嘘つきアーニャの真っ赤な真実 の商品レビュー
どんどん引き込まれていく文章であった。 ただ自分に世界史の知識が不足しているためイメージがなかなか膨らまない部分が多かった。 物事の本質を掴むにはやはり知識が必要だと改めて痛感した。
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※このレビューにはネタバレを含みます
ソ連邦が崩壊していく時代。 音信不通となってしまった同級生達は激動期を無事に生き抜いたのだろうか…。 子供の頃、1960年からの5年間をチェコスロバキアの在プラハ・ソビエト学校(なんと50ヶ国以上の国の子供達が通っていた)に通っていた米原さんの体験記。 特に仲の良かった3人の少女との付き合いは、ごく普通の日本でもありそうなたわいもないもの。 けれど日本と決定的に違うのはみんなの故国への愛着の強さ。 愛着の強さで印象深かったのは、内戦が続く南米ベネズエラから来た少年の言葉「帰国したら僕らは銃殺されるかもしれない。それでも帰りたい」。 日本に帰国した米原さんが、30年ぶりに女友達3人を訪ねて行く場面はドキドキしながら夢中で読んだ。 生死も不明で情勢も未だ不安定な国でも、とことん調べあげて逢いに行く米原さんの行動力には感服する。 戦争や紛争により否応もなく意識せざるを得ない己の属する「民族」。それまで仲の良かった仲間ともギクシャクしてしまい壊れてしまう人間関係。 民族、文化、宗教等様々な問題について考えさせられる。 米原さんのリアルで生き生きとした文章に頁をめくる手が止まらなかった。
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著者が1960年から1964年までを過ごした在プラハソビエト学校の同級生の友達3人に30年後会いに行くエッセイ。解説にもうひとりの主役は歴史、とあるように激動の東欧共産主義国の歴史を語るものでもある。特にルーマニアで特権を享受している共産党幹部の娘アーニャとユーゴスラビアの民族...
著者が1960年から1964年までを過ごした在プラハソビエト学校の同級生の友達3人に30年後会いに行くエッセイ。解説にもうひとりの主役は歴史、とあるように激動の東欧共産主義国の歴史を語るものでもある。特にルーマニアで特権を享受している共産党幹部の娘アーニャとユーゴスラビアの民族紛争に巻き込まれたヤスミンカの話はイデオロギーや権力の争いに巻き込まれた人間が運命の荒波に揉まれている有様が強烈に迫ってきて圧倒された。 異国の地で異国の人々と出会うとナショナリズムに目覚める、という節は印象に残った。 シリアスな話が多いが子供心や冒険心・背伸びした下ネタ・他愛ないやり取り・ユーモアがたっぷりあってとてもいい本である。
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少女時代を父親の仕事の関係から共産国に住むことになった作者。いろいろな国の友達に出会い影響を受けたのだと思う。大人になって自分が置かれた特殊な立場を実感し、友達の現在を探す。複雑な環境の中で、それぞれが仕事を持って、強く生きていく姿に感銘した。
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親の仕事や都合により子供がその世界をどう受け取るのか…。外国と左派という点ではコルシア書店の話にも似ているが、多感かつ語学能力の伸びる(らしい)時期にロシア学校という特殊な環境に置かれた著作の話、面白かった。でもソ連の崩壊やそれに関連して生じた諸所の問題を受けてソ連に反感を抱くわ...
親の仕事や都合により子供がその世界をどう受け取るのか…。外国と左派という点ではコルシア書店の話にも似ているが、多感かつ語学能力の伸びる(らしい)時期にロシア学校という特殊な環境に置かれた著作の話、面白かった。でもソ連の崩壊やそれに関連して生じた諸所の問題を受けてソ連に反感を抱くわけではなく、当時を愛おしい気持ちで眺められるのは、彼女が父親の仕事や姿勢へ尊敬の念を抱けていたからに違いない。
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地図を開いて、都市や国の名前をたどりながら読んだ。だけど、とっつき難い本ではなく、10代前半をともに過ごした同級生を大人になってから訪ねる物語だ。 ただし、母校はプラハのソビエト学校で、同級生はそれぞれの祖国を持ち、父親が共産主義者として高い地位にあるという家庭出身だ。 筆者...
