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破戒 の商品レビュー

4.2

198件のお客様レビュー

  1. 5つ

    66

  2. 4つ

    67

  3. 3つ

    32

  4. 2つ

    4

  5. 1つ

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2022/11/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

67/100 半端ない時間をかけて読んだ本。昔の文章にしてはとても読みやすいものではあるが、内容が内容だから雰囲気が重くて電車のスキマ時間にチョコチョコ読む感じではなかった。読むぞ!って思って一気読みした方が絶対にいい作品。 生徒たちに自分が穢多であることを告白するシーンが感動する。それまでの穢多に対する丑松の心の機微が細かく表されているからこそ、自分の存在がどのようなものであるかを皆の前で言語化する辛さがありありと伝わってきた。 存在するだけで「悪」という感覚にならなきゃ行けないのはどんなに辛いことか考えさせられる 最近古い本沢山呼んでたから、また軽いものを読み始めたいと思う

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2022/08/21

衝撃 島崎藤村は学生時代に若菜集でかすかに記憶にあったくらい もう100年以上もの作品 社会環境いろいろ変わるけど人の感情は変わらないのね にしても差別は人類のもっとも醜い部分だな

Posted byブクログ

2022/07/29

解説のおかげで少し理解が深まったけど、近代文学史上での位置づけや「自我」の問題を踏まえてもう一度読んだらまた違った面白さがありそう。 きっと当時にしてはすごく驚きの作品だったんだろうな… そこまで破戒の苦悩は感じられなかった…残念。

Posted byブクログ

2022/07/29

 部落差別問題を描いた小説だとは知っていたが、まさか主人公が最後に亜米利加のテキサスに旅立つとは!  近代自然主義文学の代表。藤村は詩人でもあったので、信濃の描写が非常に美しい。例えば  千曲川の水は黄緑の色に濁って、声もなく流れて、遠い海のほうへ……その岸に蹲るかのような低い柳...

 部落差別問題を描いた小説だとは知っていたが、まさか主人公が最後に亜米利加のテキサスに旅立つとは!  近代自然主義文学の代表。藤村は詩人でもあったので、信濃の描写が非常に美しい。例えば  千曲川の水は黄緑の色に濁って、声もなく流れて、遠い海のほうへ……その岸に蹲るかのような低い柳の枯れ枯れとなった様… とか  北国街道の灰色な土を踏んで、花やかな日の光を浴びながら、時には岡に登り、桑畑の間を歩み、時にはまた、街道の両側に並ぶ街々を通り過ぎて…… などの描写。  信濃の人々の素朴で勤勉で貧しい人柄や生活の描き方も味わい深い。  だけどまた、「俺は武士の家系の末裔だ」とか「あいつは実は新平民らしい」などということで、人を蔑み、優越感を感じることでアイデンティティを得てしまうのも、悲しいかな、人間という生き物の自然。  そして、主人公のように被差別部落出身の者がその親の「出自を隠せ。絶対に喋るな。」という教えと“尊敬する同族の先輩のように堂々と生きたい”という思いの狭間で苦しみもがき続けるのもまた、人間の“自然”であり、(現在はまた、色んな差別があるが)この時代を隠さずに写実したものだろう。漱石や鴎外だけを読んでも、明治の現実は理解出来ないだろう。  主人公は被差別部落出身であることを隠して、小学校教員をしており、生徒から慕われているが、権威主義の校長一派に貶めよう、貶めようとされ、出自の秘密を掴まれて、噂を流されてしまう。精神的に学校に出勤することが耐えられなくなってきたとき、尊敬していた被差別部落出身の思想家が壮絶な死をとげ、彼はカミングアウトする決心をする。  生徒たちの前で「私は卑しい穢多です。どうぞ許して下さい。」と土下座した。そんなことしなくていいのに。だけど、生徒達は元から慕っていた教師のそのような姿を見て、却って尊敬の気持ちを高め、「どうか瀬川先生を辞めさせないで下さい。」と校長に訴える。  父親からの「出自を隠せ」という掟を破り、カミングアウトした瀬川丑松は、それまで自分を取り囲んでいた心の壁も世間の固定観念も“破壊”し、“テキサスへ”とい自由な行動に出ることが出来た。旧態依然として、固定観念の枠の中で守られることを選んでいた、校長達のほうが、ちっぽけに見えた。  間宮祥太朗主演で映画が公開されているらしい。だから読んだ訳ではないが。あの人、不良の役も真面目な役も出来るんですね。

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2022/07/15

被差別部落出身の小学校教師、瀬川丑松。 『身の素性を隠して生きろ』という父からの戒めを守り、生活してきた。 しかし、隠し続け生きてゆくことに葛藤し、苦悩する… 『我は穢多なり』と、素性を明かし、生きる、猪子蓮太郎。 先生と仰ぐ蓮太郎にすら、自らの出自を明かすことができず、...

被差別部落出身の小学校教師、瀬川丑松。 『身の素性を隠して生きろ』という父からの戒めを守り、生活してきた。 しかし、隠し続け生きてゆくことに葛藤し、苦悩する… 『我は穢多なり』と、素性を明かし、生きる、猪子蓮太郎。 先生と仰ぐ蓮太郎にすら、自らの出自を明かすことができず、苦悩する丑松。 丑松の出自に対する差別から、異分子として、丑松を追いつめる校長と文平。 丑松の出自よりも、人間性をみた、お志保や銀之助や生徒たちには救われる。 出自による差別、現代社会でも残り続けている。 隠し続けて生きるしかないのだろうか… 差別はなくならないのだろうか…

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2022/06/23

今から100年程前を舞台にした話。 時代が変わっても、名称が変わるだけで何某かの差別は続いている。 その差別が、自身の努力では変えることができないものほど苦しいものはないであろう。主人公丑松は「戒めを破る」ことで、果たして確たる自分を表現できるようになったのであろうか。父からの戒...

