朗読者 の商品レビュー
主人公は、自分自身やアンナに対していくつもの問いを投げかける。そのどれもが真剣であり、心に残る。 主人公の問いをとおして、静かに、犯罪とはなにか?罰するとはなにか?人を愛するとは何か?選ぶべきものはなにか?守るべきものはなにか?を考えさせられた。 読了後も、止めることなく考えてい...
主人公は、自分自身やアンナに対していくつもの問いを投げかける。そのどれもが真剣であり、心に残る。 主人公の問いをとおして、静かに、犯罪とはなにか?罰するとはなにか?人を愛するとは何か?選ぶべきものはなにか?守るべきものはなにか?を考えさせられた。 読了後も、止めることなく考えていきたい。
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少し軽めのものを読みたくなり、ネットで「海外文学おすすめ」ランキングを調べて手にとってみた一冊。 15歳の少年が36歳の女性ハンナと知り合い、彼は彼女のために物語を朗読する。ここまでだと少年の妄想のような話なのだが、後半はナチス時代の戦争犯罪をめぐる裁判へと移っていく。 ...
少し軽めのものを読みたくなり、ネットで「海外文学おすすめ」ランキングを調べて手にとってみた一冊。 15歳の少年が36歳の女性ハンナと知り合い、彼は彼女のために物語を朗読する。ここまでだと少年の妄想のような話なのだが、後半はナチス時代の戦争犯罪をめぐる裁判へと移っていく。 15歳の少年と36歳の女性の恋愛はちょっとありえないような感じなのですが(それはもう恋愛というより児童虐待に近い)、映画版『愛を読むひと』ではハンナをケイト・ウィンスレットが演じており(この役でアカデミー賞を受賞)、彼女の肉感的でありながら、エロさというよりたくましさのある身体はこの関係にリアリティを感じさせてくれる気がします。 海外もののベストセラーにありがちな、チャラい感じを予想していましたが、予想以上に文章が美しく、少年の日の思い出、後悔、苦悩が真摯な文章でつづられていました。 ドイツが背負い続ける過去の負い目と、それを背負わされる次世代の葛藤も垣間見えます。 ただ、ナチスの戦争犯罪と責任という重い問題がなんとなく感動的な恋愛ものにキレイに収まってしまうのはいかがなものなのか。 小説ではときとして食べることが性的メタファーとして描かれるように、朗読もまたセクシャルな行為にも見える。 彼が読む物語が『戦争と平和』だったり、『オデュッセイア』だったりするのもまた。 以下、引用。 友情も、恋愛も、別れも、何もかもが簡単だった。すべてが簡単に思え、すべてが軽かった。だから、思い出の量もこんなに小さいのかもしれない。 それはまるで、注射されて麻痺した腕を自分でつねってみるようなものだった。腕はつねられたことを自覚しないが、手の方はつねったことを自覚している。最初の瞬間には、脳をそれらの認識を区別することができない。 「ではあなたは、場所を作るために、『あんたとあんたとあんたは送り返されて死ぬのよ』と言ったわけですか?」 ハンナは、裁判長がその質問で何を訊こうとしているのか、理解できなかった。 「わたしは……わたしが言いたいのは……あなただったら何をしましたか?」 それはハンナの側からの真剣な問いだった。彼女はほかに何をすべきだったのか、何ができたのか、わからなかった。 「わたしたちは幸福について話しているんじゃなくて、自由と尊厳の話をしているんだよ。幼いときでさえ、君はその違いを知っていたんだ。ママがいつも正しいからといって、それが君の慰めになったわけじゃないんだよ」 ときおりぼくは、ナチズムの過去との対決というのは学生運動のほんとうの理由というよりも、むしろ世代間の葛藤の表現であって、それこそが学生運動の駆動力になっていたのだと思うことがある。 ぼくは当時『オデュッセイア』を再読していた。初めて読んだのはギムナジウムの生徒のときだったが、帰郷の物語としてずっと記憶にとどめていた。しかし、それは帰郷の話などではなかった。同じ流れに二度身を任せることができないと知っていたギリシャ人たちにとって、帰郷など信じられないことだった。オデュッセイアはとどまるためではなく、またあらためて出発するために戻ってくる。『オデュッセイア』はある運動の物語にほかならない。その運動には目的があると同時に無目的でもあり、成功すると同時に無駄でもある。
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先日「愛を読む人」を、DVDで見た。何度も書店の棚で見かけていた「朗読者」の映画化だと、その時知った。 文庫の裏表紙のあらすじでは、母親ほども年の離れた女性に恋をしたという一節があり、甚だ下品な興味から映画を借りたのだが、実際にはナチスの戦犯として裁かれる女性と恋をしてしまった男...
