神々の沈黙 の商品レビュー
大塚信一2024「岩波書店の時代から 近代思想の終着点」の中で良書として何度も参照されていたので読んでみた。 以前「無意識の発見」(エレンベルガー著)という本を読んだことがある、それは「無意識」を発見するまでの苦難の道だった。 この「神々の沈黙」は逆に「意識の発見」である。BC...
大塚信一2024「岩波書店の時代から 近代思想の終着点」の中で良書として何度も参照されていたので読んでみた。 以前「無意識の発見」(エレンベルガー著)という本を読んだことがある、それは「無意識」を発見するまでの苦難の道だった。 この「神々の沈黙」は逆に「意識の発見」である。BC2000年以前は、自分という概念がなく神に祈ることもなかったと言うのだ。 端的に言えば、BC2000年以前は、右脳が支配する無意識だけだった。その仮説の証拠をとくとくと著者は解説している。 意識がないBC2000年以前の人間は幸福だったと言いたいような展開で、意識みたいなよけいなものがあるから統合失調症などがおこるのだ、といった感じ。 この本で、人類史の勉強はできたが、その「BC2000年に意識は芽生えた」というトレビアを知って「今の人間の幸福」になんの役に立つのだろうか? 否定ばかりではなんなので、こう考えたらどうだろう。 意識の中に、合理的に「神」を位置づけるのだ。つまり、左脳の中の仮想右脳モデル「神」だ。 これなら、とても実践的で、将来性がある。しかし、考えてみれば、今の宗教はすべて、もうすでにそうなっている。 だいたい、祈ること自体、強欲で「右脳が発信する神」らしくない。 ま~、それほどBC2000年以前の人間は異質な精神世界の持ち主だったということだろう。 正岡正剛の千夜千冊に解説あり https://1000ya.isis.ne.jp/1290.html
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"意識"の起源に迫る大胆な仮説。大著の概括を端的に表す題名が俊逸。大脳左半球にあるウェルニッケ野に相当する右半球の箇所が左半球のブローカ野に電気刺激を送り、現実と違わぬ幻視や幻聴を引き起こすとする”二分心”。時とともに右半球のウェルニッケ野”であったもの”は役...
"意識"の起源に迫る大胆な仮説。大著の概括を端的に表す題名が俊逸。大脳左半球にあるウェルニッケ野に相当する右半球の箇所が左半球のブローカ野に電気刺激を送り、現実と違わぬ幻視や幻聴を引き起こすとする”二分心”。時とともに右半球のウェルニッケ野”であったもの”は役目を終え、天の声を喪失した混沌から言語化による”心の空間化”と”物語化”が任を承継し、古代の神々は沈黙する。 有名な脳科学実験で、言語と意識、行動と意識との逆接関係の結果が幾つかあるが、”直喩”から”比喩”と”被比喩”との”投影連想”による言語化による意識めいたものの発生が興味深い。オノマトペから事象事物の識別が発生し、言語が共通認識として確立し思惟が外部化しクロニクルという概念が誕生する。 一から十まで”二分心”に結びつけようとする傾向は多々あるが、脳科学・史学・言語学・考古学といった幅広い知識や文献を用いて検証・論証しており、非常に読み応えがあって面白い。
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メモ→https://x.com/nobushiromasaki/status/1822254920138961307
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勝手な偏見で思っていたより科学的な内容が多かったが歴史を紐解きながら科学的にも分析することで説得力があるし面白かった。 古代の人々の精神構造が異なるのは考えもしてなかったが、本書の説明で昔の巫女や神官だけが聞こえる声だったり占いだったりが地域や文化問わず経た経験となるとたしかに神...
勝手な偏見で思っていたより科学的な内容が多かったが歴史を紐解きながら科学的にも分析することで説得力があるし面白かった。 古代の人々の精神構造が異なるのは考えもしてなかったが、本書の説明で昔の巫女や神官だけが聞こえる声だったり占いだったりが地域や文化問わず経た経験となるとたしかに神の声を聞いて判断していたんだろうと思う。 そう考えると小説やマンガで扱う古代人の描写はあくまでも現代人の視点でのもので正確ではないんだろうな。 キリスト教の三位一体も感覚的に腑に落ちなかったのが、本書の説明で納得したしようやく理解できた。
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古代の人々は我々のような自我を持たず、日常的に聞こえる内なる神の声に従って生きてたのではないかという驚愕の仮説。ちょうど統合失調症患者のように。 しかし都市に住み文字を読み書きするようになるにつれ、その声が聞こえなくなり人々の間に不安が走る。 当初はデルフォイ神殿の巫女や卑弥呼...
