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嘘つきアーニャの真っ赤な真実 の商品レビュー

4.4

374件のお客様レビュー

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    191

  2. 4つ

    101

  3. 3つ

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2017/10/01

私にとって、珠玉の本の中の1冊。 ロシア語の通訳として長年仕事をされていた方が晩年、作家さんになって書かれた本。ノンフィクションです。 1960年代、まだ資本主義と共産主義で世界が割れていた時代 主人公のマリは、共産主義の理想を信じた家庭に生まれ、父の仕事の関係で、共産主義の大...

私にとって、珠玉の本の中の1冊。 ロシア語の通訳として長年仕事をされていた方が晩年、作家さんになって書かれた本。ノンフィクションです。 1960年代、まだ資本主義と共産主義で世界が割れていた時代 主人公のマリは、共産主義の理想を信じた家庭に生まれ、父の仕事の関係で、共産主義の大国であったソビエト連邦で幼少時代を過ごします。 マリの通った学校は、世界各国からソビエト連邦に集まって来たそれぞれの国の「共産党幹部」の人達が自分の子供を通わせていたところでした。 マリはそこで、いつの時代も変わらない「男の子にモテるための方法」を女の子同士で話し合ったり、授業に使う素敵なノートを探しに行ったり、今の私達にも共感できるような「青春一歩前の少女時代」を過ごします。 時代が変わってもきっと普遍的に存在し続ける、思い込みや恥じらいや見栄などがたくさん混じった、子供と少女の境目の世界の中に、今のわたしたちにはけして体感できない世界情勢が複雑に入り混じります。 「国に帰ったら、きっと家族全員殺される」と言いながら故郷の美しい景色を夢見るように語る子がいる。 共産主義の「平等」の理想を誇りをもって語りながら、家に住み込みのお手伝いさんを雇い、ブルジョワジーな「特権階級」としての生活を送る子がいる。 ちぐはぐで、あやうくて、だけどみんな信じているものがある。 やがてマリは、父の仕事の都合で日本に帰ります。 帰国の時、泣いて手紙を交わそうと約束した友達たちとも、もうすっかり縁の薄くなってしまった30年後。 マリはかつての旧友たちに会おうと決意し、各国を訪ね歩きます。 子供の頃には見えていなかったこと、信じていたこと、そして気付いていなかったこと。子供の視点で語られていた世界は急に大人の現実と30年の重みをもって「マリ」にたくさんの嘘と真実を見せます。 タイトルにもなっている「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」と「白い都のヤスミンカ」 どちらも本当に秀作です。

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2017/07/05

自分の知識不足を恨みながら読みました。 3人の友人との再会を、激烈な現代史とともに。 少女時代の友情の気配はとても懐かしく感じられました。

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2017/05/08

1960年プラハ。マリ(著者)はソビエト学校で個性的な友達と先生に囲まれ刺激的な毎日を過ごしていた。30年後、東欧の激動で音信の途絶えた3人の親友を捜し当てたマリは、少女時代には知り得なかった真実に出会う!

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2017/05/10

作家であり、ロシア語の同時通訳者でもある著者。1950年生まれの彼女は、10代にさしかかろうとしていた1960年から1964年まで、父親の仕事の関係でチェコへ。プラハにあるソビエト学校に通いました。本作はそのソビエト学校で仲の良かった3人、リッツァ、アーニャ、ヤスミンカとの思い出...

作家であり、ロシア語の同時通訳者でもある著者。1950年生まれの彼女は、10代にさしかかろうとしていた1960年から1964年まで、父親の仕事の関係でチェコへ。プラハにあるソビエト学校に通いました。本作はそのソビエト学校で仲の良かった3人、リッツァ、アーニャ、ヤスミンカとの思い出とともに、後に著者が彼女たちに会いに行ったときのことを語っています。 ギリシャを故国に持つリッツァ。ルーマニアの要人の娘であるアーニャ。ユーゴスラビアから来た転入生ヤスミンカ。著者と彼女たちは仲良し4人組だったわけではなく、『リッツァの夢見た青空』、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』、『白い都のヤスミンカ』の3編に分けてひとりずつとの関わり合いを。思い出といっても、激動の時代だった東ヨーロッパ。共産主義に振り回された彼女たちの日々は知っておきたいことばかり。一語一語を噛みしめて読もうという気にさせられます。愛国心についても考えさせられる珠玉のノンフィクション。

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2017/03/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

多感な少女時代をチェコのソビエト学校で過ごした著者による私小説。「リッツァの見た夢」「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」「白い都のヤスミンカ」の三編を収録し、各編のタイトルに採られている人物が著者の友人であり、彼女達のバックグラウンドや心情から、見事に当時の時代を切り取っている。下手な歴史教科書を紐解くよりもダイレクトに伝わってくる一市民の生活が重い。ちょっとこれ、本人が読んだら怒るんじゃないという程の本音が覗けるのも当事者ならではだろう(特にアーニャ編)。この人でしか書き得ない経験と感情は実に貴重。よくぞ本にしてくれたという気持ちである。

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2017/03/14

両親が共産主義で、その関係で、少女時代をプラハのソビエト学校で、過ごした。変わった経歴を持っています。そのソビエト学校では、世界中から、子供たちが集まって、勉強をしていた。その中で、親しい友達がいたが、日本に帰ってから、ソビエト崩壊、東欧の変動を経て、かつての友達を訪ねていく話、...

