苦海浄土 新装版 の商品レビュー
どんなに補償金がでようとも、命には代えられないし、死ぬならまだマシであんなにも苦しんで苦しんで生きなければならないのは本当に辛いこと 自然災害ではないこの公害病がこれから先の世界中で無くなりますように 被害者の言葉で 「銭は一銭もいらん。そのかわり、会社のえらか衆の、上から順々に...
どんなに補償金がでようとも、命には代えられないし、死ぬならまだマシであんなにも苦しんで苦しんで生きなければならないのは本当に辛いこと 自然災害ではないこの公害病がこれから先の世界中で無くなりますように 被害者の言葉で 「銭は一銭もいらん。そのかわり、会社のえらか衆の、上から順々に、水銀母液ば飲んでもらおう。~(省略)奥さんがたにも飲んでもらう。胎児性生まれるように。その後順々に69人水俣病になってもらう。それでよか。」 これが本当に被害者が望む事だよな
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人生でこんな本に出会うとは思っていなかった。 友人に勧められていなかったら、きっと読んではいなかったであろう。 水俣病患者の壮絶かつ清冽な記録。 読みながらドキュメンタリーを観ているような感覚に陥った。 ノンフィクションや小説などの書き物を読んでいるのとは全く違う。 情景描写が...
人生でこんな本に出会うとは思っていなかった。 友人に勧められていなかったら、きっと読んではいなかったであろう。 水俣病患者の壮絶かつ清冽な記録。 読みながらドキュメンタリーを観ているような感覚に陥った。 ノンフィクションや小説などの書き物を読んでいるのとは全く違う。 情景描写がただの情景描写ではなく、そこに入り込んだ魂が伝わってくるような、そんな文章だった。 私には馴染みのない方言による語りの部分は、慣れない言葉使いと、語られる内容・感情の読み取りを同時にしなくてはならず、何度も苦しい気持ちがした。 しかし、水俣病による被害を受けた人々のこと、その地に生まれ、それを伝えようと心血を注いだ石牟礼さんの気持ちを思うと、読み進めなくてはという義務感にも近い気持ちで少しずつ、頁をめくった。 自分を苦しめる事になった海が、かつては自分に栄光や生を与えていた。 その海に出ることが出来なくなった時、それまでの輝きに思いを馳せ、そこが浄土となる。 なんとも悲しく切ない。 この地に生まれた石牟礼さんだからこそ書けた1冊。 そして石牟礼さん以外の人には書けなかった1冊。 この土地の風土や暮らし、人柄を知らないでは決して書くことができない。 かといって、その土地に暮らしている人だから書けるもの、では無い。 人は生まれてくる土地を自ら選ぶことはできない。 その土地に生まれたと言うだけで、その土地で暮らしたと言うだけで、何故これほどの不幸を背負わなければならないのだろう。 その苦難と貧困と先の見えない生活への不安。 更に、周囲の目を気にして、受けられる保証さえも受けようとせず、隠そうとする人々がいた事に愕然とした。 そして、驚くべきは新日本窒素株式会社と県や国の保証や賠償に対する対応の遅さとその値段。 憤り以外の何をも感じない。 第三章 ゆき女きき書 第四章 天の魚 が、どのようにして書かれたのか。 私は読みながら、溢れてくるその言葉に圧倒されながらも少し疑問に思っていた。そして、渡辺京二さんの解説を読んで、殴られたような衝撃を受けた。 あゝーー そう言う事だったのか。 では、この本は何なのだろう。 私はノンフィクションだとばかり思い込んでいた。 それが覆され、どう処理していいのか分からなくなった。 解説を読み終えた今、私はもう一度この本を読み直さねばならぬと言う気持ちになっている。 そして、何度読んでも、この本を読み終えたと思えることはできないだろう。 それは水俣病が終わらないことと同じなのかもしれない
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美しい風景と対比するように水俣病当事者や家族の苦悩が描かれる。彼らは貧しいながらもこの景色の中誇りを持って漁をし、地元の人たちは自然からの恩恵を受けるように当たり前のように魚を食べていた。しかし、経済発展を優先する社会により水俣病となり苦しんだ。なんの罪もない遠くの市井の人の穏や...
美しい風景と対比するように水俣病当事者や家族の苦悩が描かれる。彼らは貧しいながらもこの景色の中誇りを持って漁をし、地元の人たちは自然からの恩恵を受けるように当たり前のように魚を食べていた。しかし、経済発展を優先する社会により水俣病となり苦しんだ。なんの罪もない遠くの市井の人の穏やかな日常を奪ったことは国民全体が当事者であると感じた。チッソや政治だけが変われば良いという問題ではない。
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宮城の沿岸部に生まれ育ったことで、震災後、憐れむべき被災者とみなされる風潮に苛立ったことがあったものだが、そういう私が水俣に向けてきた眼差しはどうだっただろうか。時代に取り残され、漁労に従事するほかなかった最下層の人々が工業廃水に含まれる水銀に侵された…あたかも公害以前から苦しん...
