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破戒 の商品レビュー

4.1

200件のお客様レビュー

  1. 5つ

    66

  2. 4つ

    68

  3. 3つ

    33

  4. 2つ

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2024/05/10

ほぼ裏表紙の説明通りではあったが、穢多であることを隠しながら生活していた丑松に関する物語。 新平民という言葉はあれだ、実態はまたまだ差別が当たり前のように存在した日本が描かれており、当時の状況が垣間見える作品。 文章自体は現代のものに慣れていると読みにくさはあるし、いろいろ保管し...

ほぼ裏表紙の説明通りではあったが、穢多であることを隠しながら生活していた丑松に関する物語。 新平民という言葉はあれだ、実態はまたまだ差別が当たり前のように存在した日本が描かれており、当時の状況が垣間見える作品。 文章自体は現代のものに慣れていると読みにくさはあるし、いろいろ保管しながらでないと理解が難しいところもあるが、ゆっくり時間をかけてでも読んでおきたい作品だと感じた。 先日読んだ蟹工船と合わせ、日本の歴史を学びたいと感じる一冊。

Posted byブクログ

2024/04/23

★★★★ 何度も読みたい これは地元から離れ、普通の生活を手に入れた穢多の青年が、たった一人で抱えた自身の出自の秘密に苦しむ話である。 主人公瀬川丑松は部落出身であり、その身分を隠して教員として生計を立てていた。彼は堂々と己の出自を明らかにして活動する、部落出身の猪子蓮太郎を慕...

★★★★ 何度も読みたい これは地元から離れ、普通の生活を手に入れた穢多の青年が、たった一人で抱えた自身の出自の秘密に苦しむ話である。 主人公瀬川丑松は部落出身であり、その身分を隠して教員として生計を立てていた。彼は堂々と己の出自を明らかにして活動する、部落出身の猪子蓮太郎を慕っているが、如何なる時も誰に対しても家系の秘密を隠し通せと言う父の言葉や恐れがあり、蓮太郎にすらも自分の秘密を伝えられていなかった。なぜなら彼は自分が穢多であるという事実が知られれば、今の生活は到底続けられないと知っていたから。 部落差別という、現代では表立って騒がれなくなった問題だったが、写実的な描写や何気なく穢多を貶す友人との会話などにより、容易に自身のことを詳らかにできない丑松の苦悩がよく伝わってきた。最初から馬が合わない同僚より、師範校時代からの親友から拒絶かもしれない方が堪える。 蓮太郎に自分が同胞だと伝えようとしていつまでももたもたとしている部分はひどくじれったかった。また学校内に噂が広まりだしてから蓮太郎の本を手放すのも悪手に感じた。古本屋から情報が漏れることもありそうだし、何より事実が露見しかけてから後悔するなら、最初からそういった本は購入せず、蓮太郎の思想に賛同しているという姿勢を外で見せなければよかったのにと思った。 しかしこれもまた、たった一人で戦う丑松の心を支えていたものなのだと思うと、どうにも完全には否定できない。進撃のライナーみたいな人間らしさを感じる。 この小説にはかなり長い解説がついている。そこで批判として、クライマックスで丑松が自分は穢多であると告白するシーンで、彼が謝罪という形をとったことが言及されていた。丑松は蓮太郎のように「我は穢多なり。」とは言わず、ただ穢多である自分がこうして身分を偽り、生徒や同僚に接していたことを懺悔するのだ。彼がこうしたやり方で自分のことを話したから生徒は彼が穢多だと知った後も彼を慕っていたのだろう。しかし、この部分はどうしても瀬川丑松というキャラクターの一貫性の無さを感じた.

Posted byブクログ

2024/05/09

2024.04.07〜05.09 情景描写が美しい。「青白い闇」なんて言葉、素敵だ。丑松の辛さ、絶望感が手に取るようにわかる。 当時の生きづらい世の中を、丑松を通して描かれている。が、生きづらい世の中は、今でも変わらない。対象が身分ではな無くなっただけだ。