両親が共産主義で、その関係で、少女時代をプラハのソビエト学校で、過ごした。変わった経歴を持っています。そのソビエト学校では、世界中から、子供たちが集まって、勉強をしていた。その中で、親しい友達がいたが、日本に帰ってから、ソビエト崩壊、東欧の変動を経て、かつての友達を訪ねていく話、実際の話であるが小説のように面白かった。政治的な対立が学校生活の中にも影響を及ぼしている部分が面白かった。また、このような変動を経ても、それなりに生活している。また、以前の特権階級が、共産主義の崩壊によって、困っているかというとアーニャのように、特権生活を享受しているところが面白かったです。

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2017/03/03

米原万里さんの少女期を書いたエッセイ。社会主義、共産主義の理想と現実を多感な時期に経験し、その後の世界情勢の激変に翻弄される人々。オリンピック後のサラエボの激変に 驚いた事を覚えている。

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2017/02/01

エッセイストでありロシア語通訳だった、米原万里さんの少女時代のお話で、米原氏が通っていたチェコスロバキアのソビエト学校が舞台の作品。 日本人のマリ、ギリシャ人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤースナ、彼女たち4人は同じ学校に通うクラスメイトだった。国籍も民...

エッセイストでありロシア語通訳だった、米原万里さんの少女時代のお話で、米原氏が通っていたチェコスロバキアのソビエト学校が舞台の作品。 日本人のマリ、ギリシャ人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤースナ、彼女たち4人は同じ学校に通うクラスメイトだった。国籍も民族も母国語もバラバラなのだが、彼女たちの絶対的な共通点は、親が各国の共産党員という事である。 作品はマリの友人3名分のエピソード3章で構成されている。プラハソビエト学校時代の出来事や、マリが帰国してからの手紙を通じた交流の様子。そして様々な理由によって音信不通になってしまうまでの経緯と、大人になってから友人たちを探す旅の様子が綴られている。 音信不通となった大きな理由は、社会主義大国だったソ連と中国の対立、ソビエト連邦の崩壊、そしてボスニア・ヘルツェゴビナ紛争、などである。一部指導者の歪んだイデオロギーや、過剰な民族感情が罪のない人々を巻き込み、少女たちの人生を狂わせてゆく理不尽さにとても切ない想いがした。旅の結果については、ネタバレになってしまうので詳しくは書かないが、マリがヤースナを探しに紛争中のバルカン半島へ渡り、真相に迫るシーンは非常にスリリングだった。 そして、アーニャが嘘つきだったのは決して保身のためではなく、複雑すぎる体制や家庭環境からの自己防衛だったのではないだろうか、マリにもわかってほしかったと思う。

Posted byブクログ

2016/12/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2004(底本2001)年刊。  10~14歳まで(1960~64年)、プラハ・ソビエト学校への通学歴を持つ著者(生前はロシア語通訳者)。本書は当時の学友、つまり①ギリシャ系チェコスロバキア人のリッツァ(西独地域で開業医。父はギリシャからの亡命者)、②ユダヤ系ルーマニア人のアーニャ(英国男性と婚姻後同国で編集業。父はルーマニア高官)、③ボスニア・ムスリム系ユーゴスラビア人のヤースナ(元外務省通訳・翻訳官。父はユーゴのチェコ公使、後にボスニア最後の大統領)との交友回想録。  加え、旧交を温める旅と彼女らの人生行路を描く。  これほど広範なかつ稀有な交友を有している著者に驚くとともに、この3名の来し方が激動の東欧(これは嫌がるらしい。中欧と称してもらいたいとのこと)の現代史を浮かび上がらせる。  ①はプラハの春とその崩壊、②はベルリンの壁崩壊に引き続くチャウセスク政権崩壊、③はユーゴ解体とボスニア紛争。  当時の東欧としては豊かな階層に属していたからかもしれないが、知性・教養溢れる少女らの精一杯の生き様もまた本書の魅力の多くを構成している。  もっと早く読んでおくべきだった。    亡命しないのとの問いに「ボスニア・ムスリムとしての自覚は欠如…。ユーゴ…愛着…。国家としてではなく、たくさんの友人、知人、隣人…。その人たちと一緒に築いている日常がある…。…それを捨てられない」との回答。  一方で「異国・異文化・異邦人(ただし、これは国境の内外で区分したのとは限らない。受け手の年齢や経験で異別・隔意の存在と認識・直感した場合も同様)に接したとき、人は自己を自己ならしめ、他者と隔てる…ものを確認しようと躍起に…。自分に連なる祖先や文化を育んだ『自然条件』…に突然親近感」と、含蓄ある表現が随所に表れる。

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2016/12/13

かつてプラハのソビエト学校で著者の同級生だった3人の少女とその後の人生を通じて、 20世紀後半の中東欧の歴史的・民族的な混乱を描く。実在する人物だけにリアリティがある。 貧富の格差や紛争、思想的矛盾が浮き彫りになる。ただ、どんな形であれ家族を持ち大切な人らに囲まれて懸命に生きて...

かつてプラハのソビエト学校で著者の同級生だった3人の少女とその後の人生を通じて、 20世紀後半の中東欧の歴史的・民族的な混乱を描く。実在する人物だけにリアリティがある。 貧富の格差や紛争、思想的矛盾が浮き彫りになる。ただ、どんな形であれ家族を持ち大切な人らに囲まれて懸命に生きている姿が印象的だった。 ある時代の流れに少女達の運命が決められていく。これは、この本に登場している人だけでなく、同時代を生きた同世代の人達にもあったことなのだろう。日本でこれほどお国の事情を意識したことはなかった。

Posted byブクログ