地図を開いて、都市や国の名前をたどりながら読んだ。だけど、とっつき難い本ではなく、10代前半をともに過ごした同級生を大人になってから訪ねる物語だ。 ただし、母校はプラハのソビエト学校で、同級生はそれぞれの祖国を持ち、父親が共産主義者として高い地位にあるという家庭出身だ。 筆者である主人公が帰国してから、東側諸国は様々な動乱を経験し、同級生たちは、その荒波の中、それぞれの人生を歩んでいる。国の騒乱が個人の人生を大きく左右することを見せ付けられ、平和ボケの身は冷や水を浴びせられたよう。そして、彼女や彼女の家族の無事を祈りたくなる。 歴史を精密に記録した物語としても、人生を生き抜くひとりの女性の物語としても、読みごたえのある作品だと思います。 そして、この本が世に出てから、さらに歳月が流れ、彼女たちがどこでどんな人生を送ったのかと思わずにはいられない。
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オーディブルで聞きました。 まったく馴染みのなかった、東ヨーロッパの社会体制や、それにまつわる影響について、思いがけず知ることができました。 プラハの子ども時代の視点と、大人になって再会しその後の人生についての語りで、多くの驚きがありました。 国や民族に翻弄されるとはこのようなこ...
オーディブルで聞きました。 まったく馴染みのなかった、東ヨーロッパの社会体制や、それにまつわる影響について、思いがけず知ることができました。 プラハの子ども時代の視点と、大人になって再会しその後の人生についての語りで、多くの驚きがありました。 国や民族に翻弄されるとはこのようなことかと、知ることができました。
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現代日本という資本主義国のただ中に生きる私にとっては、想像もできない特殊な環境・特殊な世界を生きた米原さんと3人の友人の、当時と今を追ったノンフィクションエッセイ。エッセイに分類されているようだけれど、エッセイではない。かといってご本人だからルポやドキュメンタリーでもないし、読み...
現代日本という資本主義国のただ中に生きる私にとっては、想像もできない特殊な環境・特殊な世界を生きた米原さんと3人の友人の、当時と今を追ったノンフィクションエッセイ。エッセイに分類されているようだけれど、エッセイではない。かといってご本人だからルポやドキュメンタリーでもないし、読み物としても下手な小説なんか足元にも及ばないほど面白い。 ちょうど直前に読んだ本もプラハのお話だったので(米原さんのプラハ時代から20年くらい前のお話だったけど)そのころの時代の流れが上手く繋がってすっと時代に入っていけた。私はあまり共産主義のことは詳しくないけど、その時代の空気や米原さんの過ごしたプラハの美しさ、政治的な背景などを行間からありありと感じることができたし、友人たち3人の個性もとても丁寧に描かれていて素晴らしかった。1日で一気に読んでしまったけど、最後のヤスミンカのお話の終わりに差し掛かると、終わってほしくないという気持ちが大きくなっていったなぁ。共産主義と時代に翻弄された登場人物ひとりひとりが愛おしくなる、優しい作品。 米原さんはお名前は存じていた、けど、ロシア人通訳者としてお名前を知っていただけで、こんなによい文章を書かれる方だとは知らなかった。他の作品も読んでみよう。 ちなみにYoutubeに、米原さんのこの東欧・中央探訪の動画があるのを発見(本当に、時代に感謝!)したので、そちらも追って拝聴します。 -- 一九六〇年、プラハ。小学生のマリはソビエト学校で個性的な友だちに囲まれていた。男の見極め方を教えてくれるギリシア人のリッツァ。嘘つきでもみなに愛されているルーマニア人のアーニャ。クラス1の優等生、ユーゴスラビア人のヤスミンカ。それから三十年、激動の東欧で音信が途絶えた三人を捜し当てたマリは、少女時代には知り得なかった真実に出会う!大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
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著者が暮らしていた状況とは全く異なるが、私も海外で生活する者として共感できる部分がたくさんあった。 中・東欧の歴史や地理に触れる良い機会となった。
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2018年7冊目。笑って泣けて、そして勉強になりました。「白い都のヤスミンカ」が特に好き。中・東欧の現代史にもとづく小説かな?と思っていたら、少女時代をプラハのソビエト学校で過ごした著者の実話でした。 冷戦下、50か国以上の子どもの中で暮らすと、中学生くらいでも世界情勢に詳しく、敏感になるものなのかなあ?たまたま、米原さんや周りの友人たちが、大人びていただけのようには感じられません。 30年ぶりの、それも奇跡的な再会には、思わずうるうるしてしまいました。少女時代の楽しい思い出も、悲しかった出来事も、別れた後それぞれが歩んできた人生も、全部ひっくるめての再会。 異国、異文化、異邦人に接したとき、人は自己を自己たらしめ、他者と隔てるすべてのものを確認しようと躍起になる。自分に連なる祖先、文化を育んだ自然条件、その他諸々のものに突然親近感を抱く。(p128) なぜ、差別無き平等な理想社会を目指して闘う仲間同士のはずなのに、意見が異なるだけで、口汚く罵り合い、お互いが敵になってしまうのか。(p212) どんなに悲しいことも一緒に悲しんでくれる人がいることは嬉しい。(p231) 爆撃機の操縦士たちは、トルコ軍の兵士のように、「白い都」の美しさに魅了されて戦意を喪失することはなかった。(p292)
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