破戒 の商品レビュー
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日本史の先生がおすすめしてたから読んでみた。 まず言い回しとかも難しくなく大変読みやすい。ただ扱ってるテーマが穢多、部落問題で重く、主人公丑松が悶え苦しむ姿が読んでいて辛い。彼が生徒に向かって穢多であることを隠していた事実を謝る場面は泣きそうだった。丑松の謝罪を受けて校長室にお願いをしに行った生徒たちを、規則を理由に拒絶する校長や先生たちは、決まりに囚われすぎている現代の人々のことを表しているのかなと思った。 題名の「破戒」は読む前は何を表しているのか全く分からなかったが、それは文字通り「決まりを破ること」だった。丑松は父親の「穢多であることを隠せ」という戒めを破り、お志保も父親の「帰ってくるな」という戒めを破った。 日本に被差別階級があったこと、そして今も地域によっては差別が残っていることを忘れてはいけないなと思った。また読み返したい
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今まで色々純文学を読んできたけど、その中でも1番好きだなあと思った。昔と比べて今の時代は部落差別が少なくなってきたのかな、と思うけど、色々なところに、いろんなものへの差別が残ってることを、この本を読んでから感じる。 「差別」という問題に敏感に、身近に興味を持つようになったし、巻末...
今まで色々純文学を読んできたけど、その中でも1番好きだなあと思った。昔と比べて今の時代は部落差別が少なくなってきたのかな、と思うけど、色々なところに、いろんなものへの差別が残ってることを、この本を読んでから感じる。 「差別」という問題に敏感に、身近に興味を持つようになったし、巻末に載っていた解説で「随所では、藤村が持つ部落民に対する差別意識のようなものも見受けられる」って書いてあったけど、自分はほとんど感じなかった。 むしろ部落出身でないのに、この時代にここまでのものを書き上げる藤村は本当にすごいと思う。 他の藤村の作品も読んでみたい。
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穢多(部落民)出身の主人公にまつわる話。 少なくとも私の知っている限りでは出身地や住んでいるところに対して差別的に判断することは聞いたことなかったので馴染みのある内容ではありませんでした。ですが昔から賎民と言われる身分の人、封建制の時代には対等に扱われていなかったということを習...
穢多(部落民)出身の主人公にまつわる話。 少なくとも私の知っている限りでは出身地や住んでいるところに対して差別的に判断することは聞いたことなかったので馴染みのある内容ではありませんでした。ですが昔から賎民と言われる身分の人、封建制の時代には対等に扱われていなかったということを習ったことがあり、その意識はきっと昔ほどではなくとも今も続いているのではないかと思いました。決して許されてはいけない社会問題の1つとしてもう少し詳しく勉強したいと思います。
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身分差別はいつの時代もどこの国でもある極めてありふれた問題だ。瀬川丑松が自分はエタであることを告白するシーンが感動だ。自分の生き方に自信を持っているからだ。人生は残酷、差別と貧乏、人種差別、偽善との闘い、いろいろな観点から勇気をもらえる小説だと思う。
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67/100 半端ない時間をかけて読んだ本。昔の文章にしてはとても読みやすいものではあるが、内容が内容だから雰囲気が重くて電車のスキマ時間にチョコチョコ読む感じではなかった。読むぞ!って思って一気読みした方が絶対にいい作品。 生徒たちに自分が穢多であることを告白するシーンが感動する。それまでの穢多に対する丑松の心の機微が細かく表されているからこそ、自分の存在がどのようなものであるかを皆の前で言語化する辛さがありありと伝わってきた。 存在するだけで「悪」という感覚にならなきゃ行けないのはどんなに辛いことか考えさせられる 最近古い本沢山呼んでたから、また軽いものを読み始めたいと思う
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「人の世に熱あれ、人間に光あれ」。全国水平社は今年で創立100周年だそう。 難しい内容&文章のため時間はかかったものの、間宮祥太朗さん主演の新作映画も事前に観ていたおかげか、イメージを思い浮かべながら読み進められました。 人間は、命は、いつどんな時代であっても差別されることなく平...
