苦海浄土 新装版 の商品レビュー
美しく恵み多い不知火海で主に漁業を生業として生きる人々。その慎まやかな生活を、命を蔑ろにしたチッソという企業。「人間のやる事か」と怒りを覚え、しかし私もそういった企業の生み出した便利な世の中を享受している事実がべったりとこの身に張り付いている。
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水俣病については中学、高校では名称を習うだけで深くは勉強しなかったが、この本を通してどういったものかを詳しく知ることができた。 当時の人々との会話を交えることで、水俣病の生々しさがよく感じられた。 書かれていたことが完全な事実かどうかは判断できない。筆者が患者のことを思って少し誇...
水俣病については中学、高校では名称を習うだけで深くは勉強しなかったが、この本を通してどういったものかを詳しく知ることができた。 当時の人々との会話を交えることで、水俣病の生々しさがよく感じられた。 書かれていたことが完全な事実かどうかは判断できない。筆者が患者のことを思って少し誇張したりしているかもしれない。ただ、水俣病の悲惨さ、様々な患者の心情を知るための参考としては読むべきだと思った。
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患者や、その家族たちは、どんなに辛くて悔しかっただろう…と思える描写があるのに対して、夫婦や親子、きょうだい、祖父母と孫の間の優しさや愛情の描写が美しくて、余計に切なくなった。 登場人物たちが語る海や自然への愛が、同じ石牟礼道子の『椿の梅の記』を思い出させたが、あの良き田舎がこ...
患者や、その家族たちは、どんなに辛くて悔しかっただろう…と思える描写があるのに対して、夫婦や親子、きょうだい、祖父母と孫の間の優しさや愛情の描写が美しくて、余計に切なくなった。 登場人物たちが語る海や自然への愛が、同じ石牟礼道子の『椿の梅の記』を思い出させたが、あの良き田舎がこんなにも汚されてしまったのか…とも。 豊かさや便利さと引き換えに、失うものについて考えさせられる本だった。 以前読んだ『ある町の高い煙突』も思い出される。 渡辺京二の解説の、『苦海浄土』は聞き書ではない、という部分に驚いた。「あの人が心の中で言っていることを文字にすると、ああなるんだ」という彼女の確信から書かれているとのこと。でもよくよく考えると、「そんなに(患者のもとに)行けるものじゃありません」というのはもっともな意見だし、著者の生い立ちを振り返ると「石牟礼道子の私小説である」との解説に納得がいった。…それにしてもすごい。 なかなか重たい話ではあったけれど、読み切って本当に良かった。
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教科書で知った程度の知識しかなかった。 現地の人たちに同じ目線で現場を見つめ、直接話を聴いて編まれた本ならではの迫力。 時に読みづらくもある訛りのある証言。だかそれは、そのままの言葉じゃなければ伝わらないメッセージ。 公害が放置され、国もその瑕疵を認めず苦しめられ続けた人たち。 ...
教科書で知った程度の知識しかなかった。 現地の人たちに同じ目線で現場を見つめ、直接話を聴いて編まれた本ならではの迫力。 時に読みづらくもある訛りのある証言。だかそれは、そのままの言葉じゃなければ伝わらないメッセージ。 公害が放置され、国もその瑕疵を認めず苦しめられ続けた人たち。 やはり、通らずにはいられない本だった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
学校の本の紹介冊子に載っていて気になったから読んでみた。 初期に、手足の痺れなどの症状が出た人に精をつけようと魚を食べさせていたが、魚こそが水銀を含んでいて水俣病の原因だったこと。 貧しい人々は躊躇して病院にも行けなかったこと。 多くの患者・家族が繰り返し「海の上は良かった」と繰り返すこと。 切なく辛い場面が多かった。水俣病に関しては小学生の時に本を一冊読んだだけであまり知らなかったが、当事者の感じた苦しみなどがよくわかった。被害を訴えても目を瞑り続ける会社など高度経済成長期にどれほど公害問題が放置されてきたことか
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ずいぶんと長い時間をかけて読了 水俣病の人達の感情が ひりひりと身体に入ってくる感じ それと同時に なんと美しい自然の描写のある事か ドキュメンタリー的な箇所では 現実に引き戻され 不思議な感覚を呼び起こす本だった また読みなおししたい ブックオフ津島店にて購入
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水俣病、当時水俣に生きた人々は恐ろしかったろうな。まさか普段から口にしている魚や貝、海藻から自分達の体をむしばむ毒性物質が取り込まれているだなんて思いもせず、連綿と続く暮らしをしていただけなのだろうに。
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水俣病告発のルポルタージュかと思っていたが、石牟礼道子の私小説であるという。確かに水俣病患者の語りは、柔らかな熊本弁で滔々と歌われた詩のようだ。内容は凄惨だが、方便の性格のためか、作者の心の中にあるのか、リズミカルに持続する心地よい語り。 解説の渡辺京二さんによると、これらの語り...
水俣病告発のルポルタージュかと思っていたが、石牟礼道子の私小説であるという。確かに水俣病患者の語りは、柔らかな熊本弁で滔々と歌われた詩のようだ。内容は凄惨だが、方便の性格のためか、作者の心の中にあるのか、リズミカルに持続する心地よい語り。 解説の渡辺京二さんによると、これらの語りは聞き書きではないという。もちろんインタビューはしているだろうが、インタビューと言っても、気心の知れたご近所さんと話しているような口調だったかもしれない、患者らの語りは、石牟礼道子の内面から溢れ出た歌のようなものか。 奇しくもこの12月25日、渡辺京二さんが亡くなったそうだ。
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水俣病の話。描写や方言はきれい。 患者と行政、会社との間のほか、患者と(会社により裨益している)その他の住民との間、患者内部、会社内部でもいろいろありそう。
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「見苦しいという彼の言葉は、水俣病事件への、この事件を創り出し、隠蔽し、無視し、忘れ去らせようとし、忘れつつある側が負わねばならぬ道義を、そちらの側が棄て去ってかえりみない道義を、そのことによって死につつある無名の人間が、背負って放ったひとことであった」 「市民たちのひとり残ら...
「見苦しいという彼の言葉は、水俣病事件への、この事件を創り出し、隠蔽し、無視し、忘れ去らせようとし、忘れつつある側が負わねばならぬ道義を、そちらの側が棄て去ってかえりみない道義を、そのことによって死につつある無名の人間が、背負って放ったひとことであった」 「市民たちのひとり残らず、なにか重圧な空気に犯されていた。今にもどこか、なにかが深い根元からひき裂けそうな緊張に、人びとは耐えていた」 「人びとの衣服や履物や、なによりもその面ざしや全身が、ひしひしとその心を伝えていた」 「水俣病対策が今日までほとんど放置された状態にあったことがこの事態をまねいたといえよう。〜 寺本知事が就任後はじめて水俣病の現地をみたのも、何と調査団が水俣に行く一日前だった。〜 坂田元厚相も“この問題では関係各省が敬遠しましてね”と述懐している」 「触れれば飛びあがりそうに、彼らの心も暮らしも追いつめられていたのである」
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