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戦争における「人殺し」の心理学 の商品レビュー

4.3

74件のお客様レビュー

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戦争時だから人を殺し…

戦争時だから人を殺しても良いのではない、戦争を起こしている時点で悪なのだと考えねばなりませんね。

文庫OFF

2024/09/15

第二次大戦下のあらゆる軍隊において、兵士の発砲率は15〜20%であった。実に80%以上の兵士が敵兵に向かって銃を撃てなかった。多くの人は人を殺せない。戦場に行って敵に銃を構えてさえも、最後の最後で人は良心的兵役拒否者となりうる。 この発砲率は朝鮮戦争で約50%、ベトナム戦争で約...

第二次大戦下のあらゆる軍隊において、兵士の発砲率は15〜20%であった。実に80%以上の兵士が敵兵に向かって銃を撃てなかった。多くの人は人を殺せない。戦場に行って敵に銃を構えてさえも、最後の最後で人は良心的兵役拒否者となりうる。 この発砲率は朝鮮戦争で約50%、ベトナム戦争で約90%へと「向上」される。しかし、それは人間の本性に対する深刻な反動をもたらした。進むも地獄、戻るも地獄。それを乗り越えようとする試みは、悪魔の挽き臼だ。戦争の問題はもちろん、平和の問題も、勧善懲悪的に捉えてはならない。

Posted byブクログ

2024/05/01
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第二次大戦中、遭遇戦において火線に並ぶ15~20%の兵しか発砲しない 戦場では威嚇が効果的(威嚇射撃を好む) 19世紀(黒色火薬マスケット銃)の一連隊(200~1000人)射撃は、27m先の連隊に1,2人/分の損害しか与えられない。訓練では206m先で25%、137m先で40%、69m先に命中率60%。砲撃殺傷率は最高50%まで達する

Posted byブクログ

2023/08/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

戦争における近接戦闘において兵士に及ぼす心理的影響と、現代アメリカ社会(執筆当時)の教育における問題点を指摘した本。 兵士の直接加害行為への抵抗感と爾後のトラウマについてベトナム帰還兵のインタビューを通して仔細具体的に記述されており、生々しいがイメージが湧きやすい。また、精神的戦傷者の発生に係る距離(物理的、社会的、倫理的等)の問題や、これらを克服するためのオペラント条件付けや、権威の必要性、また加害前後の不安、加害、高揚、嫌悪、受容の段階等も実証的だ。 一方で、問題意識における殺人とセックスの類似性の指摘は置いておいても、筆者の問題意識への近さはやや論証を不正確にしている可能性がある(これは筆者が元軍人であるところかも来ているかもしれない)また、終盤では軍隊の訓練で用いられベトナムでの発砲率向上に貢献した条件付け等がアメリカでのビデオゲーム等の流行によって若者の凶暴化を進めているとの指摘は、現代では反証も多く提出されていると理解している。これはやや古典的な著作ゆえ仕方ないかもしれない。 全般を通してロジックはともかく、戦争の生の声が豊富に取り入れられているので、戦争のリアリティを知る上でも貴重だと思う。

Posted byブクログ

2023/01/07

戦争映画、特にベトナム戦争を題材にした映画の見方が変わるだろう。世界で起きている戦争について、主に一般市民の被害について同情し支援したいと感じていたが、徴兵されて参加する兵士の精神的被害も重大なのだと知った。武術が儀式化されて行ったのも人間的精神をたもつという意味があったのだろう...