古代の人々は我々のような自我を持たず、日常的に聞こえる内なる神の声に従って生きてたのではないかという驚愕の仮説。ちょうど統合失調症患者のように。 しかし都市に住み文字を読み書きするようになるにつれ、その声が聞こえなくなり人々の間に不安が走る。 当初はデルフォイ神殿の巫女や卑弥呼のような代理人に伺いを立てていたが、それでも収まらなくなると神との契約を文書に記した強固な宗教が生まれた。 知恵の実を食べ自我に目覚めてしまった人たちは神の楽園を追放され、孤独と不安と共に生きることを余儀なくされ現代に至る。 その仮説に則ると、なぜ古代ではあんなにも巨大な王墓の建設に人々が従ったのか、そして古いものほど大量の生贄が共に埋葬されているのかが何となく理解できる。 スペインに征服されたインディオたちには生贄の風習があったが、彼らは古代的な精神構造であったがゆえに、易々と蹂躙されたのではとも。
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余計な修飾語や、感嘆詞満載で私には読書負担が大きすぎました。本人の意見と事実が強固に練り合わさっており選り分け困難。読者を騙しにきているような疑念さえ抱いてしまいました。読後感も悪い。 大学教授なので、伝統的なアカデミックライティングに則り書いてくださればよかったのに…。内容に...
余計な修飾語や、感嘆詞満載で私には読書負担が大きすぎました。本人の意見と事実が強固に練り合わさっており選り分け困難。読者を騙しにきているような疑念さえ抱いてしまいました。読後感も悪い。 大学教授なので、伝統的なアカデミックライティングに則り書いてくださればよかったのに…。内容には関心があったので残念です。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
英語の原題はどうにも「神々の沈黙」には見えなかったので、「神々の沈黙」とは何か?に意識を向けながらの読みだった。 古代には神々の声を聞く脳と、その声に従う人間の脳とにわかれていたが、言葉や文明の発展に伴って意識が立ち上がり神々の声は聞こえなくなり、自己が精製されて判断するようになった、という論なのかなと今は理解しています。 中断、古代の文明や神話の話がガッツリ出てきて「二分心」(バイキャメラルマインド)仮説の裏付けを濃厚に述べてくれているのですが内容を理解するところまで追い付かない。神話を理解していればさらに読みも深くなるのだろう。 書籍が日本で発行されたのは2005年ですがこの時には著者は既になくなっていて、 アメリカでは1976年に書かれたもの。この本をきっかけに脳や意識についての研究が進んだ部分もあると思うので最近はどういう論が出ているのだろうかと、関連本が読みたくなる。
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文献からのロマン研究(神経科学ではない プリンストン大学心理学教授。97年没。 伝承文学や碑文などの人類史の痕跡から「意識」の誕生に迫る。進化の過程における意識の問題。「私たちはただの物質からどうやってこうした内的世界を引き出しうるのか」 ●「イーリアス」研究 意識の起源...
