回転木馬のデッド・ヒート の商品レビュー
聞いた話を物語(小説)にした短編集。ただ聞いた話をそのまま文章にすればいいわけではなく我慢強さというフィルターをとおして、村上氏自身のなかに溜まっていってこの物語を作ったと序文で言っている。人から聞いた話だからリアリティなのかと言えば、なんかちょっと不思議なこともあったりして、や...
聞いた話を物語(小説)にした短編集。ただ聞いた話をそのまま文章にすればいいわけではなく我慢強さというフィルターをとおして、村上氏自身のなかに溜まっていってこの物語を作ったと序文で言っている。人から聞いた話だからリアリティなのかと言えば、なんかちょっと不思議なこともあったりして、やっぱりそこは村上春樹っぽさ(視点)なのかなあとか。 個人的には「雨やどり」と「ハンティング・ナイフ」が好きでした。ハンティング・ナイフの最後はどういう意味だったんだろう。 「野球場」では「小さな灯というのはとてもいいもんです。僕は飛行機の窓から夜の地上を見下ろすたびにそう思います。小さな灯というものはなんて美しくて温かいんだろうってね」というセリフは『グレート・ギャツビー』のギャツビーが見つめる灯のシーンぽいような気もした。
Posted by
村上春樹が人から聞いた実話に基づく短編集. 本人曰く, 「小説というのはあらゆる現実的なマテリアルを大きな鍋に一緒くたに放り込んで原型が認められなくなるまでに溶解し, しかるのちにそれを適当なかたちにちぎって使用する」ものらしい. 嘔吐1979, 野球場, ハンティング・ナイフ...
村上春樹が人から聞いた実話に基づく短編集. 本人曰く, 「小説というのはあらゆる現実的なマテリアルを大きな鍋に一緒くたに放り込んで原型が認められなくなるまでに溶解し, しかるのちにそれを適当なかたちにちぎって使用する」ものらしい. 嘔吐1979, 野球場, ハンティング・ナイフなどのいくつかの話は, めくらやなぎと眠る女の短編集で読んだ記憶がうっすらとある. それらのスケッチが語られる機会に恵まれてよかった. 『野球場』における覗き見は, 知識や真実を追求することの代償を描いているのだろうか. 無知は幸福という言葉があるように, 何かに対する知識や理解は必ずしも解放や幸福をもたらすものではない. それでも人間は, その代償を払ってでも, 真実を知りたいと願う生き物である. 絶対的なものを求めて, 何かを覗くことで, 今あるものを破壊し続けるのは何ともギリシャ神話的なアイロニーを感じる. 少し脱線するが, 江戸時代の見せ物に, 覗きからくりというものがあったらしい. 覗きからくりは箱の中に小さな舞台があり, 覗き穴から箱の中で行われる演劇を鑑賞する娯楽だが, これは現在のアニメ, 漫画, 映画の先駆けともなったと言われているらしい. よく考えてみたら, それらの娯楽も人の人生を覗き見しているようなものなのかも. 覗き見の魅力は計り知れない. 覗きについて考えていたら, バタイユの思想について知りたくなってきた. でも, あれ難しいんだよな… 「他人の話を聞けば聞くほど, そしてその話をとおして人々の生をかいま見れば見るほど, 我々はある種の無力感に囚われていくことになる. おりとはその無力感のことである. 我々はどこにも行けないというのがこの無力感の本質だ. 我々は我々自身を嵌め込むことのできる我々の人生という運行システムを所有しているが, そのシステムは同時にまた我々自身をも規定している. それはメリー・ゴーラウンドによく似ている.それは定まった場所を定まった速度で巡回しているだけのことなのだ. どこにも行かないし, 降りることも乗り換えることもできない. 誰も抜かないし, 誰にも抜かれない. しかしそれでも我々はそんな回転木馬の上で仮想の敵に向けて熾烈なデッド・ヒートを繰り広げているように見える」
Posted by
日頃短編集というものはあまり好まない私でも、楽しく、軽やかに読むことができた。言わば本書は村上作品を嗜む上でのウォーミングアップといったところだろう。 いくつか気に入った話があるが、その一つは「タクシーに乗った男」である。この話には非常にロマンがあり、「現実に起こり得ないようで...
日頃短編集というものはあまり好まない私でも、楽しく、軽やかに読むことができた。言わば本書は村上作品を嗜む上でのウォーミングアップといったところだろう。 いくつか気に入った話があるが、その一つは「タクシーに乗った男」である。この話には非常にロマンがあり、「現実に起こり得ないようで起こり得ることがあるのだ」という人生に対する期待感を持たせてくれる。 また、「ハンティング・ナイフ」という話に関しても、スプートニクと同様、やはり村上春樹にリゾート地を描写させたらピカイチだと思った。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
小説ではなく、聞いたままの話を文章にうつしかえたものの集まり。(作中ではスケッチと表現)。 確かに、何かの示唆だとかテーマ性を持っているだとかいうお話達ではない、だけど面白い。 ただ、下記の文章は刺さりました。 『自己表現が精神の解放に寄与するという考えは迷信であり、好意的に言うとしても神話である。少なくとも文章による自己表現は誰の精神をも解放しない』 『自己表現は精神を細分化するだけであり、それはどこにも到達しない。もし何かに到達したような気分になったとすれば、それは錯覚である。人は書かずにいられないから書くのだ。』 お気に入りは、 ある女性の母が、ドイツで半ズボン(レーダーホーゼン)を買う際に離婚を決意するに至った『レーダーホーゼン』 画廊の女性オーナーが、かつて一番衝撃を受けた絵について話す『タクシーに乗った男』 『今は亡き王女のための』も淡いエッチな感じと喪失感が程よい。 ラストの『ハンティング•ナイフ』が一番わからなかった…
Posted by
「野球場」の話はいい。彼の心境も少しわかる。歳が近いからだろうか。 「ハンティング・ナイフ」は描写が上手い。いくらかそう書くのかぁと思う表現があった。
Posted by
センテンスも分かりやすく情景がリアルに思い描けた。 やはり何となくオシャレ。 どの編も異性との距離感がテーマのようだ。 日常の些細なことも角度を変えれば物語になるんだな。その辺りがセンスなんだろうと思った。
Posted by
最後のハンティングナイフが印象的だったな 精神疾患の母と足の悪い息子 別れる前に打ち明けるだなって 訳あり親子なんだろうなって想像してたけれど 精神疾患は自分も一時なったけど、他人に言われたくない気持ちもあるし抵抗感あるかな 作者が野球好きなん知ってたけど神宮球場周辺の話じゃな...
最後のハンティングナイフが印象的だったな 精神疾患の母と足の悪い息子 別れる前に打ち明けるだなって 訳あり親子なんだろうなって想像してたけれど 精神疾患は自分も一時なったけど、他人に言われたくない気持ちもあるし抵抗感あるかな 作者が野球好きなん知ってたけど神宮球場周辺の話じゃないんやって思いながら野球の話読んでたなw 村上春樹作品ほど単語の意味調べる本はないw
Posted by
家庭を奇妙って言ったり生を他者の死の喪失感によって規定されるとか言ったり、普段向き合おうとしない1つ1つの言葉に新たな視点を持たせてくれる文章が本当に大好き
Posted by
何度読んだか分からないけれども。 1、2日で読めるため、息抜きに良い。 収録作品では、「タクシーに乗った男」「雨やどり」が好きかなあ。
Posted by
不思議な短編小説 冒頭のこの小説のスタンスについての説明がとても好きだ あくまでどこにもいかない、ただただ書かれることを望んだ物語たち こういうのもっと読んでいたい
Posted by