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カラマーゾフの兄弟(下) の商品レビュー

4.4

215件のお客様レビュー

  1. 5つ

    103

  2. 4つ

    60

  3. 3つ

    24

  4. 2つ

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2024/07/13

好色で吝嗇、品性下劣なフョードル・カラマーゾフの下に生まれた3人の兄弟――激情的で心の弱いドミトーリイ(ミーチャ)、賢く冷笑的なイワン、純朴で信仰深いアリョーシャ。物語は、信仰の意味をめぐる問い――神がなければ、すべてが許され、人は何事をもなしうるのか?――を背景におきながら、ひ...

好色で吝嗇、品性下劣なフョードル・カラマーゾフの下に生まれた3人の兄弟――激情的で心の弱いドミトーリイ(ミーチャ)、賢く冷笑的なイワン、純朴で信仰深いアリョーシャ。物語は、信仰の意味をめぐる問い――神がなければ、すべてが許され、人は何事をもなしうるのか?――を背景におきながら、ひとりの女性と金をめぐる父と子の対立から、殺人事件の発生と裁判劇に展開していく。 キリスト教が維持してきた規律を否定してしまったとき、社会はどうなるのか、人間の良心は耐えられるのか、とは、現代のわれわれから見ると、あまりに大上段すぎて的外れな問いに思えるけれど、当時の大変動の中にあったロシア社会においては深刻な問題だったのだろう。現代でいえば、グローバル化の波によって国民国家や地域社会が崩壊してしまったら、人は「自由」に耐えられるのか、それとも自ら宗教やナショナリズムの軛を求めるのか――という問いに匹敵するのではなかろうか。 特に、イワンが語る「大審問官」の寓話は普遍的な真実を突いていて、もっとも印象的な部分だ。現世によみがえったキリストに対し、異端審問で民衆を盲従させている大審問官が、人は自由の重みに耐えられはしない、人々にパンをあたえて自由を手放させてやるという重荷を担う少数者が必要なのだと論じる。これをキリストは黙って微笑みながら聞き、最後に大審問官にキスをするのだ。だがもしも「愛」をもって答えとすることをよしとしないのであれば、私たちは、耐えられない自由の重さという問題に、どのような答えを提出しうるのだろうか? みなに尊敬されていたゾシマ長老の死体が、期待に反して腐臭を発したときに引き起こされる秩序の崩壊と悪意の噴出を描いたシーンも、恐ろしく衝撃的であり、その後の歴史の暗示にさえ見えてくるくらいだ。 宗教的要素が強く打ち出されているために、一見、現代においては関連性を失っているように見えて、時代の秩序の崩壊と人間の自由と倫理という、時代を超えて届く重みのある問いを差し出している小説と受けとめた。 ただ、これだけ魅力的なテーゼを提出していながら、物語全体に力強い一貫性が欠けているように見えるし、キャラクターも弱すぎるように感じる。アリョーシャは面白みのない善人にすぎないし、冷笑的に既存の秩序を否定してみせるイワンやスメルジャコフでさえ、良心の重みに耐えかねて自ら死に赴いてしまう脆さを露呈する。『悪霊』のスタヴローギンやペトルーシャほどの悪の魅力が感じられない。 結論からいえば、ドストエフスキーの小説の中で、これが最高の傑作とは、私には思えません。『悪霊』の方がずっといい小説だと思う。 もっとも、ひさしぶりにドストエフスキー読んで、人間観察の鋭さにはあらためて舌を巻きました。クズなふるまいをするために軽蔑されているフョードルが、だからこそもっとクズなふるまいに走る心理だとか、相手を愛してもいないくせに、傷つけられたプライドを愛と思いこんで突っ走るカテリーヴナとか。そしてもちろん、スメルジャコフの指摘に、はじめて自身の責任と怯懦とを自覚するイワンの衝撃。さまざまに魅力的要素をはらんだ小説であることには間違いないと思います。

Posted byブクログ

2014/07/11

「神がいなければ、全てが許される」 いまいちピンとこないのは自分が罪の文化でなく恥の文化に棲む一日本人だからでしょうか。 宗教論から恋愛論まで様々な要素がからみ合って読み応えの凄い本でした。というか、もう何周か読まないと全体像を把握できなさそうです… 3人の兄弟の中でひとりアリョ...