文献からのロマン研究(神経科学ではない プリンストン大学心理学教授。97年没。 伝承文学や碑文などの人類史の痕跡から「意識」の誕生に迫る。進化の過程における意識の問題。「私たちはただの物質からどうやってこうした内的世界を引き出しうるのか」 ●「イーリアス」研究 意識の起源は文字の成立の前か後か。 まずは最古の文字記録を読み解き、そこに主観的意識の有無を探る。 しかし、文字の登場した紀元前3000年頃の象形文字は解釈に揺れがある。 著者は「確実な翻訳が行える言葉で書かれた人類史上最初の著作」として『イーリアス』を採用 ●「イーリアス」の登場人物を動かす「神々」 『イーリアス』の登場人物は座り込んで考えることをしない。主観的な意識も心も魂も意識も持たない彼らを行動に導いたものは何か。物語中で何かをしろと示すのは「神」。神が意識に変わる位置を占めている。 主題。「人々をロボットのように操り、その口を通して叙事詩を歌い上げた”神々”とは何者なのか」答え「彼らの正体は、人々が聞いた声」である「今日では幻覚と呼ばれるもの」大抵は正体を隠さず声だけ、身近な人の姿を取って現れることもある。『イーリアス』の描くトロイア戦争は幻覚に導かれて戦った ●意識 かれら幻覚に導かれた戦士は「現代人とは全く違っていた」「何をしているのか自覚のない、気高い自動人形」だった。彼らは「自分が世界をどう認識しているのか認識しておらず、内観するよう内面の〈心の空間〉も持っていなかった」 現代人の主観的で意識ある心に対しミケーネ人のこの心を「二分心」 「意思も立案も決定もまったく意識なくまとめられ、それから、使い慣れた言葉で、あるときは親しい友人、権力者、あるいは「神」を表す視覚的オーラとともに」伝えられ、各人は自分で思考できない(意識がない)のでこれら「幻の声」に従った。
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確かに独創的で面白いbicameral mindの仮説だが、50年近く経った現代では無理がある内容が多い。言語や文化は段階的に発達しただろうから、遺跡の像や古文書に変化があるのは当然だが、それを紀元前1000年より前の人は統合失調症状態だったとなると自然淘汰をクリアできないだろう...
確かに独創的で面白いbicameral mindの仮説だが、50年近く経った現代では無理がある内容が多い。言語や文化は段階的に発達しただろうから、遺跡の像や古文書に変化があるのは当然だが、それを紀元前1000年より前の人は統合失調症状態だったとなると自然淘汰をクリアできないだろう。最後まで未開の伝統社会を生きてきたアマゾンやニューギニアの部族を観察した報告とも一致しない内容が多い。著者は、同性愛は想像が引き起こした二分心崩壊後の人間特有のものだと言うが、どうやって動物でも起きている同性愛を説明するのか。考古学的な根拠から二分心を持ち出す結論は無理がある、語彙に変化があるとか神の姿が消えたことが科学的な理由になり得ない。統合失調症だと疲れ知らずでピラミッド建設にも向いているなんてことまで言ってるが、体力の温存なくして巨大事業を成り立たせる生産性は確保できないだろう。現生人類が認知革命を起こしたのは間違いなくホモ・サピエンスになり得たタイミングである方が考古学的な証拠に合致するであろう。言葉による比喩、定義があって初めて意識が生まれるのであれば、人工知能でも簡単に意識を作れてしまうし、抽象的な言葉を知らない人は皆んな意識が無いってことになってしまい、明らかに欠陥がある考え方。意識がなくても車の運転ができるなど、行動経済学でいうシステム1、2(ファスト&スロー)を証拠のように論じているが、脳は常に考えるほど勤勉ではないだけで意識や認識がなければ無意識の行動も成り立たない。自然を観察し、動物の痕跡を分析する認知能力があったからこそホモ・サピエンスは世界中に分散して生態系を破壊し、道具を開発し、農業・家畜に適した動植物を見出してきたのであって、二分心が唱えるような歴史像は真実とはほど遠い妄想だ。読んでいてシュメール文明宇宙人説のゼカリア・シッチンと同じ論調を感じたが、こういうトンデモ話を押しつけてくる本は突っ込み所もたくさんあって読み物として楽しめたりもする
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【オンライン読書会開催!】 読書会コミュニティ「猫町倶楽部」の課題作品です ■(第一回)2021年11月12日(金)20:30~22:15 https://nekomachi-club.com/events/bd9ebd96bb60 ■(第二回)2021年11月28日(日)17...
【オンライン読書会開催!】 読書会コミュニティ「猫町倶楽部」の課題作品です ■(第一回)2021年11月12日(金)20:30~22:15 https://nekomachi-club.com/events/bd9ebd96bb60 ■(第二回)2021年11月28日(日)17:30〜19:15 https://nekomachi-club.com/events/288191feea20
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