宮城の沿岸部に生まれ育ったことで、震災後、憐れむべき被災者とみなされる風潮に苛立ったことがあったものだが、そういう私が水俣に向けてきた眼差しはどうだっただろうか。時代に取り残され、漁労に従事するほかなかった最下層の人々が工業廃水に含まれる水銀に侵された…あたかも公害以前から苦しんでいたかのような言い分である。都市の中枢で理想化されている文明に疑問を覚え、自らの手と船で魚を獲る領分に満足し、その暮らしから離れては得られない歓喜を日々感じ取っていた住民を、語り部たる石牟礼の口から私は知る。水俣病が家に発生したとき、近海で獲れたばかりの新鮮な魚を食べればきっと快癒するだろうと考えた家族の発想は、科学的には誤ったものであったが、漁労を中心に完成していた世界を想起させて、胸を衝く。
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※このレビューにはネタバレを含みます
感想というものではないかもしれない。ちゃんと向き合わなければいけない、知らなければいけない、忘れてはいけない。そんな気持ちになった。 「銭は一銭もいらん。そのかわり、会社のえらか衆の、上から順々に、水銀母液ば飲んでもらおう」過激と思われるかもしれないが、これが遺族の素直な正直な想いだろう。
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どう感想を述べていいかわからないし、評価などつけられないけれど、目の前の海を庭として、魚を獲り穏やかに暮らしていた水俣の人たちに起こったあまりに哀しい悲劇。意識はあるのにうまく話せない、動けない、自分の下の世話もできない患者本人の哀しさ。胎児性水俣病の子どもを持つ、母親の哀しさ。...
どう感想を述べていいかわからないし、評価などつけられないけれど、目の前の海を庭として、魚を獲り穏やかに暮らしていた水俣の人たちに起こったあまりに哀しい悲劇。意識はあるのにうまく話せない、動けない、自分の下の世話もできない患者本人の哀しさ。胎児性水俣病の子どもを持つ、母親の哀しさ。 辛くて目を背けたくなるような生々しくリアルな描写が続くにも関わらず、何か本書全体が神秘的な美しさを纏っているのはなぜなのか。 冒頭近くの、「彼のバスに乗り込み、彼がバタンと扉を閉めると、小さな患者たちも、大人たちも、安心して、バスの窓から入る風に、「しのぶちゃん」の頭から、ふわりと小さな花帽子が飛んだということだけでもうバス全体が、はしゃいで笑み崩れるのであった」あたりから、強力に引き込まれた。 この美しさは、筆者のいう、彼ら彼女らのたましいの美しさなのか。 とにかく、読んでよかった。
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5月初め、水俣市で開かれた環境相と水俣病被害者団体との懇談の席で、環境省の職員が発言時間の「3分」を超えた団体側のマイクをオフにして発言を制止したという一件をテレビのニュースで見たその日に、たまたまこの本を読み始めた。 子どものころ、教科書に載っていた「水俣病」は、どこか遠い日の...
5月初め、水俣市で開かれた環境相と水俣病被害者団体との懇談の席で、環境省の職員が発言時間の「3分」を超えた団体側のマイクをオフにして発言を制止したという一件をテレビのニュースで見たその日に、たまたまこの本を読み始めた。 子どものころ、教科書に載っていた「水俣病」は、どこか遠い日の、遠い場所の話ではなく、いまもまだ解決していない、どころか時間が経って風化しつつあるという事実を目のあたりにし、恥じるような気持ちになった。 この本には、地獄が書かれている。 人が生み出した地獄が。 環境を破壊した企業だけではない。 同じ市民からも目障りなものとされ、時には 「(補償金がもらえて)病気になってうらやましい」 などと軽口を叩かれる地獄。 愚直に、つつましやかに生きていた人たちがみまわれた悲劇に、いまも昔もどれだけの人がほんとうに寄り添うことができたのだろう。 何よりもまず、「知ること」から始めなければならない。
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水俣病をテーマにしたドキュメンタリー小説と思いきや、患者やそのご家族の言葉に生命が吹き込まれ、著者の筆力に驚かされます。 あと書きにも、患者の方々の言葉は、著者自身の言葉であり、この本は、聞き書きでも、ルポルタージュでもない、著者の私小説だ、と書いてあります。著者は、記録作家では...
水俣病をテーマにしたドキュメンタリー小説と思いきや、患者やそのご家族の言葉に生命が吹き込まれ、著者の筆力に驚かされます。 あと書きにも、患者の方々の言葉は、著者自身の言葉であり、この本は、聞き書きでも、ルポルタージュでもない、著者の私小説だ、と書いてあります。著者は、記録作家ではなく、一個の幻想的詩人だからである。 水俣病の苦しみ凄まじさ、問題の深さは言わずもがな…。生々しいながらも、ヒューマニズムに満ち満ちた小説でした。学生時に読んだ時は、リアリティを求めていたせいか、薄ぼんやりしてたな。反省。もっと、この方の本を読みたいと思いましたが、図書館にも書店にもほぼ置いてありませんでした。残念。
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水俣病に罹患して、あたかも苦界、苦海に生きる様を、魂を揺さぶる文章で綴り切る、まさに「いのちの文学」。講談社文庫版は第一部のみですが、完全版に迫らなければと思いました。
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ノンフィクション、と言う前提で読み始めたのが良くなかったのか、方言が馴染まなかったのか、言ってることがわからなくて、且つ展開もよくわからなくてなかなか先に進めなかった。あたしがアホなだけなのか。 あとがきを見るとこれは私小説だ、とあり、そっちの方がしっくりくる。 ところどころ...
ノンフィクション、と言う前提で読み始めたのが良くなかったのか、方言が馴染まなかったのか、言ってることがわからなくて、且つ展開もよくわからなくてなかなか先に進めなかった。あたしがアホなだけなのか。 あとがきを見るとこれは私小説だ、とあり、そっちの方がしっくりくる。 ところどころ感じるものはあるものの、言葉が入ってこず。。。これが標準語だともちろん伝わるものと逆に伝わらなくなるものがあるのは承知だが、自分にとっては標準語のほうが理解できたなぁ。 2023.9.30 165
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