今から100年程前を舞台にした話。 時代が変わっても、名称が変わるだけで何某かの差別は続いている。 その差別が、自身の努力では変えることができないものほど苦しいものはないであろう。主人公丑松は「戒めを破る」ことで、果たして確たる自分を表現できるようになったのであろうか。父からの戒めを破ることは、自身が生を受けてから身に付けた価値を行使する権利でもあり、またその価値を自らの心とともに破壊させてしまう恐れもあると感じた。 「我は穢多なり」という言葉を発声することにどれ程の不安があったであろうか。 「我は穢多なり」という言葉を発声するのであれば、そこから続く行動についてもっと潔い道筋が、決心があったのではないか。いや、とりあえず東京へ向かう。という中途半端な迷いある態度がとてもリアルなのではないか。 とりあえず東京へ向かうのは逃げともとることができるかもしれないが、出てしまえば良いと思う。世界は広いのだから。 という希望をもって読み終えたい。

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2022/06/07

ラストのカミングアウトのところで感動してしまって、最後の最後に子供たちを学校へ返すところも丑松のお人柄がよく表れていた。  印象に残ったのは雪の中で1人慟哭するところで、正しく生きてきた事実を否定して死ぬ所まで精神が彷徨っていたシーン。  それでも周りから愛されていた丑松、最後銀...

ラストのカミングアウトのところで感動してしまって、最後の最後に子供たちを学校へ返すところも丑松のお人柄がよく表れていた。  印象に残ったのは雪の中で1人慟哭するところで、正しく生きてきた事実を否定して死ぬ所まで精神が彷徨っていたシーン。  それでも周りから愛されていた丑松、最後銀之助が必死で助けようとしているところが良かった。

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2022/04/14

丑松の自分を偽りながら生きていく苦悩を感じながら読み進めるのは苦しかった。当時の身分制度によって虐げられた人々の過酷な運命を思い知らされた。特に丑松が身分を隠していたことを生徒の前で膝をついて詫びる場面はここまでしなくてはいけないことなのか、と当時の最下層の身分に対する差別の過酷...

丑松の自分を偽りながら生きていく苦悩を感じながら読み進めるのは苦しかった。当時の身分制度によって虐げられた人々の過酷な運命を思い知らされた。特に丑松が身分を隠していたことを生徒の前で膝をついて詫びる場面はここまでしなくてはいけないことなのか、と当時の最下層の身分に対する差別の過酷さを痛感した。身分を告白した後の丑松の人生はきっとあからさまな差別を受け続けただろうが、それでも自分を偽らずありのままでいることを選んだ人生にきっと後悔はなかっただろう。

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2022/03/30

2022年再映画化決定とのこと。この小説が、令和の時代に理解されるのか、共感されるのかと再読。 ロングセラーにまだ作品名が残るが、教科書や国語便覧等に必ず登場するからではと思っていた。 出自の隠蔽という理不尽な背徳感を抱え続けて生きる青年・瀬川。父の教え「隠せ」は、彼の絶対だ...

2022年再映画化決定とのこと。この小説が、令和の時代に理解されるのか、共感されるのかと再読。 ロングセラーにまだ作品名が残るが、教科書や国語便覧等に必ず登場するからではと思っていた。 出自の隠蔽という理不尽な背徳感を抱え続けて生きる青年・瀬川。父の教え「隠せ」は、彼の絶対だった。彼は、身分を隠して教員となっていた。 同輩への世間の非常な風当たり。 周囲の人の何気ないその出自に対する蔑みの会話。 彼は、いつかその事実が白日の下に晒されることに恐れ、常に緊張と束縛の中にいた。 隠し続ける苦しさの中、同輩の先輩の理不尽な運命をも退けようとする生き様に、感銘を受ける。 そして、遂に、教師であった彼は、生徒達の前で、自ら出自の告白をする。差別を受ける瀬川自身が頭を下げるのだ。 この身分差別の問題が、理解できなくても、自分が隠して生活しなければならない事柄、出生・経歴等として、読んでも見ても共感できると思う。 だが、日本の各地に残っていると思われるこの人種差別について考えて欲しいとは思う。日本のこの制度は、同民族間で歴史も長い。この問題を抱える地域では、未だ根深い。 瀬川が、その葛藤からの脱却だけでなく、何を破戒しこのラストを迎える事ができたか、何を破壊できなかったのかを想いたい。

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2022/03/08

身分差別が未だ残る時代、部落出身の教師丑松が父から授かりし戒めとは自身の出自を隠す事。理不尽さに対する義憤、周囲に知られる事を恐れる気持ち、同輩の為に声を上げる者達を横目で見ながら日常を過ごす心苦しさ、内面の葛藤が生々しい。現代においても、辛い過去の経歴、LGBTQ、宗教的な信条...

身分差別が未だ残る時代、部落出身の教師丑松が父から授かりし戒めとは自身の出自を隠す事。理不尽さに対する義憤、周囲に知られる事を恐れる気持ち、同輩の為に声を上げる者達を横目で見ながら日常を過ごす心苦しさ、内面の葛藤が生々しい。現代においても、辛い過去の経歴、LGBTQ、宗教的な信条を持つ方々がおり、彼らの中にはアウディングや差別に苦しんでいる者もいるかもしれません。丑松の苦悩は時代を超えた普遍的な物であり、それ故に価値がある小説だと言えるのかもしれません。

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