流れよわが涙、と警官は言った の商品レビュー
かなり文学的というか作者の感性が多種多様な登場人物によって語られる。個人的にはSF要素のオチも嫌いじゃない。名作なんだなあ。
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飽きることなく(一気に、とまではいかないにしても)読み進められる。かなり読みづらいんだけど、不思議なことに。 二部終盤辺りから凄く面白くなって、そこから加速度的に面白くなるのに、膨らみ切らずに終わってしまったような印象を受ける。いつも思うけど、ディックと自分の関心は別のところ...
飽きることなく(一気に、とまではいかないにしても)読み進められる。かなり読みづらいんだけど、不思議なことに。 二部終盤辺りから凄く面白くなって、そこから加速度的に面白くなるのに、膨らみ切らずに終わってしまったような印象を受ける。いつも思うけど、ディックと自分の関心は別のところにあるんだろうな。ストーリよりもむしろ、葛藤とか、アイデンティティクライシスみたいなところに、凄く神経を割いている気がする。 あとは、人物の考えや、話の方向性がころころ変わったり、事実と虚偽が同列に並べてあって分かりづらい。いつものことと言えば、そうかも知れないけど。 また今回は更に、単語の説明も少ないと感じた。作中のアイテムや単語に関してキャラクターがべらべら説明しないのは、それが彼らにとっては当然のものなんだし、理には適っているんだけど。こういう部分も含めて、ディックの見えていた世界が映し出された未来観かな、と思った。大学や強制収容所という単語にさして説明がないのは、(後者はともかくとして)そういう単語が出てきた時点で、発表されたリアルタイムだったらば、「今のこの事態を発展させたものね」という感じでするっと理解できるからなのかな、と。また、世相という点のみならず、自伝的な内容であるらしいという観点からも、ディックの視点を通じて描き出された小説だったといえるかもしれない。
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「いったい何が起こっているんだ?」 主人公を襲う、夢なのか現実なのかわからないサスペンス劇、かと思いきや……? 「これからどうなる?」というドキドキやハラハラで終盤まで引っ張り、昨今のエンタメに慣れた人にも面白く読める。そして明かされた謎……も良くできているが、この作品の本題はそ...
「いったい何が起こっているんだ?」 主人公を襲う、夢なのか現実なのかわからないサスペンス劇、かと思いきや……? 「これからどうなる?」というドキドキやハラハラで終盤まで引っ張り、昨今のエンタメに慣れた人にも面白く読める。そして明かされた謎……も良くできているが、この作品の本題はそこではないのだろう。 真実が明かされた後に描かれる人間の葛藤・ドラマにこそ、その真価がある。愛と涙。心が洗われるようなラストシーン。哀しみは美しくすらあり、最後にはどこか暖かい気持ちが残る。そして迫ってくるタイトルが、あまりにも秀逸だ。
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人気タレント、ジェイスン・タヴァナーがかって目をかけた女性から危害を加えられ、緊急手術を受ける。手術後、タヴァナーは安ホテルで目を覚ます。するとこれまで知り合いだった人々が誰もタヴァナーを覚えておらず、あろうことか出生記録など国が管理する個人記録すらはじめからなかったことになって...
人気タレント、ジェイスン・タヴァナーがかって目をかけた女性から危害を加えられ、緊急手術を受ける。手術後、タヴァナーは安ホテルで目を覚ます。するとこれまで知り合いだった人々が誰もタヴァナーを覚えておらず、あろうことか出生記録など国が管理する個人記録すらはじめからなかったことになっていた。個人を示すものがなければ警察により収容所に入れられてしまう。タヴァナーの放浪が始まっていく…という物語。 ただ作品の大きなテーマは「悲しみ」。様々な悲しみが描かれており、描かれるシーンはそれぞれ印象的。とはいえタヴァナーの記録の抹消とどう関係しているのかあまり読み込めていない…
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主人公のタヴァナーの言動行動がどこか人間味に欠けるなぁと思っていたら、そういうことだったのか…!ある種のアンドロイドなんだ。 一見悪役であったバックマンがタヴァナーと違って他人にシンパシーを感じ悲しみに涙することのできる人間だったんだな。前半と後半ではストーリーの軸というか誰を主人公と捉えて読むかがガラリと変わる本。
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流れよわが涙、と警官は言った(ハヤカワ文庫SF) 著作者:フィリップ・K・ディック 物語の前半と後半とでは印象が全く異なり、一貫性がないのが辛い。筋立てよりも、登場人物の心の遍歴を描きたかった作品なのだと思います。 タイムライン https://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
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自家用飛行機が飛び交う世界。3000万人の視聴者をもつ人気エンターテイナーーの男はある日突然安宿で目覚める。この世界では絶対に必要な身分証も無く、あるのは直前に持ち歩いていた大量の現金だけ。 出会うひとも、電話をかけた相手も誰も自分の事を知らない。 世界観はSFではあるけれど、中...
自家用飛行機が飛び交う世界。3000万人の視聴者をもつ人気エンターテイナーーの男はある日突然安宿で目覚める。この世界では絶対に必要な身分証も無く、あるのは直前に持ち歩いていた大量の現金だけ。 出会うひとも、電話をかけた相手も誰も自分の事を知らない。 世界観はSFではあるけれど、中身は二人の男の愛と喪失の物語。面白かった。
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自分に関する記録が政府にはなく、自分に関する記憶も相手にはないという世界に放り込まれるジェイスン・タヴァナー。この、いかにもディックらしい登場人物を中心にして物語の前半は進行していきます。 しかし、この人物はタイトルにもなっている「警官」ではありません。後半になっていくにつれて...
自分に関する記録が政府にはなく、自分に関する記憶も相手にはないという世界に放り込まれるジェイスン・タヴァナー。この、いかにもディックらしい登場人物を中心にして物語の前半は進行していきます。 しかし、この人物はタイトルにもなっている「警官」ではありません。後半になっていくにつれて、この警官、その妹、そしてタヴァナーの三角関係にも似た人間関係が描き出されていきます。 ほかのレヴューでも指摘されていますが、涙を図らずも流すことになる警官の心情に共感できるか、あるいはそれに近いものを感じることができるかが、本書に対する評価を分けることになりそうです。個人的には、だめでした。ディックが自分を投影せざるを得なかった作品と認めているそうですが、そこはぐっと堪えてもっと距離感を保ってほしかったです。
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非常にエモーショナルな作品でした。「哀れっぽい哀しみ」というか、無力感に裏打ちされた希求というか。中盤、ある女性がうさぎの話に続けて語る愛の話は、特にストレートで、今の自分に共鳴しました。(エピローグで彼女のその後を知ってから読むとまた。)あとがきを読んだ限り、当時の作者の精神状...
非常にエモーショナルな作品でした。「哀れっぽい哀しみ」というか、無力感に裏打ちされた希求というか。中盤、ある女性がうさぎの話に続けて語る愛の話は、特にストレートで、今の自分に共鳴しました。(エピローグで彼女のその後を知ってから読むとまた。)あとがきを読んだ限り、当時の作者の精神状態をおおいに反映しているそう。次々に女性が現れるのも、結婚離婚を繰り返した作者の人生を反映しているのでしょう。SF的仕掛けに着目するよりも、登場人物達の語りに聴き入りたい本。
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