戦争映画、特にベトナム戦争を題材にした映画の見方が変わるだろう。世界で起きている戦争について、主に一般市民の被害について同情し支援したいと感じていたが、徴兵されて参加する兵士の精神的被害も重大なのだと知った。武術が儀式化されて行ったのも人間的精神をたもつという意味があったのだろう。テレビや映画、漫画、ゲームはどんどん過激で生々しくなり、現代人は血生臭いシーンへの抵抗が薄れつつある。著者が言うように「なぜ人は人を殺さないのか」を見直す理由がある。

Posted byブクログ

2022/08/02

実際に戦場を経験したことがない人間からしたら信じられないような事実が多く、最初から最後まで飽きることなく読めた。最後の章の筆者の主張は賛否両論だろうが、戦闘における兵士の心理状況の分析は多数の資料や実験を元にしているため説得力がある。 「平均的な人間には同類たる人間を殺すことへの...

実際に戦場を経験したことがない人間からしたら信じられないような事実が多く、最初から最後まで飽きることなく読めた。最後の章の筆者の主張は賛否両論だろうが、戦闘における兵士の心理状況の分析は多数の資料や実験を元にしているため説得力がある。 「平均的な人間には同類たる人間を殺すことへの抵抗感が存在する」という当たり前なのに、戦争において全く考慮されてない事実を前提に話が進んでいく。 「なぜ兵士は人を殺せないのか」をインタビューや記録をもとに解明したあと、その抵抗感を克服させるための心理プロセスや実際に軍で行われる訓練の紹介がある。そのため、その心理プロセスや訓練の理由が分かりやすかった。その訓練の代償としてのPTSDにも触れられており、この本を読んだ後にPTSD関連の書籍を読めばより理解が深められると思う。

Posted byブクログ

2022/04/24

非常に面白かった。 一次大戦までは発砲率が15%で、ベトナム戦争で90%まで上がり、それにはプログラミングとも言える戦闘員の訓練が関わっていたということろの理解は非常に面白い。 プログラミングとは、いわゆる条件付けで、 古典的条件付け・オペラント条件付け・社会的学習の3つ。 こ...

非常に面白かった。 一次大戦までは発砲率が15%で、ベトナム戦争で90%まで上がり、それにはプログラミングとも言える戦闘員の訓練が関わっていたということろの理解は非常に面白い。 プログラミングとは、いわゆる条件付けで、 古典的条件付け・オペラント条件付け・社会的学習の3つ。 この条件付けに脱力感や同調圧力などが加わることで、思考停止して発砲することができるようになった。 特に本書のメッセージとしては、この社会的学習におけるポイントであり、戦時中の殺人を可能にする訓練である、訓練中から、リアルな挙動をする人形に向けて発砲する練習をすることで、本番でも可能になることや、その発砲することが正しいという洗脳などが、若い人間の日常生活の中に溶け込んでしまっているということ。 つまりテレビゲームにおけるリアルな挙動の殺しや、映画による男らしさ価値観の蔓延などにより、日常生活においても殺しが容易になっているという主張。 それを裏付けるように、アメリカにおける犯罪率は上がっているということ。 確かによく聞くのは、アメリカの若者の価値観として舐められたらやり返すなどの男らしさ価値観や、自己責任価値観が重要視されているということ。 さらにリアルな残虐表現が好まれる、また銃が身近であるということなどを考えると、特に若い思考が浅い年代ではそれに呼応し、非常に攻撃的になるということはよくわかる。 逆にそういった価値観がない例えば日本人などは、男らしくない、と捉えられ、その価値観の中ではモテない、みたいな構造もある気がする。 集団を統べる上で、価値観を提示すること、ある種の思考停止に陥らせることなどは非常に重要なのだと思った。

Posted byブクログ

2022/04/23

人が人を殺すことの心理的抵抗感は極めて大きく、戦場において実際に発砲して敵兵を殺す(殺そうとする)兵隊はごく一部(第二次大戦時に20%)にすぎない。 その率を上げるためにオペラント条件付けを活用したトレーニングで兵を強化して戦場に送り込むと、ベトナム戦争では90%を超えるようにな...

