アンネの日記 増補新訂版 の商品レビュー
”アンネ13歳の誕生日からつけられた日記。「親愛なるキティーへ」で始まり、「じゃあまた、アンネより」で終わるスタイルで、架空の人格キティー(=父から贈られた日記帳)へ語りかける口調で書かれている。 書き始めて1ヶ月も経たずに隠れ家での潜伏生活へ。当初から観察力や発想が卓越していた...
”アンネ13歳の誕生日からつけられた日記。「親愛なるキティーへ」で始まり、「じゃあまた、アンネより」で終わるスタイルで、架空の人格キティー(=父から贈られた日記帳)へ語りかける口調で書かれている。 書き始めて1ヶ月も経たずに隠れ家での潜伏生活へ。当初から観察力や発想が卓越していたが、じょじょに文章内容や思考も成熟していく。15歳でこんな文章が書けるとは! 読書会のおかげで読めてよかった。 <抄録(抜き書き)> ・わたし自身にしても、ほかのだれかにしても、十三歳の女子中学生なんかが心のうちをぶちまけたものに、それほど興味を持つとは思えませんから。でも、だからといって、べつにかまいません。わたしは書きたいんです。いいえ、それだけじゃなく、心の底に埋もれているものを、洗いざらいさらけだしたいんです。(p.22) ・いま、過去1年半の日記を読みかえしてみると、よくもまあこんなに無邪気な、子供っぽいことが書けたものだと、あきれてしまいます。(p.110:1942年11月2日 の日記へ 1944年1月22日に補足したもの) ・大学生のうち、今年学位をとりたいひと、あるいは研究をつづけたいひとは、みんな強制的に、ドイツのすることすべてに共鳴し、新体制を承認するという文書に署名させられています。80パーセントの学生は、良心に反する書名をすることを拒否していますが、そうなれば当然、その結果も感受しなくちゃなりません。(p.179) ・パパだけがわたしの尊敬できるひとです。(略)わたしはただ、パパのほんとうの愛情がほしいだけなんです。パパの子供としてじゃなく、わたし自身として、アンネというひとりの人間として、愛してもらいたいだけなんです。(p.242) ★これまでのわたしは頑固でした。いつだって悪いのは向こうで、こちらには落ち度なんかないと思っていました。でもやっぱり責任の一半はこちらにもあるのです。(p.298) ※この日に過去日記へ追記 ★追伸ーペーターへ、思いつくままに。 わたしたちはここで、とても寂しい思いをしています。不自由なことはたくさんありますし、それもずいぶん長い期間になります。(略) どんな富も失われることがありえます。けれども、心の幸福は、いっときおおいかくされることはあっても、いつかはきっとよみがえってくるはずです。行きているかぎりは、きっと。 孤独なとき、不幸なとき、悲しいとき、そんなときには、どうかお天気のいい日を選んで、屋根裏部屋から外をながめる努力をしてみてください。街並みだの、家々の屋根を見るのではなく、その向こうの天をながめるのです。恐れることなく天を仰ぐことができるかぎりは、自分の心が清らかであり、いつかはまた幸福を見いだせるということが信じられるでしょう。(p.340?341) ※はじめて、他者への直接的なメッセージが書かれている。 ★ええ、そうなんです。わたしは世間の大多数の人たちのように、ただ無目的に、惰性で生きたくはありません。周囲のみんなの役に立つ、あるいはみんなに喜びを与える存在でありたいのです。わたしの周囲にいながら、実際にはわたしを知らない人たちにたいしても。わたしの望みは、死んでからもなお生きつづけること! その意味で、神様がこの才能を与えてくださったことに感謝しています。このように自分を開花させ、文章を書き、自分のなかにあるすべてを、それによって表現できるだけの才能を! (p.433-434) ・ほかにもわたしには、自分自身非難したいようなことがどっさりあって、とてもいちいちは数えていられないほどです。いつぞやおとうさんが、「子供はみんな自分自身を教育しなくちゃならない」と言ったことがありますけど、そのとおりだということが、このごろだんだんわかってきました。両親にできるのは、たんに子供によき助言を与え、正しい道につかせてやることだけ。最終的に子供の性格形成を左右するのは、子供自身なのです。(p.569/1944.7.15) ※自分を育てるのは自分! ★じっさい自分でも不思議なのは、わたしがいまだに理想のすべてを捨て去ってはいないという事実です。(中略)いまでも信じているからです。???たとえいやなことばかりでも、人間の本性はやっぱり善なのだということを。(p.575/1944.7.15) <きっかけ> 人間塾 2018年9月課題図書”
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※このレビューにはネタバレを含みます
アンネの「もしも神様の思し召しで生きることが許されるなら、わたしはおかあさんよりもりっぱな生きかたをしてみせます。つまらない人間で一生を終わりはしません。きっと世のため、人類のために働いてみせます。」という言葉が心に刺さった。 死がいつ訪れるか分からないような過酷な生活をしていると普通の人間なら、今日という日を必死に生きることしかできないと思う。そんな中、自分の輝く将来を信じ、夢を掲げることができる15歳がいるだろうか。人のために生きてやる、と声高らかに発することができる15歳がいるだろうか。 そしてそんな夢が叶わなかったことがとても悔しい。 見当違いなことは分かっているが、アンネの分まで生きたいと思ってしまった。 受け継がれるべき素晴らしい作品である。
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アンネフランクの13歳から15歳までの隠れ家の日記。最初読んでいるうちは、どこにでもいる普通の女の子だと思ったけど、読み進めるうちに、隠れ家に住む人や自分の洞察、鋭い批判的意見、女性の権利、政治と多岐にわたる日記の内容に感服。とても15歳の女の子が描いたとは思えない鋭さがそこには...
