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靖国問題 の商品レビュー

3.6

73件のお客様レビュー

  1. 5つ

    13

  2. 4つ

    21

  3. 3つ

    23

  4. 2つ

    6

  5. 1つ

    2

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2013/08/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

靖国「問題」を宗教、外交、政治、文化などの観点からそれがなぜ問題なのか?を論じているのですが、15年戦争以前の台湾征伐、朝鮮の暴徒制圧の際に犠牲になった人が合祀されていることが問題だとする指摘は初めて認識し、なるほどと思います。そういう背景もありながら、中国韓国がA級戦犯のみを合祀から外すことを要求しているのは、著者が指摘しているように、両国がこれだけで収めようとする政治的メッセージだとも思います。靖国の存在そのものが、両国、台湾などにとって「日本帝国主義の象徴」だということを改めて痛感しました。そして新たな追悼施設の建設により解決するという案についてもそれが「平和のために死んだ」という顕彰施設である限り第2の靖国になるだけであるという著者の指摘にも成る程と思いました。全くこの問題は出口が全く見えないのですね。

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2013/07/26

靖国神社がどういう性格の神社なのか、理解の一助にもなる。 興味深かったのが、古代ローマから現在に至るまで、「近代」国家には靖国神社同様の役割を持つ施設(思想、と言っても良いと思う)が存在した、ということ。 巻末、著者の提言はシンプルで高尚。だが、実現は困難。 じゃあ我々は何が...

靖国神社がどういう性格の神社なのか、理解の一助にもなる。 興味深かったのが、古代ローマから現在に至るまで、「近代」国家には靖国神社同様の役割を持つ施設(思想、と言っても良いと思う)が存在した、ということ。 巻末、著者の提言はシンプルで高尚。だが、実現は困難。 じゃあ我々は何ができるの?と考える機会を与えてくれる内容だと思う。 内容には関係ないが、思考停止を許さない切り込みには読み手に余談を許さない。見事だと思った。

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2013/03/17

哲学者である著者の立場、思想などが主観的にはいっている部分もあるかもしれないが、「靖国問題はどういった問題なのか」というベーシックな部分を理解するために読んだ私にとっては良書だったのではないかと思う。 過去の文献の解説も詳しく、大事な箇所は繰り返し表記したり太字になっていたりと論...

哲学者である著者の立場、思想などが主観的にはいっている部分もあるかもしれないが、「靖国問題はどういった問題なのか」というベーシックな部分を理解するために読んだ私にとっては良書だったのではないかと思う。 過去の文献の解説も詳しく、大事な箇所は繰り返し表記したり太字になっていたりと論点がわかりやすかった。 宗教、政治、感情論、いち宗教団体としての「靖国神社」の立場… 様々な側面を持つ問題で、想像以上に複雑であることがわかった。 靖国神社はまだ訪れたことがないので、ぜひ行ってみようと思う。

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2012/11/15

靖国神社をめぐる問題を感情・歴史認識・宗教・文化・国立追悼施設という五つの観点から、批判的に論じた本。 「靖国神社は国民の戦争への士気を高めるのに利用された、お骨を引き取りたいという遺族を退けた、A級戦犯に靖国神社の問題を押し付けようとした、小泉元首相の参拝は憲法違反、上智大学の...

靖国神社をめぐる問題を感情・歴史認識・宗教・文化・国立追悼施設という五つの観点から、批判的に論じた本。 「靖国神社は国民の戦争への士気を高めるのに利用された、お骨を引き取りたいという遺族を退けた、A級戦犯に靖国神社の問題を押し付けようとした、小泉元首相の参拝は憲法違反、上智大学の靖国神社参拝拒否事件、キリスト教と仏教も利用された」などといった事例を挙げ、最終的に「靖国問題を解決するのには武力を捨て(憲法九条を守り)、日本の政治が変わることが必要」という結論に至る。 他の(Amazonを含む)レビューにあるように、この本で靖国問題の全てを知ることは出来ないし、なにより肯定的な意見が無いので、変に感化されてしまうかもしれない。 この本はあくまで「日本はこんな問題を抱えていたのか」という知るきっかけとして、そして「靖国参拝を是とする人はどのような考えなのか」と次につなげて考えること、言い換えれば真逆の意見と照らし合わせるのに使うべきだと思いました。

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2012/09/13

2012.09.13 読了 靖国問題は、要するに、日本の政治力の問題だということ。よく分かります。

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2012/08/23

近いうちにバランスをとって、反対側の本も一応読みたいなとは思ってる。 今回この本読んで、確認しておきたいなってことはいくつかあった。 「東京裁判、A級戦犯」 「政教分離、違憲」 「宗教について(神道、仏教、キリスト教)」 知らないこといっぱいあるなぁ。 何を勉強して生きてきた...

