戻り川心中 の商品レビュー
ミステリとして各短編の完成度の高さは言うに及ばず、美しくはかなく綴る筆致が格を引き上げている。個人的には桔梗の宿がベスト。この動機はどこかで模倣されたエピソードを聞いた ことがあるが、実際読むとこうも驚かされるのは連城氏の力量だろう。男と女、業について考えさせられる。まだまだ連城...
ミステリとして各短編の完成度の高さは言うに及ばず、美しくはかなく綴る筆致が格を引き上げている。個人的には桔梗の宿がベスト。この動機はどこかで模倣されたエピソードを聞いた ことがあるが、実際読むとこうも驚かされるのは連城氏の力量だろう。男と女、業について考えさせられる。まだまだ連城氏の未読作品があり、それを読む事ができる事を幸せに思う。
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大正から昭和初期の時代を背景にした、 花にまつわる5つの短編集です。 藤の香 桔梗の宿 桐の棺 白蓮の寺 戻り川心中 タイトルにもなっている花たちは、 奥ゆかしく、地味な雰囲気ながらも どれも日本人の好みそうな花たちです。 この花がそれぞれのお話の中で、重要な役割を担っていま...
大正から昭和初期の時代を背景にした、 花にまつわる5つの短編集です。 藤の香 桔梗の宿 桐の棺 白蓮の寺 戻り川心中 タイトルにもなっている花たちは、 奥ゆかしく、地味な雰囲気ながらも どれも日本人の好みそうな花たちです。 この花がそれぞれのお話の中で、重要な役割を担っています。 遊女の恋とその社会、ヤクザの世界、檀家と寺の因縁、 歌人がおこした二度の心中未遂事件の真相と、 5つの作品に漂う、どす暗い世相感。 横溝正史の金田一シリーズを思い起こす 時代設定とみごとな文章力。 普通なら暗い気持ちのままで終わるところですが、 作者の美しい筆力によって、 主人公の語り口調で始まる物語に引き込まれていきました。 初めて読む作家さんですが、 恋愛小説ともミステリーともとれる短編集は とても印象深い作品でした。
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綺麗な情景描写。 解き明かされていく謎。 読み始めると、どっぷり物語の中に浸かってしまう。 わたしは、報われない恋というのが好きらしい。 遊郭の話、知らずにハマってしまう。 不義の恋というのは嫌いなのだが、現実から離れた世界に浸かるためには必要な設定かも。 何より、不朽の名作とさ...
綺麗な情景描写。 解き明かされていく謎。 読み始めると、どっぷり物語の中に浸かってしまう。 わたしは、報われない恋というのが好きらしい。 遊郭の話、知らずにハマってしまう。 不義の恋というのは嫌いなのだが、現実から離れた世界に浸かるためには必要な設定かも。 何より、不朽の名作とされる表題作の素晴らしさ。 わたしの原点とも言える源氏物語の登場人物をなぞらえたり、好きな要素が多すぎて参った。 心中というものには感情移入できないし、勘違いの境地としか思えないのだけど、この作品だけは別格だ。 夢野久作氏は、心中のことを『恋愛遊びの行き詰まり』と書いてたなぁ、そういえば。
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引くところが見当たらない。 個人的には百蓮寺が一番。 職業が必然的という解説に、なるほど。。。 代筆屋、でもそれだからと予測するその上をいくラスト。 容姿に自信のない警官、に会いたかった八百屋お七。 思い込みがくつがえされる、でも納得してしまう… 情念と湿度の高い短編が並ぶ...
引くところが見当たらない。 個人的には百蓮寺が一番。 職業が必然的という解説に、なるほど。。。 代筆屋、でもそれだからと予測するその上をいくラスト。 容姿に自信のない警官、に会いたかった八百屋お七。 思い込みがくつがえされる、でも納得してしまう… 情念と湿度の高い短編が並ぶ。 短編集なのに、読み終わり物足りなさが全くない。
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連城を読むのは約1年ぶり。 相変わらずの美文です。こんなにも美しい文章で、やってることはとことんミステリなもんだから、もう堪りませんよね。 私的ベストは「桐の柩」でしょうか。 あっ、と驚く反転はお見事としか言いようがないですし、幕引きもこれしかない、といったところに落ち着きます。...
連城を読むのは約1年ぶり。 相変わらずの美文です。こんなにも美しい文章で、やってることはとことんミステリなもんだから、もう堪りませんよね。 私的ベストは「桐の柩」でしょうか。 あっ、と驚く反転はお見事としか言いようがないですし、幕引きもこれしかない、といったところに落ち着きます。 表題作の「戻り川心中」も傑作。 ミステリではお馴染みの題材が、使い方如何によっては、こんなにも美しく儚い物語に昇華されるのか驚きました。 「桔梗の宿」もワンアイデアながら「なぜ桔梗の花弁を落とすのか」というwhyが胸を締め付けます。 2年近く本棚に眠らせていたことが悔やまれる傑作短編集でした。
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花にまつわる短編を5編収録したミステリ短編集。 最近でこそミステリが文学賞で評価を受けることは珍しくなくなりましたが、この作品以上に文学の美しさとミステリを両立させる作品はあるのだろうか、と読み終えて思いました。 各短編独立した短編ですが、共通するテーマがあります。それ...
