白い部屋で月の歌を の商品レビュー
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表題作について。 この作品のホラー要素はいったいどれか。未練の残った霊たちの醜い執着のありさまか。それを操ろうとする霊能者とその弟の歪んだ心理か。 霊が怖いというよりは、そこまで執着してしまう人間という存在そのものがホラーだと思えてくる。ジュンという主人公が発する違和感の正体が最後でわかるようになっているが、そういう事がある、ということよりも、やはり、そんなことをしてしまうシシィという霊媒師の精神のほうがよほど恐ろしい。 そして、この作品の底に流れる「生きるとはどういうことか」という問いが、もうひとつの「鉄柱(ハガネノミハシラ)」でくっきりと描かれる。 初読の時は、主人公と同じように、「自殺なんて!」とか「死んではいけないのだ」という思いを抱いたのだが、今回読んだときはこの町の風習もそんなに悪くないんじゃないか、と思ってしまった。 「今日はどうする?生きるかい?」と毎日問われるのはしんどいことではあるが、「今日は生きる……ことにするよ」と応えて毎日を生きるのは、実は大事なことのように思う。作品のトーンとしては「しんどいこっちゃで」という嘆息混じりではあったが。
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ホラー小説大賞をとったにしては、なんだか印象が薄い気がした。 短編2作収録。 表題作は気持ちの悪い不気味さで、好きになれないタイプ。 2作目は全く物語に溶け込めず、読むのがどんどん苦痛になっていっただけだった。 短編なのに無駄に長く感じてしまった。。
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不気味な後味を残す本だった。 白い部屋に大きなハサミが 出てきたり、 主人公の話す様子が子供っぽくて 違和感あったり、 読み終わった後は、 変な夢を見た朝と感覚が似てた。 そういう気持ちにさせる本ってことは、 説明というか文章が、その世界観に 引き込む力を持っているってこ...
不気味な後味を残す本だった。 白い部屋に大きなハサミが 出てきたり、 主人公の話す様子が子供っぽくて 違和感あったり、 読み終わった後は、 変な夢を見た朝と感覚が似てた。 そういう気持ちにさせる本ってことは、 説明というか文章が、その世界観に 引き込む力を持っているってこと。 たまにはいいかも。
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朱川湊人の出世作。前述の「姉飼」と同じ年に大賞をほぼ「同点」で争ったらしい。はっきり言ってこっちの方が良かった。(作風の好みは「姉飼」の方なんだけど出来が……) 出だしのシーンで「月が啼く」っていうのがとてもいい雰囲気を醸し出している。Coccoの「あなたへの月」にそういうフレーズがあったなあ…などと思いながら読んでいると、いきなりファンタジックでありながらエグいシーンが出てきてどきりとさせる。やや中だるみはするし、ラストのオチは選者も言うとおり「平板」なのだが、全体としてはなかなか良くできた話だと思う。やや荒削りだけど。著者の他の本も読んでみたい。 もう一つの「鉄柱」も、表題作以上に力作で異常な世界。
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発想がすごいなぁと思う。なんか古典とかの下地があるのかなぁと感じさせる。 他人の幸せ、他人の満足が、周りの人たちの恐怖になっていく。 なかなかそういう発想はないけど、読んでいると説得力がある。 不可思議の力への畏怖と人間の命の尊さそういうものを感じさせてくれる。 人間が自殺...
発想がすごいなぁと思う。なんか古典とかの下地があるのかなぁと感じさせる。 他人の幸せ、他人の満足が、周りの人たちの恐怖になっていく。 なかなかそういう発想はないけど、読んでいると説得力がある。 不可思議の力への畏怖と人間の命の尊さそういうものを感じさせてくれる。 人間が自殺をするのは、逃げたいと思う感情があるからなのかな 未来はわからない だからこそこわい こわいから逃げたい
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初めて買ったホラー小説で、朱川先生の文体に一目ぼれした作品です。表題作は第十回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した作品で、審査員の方の評にもありましたが、最後のシーンの美しさは格別です。 あなたは月が啼くのを聴いたことがおありでしょうか。 真っ暗な空に青白く光る月が啼く様は本当に...
