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惜別 の商品レビュー

3.9

47件のお客様レビュー

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2010/06/12

太平洋戦争下に書かれた『惜別』は当局の要請に応えた国策小説であり、日本の国体及び天皇親政が賛美されています。このような小説が生み出されたこと、太宰治もそれに答えざるをえなかった時代のあったことを、私たちは知っておくべきなのかもしれません。 他に『右大臣実朝』を収録。

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2010/06/05

 惜別は、魯迅の日本留学を同級生の私が綴ってゆく。唯一の翼賛文学会からの執筆依頼作品。とはいえ、時代におもねったところはない。  右大臣実朝は私の最も好きな作品。北条支配の形式化した鎌倉三代将軍、歌人としても名を馳せた源実朝の「滅びの美学」。女官の目から見た耽美的かつ芯の通った文...

 惜別は、魯迅の日本留学を同級生の私が綴ってゆく。唯一の翼賛文学会からの執筆依頼作品。とはいえ、時代におもねったところはない。  右大臣実朝は私の最も好きな作品。北条支配の形式化した鎌倉三代将軍、歌人としても名を馳せた源実朝の「滅びの美学」。女官の目から見た耽美的かつ芯の通った文章で描く。

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2010/04/20

表題の作品と、「右大臣実朝」を収録。 「右大臣実朝」 作者である太宰治の理想像がこの実朝であったらしい。完全に俗世間から離れたものの見方や立ち振る舞い、和歌の類まれなる才能(歴史の教科書にも出るくらい)。 語り手のものの見方は現在の「みんな同じ人間なんだ」的な思想とは一線を画して...

表題の作品と、「右大臣実朝」を収録。 「右大臣実朝」 作者である太宰治の理想像がこの実朝であったらしい。完全に俗世間から離れたものの見方や立ち振る舞い、和歌の類まれなる才能(歴史の教科書にも出るくらい)。 語り手のものの見方は現在の「みんな同じ人間なんだ」的な思想とは一線を画している。という感じで初めはなかなか読み進めるのに苦労した。が、明らかにこの本を読んで自分の世界観は広がった気がする(気がするだけかも)。 実朝以外の主役級の登場人物はどの人もいい感じで人間味を帯びていて、そのあたりは、さすが太宰治といったとこだと。 「惜別」 自分が学生だからであろうか、若い魯迅の悩みが非常に心に残る。支那の杉田玄白になる、という理想を掲げ、日本に医学を志して留学してきた時の魯迅の思いがどう変わっていくか。 青年が理想を抱きながら、現実に直面し、悶々と悩み続ける心理を表した小説といった見方もできると思う。 「奴隷の微笑」という魯迅がモーセの話に出てくる怠惰な民衆(奴隷)を指し、又、語り手が変革後の魯迅を指して言った言葉が気になった。

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2010/02/18

一つ目の作品は太宰が主人公、右大臣実朝に自己を投影した作品らしいが、古文の部分が読めないので太宰が書いた部分だけ読んだがあまり私には面白くなかった。 二つ目の惜別は大変面白かった。物語として。思想云々というつもりは全くない。

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2009/12/24

魯迅が仙台に留学していた時期を扱った作品。 魯迅の作品の中にもある「藤野先生」がでてくる。 太宰が国に要請されて書いた唯一のもの。

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2009/10/26

東北大学医学部の前身、仙台医専に留学していた頃の魯迅を、 東北の一老医師であり、当時の魯迅の親友が語るという設定で、 藤野先生、周君(魯迅の本名)らの純粋な対人関係が描かれています。 魯迅の語る偽善や革命運動家への疑問などを通して太宰自身の思想が、 とても色濃く反映されて...

東北大学医学部の前身、仙台医専に留学していた頃の魯迅を、 東北の一老医師であり、当時の魯迅の親友が語るという設定で、 藤野先生、周君(魯迅の本名)らの純粋な対人関係が描かれています。 魯迅の語る偽善や革命運動家への疑問などを通して太宰自身の思想が、 とても色濃く反映されており、普通の伝記としての魯迅伝とは、 若干異なる作品ではある、という旨を念頭に置いて読むことが、 望ましいと思われる本です。

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2009/10/26

これが戦時中、国の依頼で書かれたとは驚き。太宰にしては珍しい作品ではあるが、太宰の精神は発揮されている。

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2012/01/04

時代としては太平洋戦争中、 太宰文学としては中期後半に書かれた 長編二作が収録。 「右大臣実朝」は、 源頼朝と北条政子の子として生を受け、 年若くして征夷大将軍となり、 28歳で甥の公暁に暗殺される源実朝の半生を、 その死によって源氏の将軍は 三代で途絶える事となった悲劇の年若...

