流れよわが涙、と警官は言った の商品レビュー
失うこと、遺す/遺されること。主題は明るいものについてでなく、どちらかといえば暗いものについてだと思う。けれど、読み終わっても涙は流れず瞳にとどまっている。 自分の中でうまく消化できていないので、時間をおいてからまた読み返せたらなと。 日本語に訳された題、「流れよ我が涙、と...
失うこと、遺す/遺されること。主題は明るいものについてでなく、どちらかといえば暗いものについてだと思う。けれど、読み終わっても涙は流れず瞳にとどまっている。 自分の中でうまく消化できていないので、時間をおいてからまた読み返せたらなと。 日本語に訳された題、「流れよ我が涙、と警官は言った」。英語の原題以上に美しいなと思っている。
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著名なTVタレントのジェイスン・タヴァナーがある日目覚めた、見知らぬ安ホテルの一室。その世界では、誰も彼のことを知らず、彼に関する一切の記録が存在していなかった。自己を証明する一切を失い、かつての愛人からも不審者扱いされ、行き場を失ったタヴァナーは警察に追われる身となる・・・ ...
著名なTVタレントのジェイスン・タヴァナーがある日目覚めた、見知らぬ安ホテルの一室。その世界では、誰も彼のことを知らず、彼に関する一切の記録が存在していなかった。自己を証明する一切を失い、かつての愛人からも不審者扱いされ、行き場を失ったタヴァナーは警察に追われる身となる・・・ タヴァナーが「自分に関する記録/記憶が一切ない世界」に放り込まれた理由が後半で明かされ、SF的な理屈が付けられています。が、それはこの作品の主要テーマではありません。 ディックがこの作品で表現したかったこと、それはSFの文体を借りた「愛の喪失」の物語である、と鴨は読み取りました。全てを失ったタヴァナーの逃避行の過程で、様々な男女の愛の喪失が語られます。誰からも顧みられない存在となったタヴァナー自身がそうですし、既に亡い夫の帰りを妄想し続けるキャシィ、誰かと接触し続けていないと生きていられないアリス、そんなアリスを嫌悪しつつも愛さずにはいられないバックマン本部長・・・どの愛も決して満たされない、メランコリア溢れる物語です。 そんなSFの枠を超える普遍性を備えた作品ではあるのですが、鴨の読後感は正直イマイチ・・・たぶん、登場人物に共感できるところがなかったからだと思います。 特に、ストーリー展開のキモとなるバックマンの愛の形が、物語の前半と後半とでは印象が全く異なり、一貫性がないのが辛い。筋立てよりも、登場人物の心の遍歴を描きたかった作品なのだと思います。登場人物に感情移入できないと、結構厳しいですね。 ハマる人にはたまらない作品だと思います。
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薬物が多く出てくるからかもしれないけど、全体的に混沌としている。 なんだか最後の方は、無理矢理終わらせたみたいな感じもした。
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フィリップ K ディック 「 流れよわが涙と警官は言った 」 近未来SFの面白さもあるが、キーワードは 涙の意味であり、愛のサイクルの物語(愛する→失う→悲しむ→悲しみが去る→また愛する)だと思う。特に ジェイスンとルースレイの愛についての会話は素晴らしい 近未来SFとしての面...
