部長が、まさに自分の愛の喪失のために涙を流し、人肌を求める場面は感動的だ。  特殊な遺伝子操作をされた主人公ジェイソンやその愛人ヘザー、バックマンの妹アリスなど、いかにも血の通った人物造形も楽しい。  あと、ハヤカワ版のディックを読むときの注意は、裏表紙のダイジェストは絶対に読まないこと。物語の本質からミスリードしたり、あからさまなネタバレを含んでいることすらある(ユービック)。これさえなければ、土井宏明の装丁がむちゃカッコイイのに…。

Posted byブクログ

2012/02/04

有名なタレント、タヴァナー、自分のことを誰も知らない世界で目が覚める。国家のシステム上にも自分の存在がない。彼はDNA操作で生まれた存在のため、悲しみや愛を理解できない。ある女性の死をきっかけに存在を取り戻す。薬のせいで空間、時間が曲がっていたようだ。

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