アーモンド入りチョコレートのワルツ の商品レビュー
この本も角田光代さんの、『ポケットポケットに物語を入れて』の中で紹介されていて読みました。中学時代のことなどすっかり忘れ果てている年寄りの私は、こんなみずみずしい時代だったっけ?いやそうだったに違いない・・・・・と思いながら。
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今年最後の本は、長女が貸してくれたこんな一冊。 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』 森絵都 (角川文庫) この作品は、主人公が思春期の少年少女という難しい題材ながらも嫌みがなく、説教臭さもなく、コミカルでありつつ真っ直ぐだ。 余計なものが何もない感じが清々しい。 三つの短編の一つ一つにピアノの曲が用意されている。 一つめの「子供は眠る」は、ロベルト・シューマン。 中学生を中心とした五人のいとこ同士が海辺の別荘でひと夏を過ごす。 五年間変わりなく続いてきた夏休みの一大イベントだったが、今年はいつもと違う夏になってしまう。 彼らは五年の間に“子供”から“少年”になった。 今までとは違う、自分でもよくわからない感情が胸に積もってくることで、これまでのいとこ同士の人間関係のバランスが微妙な不協和音を生むのである。 私はその過程にハラハラしながらも、目を細めて穏やかに眺めてしまう。 頑張れ少年たち!とエールを送りたくなってしまう。 それは私が大人だからであり、しかし娘はその渦中にいるわけで、おそらく私とは違う感じ方をしているはずである。 こういう小説の面白いところはそこだ。 大人になったら是非もう一度読んでみてほしいと思う。 二つめの「彼女のアリア」は、J・S・バッハ。 この短編が三つの中で私は一番好きだ。 この「ゴルドベルグ変奏曲」はバッハが不眠症の友人のために作った曲だそうで、お話はそこから始まる。 主人公の「ぼく」は不眠症に悩む中学三年生。 球技大会をさぼってうろついていた、今は使われていない旧校舎の音楽室で、「ゴルドベルグ変奏曲」を弾く藤谷りえ子に出会う。 「ぼく」いわく、「聖母のような後光をしょってぼくの前に現れた」彼女は、不眠症の「ぼく」を親身になって心配してくれた。 聞けば彼女も不眠症なのだという。 しかも家庭はものすごく複雑で……。 毎回会うたびに彼女の家では、不倫だの遺産争いだのと、サスペンスドラマ並みの事件が次々と起こる。 そう、彼女には虚言癖があったのだ。 不眠症であることも複雑な家庭環境も全部ウソだった。 もちろん「ぼく」はそれを知って怒る。当然だ。 けれど、その後「ぼく」はいろいろな心の葛藤の末、彼女を受け入れるのである。 卒業式の日、彼女を抱きしめ、藤谷家のその後を一つ一つ質問していく場面がじんとくる。 「みごとなハッピーエンドだなぁ」 彼の優しさが沁みてくるいいシーンだ。 誰も足を踏み入れない旧校舎の音楽室、という場所がまたいいのよ。 薄暗い校内。黒ずんだ壁。ひっそりと眠るような静けさ。 別に泣くような話じゃないのに何だか泣けてくる。 青春だなぁ。 表題作である最後の「アーモンド入りチョコレートのワルツ」は、エリック・サティ。 主人公の奈緒、友達の君絵、エリック・サティに似ているからそう呼ばれているサティのおじさん。ピアノの先生の絹子先生。 この四人の、ちょっぴり現実離れしたお話。 ワルツと紅茶と手作りクッキーと、フロアランプの暖かな光。 突然風のように現れたサティのおじさんと過ごす日々。 これが、物語の中心である。 ……だが、私は出だしのところで、主要人物は絹子先生だと勝手に思い込んでしまっていて、魔女のように魅力的だった絹子先生がどんどん普通の人になっていくのが残念でならなかった。 突拍子もないことをやらかして常にハイテンションなサティのおじさんに反比例するように、絹子先生はどんどんふさぎ込んでいくのだ。 もう少し絹子先生が魅力的に描かれていたら、サティのおじさんの存在も生きてくるのにな、と私は思った。 でも、ワルツを中心とした異国っぽい雰囲気はすごく好きだなぁ。 何だかピアノを習いたくなってしまった。
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3つの短編それぞれにピアノ曲が流れていった。 「子供は眠る」には ロベルト・シューマンの子供の情景。 ふとした瞬間に当たり前と思っていたことに疑問を持つ、子供から少し大人になる瞬間は誰にでもあるはず。 「彼女のアリア」には J.Sバッハのゴルドベルグ変奏曲。 楽しいだけの時間で...