「神がいなければ、全てが許される」 いまいちピンとこないのは自分が罪の文化でなく恥の文化に棲む一日本人だからでしょうか。 宗教論から恋愛論まで様々な要素がからみ合って読み応えの凄い本でした。というか、もう何周か読まないと全体像を把握できなさそうです… 3人の兄弟の中でひとりアリョーシャだけが未来志向のエピローグを迎えたのは、貴族的なドミートリイでも西欧被れのイワンでもなく、民衆に寄り添うアリョーシャ的なあり方にこそ、作者がロシアの未来を感じていたからなんでしょうね。

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2014/08/22

「カラマーゾフ万歳!」最後の少年たちの叫びに、共鳴する思いがした。 何が真実で何が嘘なのか、饒舌には要注意だと検事の論で頭を冷やされた私なのに、弁護士の論がミーチャの味方だったばかりに彼の論に拍手をしかねなかった。 それに比べて「…この点だけは弁護士の言ったとおりです。」と兄に言...

「カラマーゾフ万歳!」最後の少年たちの叫びに、共鳴する思いがした。 何が真実で何が嘘なのか、饒舌には要注意だと検事の論で頭を冷やされた私なのに、弁護士の論がミーチャの味方だったばかりに彼の論に拍手をしかねなかった。 それに比べて「…この点だけは弁護士の言ったとおりです。」と兄に言うアリョーシャは他人の饒舌に全く揺るがない。それは単に彼が強く信じる他の何ものかを見つけていたからだ。自分に見える真実とは信念のことに他ならないことを強く感じた。(私がミーチャの無罪を主張するばかりに弁護士の論を全面的に支持してしまったように) イワンのように真実を見極めようとする人間は自分が何を信じ、何を信じないのかで苦悩する。 人間は見たいものを見て、信じるものを真実だと思い込む。つまり信念とは真実そのものなのだとしたら、私は何を信じるのか?どんな世界に生きたいのか? 純粋な3人兄弟に幸あれ。 追伸 純粋に信じてしまうことの危うさは? 信じる人は救われるというのは当人が当人の信念によって揺るがないというだけの話で、信念が強ければ強いほどその人は自分の生きる道が鮮明になり、救われるだろうが、その人の外部に位置する人にとっては全く違うのでは? つまり、信じるものを真実にしてしまうのではなく、目の前の真実に見えるものはちっぽけな自分が信じているものに過ぎないことを自覚し、自分の世界にひび割れをいれておかないと、他人の痛みや意見を排除してしまうのではないか。 信じるものは救われるかもしれないが、イワンのような生き方もまた素晴らしいんじゃないのか?

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2014/01/10

ついに読んだ。 実に2週間ほどかかって、やっとこさ読了いたしました。疲れた~。 昨年2013年の目標として、『月に1作品、文豪といわれるような人が書いた古典文学を読もう』と思い立ち、はや一年。 太宰治の「人間失格」から始まって、奇数月は日本の偶数月は海外の作品を手に取ってきまし...