Posted byブクログ

2024/04/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この作品は社会小説でも自己告白でもなく、紛れもなく「瀬川丑松」の物語なのだ。穢多として生まれ、それを隠して教員となり、葛藤の末打ち明けた青年の物語なのだ。 私がこの本の感想を語るとすると、自分を認めるのが大事だとか、自分を抑えるのが1番辛いだとか、そういうありきたりで薄っぺらなことを言いたくなってしまう。そんな風に瀬川丑松の凄絶な人生を一言で表してしまうのは、彼に失礼ではないだろうか。 私は瀬川丑松が好きだ。銀之助がいてよかった。それでいいのではないか。 この先丑松はどうなるのだろう。彼のことだからテキサスで真面目に働くのだろうが、また思い悩まないか心配だ。いつか丑松が、研究者となった銀之助に、テキサスの経験を楽しく話せる日が来ることを期待している。 (エンドロールにその1枚絵を載せてくれ)

Posted byブクログ

2024/02/25

差別と偏見の中で生きてきた丑松(うしまつ)。 明治時代、穢多という卑しい身分の部落で生まれ育った彼は、やがて教師となるが、父から身分を隠せと堅く戒められていた。 上手く隠しながら生きていたが、隠さず正々堂々と戦う先輩に憧るようになり、何度も打ち明けたい衝動に駆られ、葛藤の末ついに...

差別と偏見の中で生きてきた丑松(うしまつ)。 明治時代、穢多という卑しい身分の部落で生まれ育った彼は、やがて教師となるが、父から身分を隠せと堅く戒められていた。 上手く隠しながら生きていたが、隠さず正々堂々と戦う先輩に憧るようになり、何度も打ち明けたい衝動に駆られ、葛藤の末ついに父の戒めを破戒してしまう。 秘密を一人で抱えて生きることも、自白して差別されながら生きることも、どちらを選択しても苦しい。ただそこに生まれただけなのに。正義感だけでは生きていけないのが人間社会なんだな。 多様性が叫ばれる現代においても、差別や偏見が完全になくなることはない。どうしても多数派の意見が強くなってしまうところがある。 時代の常識にとらわれず、物事の本質を見極めて生きていきたいな。

Posted byブクログ

2024/01/28

昨年から細々と読み続け、やっと読了。一気読みするには苦しくなる作品。 凄く良かった。 自分の努力ではどうにもならない部落という偏見。 父からの戒めを破った時、新たな人生がはじまる。 丑松の内面の葛藤が、言葉巧みに描かれてあって、感動した。改めて昔の文学作品は今も尚素晴らしいと...

昨年から細々と読み続け、やっと読了。一気読みするには苦しくなる作品。 凄く良かった。 自分の努力ではどうにもならない部落という偏見。 父からの戒めを破った時、新たな人生がはじまる。 丑松の内面の葛藤が、言葉巧みに描かれてあって、感動した。改めて昔の文学作品は今も尚素晴らしいと思う。 日々揺れ動く感情。出来そうで出来ない。今日こそ!でも結局…自分の頭の中での葛藤が痛いほど伝わった。 そして、信州の四季折々の風景や、生徒との関わりも、素晴らしく書けている。 勤勉さと日々を真面目に積み重ねた結果の、友情や恋や、新たな人生。 後ろ表紙のあらすじの印象が、中身を読んでみると少し違って、自分的には残念。自力でテキサスへの道を切り開いた訳じゃないし、あ、ここで終わるんだ…結末まで書いてるやん…みたいな。でも、分かった上でも、読んで損なし。 読めて良かった。素晴らしい。