フィリップ K ディック 「 流れよわが涙と警官は言った 」 近未来SFの面白さもあるが、キーワードは 涙の意味であり、愛のサイクルの物語(愛する→失う→悲しむ→悲しみが去る→また愛する)だと思う。特に ジェイスンとルースレイの愛についての会話は素晴らしい 近未来SFとしての面白さ *遺伝子操作→優生学→スイックス *KR3服用者の知覚対象全てが 現実世界から非現実世界へ移行 愛のサイクルの物語 *愛のサイクル=愛する→失う→悲しむ→悲しみが去る→また愛する *ジェイスンが愛するもの(失ったもの)=自分、人々の記憶 *バックマンが愛するもの(失ったもの)=詩的な美しい世界、ルール→失った悲しみの象徴は 涙→涙により自分を取り戻せる ダウランド「涙のパヴァーヌ」にバックマンの詩的世界を投影しており、ダウランドを聴くことにより 失った悲しみを忘れることができる ジェイスンとルースレイの会話 「愛しているときは もう自分自身のために生きているんじゃない、別の人間のために生きている」 「愛は本能に打ち克つ。本能は私たちを生存競争に押し込む〜他人を犠牲にして自分が生き残る」 「愛があれば あなたが消え去っても 幸福感をもって 愛する者を見守ることができる」 「悲しみは あなたと 失ったものを もう一度結びつける」 「悲しみは自分自身を解き放つことができる〜愛してなければ悲しみを感じることはできない」 「悲しみは消え去って この世界でもうもう一度うまく折り合っていく」
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ハヤカワSFが読みたくて購入。電気羊も読んでる途中なんだけど、どうもしっくりこない。アメリカ的な会話のやり取りがダメなのか、込み入った話の構成がダメなのか。。とにかく海外SFはちょっと距離置こう
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最後バッドエンドじゃなくて本当に良かった。読むのを迷ってる皆様、バッドエンドじゃないから安心して読んで下さいと言いたい。あ、でも若い学生さんとには少し難しいかも。 SF冒険奇譚かと思ってたんですが、あとがきで衝撃。そういう視点もありですね。なるほど、そこからあのタイトルかー。登...
最後バッドエンドじゃなくて本当に良かった。読むのを迷ってる皆様、バッドエンドじゃないから安心して読んで下さいと言いたい。あ、でも若い学生さんとには少し難しいかも。 SF冒険奇譚かと思ってたんですが、あとがきで衝撃。そういう視点もありですね。なるほど、そこからあのタイトルかー。登場人物も面白く個性的で、最後は意外にもしっとり。私は好きです。
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デッィクに慣れてきたのかそれともそういう本なのか、いつになく話の筋がすっきり見える本だった。そのぶんグラグラ感は少なかったけど夢中で読んだ。やっぱりディック面白い!自分がある日存在しない世界に飛んでしまった男の物語。冒頭プルーストのくだりでにやり/人間何が起こるかわからないし理屈...
デッィクに慣れてきたのかそれともそういう本なのか、いつになく話の筋がすっきり見える本だった。そのぶんグラグラ感は少なかったけど夢中で読んだ。やっぱりディック面白い!自分がある日存在しない世界に飛んでしまった男の物語。冒頭プルーストのくだりでにやり/人間何が起こるかわからないし理屈通りには動かない/<日常>にいる限り人は共通ルールに則っているが<日常の外>の存在はルール通りにはならない/悲しみは私と失ったものをつなげてくれるもの/恐怖は憎悪や嫉妬より始末が悪い/たまたま目に留まっただけで完全な白紙に歯戻せない理不尽/Mr.バックマンが死んだのは2017年
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SFをほとんど読まない自分にとっては長編はちょっと辛かった。面白さがよくわからない。SFを読むセンスが無いのかな。
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ディックの不条理物 違和感を感じるがそれがディック 表紙 7点上原 徹 展開 6点1974年著作 文章 6点 内容 700点 合計 719点
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
TVスターがトラブルで手術室に運び込まれ,目が覚めると世界中の誰も自分を覚えていないし,データバンクに彼の存在を示す記録が何も残っていない,,,という,ディックお得意の「現実と非現実の違いって何?」というお話し. と聞くと極めてSFチックなのだが,ただし,実は設定はそれほど重要ではなく,読んでみると中身はボネガットか,ジョンアーヴィングか,という感じ. ディックの作品の例に漏れず,グダグダになっているところもあるし,TVスターは主人公ですらなくなってしまうし,そもそもはじめに述べたトラブルの理屈もサッパリわからないのだが,近しい人を失う喪失の痛みを書いた話です. おそらく25年ぶりぐらいの再読だが,当時はこの良さが理解できなかったことを,今は恥ずかしく思う.
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