初めて買ったホラー小説で、朱川先生の文体に一目ぼれした作品です。表題作は第十回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した作品で、審査員の方の評にもありましたが、最後のシーンの美しさは格別です。 あなたは月が啼くのを聴いたことがおありでしょうか。 真っ暗な空に青白く光る月が啼く様は本当に美しいのでしょう。私の耳には残念ながら届いたことはありませんが、聴いてみたいです。
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「ホラーなのかそれとも……」 著者のほかの作品はどこか懐かしい、 昭和歌謡のような作品だけど、 これはその面影をかすかに、 感じさせてくれる。 怖さの震えより、 切なさの、 救われなさの、 心の震えを覚える。 「鉄柱」も収録。 こっちのほうがおもしろかった。 ...
「ホラーなのかそれとも……」 著者のほかの作品はどこか懐かしい、 昭和歌謡のような作品だけど、 これはその面影をかすかに、 感じさせてくれる。 怖さの震えより、 切なさの、 救われなさの、 心の震えを覚える。 「鉄柱」も収録。 こっちのほうがおもしろかった。 個人的に。
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表題作の『白い部屋で月の歌を』は選評を先に読んでしまいまさかのネタばれ… やってしまった…と思いながら読み始めたものの、文章の美しさやアイディアに惹かれつつ読めました。ホラーらしい不気味さもあるものの読後に残るのはやりきれなさや切なさ。ネタばれしていたもののオチにそういうものが詰...
表題作の『白い部屋で月の歌を』は選評を先に読んでしまいまさかのネタばれ… やってしまった…と思いながら読み始めたものの、文章の美しさやアイディアに惹かれつつ読めました。ホラーらしい不気味さもあるものの読後に残るのはやりきれなさや切なさ。ネタばれしていたもののオチにそういうものが詰まっていてよかったです。 もう一編収録されているのは『鉄柱』田舎町へ越してきた夫妻の話。この出だしでホラーということで話の展開は大体予測できたのですが、こちらも切なさややりきれなさの残る作品。表題作以上の名作だと思います。 個人的には主人公がある行動をとった後の心情や町民たちの様子のあまりの切なさに泣きかけました。命や幸せの価値観を揺さぶられた作品です。 両作とも後からじわじわと怖い、という意味で良作のホラーですがそれ以上に何かを訴えかけてくる寓話のような話でもありました。 第十回日本ホラー小説大賞〈短編賞〉受賞作『白い部屋で月の歌を』収録
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中編2つ収録されてます。 表題作では、霊能者の除霊のアシスタントが、ある日出会った生き霊に恋をしてしまい、自分の存在意義について始めて考えるようになっていく話。 文章がとても綺麗で切なく、所々の残虐な描写、いやらしい描写をクッキリ浮き上がらせています。 私はそういうのは苦手です...
中編2つ収録されてます。 表題作では、霊能者の除霊のアシスタントが、ある日出会った生き霊に恋をしてしまい、自分の存在意義について始めて考えるようになっていく話。 文章がとても綺麗で切なく、所々の残虐な描写、いやらしい描写をクッキリ浮き上がらせています。 私はそういうのは苦手ですが、うまいとは思いました。 ラストの情景が何とも切なく印象的。 「鉄柱」は、若い夫婦が田舎町に越してきて、初めはその町の住民の親切さに戸惑いながらも打ち解けようとするんですが、老婦人の自殺をきっかけに、ある異様な風習に気付いてしまい…と言う内容。 自ら人生を終わらせる事について、価値観が揺らいでしまう話でした。
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図書館から借りました ホラー。 舞台は日本。 第十回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。 表題は霊能者とそれをアシストする、ジュンという名の……青年(?)の話。 表現が綺麗。読みやすい。 けど、無夜の好みは、受賞作の「白い部屋~」ではなくて、「鉄柱(クロガネノミハシラ)」の方。 夫婦が引っ越してきた田舎の町。そこには、L字を逆さにしたような鉄柱が一本ある。 気持ち悪さを感じるほど、優しく親切な町の人たち。 お地蔵様には、西行法師の歌が。 そして、その「歌の紙」を残してミハシラで自殺した者への、風変わりな葬式。 幸せの絶頂で、死を選択する人々。 終わりの方で主人公はミハシラを倒そうと、穴を掘る。 でも、いつまで経っても、どこまで掘っても、根っこにたどり着かない。 力尽きてふっと気がつくと、町人たちが彼を見守り、そしてミハシラが倒れなかったことに落胆する。 立っている、ただそれだけで支配するミハシラ。 今日よりいい日はきっとこなくて、ずっと悪くなるだけ、と知っているから自殺したがる気持ちもわかるので、なんだか痛い。が、おもしろい。
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