「人の世に熱あれ、人間に光あれ」。全国水平社は今年で創立100周年だそう。 難しい内容&文章のため時間はかかったものの、間宮祥太朗さん主演の新作映画も事前に観ていたおかげか、イメージを思い浮かべながら読み進められました。 人間は、命は、いつどんな時代であっても差別されることなく平等にあらねばならないと強く思う。 出自を必ず隠し通せ、忘れるな、と父親に言われ続け、教師となった後もその戒めを忠実に守る丑松だったが、やがてその戒めそのものに苦しめられるようになる。 誰にも心を許してはならない。当時の社会において、身分制度とはそれほど重たい鎖だったのだ。 北小路健さんによる同時収録の「『破戒』と差別問題」がとても勉強になった。 破戒が一度絶版となって、昭和14年に改訂本として再び世にでたとき、差別語がどのように書き換えられどのように排除されたかの膨大な例を、初版本と見比べられるようになっている。 事実は事実として、差別の実態は曖昧にするべきではない。当時再販にこぎつけるまで様々ないざこざがあったんだろうけれど、今はこうして新潮文庫として初版本のままを読めるというのは、有難く貴重なことなんだろうな。言葉の持つ力を感じる。
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衝撃 島崎藤村は学生時代に若菜集でかすかに記憶にあったくらい もう100年以上もの作品 社会環境いろいろ変わるけど人の感情は変わらないのね にしても差別は人類のもっとも醜い部分だな
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解説のおかげで少し理解が深まったけど、近代文学史上での位置づけや「自我」の問題を踏まえてもう一度読んだらまた違った面白さがありそう。 きっと当時にしてはすごく驚きの作品だったんだろうな… そこまで破戒の苦悩は感じられなかった…残念。
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部落差別問題を描いた小説だとは知っていたが、まさか主人公が最後に亜米利加のテキサスに旅立つとは! 近代自然主義文学の代表。藤村は詩人でもあったので、信濃の描写が非常に美しい。例えば 千曲川の水は黄緑の色に濁って、声もなく流れて、遠い海のほうへ……その岸に蹲るかのような低い柳...
部落差別問題を描いた小説だとは知っていたが、まさか主人公が最後に亜米利加のテキサスに旅立つとは! 近代自然主義文学の代表。藤村は詩人でもあったので、信濃の描写が非常に美しい。例えば 千曲川の水は黄緑の色に濁って、声もなく流れて、遠い海のほうへ……その岸に蹲るかのような低い柳の枯れ枯れとなった様… とか 北国街道の灰色な土を踏んで、花やかな日の光を浴びながら、時には岡に登り、桑畑の間を歩み、時にはまた、街道の両側に並ぶ街々を通り過ぎて…… などの描写。 信濃の人々の素朴で勤勉で貧しい人柄や生活の描き方も味わい深い。 だけどまた、「俺は武士の家系の末裔だ」とか「あいつは実は新平民らしい」などということで、人を蔑み、優越感を感じることでアイデンティティを得てしまうのも、悲しいかな、人間という生き物の自然。 そして、主人公のように被差別部落出身の者がその親の「出自を隠せ。絶対に喋るな。」という教えと“尊敬する同族の先輩のように堂々と生きたい”という思いの狭間で苦しみもがき続けるのもまた、人間の“自然”であり、(現在はまた、色んな差別があるが)この時代を隠さずに写実したものだろう。漱石や鴎外だけを読んでも、明治の現実は理解出来ないだろう。 主人公は被差別部落出身であることを隠して、小学校教員をしており、生徒から慕われているが、権威主義の校長一派に貶めよう、貶めようとされ、出自の秘密を掴まれて、噂を流されてしまう。精神的に学校に出勤することが耐えられなくなってきたとき、尊敬していた被差別部落出身の思想家が壮絶な死をとげ、彼はカミングアウトする決心をする。 生徒たちの前で「私は卑しい穢多です。どうぞ許して下さい。」と土下座した。そんなことしなくていいのに。だけど、生徒達は元から慕っていた教師のそのような姿を見て、却って尊敬の気持ちを高め、「どうか瀬川先生を辞めさせないで下さい。」と校長に訴える。 父親からの「出自を隠せ」という掟を破り、カミングアウトした瀬川丑松は、それまで自分を取り囲んでいた心の壁も世間の固定観念も“破壊”し、“テキサスへ”とい自由な行動に出ることが出来た。旧態依然として、固定観念の枠の中で守られることを選んでいた、校長達のほうが、ちっぽけに見えた。 間宮祥太朗主演で映画が公開されているらしい。だから読んだ訳ではないが。あの人、不良の役も真面目な役も出来るんですね。
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被差別部落出身の小学校教師、瀬川丑松。 『身の素性を隠して生きろ』という父からの戒めを守り、生活してきた。 しかし、隠し続け生きてゆくことに葛藤し、苦悩する… 『我は穢多なり』と、素性を明かし、生きる、猪子蓮太郎。 先生と仰ぐ蓮太郎にすら、自らの出自を明かすことができず、...
被差別部落出身の小学校教師、瀬川丑松。 『身の素性を隠して生きろ』という父からの戒めを守り、生活してきた。 しかし、隠し続け生きてゆくことに葛藤し、苦悩する… 『我は穢多なり』と、素性を明かし、生きる、猪子蓮太郎。 先生と仰ぐ蓮太郎にすら、自らの出自を明かすことができず、苦悩する丑松。 丑松の出自に対する差別から、異分子として、丑松を追いつめる校長と文平。 丑松の出自よりも、人間性をみた、お志保や銀之助や生徒たちには救われる。 出自による差別、現代社会でも残り続けている。 隠し続けて生きるしかないのだろうか… 差別はなくならないのだろうか…
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