架空通貨 の商品レビュー
「小学生」なのに「高校生探偵」、「織田信長」なのに「現代人」、「普通の子」なのに「大魔法使いの息子」、「仮面ライダー」なのに「魔法使い」。さまざまな作品を見渡すと、決して両立することのない二つの要素を解決した主人公の存在を見ることができる。そのキャラクター造形は、いわば弁証法的...
「小学生」なのに「高校生探偵」、「織田信長」なのに「現代人」、「普通の子」なのに「大魔法使いの息子」、「仮面ライダー」なのに「魔法使い」。さまざまな作品を見渡すと、決して両立することのない二つの要素を解決した主人公の存在を見ることができる。そのキャラクター造形は、いわば弁証法的なキャラクター造形といえる。「小学生」というテーゼが与えられ、「高校生探偵」というアンチテーゼが対立し、「江戸川コナン」というジンテーゼへと昇華する。そうして生まれた主人公はまさに「最強」の主人公であり、予測もつかないストーリーを展開するのに役立てられるわけである。 本作『架空通貨』の主人公「辛島武史」もジンテーゼ的主人公なのだ。「高校教師」というテーゼが与えられ、「元アナリスト」というアンチテーゼが対立する。しかし、「江戸川コナン」が「高校生探偵」の推理力を武器としながら「あれれ~?」と「小学生」の無邪気さを武器にするのに比べ、「辛島武史」はあまり「高校教師」としての力を発揮していない。「辛島武史」は主に「元アナリスト」の力を武器に活躍することとなる。個人的にはそれが残念ではあったが、ストーリーの目的が「自分の生徒を救う」ことにあるため、決して「高校教師」という設定が生かされていないというわけではない。 是非、本作を読んだなら「高校教師」と「元アナリスト」を弁証法的に解決した主人公を堪能してほしい。 【目次】 架空通貨 第一章 霧 第二章 黒い町 第三章 軌道道 第四章 破綻 第五章 期限の利益 第六章 オルゴール 解説 杉江松恋
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池井戸潤デビュー2作目。 不渡りを出した企業が社債の期限前返還を求めてやってきたのは、社債発行企業が架空通貨「田神札」で支配する町。次々と弱い者へ架空通貨を押しつけ町と人々が崩壊しつゆく。 架空通貨やキャラ設定が現実から乖離しているため、同化しにくい面があり、まだ2作目で肩に力が...
池井戸潤デビュー2作目。 不渡りを出した企業が社債の期限前返還を求めてやってきたのは、社債発行企業が架空通貨「田神札」で支配する町。次々と弱い者へ架空通貨を押しつけ町と人々が崩壊しつゆく。 架空通貨やキャラ設定が現実から乖離しているため、同化しにくい面があり、まだ2作目で肩に力が入っている感がある。後年の池井戸節はまだでてこない。作家のデビューから年代を追っていくのも面白い。
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ある大企業の城下町と化した地方土地に、当該企業が発行する振興券が流通。振興券によってキャッシュフローを圧迫された下請企業は、さらに取引先にこれを押しつける。その結果、崩壊していく町の経済・・・といった難しい話を、父の会社の倒産を免れようとする女子高生と教師の活躍を通じてわかりやす...
ある大企業の城下町と化した地方土地に、当該企業が発行する振興券が流通。振興券によってキャッシュフローを圧迫された下請企業は、さらに取引先にこれを押しつける。その結果、崩壊していく町の経済・・・といった難しい話を、父の会社の倒産を免れようとする女子高生と教師の活躍を通じてわかりやすく展開。 あまり感動はないけど、なるほど感はあった。
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池井戸潤氏の小説は初めて読んだが、「面白く学べる」若手ビジネスマンにとっては貴重な小説家の一人だと感じた。ネタバレするので詳しく書けないが、この一冊で日常では知り得ないような業界・団体の慣習や特徴がわかる、会計上のテクニック、所謂マネーロンダリングについてなど色々と知れて良い。オ...