Posted byブクログ

2023/12/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

19世紀中盤、300年以上続いた江戸時代は終わりを迎えた。明治新政府は四民平等を目指し、法令によってそれまで社会に根強く蔓延っていた差別は撤廃された。 しかし、理想と現実は異なるのが世の常。社会には、新たに平民の身分を与えられた旧被差別階級、別名「新平民」に対する差別が根強く残っており、彼らは人々が忌避する食肉加工業などに従事させられ、一般人と同じ職業に就くことはおろか、一般人との交流さえ拒否され続けていた。 そんな明治期、自らが新平民であることを隠して教師となった、瀬川丑松という若者がいた。彼の心には、父親の言葉が刻み込まれていた。「自分の出自は絶対に隠せ」――そうしないと生きていけないのだから。丑松は一般の平民として教壇に立ち続けた。 しかし、次第に丑松の心に葛藤が生まれていく。平民でいるためには「新平民」を差別しなくてはならない。それは自分自身を、自分の親を差別するのと同義――しかし差別と闘ったら、自らが新平民だと知られたら、自分はもう教師としては生きていけない…。平民の中に混ざり、平民たちの側から新平民の境遇を見るにつけて、丑松の苦しみは増すばかり。 そしてある日、ふとしたことから丑松の出自は周囲の知ることとなり……。 字面だけ見ると縁起の良い「明治」、西洋文化が流入した明るい新時代と思われがちな「明治」、富国強兵の旗印の下、現代の基礎が作られたと認知されている「明治」…… それらすべてが事実である一方、明治期の日本社会の暗部はあまり知られていない。関東大震災で崩壊するまで、東京には巨大なスラム街が存在し、そこでは東京市内(※当時は東京は都ではなく市だった)の残飯が量り売りされ、その残飯は、大都市東京を支える肉体労働者の日々の食事となっていた…このエピソードだけでも十分ショッキングだろう(詳しくは松原岩五郎『再暗黒の東京』を参照)。 こうしたスラム街は明治期に導入された資本主義経済が生み出したものだが、一方の「新平民」に対する差別は、明治はおろか、江戸期以前から存在し続けていたものだった。不可触民扱いだった彼らを救済しようと明治政府が発した法令等はどれも焼け石に水で、新平民の世間からの扱いは江戸期と何ら変わることがなかった。 本作は、そうした差別に晒され続けた一新平民の若者の姿を描いた、比較的社会派な小説といえる。藤村らしい美しい風景描写は、ある時は物語を明るく希望に満ちたものに、またある時はこの上なく悲壮なものに、自由自在に雰囲気を醸成している。であるがゆえ、本作の悲壮な部分はトコトン悲壮である。何度丑松に感情移入し、胸が張り裂けそうになったことか。出自による差別を筆者は経験したことがないが、だからこそなおさら、想像できない苦しみを背負わされた者の感情を想像させられ、胸が詰まる(またまた歴史的な話になるが、新平民が自らを否定せず、肯定して生きようという路線の差別撤廃運動が始まるのは昭和に入ってからのことで、丑松が生きた時代には、まだ江戸時代の閉鎖的な空気が色濃く残っていた。彼らは本当に、苦しみ続けるしか道が無かったのだ)。 なんだかとても長くなってしまったが、本作は上述したような歴史的背景を知っていたら、なおさら楽しめる作品である。藤村の作品である以上、魅力的であることは言うまでもないが、そうした歴史も知っていればより一層『破戒』の世界を味わえる、ということを、一歴史オタクとして伝えておきたい。 最新の所在はOPACを確認してください。 TEA-OPACはこちら→ https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00185470

Posted byブクログ

2023/10/31

大満足の一冊。穢多の家系に生まれた主人公の物語で、差別問題に目を向けた作品ともとれるが、個人的には、主人公の豊かな感情と揺れ動く心の模様を巧みに表現している作者の文章力そのものに非常に魅力を感じた。 また舞台である信州の情景などが、よく表現されており聖地巡りをしたくなる一冊。

Posted byブクログ

2023/10/27

明治後期、被差別部落に生まれた主人公・瀬川丑松は、その生い立ちと身分を隠して生きよ、と父より戒めを受けて育ちました。 その戒めを頑なに守りながら成人し、丑松は小学校教員となります。 そんなとき同じく自らが(えた)であることを公言している解放運動家、猪子蓮太郎の本の影響を受け彼...

明治後期、被差別部落に生まれた主人公・瀬川丑松は、その生い立ちと身分を隠して生きよ、と父より戒めを受けて育ちました。 その戒めを頑なに守りながら成人し、丑松は小学校教員となります。 そんなとき同じく自らが(えた)であることを公言している解放運動家、猪子蓮太郎の本の影響を受け彼を慕うようになります。 丑松は、猪子にならば自らの出生を打ち明けたいと思い、口まで出掛かかることもあるが、その思いは揺れ、日々は過ぎていきます。

Posted byブクログ

2023/08/31

表紙の絵のように主人公は暗中を彷徨っている。 僕はこの問題を述べる言葉をおそらく持っていない。 それは自分の中にある差別意識を慎重に点検しなくてはいけないと思うから。 この作品は1人の人間が境遇に苦悩し立ち向かおうとする物語として、それがいかに過酷であるか、読む人にその覚悟を...

表紙の絵のように主人公は暗中を彷徨っている。 僕はこの問題を述べる言葉をおそらく持っていない。 それは自分の中にある差別意識を慎重に点検しなくてはいけないと思うから。 この作品は1人の人間が境遇に苦悩し立ち向かおうとする物語として、それがいかに過酷であるか、読む人にその覚悟を求める。 ラストシーンは心残りである、 それがこの問題を考え続けることを促している。

Posted byブクログ