近いうちにバランスをとって、反対側の本も一応読みたいなとは思ってる。 今回この本読んで、確認しておきたいなってことはいくつかあった。 「東京裁判、A級戦犯」 「政教分離、違憲」 「宗教について(神道、仏教、キリスト教)」 知らないこといっぱいあるなぁ。 何を勉強して生きてきたのかな?って思うな。

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2012/06/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本書を読了して「靖国」のあまねく日本国民の心性への呪縛の深さがいやというほど思い知らされる。 著者高橋哲哉の専門は哲学、20世紀西欧哲学を研究し、政治・社会・歴史の諸問題を論究。最近、「NPO前夜」を共同代表として立上げ、季刊「前夜」(第1期1号~3号既刊)において主筆的立場で健筆を奮っているようだ。 本書「靖国問題」をひもとけば、靖国神社とは如何なる存在か、その歴史的背景、日本国内を布置とした場合と東アジア全体を布置とした場合との差異など、「靖国」を具体的な歴史の場に置き直しつつ、その機能と役割を徹底的に明らかにした上で、著者流の哲学的論理で解決の地平を示そうとしている。 朝日書評で野口武彦氏は「ナショナリズムと国際感覚のはざまで考えあぐみ、正直なところ、戦死者を祀るのは自然だが、自分が祀られる事態は迎えたくないと感じているごく平均的な日本人が、各自と靖国とのスタンスをさぐるのに便利な一冊である」と。また毎日の書評子は「靖国問題がいかに感情的な問題かを述べたあと、著者は極めて論理的に、靖国がどのような装置であるかを明らかにしてくれる。難しい複雑な問題だ、と思われている靖国問題が、こんなにすっきりわかるのは不思議なくらいだ」と書くように、骨太な労作の書である。 本書を案内するには、冒頭の「はじめに」において本書構成の各章について著者が示してくれているのが役立つだろう。 第一章の「感情の問題」では、靖国神社が「感情の錬金術」によって戦死の悲哀を幸福に転化していく装置にほかならないこと、戦死者の「追悼」ではなく「顕彰」こそがその本質的役割であること、などを論じる。 第二章の「歴史認識の問題」では、「A級戦犯」分祀論はたとえそれが実現したとしても、中国や韓国との間の一種の政治的決着にしかならないこと、靖国神社に対すね歴史認識は戦争責任を超えて植民地主義の問題として捉えられるべきこと、などを論じる。 第三章の「宗教の問題」では、憲法上の政教分離問題の展開を踏まえた上で、靖国信仰と国家神道の確立に「神社非宗教」のカラクリがどのような役割を果たしたのかを検証し、靖国神社の非宗教化は不可能であること、特殊法人化は「神社非宗教」の復活にもつながる危険な道であること、などを論じる。 第四章の「文化の問題」では、江藤淳の文化論的靖国論を批判的に検証するとともに、文化論的靖国論一般の問題点を明らかにする。 第五章の「国立追悼施設の問題」では、靖国神社の代替施設として議論されている「無宗教の新国立追悼施設」のさまざまなタイプを検討する。不戦の誓いと戦争責任を明示する新追悼施設案はどのような問題を抱えているのか、千鳥ヶ淵戦没者墓苑や平和の礎をどう評価するか、などを論じる。

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2012/05/19

 まず、本書を読むまで勘違いをしていたことが一つある。いや、正確には勘違いというより、忘れてしまっていたという感じなのだけど。それは、靖国神社は決して「悲劇のヒロイン」なんかではないということだ。つまり、日本くんと中国くんが靖国神社ちゃんをめぐって小競り合いをしている、というだけ...