ついに読んだ。 実に2週間ほどかかって、やっとこさ読了いたしました。疲れた~。 昨年2013年の目標として、『月に1作品、文豪といわれるような人が書いた古典文学を読もう』と思い立ち、はや一年。 太宰治の「人間失格」から始まって、奇数月は日本の偶数月は海外の作品を手に取ってきました。 最後の12月は絶対ドストエフスキーにしようと、「カラマーゾフの兄弟」にしようと心に決めていたのです。 それにしても長いし難しいし、本編より周辺の話ばかりで、上巻は結構つらかったです。 正直字面追ってるだけで頭に入ってこなかった。 中巻に入って、ようやくお父さんが殺されるという事件が起きて、そこからは面白かったです。 いちいち長くて、本筋に関係ないところを削ったら、もっと分かりやすくて読みやすい本になるんだけど、その関係ないところこそが、「カラマーゾフ」が文学史に燦然と輝く作品であるところなのかな、という気はしました。 宗教観とかはよく分かんない部分も多かったけど、下巻のはじめと終わりの子どもたちの話はよかった。 本筋のところも、現代みたいに科学捜査ができない分、心理的な分析や想像がスリリングでした。 それぞれ、冷徹な心や侮蔑な態度や、それでいて良心の呵責やら脆いところがあって、翻弄されますね。 ラストは唐突なんだけど、どうやら続きがあったみたい。 けっきょくアリョーシャが本作の主人公ってとこが、強引な感じになっちゃうもんね。 それにしても、とりあえず読んだということだけで、私は満足です。 これからもたまにはこういう文学作品読んでいきたい。

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2013/11/25

ついに読破しました。 ようやく三冊揃えて返せますね。 本を貸してくれる方にはほんとに感謝しています。 アレクセイは修道院を出て、より一層様々な人々との対話を交わす。 一方、父の死を知り国外から馳せ参じたイワンは、譫妄症と葛藤する中で召使スメルジャコフの意外な告白に驚きを隠せなか...

ついに読破しました。 ようやく三冊揃えて返せますね。 本を貸してくれる方にはほんとに感謝しています。 アレクセイは修道院を出て、より一層様々な人々との対話を交わす。 一方、父の死を知り国外から馳せ参じたイワンは、譫妄症と葛藤する中で召使スメルジャコフの意外な告白に驚きを隠せなかった。 そしてついに始まるドミートリイの裁判。 当時のロシアの時代背景を浮き彫りにした弁論が飛び交う中、運命の判決が下される。 あんなに頭のおかしい人間ばかりの本だったのに、本を閉じた瞬間はすっきりとした読了感であることが不思議でなりません。 恐らくは誰も幸せになどなっていないのですが、生命力あふれる人物描写のせいでまったく悲壮感がありませんでした。 まぁあんだけ好き勝手な連中なら大丈夫だろう、とすら思います。 裁判中のスピード感と心情描写、そして当時の思想や時代背景の描かれ方は圧巻の一言。 最後の最後まで、人間の本能と理性のギリギリの狭間を書ききった、不朽の名作です。

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2013/11/07

無用の長物!  —— 何年来の念願が叶い読破。……無言。「罪と罰」や「地下生活者の手記」があんなに面白かったのになんでだろう? 壮大な思索をめぐる会話劇。議題は「神」。当時のロシアでは刮目すべき傑作だったのかもしれないが、「現代の日本に生きる私」にはまったく心に響かない。「キリス...

無用の長物!  —— 何年来の念願が叶い読破。……無言。「罪と罰」や「地下生活者の手記」があんなに面白かったのになんでだろう? 壮大な思索をめぐる会話劇。議題は「神」。当時のロシアでは刮目すべき傑作だったのかもしれないが、「現代の日本に生きる私」にはまったく心に響かない。「キリスト教? ふーん」って程度だからね。バフチンだかポリフォニー理論だか知らないが、シンプルに感銘を受けたかった私には、読み通すのが正直辛かった。とにかく、読破という大願は叶った。が、これから著者の作品を読むことはもうないだろう。さようなら、ドストエフスキー!!

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2013/10/26

本を買ったのが八年前。その時は上巻だけ読んでギブアップ。それまでずっと本棚でホコリをかぶっていたものを思うところがあってまた上巻から再読。中巻は2週間、そして下巻はわずか1日で一気読み。本のなかでいろんな山場があって、冗長的でどうしてもダレてくる場面があったけど、イワンがスメルジ...