アンネフランクの13歳から15歳までの隠れ家の日記。最初読んでいるうちは、どこにでもいる普通の女の子だと思ったけど、読み進めるうちに、隠れ家に住む人や自分の洞察、鋭い批判的意見、女性の権利、政治と多岐にわたる日記の内容に感服。とても15歳の女の子が描いたとは思えない鋭さがそこにはあり、彼女が亡くなった人とは思えず、そこに生きている人からの、本当に手紙を読んでいるような感覚になった。 その当時ユダヤ人の人がどのような生活をしなければならなかったであったり、隠れ家での生活の窮屈さを想像させるに足るほどの本であるように思った。 また、アンネはとても強い女の子で、戦争が終わったあとのジャーナリスト、物書きになる夢、専業主婦にはならないという強い思いがある。それは、とても70年も前の女の子とは思えない程の強い、先進的な思いであり、彼女の洞察力の鋭さを裏付ける意見でもあるかもしれない。現代に生きる自分でさえ共感せずにはいられなかった。彼女ほど、文字の威力を理解し、それを体現した少女はいないのではないのだろうか。 また、訳者の日本語、原文を形を崩さずに伝えようとする努力も素晴らしい。あとがきにもある「異質なものへの不寛容」は今日でも尚、世界に紛争をもたらす原因となり、私も外国に住む人間として考えなくてはいけないテーマである。他者への恐怖、自分を守るために、どうしても異なるものを恐れたり、忌み嫌ったりしてしまう部分がやはり自分にもあるけれど、そういった最初の行動を見直し、まずは異なる相手を理解しようとすることを忘れずにいたいと思う。
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この超有名な書物を、わたくしは今回(もう三か月前になりますが)初めて手にとるものであります。お恥かしい。 ナチ占領時代に、息を顰め隠れながら生活したアンネ。暗い記述が続くのかと思つたら、必ずしもさうでもない。 それは、予想に反しアンネが実に自己主張の強い少女であつた事も関係するの...
この超有名な書物を、わたくしは今回(もう三か月前になりますが)初めて手にとるものであります。お恥かしい。 ナチ占領時代に、息を顰め隠れながら生活したアンネ。暗い記述が続くのかと思つたら、必ずしもさうでもない。 それは、予想に反しアンネが実に自己主張の強い少女であつた事も関係するのでせう。 考へてみれば、当時のアンネはまだ13-15歳であります。頑是ない子供の部分が残つてゐるとも言へます。 しかし文才はあるやうで、この年代にありがちな話の飛躍とか、論理的な破綻とかは見えないのであります。流石に、将来はジャアナリストや作家になりたいと夢を持つだけあります。 今「夢」と申しましたが、我我はアンネのその後を知つてゐます。それを考へえば、まさに夢としか思へません。彼女はいつかは実現したいと思つてゐたでせう。それだけに切ない喃。 「親愛なるキティーへ」といふ書き出しで、架空の親友に呼びかけるアンネ。キティーといふ存在を自ら設定したことで、日記を続ける力を得てゐたのでせうか。 その内容は同居人たちに対する嫌悪や、母親に対する反感、愛する父親に対してさへ容赦ない。 そしてペーターへの淡い恋心。思春期の少女そのものではありますまいか。 なるほど世界中でロングセラアになる訳も分からうといふものです。今後も読まれ続けて欲しい一冊と申せませう。
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子供の頃、実家にあった本を見て、アジア人にはないアンネの彫りの深さに怖さを覚えたのと、ユダヤ人として迫害されていたという話しから四十歳を越えるまで読むのを敬遠していました。 調べてみるとアンネがガス室で亡くなったというのは私の勝手な勘違いであることがわかったし(亡くなったのは劣...