 まず、本書を読むまで勘違いをしていたことが一つある。いや、正確には勘違いというより、忘れてしまっていたという感じなのだけど。それは、靖国神社は決して「悲劇のヒロイン」なんかではないということだ。つまり、日本くんと中国くんが靖国神社ちゃんをめぐって小競り合いをしている、というだけではなく、靖国神社ちゃん自身もかなりの食わせ者だということだ。靖国神社ちゃんだって、自分の思想を持っている。さしずめ、靖国神社ちゃんは『機動戦士Vガンダム』のヒロイン「カテジナ」のようなポジションである。靖国神社ちゃんが日本くんと中国くんを無駄に小競り合いさせているという面もある。このことが本書を読むまで、すっぽり頭から抜けていた。  さて、そのことを教えてくれた本書には感謝をしているし、それ以外にも「なるほど」ポイントが本書に多くあることは認める。だが、本書はときどき何を言っているかわからなくなる。全体を通して、現行の「靖国」に批判的であるというスタンスにブレはないにしても、さらに小さな視点での立場がわかりづらいことがあった。また、論に若干の強引さもあり、手放しに本書の内容を信じるというわけにはいかないように感じる。  とはいえ、本書のように明らかな感じで「靖国」に対する立場を表明し、意見を述べる本は貴重なものだ。本書「あとがき」にもあるように、この本をきっかけとして、多くの人が「靖国」について自分の意見を持てるようになればいいと、素直にそう思う。 【目次】 はじめに 第一章 感情の問題―追悼と顕彰のあいだ 第二章 歴史認識の問題―戦争責任論の向うへ 第三章 宗教の問題―神社非宗教の陥穽 第四章 文化の問題―死者と生者のポリティクス 第五章 国立追悼施設の問題―問われるべきは何か おわりに あとがき

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2012/10/14

内容(「BOOK」データベースより) 二十一世紀の今も、なお「問題」であり続ける「靖国」。「A級戦犯合祀」「政教分離」「首相参拝」などの諸点については、いまも多くの意見が対立し、その議論は、多くの激しい「思い」を引き起こす。だが、その「思い」に共感するだけでは、あるいは「政治的決...

内容(「BOOK」データベースより) 二十一世紀の今も、なお「問題」であり続ける「靖国」。「A級戦犯合祀」「政教分離」「首相参拝」などの諸点については、いまも多くの意見が対立し、その議論は、多くの激しい「思い」を引き起こす。だが、その「思い」に共感するだけでは、あるいは「政治的決着」を図るだけでは、なんの解決にもならないだろう。本書では、靖国を具体的な歴史の場に置き直しながら、それが「国家」の装置としてどのような機能と役割を担ってきたのかを明らかにし、犀利な哲学的論理で解決の地平を示す。決定的論考。 ---------------------------------------- 靖国という大きな問題を、「感情」「歴史認識」「宗教」「文化」「国立追悼施設」のそれぞれの面から論じたもの。膨大な資料から多数の引用があり、靖国問題を考える上での資料的価値もある。 筆者は靖国問題にたいしておおむね中立的であるが、やや偏った(?)記述をしている部分もある。

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2018/08/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 第1章。靖国神社は死者の〈追悼〉を〈顕彰〉に、〈愛する人を失った悲しみ〉を〈愛する人を天皇に捧げた喜び〉にすり替える装置である。  第2章。「A級戦犯」分祀論は、近代日本の戦争の歴史をアジア・太平洋戦争の戦争責任問題のみに矮小化する。  第3章。政教分離に立つ限り靖国神社の国家護持はありえず、靖国神社の「非宗教化」は国家神道(=神道非宗教説)の再来にほかならない。  第4章。自国の戦没者のみを選別的に祀るのは日本の文化伝統でも何でもなく(中世・近世においては「敵」も追悼していた)、国家の政治的意思にすぎない。  以上は論として筋が通っており、概ね首肯しうるが、第5章が決定的におかしい。非戦・平和の意思と戦争責任を明示した公的追悼施設といえども、施設の性格を決定するのはその時の「政治」であり、「第二の靖国」となる潜在的危険があるとするならば、いかに日本が「非軍事化」して戦争被害者への戦争責任を果たそうとも、「国家」単位での戦没者追悼は必ず有害であり、追悼行為は完全な個人行為に限定すべしという結論とならねばならない。しかし、著者は「政治的現実」の改変後の国家の追悼を否定していない。別の個所で、国家による戦没者顕彰が日本特殊の現象でも近代国家特有の現象でもないと明示している以上、いかに完全な平和主義国家であっても、それが国家である限り「揺り戻し」はありうると想定されなければならない。著者のそれまでの議論に忠実に従えば、原理的レベルで国家(やそれに類した集団・共同体)の追悼を否定するしかない。  なお、「すでに法制度上は国家の機関ではなく一宗教法人にすぎない靖国神社を政治的に廃止することはできない。自由社会においては信教の自由は最重要の権利のひとつとして保障されなければならない」と述べているが、憲法の改変により天皇制が廃止されるならば、靖国神社は自壊するほかないので、「政治的に廃止する」ことは可能であることも付け加えておこう。

Posted byブクログ