本を買ったのが八年前。その時は上巻だけ読んでギブアップ。それまでずっと本棚でホコリをかぶっていたものを思うところがあってまた上巻から再読。中巻は2週間、そして下巻はわずか1日で一気読み。本のなかでいろんな山場があって、冗長的でどうしてもダレてくる場面があったけど、イワンがスメルジャコフに会ったあと、自分のなかの悪魔と退治する場面はすごく面白かった。そしてなにより最後の裁判で今までの登場人物が証人として、事件について供述する場面が皆が皆それぞれの立場からの語り口が、それまでの伏線を際立たせて見事だな〜と思った。しかしとんでもなくこってりとした内容でロシアものはしばらくお腹いっぱいだな。

Posted byブクログ

2013/10/03

下巻では、アリョーシャとイリューシャ、それを取り巻く子どもたちの場面が冒頭とエピローグで出てくる。病床のイリューシャへの見舞いに赴くコーリャ、エピローグでは亡くなったイリューシャの葬儀の場面、そして最後に一生の団結を誓ったアリョーシャと子どもたちのやりとり。 ドストエフスキーは、...

下巻では、アリョーシャとイリューシャ、それを取り巻く子どもたちの場面が冒頭とエピローグで出てくる。病床のイリューシャへの見舞いに赴くコーリャ、エピローグでは亡くなったイリューシャの葬儀の場面、そして最後に一生の団結を誓ったアリョーシャと子どもたちのやりとり。 ドストエフスキーは、子どもというものに対して特別な意見を持っているのだろうかと感じた。子どものことで思い出されるのは、上巻の「反逆」である。無神論を説くイワンが、子どもをも犠牲に捧げてしまう宗教の残忍さを説いている。 イリューシャは病気にかかり、亡くなってしまった。同級生たちから父を必死でかばった気高いイリューシャを子どもたちは尊敬する。喧嘩をしたこともあったが、彼らは尊いイリューシャの存在を心に刻みつけ、一生の友情を確認しあった。若くして亡くなったイリューシャは、(特に父親スネギリョフからしてみれば)犠牲と呼べる結末を迎えてしまったのかもしれない。それでも友人たちは、この痛ましい出来事を通じて、人間としての善良で清き精神を忘れることなくこれからを生きていく。ここに、「反逆」の前に厳然と立ちはだかるドストエフスキーの思想を私は垣間見た気がした。この物語は、カラマーゾフ家の放蕩と恥辱にまみれた愛憎劇が幾多となく描写されていたが、最後は実に高潔な場面が描かれていて、清々しい幕の閉じ方だと思った。 ミーチャの裁判では、カラマーゾフ家を取り巻く様々な人間の駆け引きが見ものであった。特に、突如としてミーチャに背を向けたカテリーナとそれを憎むグルーシェニカの剣幕はぞっとした。雄弁な検察官と弁護士の論告も、父親の父親たる所以、トロイカに例えられたロシアの実情など、ドストエフスキーの様々な思想が包含されていて、読み応えがあった。 上中下巻を読み終えて改めて感じるが、やはりこの小説はすばらしい。ドストエフスキーの思想がこれでもかというぐらいてんこ盛りになっていて、読む人の知的好奇心の刺激具合は半端ではない。これを読まずして死ぬのはもったいないであろう。

Posted byブクログ

2013/09/07

突然登場人物の平均年齢が下がる下巻。リーザとイワンの間に何があったのかとかは続編で書かれるはずだったのかな?全体的に女子こわい。 130年前に指紋採取ができてたら全然違う話になってたんだろうなあ...。

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2013/08/19

作品全体の構造や思想は全く理解出来ていないけれども、個々のエピソードは滅茶苦茶面白かった。 下巻ではカラマーゾフ父子とスネギリョフ父子の対比が特に印象に残る。 全巻揃えたにも関わらず一年程も寝かしておいたのは間違いだった。やっぱりドストエフスキーは途轍もない。

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