子供の頃、実家にあった本を見て、アジア人にはないアンネの彫りの深さに怖さを覚えたのと、ユダヤ人として迫害されていたという話しから四十歳を越えるまで読むのを敬遠していました。 調べてみるとアンネがガス室で亡くなったというのは私の勝手な勘違いであることがわかったし(亡くなったのは劣悪な環境の結果というのはありますが)、アンネの日記自体は決して暗く陰惨なものではなく、どちらかと言うと普通の女の子の日記を覗き見るような面白さがありました。 友達のことを「なんとなくみすぼらしく見えますけど、たぶんほんとに貧しいんだと思います」とか「お勉強はとてもよくできますけど、それはガリ勉をするからで頭はそれほどいいわけじゃないんです」とか高田純次的な語調に笑ってしまいました(訳がそうさせてるのかも?)。お母さんのことも常にボロクソ書いているし。 最後にユダヤ人のことは調べてもなんだかよくわかりません。迫害を受けてきたユダヤ教のもととなった人たちは白人ではなかったらしいですし、キリスト教徒はキリスト人とは言わず、どうしてユダヤ教徒だけがユダヤ人と呼ばれるのでしょうかね。
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もっと堅苦しい話かと思っていたのだけれど、ギャルの感性で「あれが好きだ」「あいつはムカつく」というようなことが書き連ねてあって面白い。アンネが内省を始めた瞬間に日記のトーンが一変する。社会に出る直前の女の子のブログを読んでいるようで、なんとも胸が疼く。
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『夜と霧』と一緒に読んだ。 ホロコーストという史上最悪と言える状況で生きた人々が、普遍的な状況で生きている私たちに「生きる意味」のヒントを与えてくれた。 ・ 「私たちが人生に意義を問うのではなく、人生が私たちに一刻一刻、意義を問うている」 ・
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今さらながらアンネの日記を読んでみた。 火垂るの墓に比べたら、バターが配給されていたとか、 随分まともな生活をしていたようにも思えるが。 狭い空間で8人(しかも他人!)も暮らしていたら、人間関係維持するの大変なことは想像に難くないが、その一部始終が10代前半の視点で事細かに描か...
今さらながらアンネの日記を読んでみた。 火垂るの墓に比べたら、バターが配給されていたとか、 随分まともな生活をしていたようにも思えるが。 狭い空間で8人(しかも他人!)も暮らしていたら、人間関係維持するの大変なことは想像に難くないが、その一部始終が10代前半の視点で事細かに描かれていた。 ほんとうに他人の人柄がわかるのは、そのひとと大喧嘩したときだということです。 そしてそのときはじめて、そのひとの真の人格が判断できるんです!
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8月はいわゆる戦争文学物を一冊。 ユダヤ人少女アンネが隠れ家で書いた、13歳からの2年間の日記。 親への鬱憤や性へのあこがれなど率直に書かれていて、秘密を話せるお友達として日記と相対していたのが分かった。フランク一家だけじゃなかったのね。 朗らかでおしゃべり好きなアンネの一方で、...
8月はいわゆる戦争文学物を一冊。 ユダヤ人少女アンネが隠れ家で書いた、13歳からの2年間の日記。 親への鬱憤や性へのあこがれなど率直に書かれていて、秘密を話せるお友達として日記と相対していたのが分かった。フランク一家だけじゃなかったのね。 朗らかでおしゃべり好きなアンネの一方で、深く考えて表現する才能を感じる。13歳の少女だとは思えないほどの言葉遣い。 将来の夢や自分の子供を疑いもなく語るくだりは、彼女の運命を知っているから切なかった…
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アンネの日記がまさか笑えるほど面白い物語とは知らなかったです。物静かな真面目な女の子が戦争について書いた暗い辛い日記だとばかり思っていて、これまでちゃんと読んだことがありませんでした。 改めて読んでみると、アンネの毒舌っぷりがツボで笑いました。多分、すごく面白い女の子だったんだろ...
アンネの日記がまさか笑えるほど面白い物語とは知らなかったです。物静かな真面目な女の子が戦争について書いた暗い辛い日記だとばかり思っていて、これまでちゃんと読んだことがありませんでした。 改めて読んでみると、アンネの毒舌っぷりがツボで笑いました。多分、すごく面白い女の子だったんだろうなぁと。 今の時代に読んでも、全然古臭くないです!
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