カラマーゾフの兄弟(下) の商品レビュー
帯にある「上巻を読むのに1ヶ月、中下巻を3日」その通りでした。 海外文学が得意ではない私が偉そうな助言をしてみると 「分からなくても最後まで読め!」に尽きます。 ロシアの農奴制や、ローマ・カトリックやロシア正教など 日本人の私達にとっては馴染みのない文化や思想が重要視されており、...
帯にある「上巻を読むのに1ヶ月、中下巻を3日」その通りでした。 海外文学が得意ではない私が偉そうな助言をしてみると 「分からなくても最後まで読め!」に尽きます。 ロシアの農奴制や、ローマ・カトリックやロシア正教など 日本人の私達にとっては馴染みのない文化や思想が重要視されており、随所に散りばめられています。 その時点で躓くと話が見えないのが常ですが、下巻に於いて華麗な程に全ての伏線を回収していて驚きました。 ややこしい程の大人数が登場し、人物ひとりひとりに確固たる信念があるにも関わらず捨て駒ではなく最後に全員綺麗に纏め上げる。恐ろしく計算し尽くされた完璧な文章だと感じました。 まず真実の物語(事件発生時のリアルタイムでの登場人物の動向)が描かれているにも関わらず、 裁判に至るまでや裁判での弁論で、様々な人々の感情に基づく台詞の数々(ヒステリーを起こす女や、譫妄症の証言など)が飛び交いどんどん何が真実か分からなくなっていきました。 正にドストエフスキーの術中に嵌められた気分です。 解説にもありましたが、ドストエフスキー自身が幼少期の苦しい思い出や父の惨殺、自身の癲癇などに苦しんでおり カラマーゾフの兄弟それぞれに自己を投影している部分があったように思います。 その中でアリョーシャという絶対善の弟に彼なりの「魂の救済」をかけて描いたのではないか、と感じました。
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ほとばしる情熱、感情。 ドミートリイの裁判の結末は。 カーチャとグルーシェニカや、スネギリョフって誰だっけ等忘れるところもありましたが。 カラマーゾフ家の発言が少なかった。どこに行っても、どんなにみすぼらしくなっても、カラマーゾフはカラマーゾフだろう。
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ようやく、ようやくの読了。 他の読書と並行していたので、何年もかかってしまいました。 ドストエフスキーは前のめりになって、燃え盛るように登場人物に語らせるのですが、 (紙に食いつくように、ガリガリとペンを走らせる彼の姿が見えるようです) それがドストエフスキー自身の台詞ではなく...
ようやく、ようやくの読了。 他の読書と並行していたので、何年もかかってしまいました。 ドストエフスキーは前のめりになって、燃え盛るように登場人物に語らせるのですが、 (紙に食いつくように、ガリガリとペンを走らせる彼の姿が見えるようです) それがドストエフスキー自身の台詞ではなくて、それぞれの登場人物の、 各個の哲学をもって語らせるのが、本当に面白い。 登場人物の姿を借りて、彼自身が語っているのではないのです。 ドストエフスキー自身が、憑依型の役者のようなところがあるのでしょう。 あとがきで『カラマーゾフの兄弟』は未完であるということが書かれていました。 また小林秀雄が「未完とは思えないほど完成された小説だ」と言ったことも。 しかし私には、アリョーシャの中に滾るようなエネルギーを感じていて、 それが未だ発散されずに物語が終わってしまったような感覚を覚えています。 登場人物が多いだけに目立たない部分ではあるかもしれませんが、 彼の天使のような振る舞いのなかに、グツグツと煮えたぎる何かを感じるのです。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
3か月近くかかったとはいえ、大した苦も無く読み切れたのは、波乱万丈のストーリー展開とキャラクターの魅力だと思う。 ごめんなさい、キリスト教に関する話とか、古典文学の辺りはななめ読みで雰囲気しか読んでいません。 『なぜって、俺はカラマーゾフだからさ』というドミートリイのやさぐれた開き直り、 アリョーショの前で散々、ゾシマ長老のありもしないでたらめのエピソードを持ち出して貶めた後、『イワン、俺が嘘っぱちを並べたてていたのに、どうして止めてくれなかったんだ、イワン……嘘つきと言ってくれなかったじゃないか?』『そのうち自分でやめるだろうとわかっていましたからね』こういうぐだぐだながら軽妙なやりとりも良い。 本当は大審問官などきちんと読まなければならないのだろうが、今回はこれで・・・また再読したい、とは思うが・・・。
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いわずと知れた永遠の名作。 ミーチャ。イワン。アリョーシャ。この三人で全ての人間が説明できるのではないかと思うほど。 アリョーシャに憧れながら、イワンのような自分が悲しい。
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世界的文学作品というのはどういうものなのか?フラットな気持ちで読んでみた。冷静に見ると、形としては滅茶苦茶なところがあるし物語の流れもスマートとはいえないと思う。サスペンス的な要素を含む話の骨格の周りに沢山の視点と物語がある。流石の文量なのでそれぞれに厚みがあり世界がある。百年以...
世界的文学作品というのはどういうものなのか?フラットな気持ちで読んでみた。冷静に見ると、形としては滅茶苦茶なところがあるし物語の流れもスマートとはいえないと思う。サスペンス的な要素を含む話の骨格の周りに沢山の視点と物語がある。流石の文量なのでそれぞれに厚みがあり世界がある。百年以上前の小説に「萌え」をみたり。親子、兄弟、恋愛、友情。お腹いっぱいの作品。一言で言うのは難しい。読んだ。印象を持った。というのは財産だろう。読み応え、という点では間違いなく一級品。ドストエフスキーの別の作品も読んでみようかなと思うくらいの読み応えはあった。読むのが大変だった。が、また読み返したいなと早くも思う不思議な作品。
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ようやく下巻読了。内容のせいもあり、結構しんどかった。ロシア正教はじめ当時のロシアのことを伺い知ることができる。 また、普遍的に魂が震えるような場面もある。 流石傑作。最後の終わり方は素晴らしい。
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検事イッポリートと弁護士フェチュコーヴィチの対決。「全体の状況を見ると被告が有罪としか思えない。しかし、個々の証拠を精査すると決定的な事実は何一つ出てこない。」 この部分だけを法廷劇として切り取っても凡百の小説より遥かに面白い。 秩序とは、家庭とは、刑罰とは、良心とは。それぞれ...
検事イッポリートと弁護士フェチュコーヴィチの対決。「全体の状況を見ると被告が有罪としか思えない。しかし、個々の証拠を精査すると決定的な事実は何一つ出てこない。」 この部分だけを法廷劇として切り取っても凡百の小説より遥かに面白い。 秩序とは、家庭とは、刑罰とは、良心とは。それぞれのテーマについて検事と弁護士が持論を展開し、聴衆に訴える。ディベートの手本になる題材とも言える。 前半、リアル中二、コーリャの青臭い生意気さにイラっとさせられるが、そのあと読み進めて、中二病が完治していないイワンが、悪夢で昔の黒歴史を暴露されて恥ずかしさで死にそうになるシーンには苦笑してしまった。 再読してよかった。
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裁判の検事と弁護士のやりとりはすさまじかった。彼らの主張がほとんど綺麗に対になっているのが、彼らには明らかになってない幾つかの事象に対する解釈の違いのせいだすると、たとえばスメルジャコフの告白を記した語り手とはどういう立場なのか、が気になる。
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2017年1月31日読了。 裁判の描き方異常じゃない? これを書けるのは凄いし、ラストは未完とは思えない完璧さ。
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