3つの短編それぞれにピアノ曲が流れていった。 「子供は眠る」には ロベルト・シューマンの子供の情景。 ふとした瞬間に当たり前と思っていたことに疑問を持つ、子供から少し大人になる瞬間は誰にでもあるはず。 「彼女のアリア」には J.Sバッハのゴルドベルグ変奏曲。 楽しいだけの時間ではないけど、好きだった時間ってあったなと思った。 「アーモンド入りチョコレートのワルツ」には エリック・サティの童話音楽の献立表。 表題のアーモンド入りチョコレートのワルツがどんな曲なのかがとても気になった。なんとなく人とは違うけど、一緒にいて楽しい人に出会えるのはいいなと思った。
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素敵だった。 読んだ後のこの気持ちって何だろう?と思ったことが、角田光代さんの解説にそのまま書いてあり…何だか嬉しくもあった。 大切なことをちゃんとわかっている中学生たち。 理屈や常識、大人が大事だと思っていることは、実はそんなに重要ではないのかもしれない。 〝ちょっと変〟だけ...
素敵だった。 読んだ後のこの気持ちって何だろう?と思ったことが、角田光代さんの解説にそのまま書いてあり…何だか嬉しくもあった。 大切なことをちゃんとわかっている中学生たち。 理屈や常識、大人が大事だと思っていることは、実はそんなに重要ではないのかもしれない。 〝ちょっと変〟だけど、愛のある関係が眩しかった。
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少年達の別荘での最後の一夏の一作目、 虚言癖の少女との旧校舎でのひとときと卒業の二作目、 ピアノ教室に現れた風変わりなフランス人のおじさんのサンタ姿での別れの三作目、 どれも繊細のピアノ曲にのせて「別れ」が描かれている。 しかしその「別れ」が、寂しくはあるが悲しく打ちひしがれる...
少年達の別荘での最後の一夏の一作目、 虚言癖の少女との旧校舎でのひとときと卒業の二作目、 ピアノ教室に現れた風変わりなフランス人のおじさんのサンタ姿での別れの三作目、 どれも繊細のピアノ曲にのせて「別れ」が描かれている。 しかしその「別れ」が、寂しくはあるが悲しく打ちひしがれるものではないところが森絵都らしく清々しい。 思春期特有の感覚がヒリヒリとして伝わってくる。
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直木賞作家、森絵都さんの作品。こちらは石文学賞を受賞。 自分はこうしいたい、でも人に優しくしたいと思っている、みたいなところは誰にでもあるものだと思います。もっと言えばうまくやりたい、うまくいってほしい、そして愛されたいと。そういう強弱はあれど、なかなかうまく制御できないもの。...
直木賞作家、森絵都さんの作品。こちらは石文学賞を受賞。 自分はこうしいたい、でも人に優しくしたいと思っている、みたいなところは誰にでもあるものだと思います。もっと言えばうまくやりたい、うまくいってほしい、そして愛されたいと。そういう強弱はあれど、なかなかうまく制御できないもの。そんな人たちに届く作品だと思います。 以下抜粋 - 生きていくのにこまらない財産があっても、それだけで人が生きていけるとはかぎらないでしょう。とくに絹子先生のような方は、ね。お母さん、絹子先生は今のお仕事を大事にされていると思うわ。教え子のひとりひとりを大事にしながら、逆にどこかで、そのひとりひとりに支えられている。そんな方だと思ってるわよ。(P.161)
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短編三作のうち、『子供は眠る』が個人的には一番好き。 どの作品も、いつの間にか自分も話に溶け込んでいき、秘密や真相が発覚した時、主人公目線で驚き楽しめる。 最後の章くんの一言も、ただのガキ大将だった青年から大人に変わる瞬間が見えて、ちょっと感動。
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自分が思春期のときに感じた気持ちでもあり、でもまた違うような感覚でもあり、不思議な世界に入ったようでした。
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ふとした物語 面白い 人に勧められ、あまり読まないタイプの小説だったが、良さがわかった 国語の教科書とかに載ってそう
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* 最後の夏のにおいだった。 * 主人公達は皆中学生の子ども。ピアノの調べに乗せておくられる心がきゅんとする短編集。 . 森さんの作品は優しい。鮮やかに情景がわかる感じ。中学生という多感な時期に起こる人と人との問題や変わらない優しさが描かれている。 .
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