眼の誕生 の商品レビュー
カンブリア紀の大爆発についてと、その謎に対する回答。それが「眼の誕生」。一見当たり前のようでありながら、気づかなかった盲点を突いたいい本です。 眼の誕生がカンブリア紀の大爆発の原因だったということを論証するために、現代の生物における眼の(つまり光の)役割や、古代の化石の分析をして...
カンブリア紀の大爆発についてと、その謎に対する回答。それが「眼の誕生」。一見当たり前のようでありながら、気づかなかった盲点を突いたいい本です。 眼の誕生がカンブリア紀の大爆発の原因だったということを論証するために、現代の生物における眼の(つまり光の)役割や、古代の化石の分析をしていきます。回答としてはあっけない感じがしますが、それに至る記述が面白いので、是非読んでみて下さい。
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既知のものからの類推に頼りすぎると、合理性を逸脱した、とんでもないも間違いをしでかしかねないのだ。たしかに、現生動物のなかで、ある種の恐竜にもっとも近縁なのはワニである。そこから恐竜の皮膚もワニのような鱗状だったとルイスする程度ならまあ許せる。発見されはじめている皮膚の化石で確認可能だからだ。しかし、腹を地面にこすりながら四つ足で這うように歩くのは、おそらくワニだけの特徴である。ところが初めて恐竜の復元画を制作した人たちは、腹を地面にこすっているディプロドクスを描いてしまった。それも一概に悪いわけではない。教訓を得るために、間違いも必要だからだ(科学に間違いはつきものである)。ただし類推ということでいえば、絶滅動物の体色を現生種の体色から類推するほど危険なことはない。(p.78) 自然界において意味のある色彩の背後では必ず、カムフラージュか自己顕示かいずれかの採択がなされている。その色が目立つ色か否かを見れば、どちらの採択がなされた結果かがわかる。それが、進化が進行した方向を教えている。負の淘汰圧が作用した結果か、正の淘汰圧が作用した結果かで、その方向性は大きく異なっている。(p.130) 生物がそれ以前から太陽光の恩恵を受けていたことは冒頭で触れたとおりだが、生物が太陽光線を視覚信号として本格的に利用し始めたこと、すなわち本格的な「眼」を獲得したのはまさにカンブリア紀初頭のことであり、そのことで世界が一変したというのが「光スイッチ説」の骨子である。俗にいう肉食動物が視覚を獲得したことで食う・食われるの関係が激化し、体を装甲で固める必要性が生じた(まさに軍備拡張競争の開始!)。それがカンブリア紀の爆発的進化を引き起こしたというのである。(p.378)
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カンブリア紀の進化や、眼の進化、諸動物の眼の構造など知らなかった科学を知ることができて満足している。三葉虫の持つ収差を取り除くための眼の特殊な構造と、嗅覚や触覚等の他の器官とは異なり視覚は突然生じたと言う説が個人的には印象に残っている。なかなか専門的な内容であったためか読み終わるまでに時間を要した。
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面白かった! 古生物の門外漢にも分かるように丁寧に書かれてて、しかも研究の喜びが伝わってくる本でした。
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なぜ46億年前でなく、1億年前でもなく、5億4300万年前に多種多様な外部形態を持つ生物達が誕生したのか。本書は桿体細胞や錐体細胞などの眼の機能の進化に焦点をあてたわけではなく、カンブリア大爆発という進化史に残る一大事件の原因を探求する一冊。 本書を流し読みしただけでは勘違いされ...