時代としては太平洋戦争中、 太宰文学としては中期後半に書かれた 長編二作が収録。 「右大臣実朝」は、 源頼朝と北条政子の子として生を受け、 年若くして征夷大将軍となり、 28歳で甥の公暁に暗殺される源実朝の半生を、 その死によって源氏の将軍は 三代で途絶える事となった悲劇の年若き権力者の姿を 傍で仕えた従者の視点から語った作品。 謀略や抗争といった血生臭い場所に身を置き、 自身の破滅、源氏の破滅に向かって静かに進みつつも、 真の貴族であり、「金塊和歌集」などを生み出した 優れた歌人であった実朝。 「アカルサハホロビノ姿デアロウカ。 人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。」 そんな彼の発する言葉は、本作品において 片仮名と漢字で書き記されており、 世間一般の凡人とは違った、 崇高な光に、と言ったら良いのか、 どこか浮世離れした空気に包まれている。 一番世俗に触れているはずなのに、 自らの意思か何かの力で それからかけ離れてしまっているような存在である。 吾妻鏡の原文と語り手である従者の当時の思い出話、 そして実朝の片仮名交じりの言葉が複雑に入り組み、 いつの間にか読者は迷宮を通って 御所の実朝の前に導かれたような錯覚に落ちるかもしれない。 大変緻密に作られた作品である。 「惜別」は、中国の革命家魯迅の 仙台留学時代を、彼と同級生であった 片田舎の老医師の回顧録といった形で描いた作品。 こちらは、作者の意図から 大きく乖離してしまうかもしれないが、 いつの間にか太宰の魂が乗り移ってしまった 中国人留学生の「周さん」、若き日の魯迅の 徐々に変化を辿って行く心の過程も興味深いが、 自分はどちらかと言うと、 彼の周りの人物達の様子に心惹かれた。 恩師である藤野先生の彼に対する慈愛、 本作品の語り手である田中卓君、 世話焼きのおっちょこちょいの津田憲治君の 「周さん」を囲んでのどたばたぶりが なんとなく温かくて、そして優しくて、 私は好きだ。 ひっそりと行われた教師の心遣い、 同級生達の無邪気な行動によって 「分かり合えない」疎外感や孤独、 憂国の想いに苛まれた周さんの青春時代は、 息苦しく暗いものとなってしまうはずのものから、 決してそれだけではなかった、 愛おしい、懐かしさを覚えるような想い出に 変わっていったのではないだろうかと そんな想像をさせられてしまう作品なのである。

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2009/10/04

そういえば「右大臣実朝」を読んでなかったなあと思って借りて来ました。時代背景がそうさせるのか、解釈が古いと感じる部分もあり、太宰治がもっと長生きしていたら、また違った作品も生まれていたのかなあとチラリと思った。 いや、太宰生誕100年って新聞記事の下に、男性長寿世界一の方が113...

そういえば「右大臣実朝」を読んでなかったなあと思って借りて来ました。時代背景がそうさせるのか、解釈が古いと感じる部分もあり、太宰治がもっと長生きしていたら、また違った作品も生まれていたのかなあとチラリと思った。 いや、太宰生誕100年って新聞記事の下に、男性長寿世界一の方が113歳で亡くなったという記事が載っていたのです。考えてみたら、太宰治より早くに生まれた方が、最近までご存命だったんですよねえ(ていうか、今でも太宰より年上でお元気な方がたくさんいらっしゃるわけで……)。そこまで長生きしなくても、永井路子作品あたりを読んでみて欲しかった……かも。とはいえ、これはこれ。歴史の解釈云々を抜きにひとつの作品としては面白く読みました。「惜別」も興味深く。

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2009/10/04

「右大臣実朝」「惜別」ともに良かったです。 「実朝」は特に引用文のところが読むのに時間がかかった。 太宰はこういう作品も書いていたんですね。

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