人が人を殺すことの心理的抵抗感は極めて大きく、戦場において実際に発砲して敵兵を殺す(殺そうとする)兵隊はごく一部(第二次大戦時に20%)にすぎない。 その率を上げるためにオペラント条件付けを活用したトレーニングで兵を強化して戦場に送り込むと、ベトナム戦争では90%を超えるようになったという。 しかし、人が人を殺すことの心理的抵抗感を緩和するような対策がなされずにこれを実現したことが(アメリカ本国での反戦運動の高まりなどの影響もあるが)、PTSDの多発に結びついたと。 ホロコーストでさえ「無意味な虐殺」といったレッテル貼りをよしとせず、虐殺にもそれに内在する論理があるとして分析の対象にする。 プラグマティズムの国はさすがに違う。 直視しづらい事象に分析の目を向けて、改善(といえるのかどうか)してしまう。 日本人(個人ではなく総体として)にこういうことができるのだろうか? たとえば自衛隊員が戦闘で人を殺すことになった場合の心理的な影響について議論することができるのだろうか? 自衛隊の内部で研究はしているのだろうけど、それを国民的な議論に発展させられるのだろうか? 「太陽にほえろ!」で、初めて犯人を射殺したマカロニ刑事が号泣しながら許しを請う回があった。 私自身は子供だったせいもあるけどピンとこなかった。 しかし、1970年代初頭という、第二次世界大戦の記憶が残っている世代が多かった時代には共感する人が多かったのかもしれない。 そして、現在において、ああいう表現がメジャーなドラマでなされうるのだろうか?

Posted byブクログ

2022/04/03

戦場に行ったことがない我々には想像する事しかできない「戦場の兵士の心理」を、兵士のインタビューと古今東西の戦闘記録から客観的に知る事が出来る良書。 なぜ軍隊の訓練は厳しいのか、兵士はなぜ戦場の話をしないのか、なぜ原爆は戦争を止めたと彼らは賞賛するのか。といった疑問が解ける。またブ...

戦場に行ったことがない我々には想像する事しかできない「戦場の兵士の心理」を、兵士のインタビューと古今東西の戦闘記録から客観的に知る事が出来る良書。 なぜ軍隊の訓練は厳しいのか、兵士はなぜ戦場の話をしないのか、なぜ原爆は戦争を止めたと彼らは賞賛するのか。といった疑問が解ける。またブラック労働環境に従事する現代人のストレスにも当てはまる所が多い。 戦争ものやアクション映画、特に「虐殺器官」や「進撃の巨人」の対人戦闘を行うあたりの事を思い起こしながら読んだ。 創作する人には特に読んでほしい。

Posted byブクログ

2022/02/03

含蓄に満ちた良書。博覧強記という言葉が真っ先に頭に浮かんだ。理性的な文章にどこか生身の暖かさを感じる。 自らも一兵士であり、軍事史と心理学への造詣深い著者の知恵と知性、膨大な知識量、冴え渡る分析力、飛躍のない論理展開、それでいて文学的な薫り高い文体に圧倒される。 戦場の兵士やベ...

含蓄に満ちた良書。博覧強記という言葉が真っ先に頭に浮かんだ。理性的な文章にどこか生身の暖かさを感じる。 自らも一兵士であり、軍事史と心理学への造詣深い著者の知恵と知性、膨大な知識量、冴え渡る分析力、飛躍のない論理展開、それでいて文学的な薫り高い文体に圧倒される。 戦場の兵士やベトナム戦争への対処にとどまらず、社会全体はどうあるべきか、それぞれの国家はどうあるべきかという普遍的な問題への回答、そして同類殺しに原来強烈な忌避感を覚える人間の希望も描き出した力作。 この人材を生み、惜しみなく研究に必要な情報を与え、この大作を書かせたアメリカに覇権国家の凄みを感じる。 訳者あとがきにもあるように、戦後日本の癒されぬ傷にも重要な視点を与えてくれるし、メディアの表現や今なお様々な地域で続く紛争に対して思考停止することがないよう導いてくれる名作だと思う。

Posted byブクログ