なぜ46億年前でなく、1億年前でもなく、5億4300万年前に多種多様な外部形態を持つ生物達が誕生したのか。本書は桿体細胞や錐体細胞などの眼の機能の進化に焦点をあてたわけではなく、カンブリア大爆発という進化史に残る一大事件の原因を探求する一冊。 本書を流し読みしただけでは勘違いされそうな点がいくつかあるが、一つはカンブリア爆発というものは、『多くの新しい生物種が誕生した』わけではなく、『多様な外部形態の誕生』であるということ。4つの動物門が38に増えたわけではなく、38の似たような外見の動物種が、38の大きく異なる外見を持つ生物種に進化したことが、カンブリア大爆発なのである。 もう一つは、本書が語るのは、眼の誕生により食物連鎖に大変動が生じた結果、カンブリア大爆発が生じたという仮説に留まり、『なぜ眼が同時多発的に誕生したのか』言い換えれば『なぜ世界に光が満ちたのか』という当然の疑問については複数の予測以上のものは語られないということ。 勿論本書が明らかにする部分だけでも十分に納得感をもって楽しめるが、明確な結論が得られるわけではないので要注意。楽しい謎は、まだまだ残されている。
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進化の歴史を辿ると5億4400万年前には動物の門は3つしかなかった。門はボディプランによって決まるがこのときまでは海綿、刺胞(クラゲ)、有櫛(クシクラゲ)の3種だったのがわずか4〜5000万年ほどで外骨格を持つ動物が門を越えて多数現れた。この本ではほぼ現在の38の門が全てこの時期...
進化の歴史を辿ると5億4400万年前には動物の門は3つしかなかった。門はボディプランによって決まるがこのときまでは海綿、刺胞(クラゲ)、有櫛(クシクラゲ)の3種だったのがわずか4〜5000万年ほどで外骨格を持つ動物が門を越えて多数現れた。この本ではほぼ現在の38の門が全てこの時期に出そろったと言う説をとっている。これがカンブリア爆発だ。カンブリア爆発が起きた原因については例えばスノーボールアース説などさまざまな説が存在するが残念ながら全て有力な反証があり説明できていない。この本では眼の誕生が進化を促したという説を唱えている。 カンブリア爆発は一気に門の数が増えたのではなく、ボディプランは長い時間をかけて徐々に進行したらしく、爆発とは突如として硬い殻ができたことだ。化石の証拠から眼の誕生は5億4300万年前のことでその100万年前には眼は出来ていなかった。ではわずか100万年で眼が出来るものなのか。クラゲには原始的な光受容器があり、その部分が窪んでくると光の来る方向がわかるようになる。オウムガイの窩眼はピンホールカメラの原理で網膜=光受容器が刺激を受け取るのだが明るい像を得るためにピンホール=瞳孔を大きくしたためぼやけた像でがまんするはめになった。 5億4300万年前の三葉虫の化石から彼らは誕生とほぼ同時に複眼を備えていたことがわかっている。ダーウィンが「比類のないしくみをあれほどたくさんそなえている眼が、自然淘汰によって形成されたと考えるのは、正直なところ、あまりに無理があるように思われる」と書いたカメラ眼の誕生にはどれほどの世代が必要なのか。出発点である皮膚の斑点=原始的な光受容器からカメラ眼に達するまで1世代当たりの変化率を0.005%と控えめに設定すると魚類のカメラ眼に進化するまで40万世代もかかっていない。1世代1年だと50万年足らずで眼が誕生するのだ。網膜のタンパク質はより原始的な眼点や他の感覚受容器に共通しており、神経も他の感覚のものを流用できる。三葉虫以前の捕食者、クラゲやイソギンチャクは偶々獲物が通りかかるのを待つだけであったが、三葉虫は眼の発明によって獲物を探すことが出来るようになった。補食による淘汰圧がいきなり高くなるとそれぞれのニッチでの適応が始まる。能動的な捕食者がボディプランや外形の変化を促したわけだ。 多くの動物だけでなく植物も擬態をしたり、色やダンスでパートナーを誘ったり、光ったり、花粉を運んでもらうために鮮やかな花を咲かせたりしている。特定の形状や色が子孫を残すために有利になるような圧力が働いた結果であるが眼が誕生してしまえば視覚が最も汎用的な情報であり光ほど影響力の強い刺激はない。また一般に栄養豊富な環境下では生物量は増えるが多様性は減る。栄養豊富な北極海の氷の下では膨大な量のプランクトンがクジラを育てたりしているが色彩は貧栄養な環境のサンゴ礁の方がカラフルなのはニッチな環境に淘汰圧がかかると変化が促されるからだ。