池井戸潤氏の小説は初めて読んだが、「面白く学べる」若手ビジネスマンにとっては貴重な小説家の一人だと感じた。ネタバレするので詳しく書けないが、この一冊で日常では知り得ないような業界・団体の慣習や特徴がわかる、会計上のテクニック、所謂マネーロンダリングについてなど色々と知れて良い。オススメの作家である。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
地元を支える企業が発行した西郷札が地域を蝕む。 経営が傾いた時、社長は資金を移動し、会社を畳もうとうするが、西郷札は白紙になり、地域は大迷惑。それでも自己利益を選択した社長は計画倒産の路へ進むが、その巧妙なからくりは、信頼するコンサルタントの私情による計画により破たんする。
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企業城下町に暮らす身としては身につまされる話。 そう、池井戸潤はミステリー作家だった。企業ドラマとほかのレビューに書いたけど、基本はミステリーだ。だから、不可能に見える課題に「非力な」主人公が挑み、少しずつもつれた糸を解きほぐしながら解決していく過程が、理系的に面白い。そこにある...
企業城下町に暮らす身としては身につまされる話。 そう、池井戸潤はミステリー作家だった。企業ドラマとほかのレビューに書いたけど、基本はミステリーだ。だから、不可能に見える課題に「非力な」主人公が挑み、少しずつもつれた糸を解きほぐしながら解決していく過程が、理系的に面白い。そこにあるのはバイオレンスではなく、あくまでも論理的な演繹であり、パズルを埋めていくような快感がある。それが池井戸ワールドの魅力なのだろう。
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「架空通貨」 女子高生・麻紀の父が経営する会社が破綻した・・・。かつて商社マンだった教師・辛島はその真相を確かめる為に麻紀と行動を共にする。やがて2人がたどり着いたのは闇の金によって支配された街だった。 江戸川乱歩賞受賞第1作「M1」改題。「新しい分野の小説としか言いようが無...
「架空通貨」 女子高生・麻紀の父が経営する会社が破綻した・・・。かつて商社マンだった教師・辛島はその真相を確かめる為に麻紀と行動を共にする。やがて2人がたどり着いたのは闇の金によって支配された街だった。 江戸川乱歩賞受賞第1作「M1」改題。「新しい分野の小説としか言いようが無い」とされる池井戸潤氏の作品ですが、この「架空通貨」は田神札というお金が人や企業、銀行を支配するという恐怖と現実を描いた作品です。 この作品の面白いところは麻紀の父の会社の破綻が一般的な理由のように見えて、実はより残酷なものであり、その残酷さが現実的にかつ細かく描かれていることです。特に、田神札が街全体を支配する背景にある様々な葛藤、思惑、現実は非常にリアルで読者は共感しやすいと思います。 私は、田神札に屈したくはないけど生活を守るために屈さざるを得ない人々や屈さざるを得ないことから逃げずに抵抗を試みる人々の心情に非常に共感しました。また、辛島の教師から商社に勤めていた者への変化が少しずつ現れ、それによって麻紀を助けていく過程には、推理小説の真相(犯人)を追い詰めていくという醍醐味に似た感想を覚えました。 池井戸氏初期の作品。ここから彼の銀行からの切り口が始まる。
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教え子の女子高生の父親が経営する会社が破綻した話から、「円」以上に力を持った闇のカネによって、人や企業、銀行までもが支配された街にたどり着く。一企業が、一つの町を牛耳り、振興券との名でお金を支配するなんて、本当にあったら凄く恐ろしい・・・・。 すごく難しいテーマにも関わらず、説...
教え子の女子高生の父親が経営する会社が破綻した話から、「円」以上に力を持った闇のカネによって、人や企業、銀行までもが支配された街にたどり着く。一企業が、一つの町を牛耳り、振興券との名でお金を支配するなんて、本当にあったら凄く恐ろしい・・・・。 すごく難しいテーマにも関わらず、説明っぽくならず、最後までドキドキハラハラ読ませるのは、流石! 出てくる登場人物が魅力的だから、ついつい引き込まれるのかも。
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一企業がつくりあげたお札が様々な問題を引き起こし、その真相にいたる課程まで壮大に作られた物語。 お金にとらわれ生きていくのがすべてじゃない。 お金について考えさせられる物語。
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池井戸潤小説にしては、今まで読んだことない設定だった。教師が主人公で銀行の出番が少ない、結構ハードボイルド。。なかなか入り込めず、 読み終わるのに、二週間以上かかってしまった…
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