花にまつわる短編を5編収録したミステリ短編集。 最近でこそミステリが文学賞で評価を受けることは珍しくなくなりましたが、この作品以上に文学の美しさとミステリを両立させる作品はあるのだろうか、と読み終えて思いました。 各短編独立した短編ですが、共通するテーマがあります。それは各短編が花にまつわる短編であるということだけではありません。そこにあるのは様々な男女関係を詩情で彩った少しレトロさの感じられる浪漫です。 何となくですが、夏目漱石の恋愛小説をミステリで昇華したような印象を持ちました。 印象的な短編は「桔梗の宿」「桐の柩」表題作の「戻り川心中」 「桔梗の宿」は遊興町で起こった殺人事件を捜査する若手刑事の話。最後明らかになる真相と花に秘められた思いの美しさと切なさが忘れがたい余韻となって残ります。 「桐の柩」はやくざの子分となった男が主人公。一筋縄でいかない男女関係の複雑さとそれぞれの姿が味があってかっこよくラストシーンも非常に美しいです。 表題作の「戻り川心中」は天才歌人”苑田岳葉”の自殺に秘められた謎を描く話。 苑田岳葉という歌人の人生の濃さとその非凡さを、短編一編で書き切ってしまうその凄さ、彼を愛した女性の悲哀もあますことなく描き切り、最後の謎が明らかになるとともに分かる、彼が抱えた孤独と虚無… もちろん文章や岳葉が書いたという歌もしっかりと書き込まれていて、小説の中で死んでいるはずの岳葉が、まるで本当の歴史上の人物かのように読み終えたあと思いました。どこを取っても一級品の短編でオールタイムベストに挙げられるのも納得の作品です。 ミステリファンも、文学マニアもぜひぜひ読んでほしい、そして将来まで読み継がれてほしい作品でした。 第34回日本推理作家協会賞短編部門「戻り川心中」
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どのお話も味わい深い恋愛小説に見えるが、その実、とても巧妙なミステリーになっている。 特に、表題作「戻り川心中」は傑作です。 いかにも小説家が考えそうな結末なのに、やられてしまいました。 トリックだけでなく、作中の歌がまた素晴らしく、岳葉という歌人は本当にいるのではないかと疑っ...
どのお話も味わい深い恋愛小説に見えるが、その実、とても巧妙なミステリーになっている。 特に、表題作「戻り川心中」は傑作です。 いかにも小説家が考えそうな結末なのに、やられてしまいました。 トリックだけでなく、作中の歌がまた素晴らしく、岳葉という歌人は本当にいるのではないかと疑ってしまいました。 他のお話もとてもいいです。 欲を言えば、種明かしの仕方にもう少しインパクトがほしいかな。
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短編が5作。どれもトリックというか、種明かしが秀逸。そして、日本語がとても美しい。 「桔梗の宿」が特に気に入った。
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花をモチーフにした花葬シリーズ5作からなる短編集で、どの作品も優劣つけがたい秀逸な作品ばかりです。 まず「藤の香」ですが、これは、ひとりの男が事件を振り替えり語るように書かれています。舞台は遊郭街?です。暗くて淡い、そして美しい叙述で語られる事件の真相は哀しく、なんとも言えない読...
花をモチーフにした花葬シリーズ5作からなる短編集で、どの作品も優劣つけがたい秀逸な作品ばかりです。 まず「藤の香」ですが、これは、ひとりの男が事件を振り替えり語るように書かれています。舞台は遊郭街?です。暗くて淡い、そして美しい叙述で語られる事件の真相は哀しく、なんとも言えない読後感に浸る作品でした。 次に、「桔梗の宿」です。この作品は以前に違う短編集で一読しておりましたが、今回改めて良作だなと思いました。桔梗を握った男の遺体が発見され、その捜査にあたる刑事が主人公の物語です。この作品も大変美しいです。 その次は「桐の柩」です。ヤクザと遊郭が舞台です。殺しの目的に驚きました。また、男女の愛の切なさも感じました。 そして、「白蓮の寺」です。一人の人物が、幼い頃に見た記憶を思い出すようにして物語が進行していきます。「血」がテーマです。 最後に「戻り川心中」です。表題作だけあり、大変おもしろかったです。天才歌人、苑田岳葉の歌人としての生き方に愕然です。 本当に美しい言葉が、大胆なトリックと緻密な舞台設定を紡ぎ出している作品だと思います。
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全部それぞれに良さがある。もう優劣がつけられない。あとはもう個人の好みでしかないけど、桔梗の宿が一番好きだった。
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