逆に光が届かない洞窟の奥では眼が退化したり、体色がなくなったりするのはそこにエネルギーを使うのが無駄だからだ。例えば深海にすむオオグソクムシは1億6千万年の間ほとんど進化してこなかった。環境の変化が小さく色の変化のない深海では淘汰圧が働かない。 カンブリア爆発が起きた浅海の動物達がどんな色をしていたのか。復元図が示されているのだが体毛や殻の表面に回折格子が出来ていて鮮やかな虹色を示している。実際にアンモナイトの化石は金属的なオパール光沢ー真珠を想像してもらえばいいーを備えている。虹色のメリットは詳細には説明されていないがおそらく保護色として働く効果があったのだろう。アマゾンのエンジェルフィッシュの銀色の体も散乱光の中では姿を隠す働きをする。 では一体何が眼の誕生を促したのか?これまた明確な答えはないがカンブリア紀の地表や浅海は現在よりももっと暗かったと考えられている。例えば空気中の水蒸気量が減ったためか、太陽系が宇宙塵の多い銀河の腕から抜け出たためか定かではない。ただ世界が明るくなったのがきっかけではないかと言う。スノーボールアースからは3200万年の開きがあるので氷が溶けてもまだ世界は暗いまだだったのか。答えはよく分からない。 宇宙論のビッグバンも生物進化のビッグバンも最初の一言は「光あれ」だったのかも。
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カンブリア紀の大爆発の要因として「眼」の進化が大きな影響があるのでは…、と書かれた本。確かに捕食し捕食される時に大きな影響があるのが「眼」の存在だと思うので、面白く読めました。 書かれていることを読んでいくと、確かにそのような気がしてくるなぁ、と。
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[ 内容 ] ダーウィン、グールドをも悩ませた爆発的進化の原因とは? 5億4300万年前、生命最初の「眼」がすべてを変えた。 生物はなぜ、突然、爆発的に進化したのか? そのカギをにぎる「光スイッチ」とは―。 生命史最大の謎に迫る、驚きの新仮説。 [ 目次 ] 第1章 進化のビッ...
[ 内容 ] ダーウィン、グールドをも悩ませた爆発的進化の原因とは? 5億4300万年前、生命最初の「眼」がすべてを変えた。 生物はなぜ、突然、爆発的に進化したのか? そのカギをにぎる「光スイッチ」とは―。 生命史最大の謎に迫る、驚きの新仮説。 [ 目次 ] 第1章 進化のビッグバン 第2章 化石に生命を吹き込む 第3章 光明 第4章 夜のとばりにつつまれて 第5章 光、時間、進化 第6章 カンブリア紀に色彩はあったか 第7章 眼の謎を読み解く 第8章 殺戮本能と眼 第9章 生命史の大疑問への解答 第10章 では、なぜ眼は生まれたのか [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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パーカーがカンブリア大爆発の引き金となったのは眼の獲得だという「光スイッチ説」を提唱するに至った軌跡。
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「今を去ること5億4,300万年前、今日見られる主要な動物グループのすべてが、いっせいに硬い殻を進化させ、それぞれ特有の形態をもつにいたった」。この「動物進化におけるビッグバン」は「カンブリア紀(約5億4,200万年前から約4億8,830万年前までとされる地質時代区分)の爆発」と呼ばれ、生物進化史上最大の出来事である。ではなぜ、「カンブリア紀の爆発」は起きたのか。その原因を、新進の古生物学者である著者が解き明かそうとする試みが、本書だ。 タイトルですでにネタバレなのではあるが、本書は「科学的犯罪捜査として語るにふさわしい」ため、「おのずと探偵小説の構成をとることになった」と著者が言うように、地質学、物理学、化学、天文学などの分野にまで範囲を広げて証拠を採集し、最終的な結論である「光スイッチ説」を組み上げるそのさまは、良質のミステリーを読む興奮にあふれている。 神はまず、「光あれ」と言った。次に何かが、「映像あれ」と言った。そして今、世界では多様な種が生を謳歌している。
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