デッドエンドの思い出 の商品レビュー
なんとなしにタイトルを見かけていて気になっていた。 治療できなくとも看護なら必ずできる。処方できるのは薬ではなく時間。そういったのは中井久夫だったか。 虚構の世界である以上、物語がすべて等しく現実にあてはまるわけではない。状況、論理の展開、そうしたものたちは作者の頭の中で展開され...
なんとなしにタイトルを見かけていて気になっていた。 治療できなくとも看護なら必ずできる。処方できるのは薬ではなく時間。そういったのは中井久夫だったか。 虚構の世界である以上、物語がすべて等しく現実にあてはまるわけではない。状況、論理の展開、そうしたものたちは作者の頭の中で展開される産物に過ぎない。みながみな、同じ脳みそをしているわけではないから、こうした物語が受け入れられることもあれば、受け容れられないこともある。 痛み、傷、苦しみ、喪失。そうしたものは乗り越えるべきものではない。そうしたものたちもまた、生きる人生の一部だ。なくなりはしない、自然のものたちと共に生きる。時間はそうした中で誰にも平等に存在する。 デッドエンドの思い出たちの人びとは、ここで終わっているかもしれない。なぜだか、このひとたちがこの地球の片隅で、今もまだ笑い、泣き、傷つき、立ち上がり、そうやって息づいているような気がする。変わりゆくものと変わらないもの。そうした間を今も生きている。それが、吉本さんの生きるあり方なのだと思う。
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吉本ばななさんという作家は、だいぶ以前から名前は知っていたのですが、今回初めて作品を読みました。短編集でしたが、全作読みやすくて、少し切なくなるような、暖かくなるような、優しい感じになれる読後感です。他も読んでみます。
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胸に抱いていたもやもやが読んでいくうちにほぐれていって、じんと染み入るようだった。特に最後のデッドエンドの思い出には、自分は自分でいいんだと思える、心に刺さる台詞がいくつもあった。 情景の描写も美しく、この世界にずっと浸っていたいと思うほど。
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たまにこういう小説に出会えるから、読書っていいよなあって思われせてくれる本。 どれも切ない話だけど、小さな救いがあって、僅かに希望を感じられるところが、今生きてる日常にマッチしてて良かった。 2020.9.20
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24/100冊目 . キッチンは設定が好きになれなかったけど、この本はすごくありそうな日常を掻い摘んだ話ばかりで引き込まれた。 よしもとばななさんの描写も好きだなって思った。 悲しいエピソードもふわっと丸く包み込んで消化させちゃう感じ。 自分たちは貧しさを感じずに生計を立てられる...
24/100冊目 . キッチンは設定が好きになれなかったけど、この本はすごくありそうな日常を掻い摘んだ話ばかりで引き込まれた。 よしもとばななさんの描写も好きだなって思った。 悲しいエピソードもふわっと丸く包み込んで消化させちゃう感じ。 自分たちは貧しさを感じずに生計を立てられる、結構相対的に見たら幸せな場所にいることを自覚していて、でもそれは恥ずかしいことじゃないよ、って、受けとめてくれる優しさがある。 人それぞれの感性に寄り添ってくれる、そんな本。
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よしもとさん、2冊目。 ストーリーの舞台設定とか登場人物の人生とかより、その、不幸の断片、幸せの断片、自分のすぐ隣にあって、いつでも出遭ってしまう可能性があって、不幸のなかにあって認識できなかったり、それでも笑ったりほっとする瞬間はあって、というのを触っているような。 人生の危う...
よしもとさん、2冊目。 ストーリーの舞台設定とか登場人物の人生とかより、その、不幸の断片、幸せの断片、自分のすぐ隣にあって、いつでも出遭ってしまう可能性があって、不幸のなかにあって認識できなかったり、それでも笑ったりほっとする瞬間はあって、というのを触っているような。 人生の危うさと希望とに気付かせてくれるような本だなと思いました。「あ、そうだよね」。 ちゃんと広く見れてるというか、いろんなことに気が付ける各話の「主人公」。自力で扉を開くのはなかなか難しい。寄り添ってもらうと心強い。ちゃんと歩けるといいなと思えました。
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2019.04.10読了。 今年7冊目。 人の心の中にはどれだけの宝が眠っているか。 よしもとばななさんの紡ぐ言葉は無駄がなくシンプルですっと胸に響く。 大好きな一冊になった!
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傷ついても、前向きに進む気持ちは、自分の価値観にあっているのですっと読めた。弱いけど、強い。人間ってやっぱり素晴らしい。
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2017年2月10日読了。 どの物語も苦しかったけど、ちゃんとあたたかみがあった。ドラえもんの話は、本当に同意する。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
決められた将来にたいする思い、将来結婚することになる、岩倉くんの家にいる幽霊の夫婦。 社食に毒をもられ、一命はとりとめたものの、 それを機に自分の両親について思ったこと。 優しかったまことくんの悲しい一生と、 短いながらも彼と一緒に過ごせた濃厚だった思い出。 鈍感なのか、もしくは悟りの境地に達するともちゃんが好きになった人。 婚約していた人に裏切られ、 傷心のミミが西山くんと接していくうちに 自分を取り戻していくまで。 西山くんが言う「モノの見方がパターン化している人」っていうのが、ほほうって感じ。 著者特有の、 目に見えない巡り合わせみたいなものの積み重ね的な感じ ときどき心に染みて、ときどきイライラする。 デットエンド、吐き出して浄化、だね。
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