先日「愛を読む人」を、DVDで見た。何度も書店の棚で見かけていた「朗読者」の映画化だと、その時知った。 文庫の裏表紙のあらすじでは、母親ほども年の離れた女性に恋をしたという一節があり、甚だ下品な興味から映画を借りたのだが、実際にはナチスの戦犯として裁かれる女性と恋をしてしまった男性の話になっている。 なぜ朗読を求めたのか、そして、彼女はなぜ、別れも告げず主人公の前から、姿を消したのか。 文盲であるということは、僕には想像するとことしか出来ないが、それがヒロインハンナの人生を翻弄している。 文盲であるために、失踪し、文盲であるために、裁判で重い罪を課せられる。 文盲であることを公にするのと、重い刑を受けるのを秤にかけて、ハンナは刑を受ける方を選んだ。 僕からすれば、愚かに思えるし、主人公も何とかハンナが文盲であることを伝えられなかったのか思ってしまう。 主人公は獄中のハンナに物語を朗読したカセットテープを10年にもわたって送り続け、ハンナはそれに応えるように、字を学び、主人公に手紙を送るが、主人公は朗読のテープ以外に、返事は書かない。 ハンナの出所の日が近づき、更生に向けて主人公は準備をするが、ハンナは出所の日に自殺してしまう。 そして ハンナの残した金を、ユダヤの生き残りの女性に渡しに行ったところで話は終わる。 僕が感じたのは、所々にある齟齬、すれ違いのようなもの。 男女或いは、人間は完全には、理解出来ないものであると思った。
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「ぼくたちの逢瀬も、記憶の中ではただ一度の長い逢い引きだったように思える。」美しくも実に刹那い。 映画『愛を読むひと』の原作 シャワーを浴びてベットに入るまで、少年は彼女に本の読み聞かせをする。 それを愛と呼びたい。時代背景が憎い。
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大学の講義で題材として取り上げられたことで興味を持ち、読むに至りました。映画も一部見ていたので、読んでいる最中その先入観が先走ってしまった気もします。これから再読に入ります。2回目はさらに繊細な感情表現をくみ取ることができるそうなので楽しみです。
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ハンナを理解することは難しい。戦時はナチの看守として勤務し、移送中の事故の折にはとらわれていた人たちを見殺しにした。その後、ふとしたきっかけで出会った15歳の少年と関係を持ったというと、道徳心のない人物のようだけど、実際のハンナは激しやすくやや不安定とはいえ、普通の人に見える。「...
ハンナを理解することは難しい。戦時はナチの看守として勤務し、移送中の事故の折にはとらわれていた人たちを見殺しにした。その後、ふとしたきっかけで出会った15歳の少年と関係を持ったというと、道徳心のない人物のようだけど、実際のハンナは激しやすくやや不安定とはいえ、普通の人に見える。「あの時私はどうしたらよかったの?あなたならどうしましたか?」という問いかけは切実だ。また罪が重くなることより文盲が知られることが彼女にとって耐えられなかったこと、恩赦を前に死を選んだこと、理由は想像できるが…。幸せいっぱいではないかもしれないけど、静かな余生を送ることもできたのに。理解が難しい。
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まず、題名がこれはなんだろうと思わせる。 それはあっと驚くこと、ミステリーではないけどここでは言えない。 15歳の少年ミヒャエルと36歳の女性ハンナとの恋愛。 なんだか新聞沙汰のようでしっくりしないんだけど、そんなこともあるかと読み進むほどに嫌な気はしない。 不思議なことに、...
まず、題名がこれはなんだろうと思わせる。 それはあっと驚くこと、ミステリーではないけどここでは言えない。 15歳の少年ミヒャエルと36歳の女性ハンナとの恋愛。 なんだか新聞沙汰のようでしっくりしないんだけど、そんなこともあるかと読み進むほどに嫌な気はしない。 不思議なことに、彼女の家で逢うごとに「オデュセイア」や「戦争と平和」などを読んでとせがまれ、読みつづける。 そうして逢瀬を重ね、落第しそうな彼に「勉強しなさい!しないなら来ないで!」という。 『バカだって?バカってのがどういうことだかわかってないのね』という彼女の悲痛な叫び。 彼は勉強も頑張り、落第はしないが別れは来る。 7年後、法学の大学生となった彼は、ゼミのため訪れた法廷でハンナと再会。 ちょっとトルストイの「復活」を思い出すが。 ナチス・ドイツ戦争の影。 彼女の秘密。 ふたたび、朗読が始まる。 朗読は18年続く。そして...。 主人公が哲学者の父に諭される言葉が、私には印象的だった。 私がよくしてしまって、後で後悔することだ。 でもどちらがいいのだろう? 父 『でも、わたしは大人たちにたいしても、他人がよいと思うことを自分自身がよいと思うことより上位に置くべき理由はまったく認めないね』 主人公 『もし他人の忠告のおかげで将来幸福になるとしても?』 父 『わたしたちは幸福についてはなしているんじゃなくて、自由と尊厳の話をしているんだよ。…(後略)』 解説に、この本は二度読むように勧められているとある。 感想を書きながら、そうこれも二度読むことになったと実感した。
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他の方も書かれているように出だしの章はきつかった。投げ出しそうになりながらこの本を薦めてくれた人のことを思って乗り切った。 そのためか再会からの流れが衝撃的で切なかった。 戦争を起こした親世代のことをわたしたちは糾弾したり謝罪を求めたりしただろうか。断罪を要求する資格がないにしろ...
他の方も書かれているように出だしの章はきつかった。投げ出しそうになりながらこの本を薦めてくれた人のことを思って乗り切った。 そのためか再会からの流れが衝撃的で切なかった。 戦争を起こした親世代のことをわたしたちは糾弾したり謝罪を求めたりしただろうか。断罪を要求する資格がないにしろ、納得のいく答えを欲している人は少なくないあろう。小麦や石油不足の生だけにしてはいけないような気がする。 この本はドイツとナチスの関係を題材としてそんなことを囁いている。 釈放される前日の自殺。 自殺の重さも置かれた状況によって違うと言うことを学んだ。
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面白かった。 すごい生々しい描写が多いと思ったけど、裁判の話になってからはそんなこともなく。 生きる上でのプライド、他の人にはわからない部分。 そこまでして守りたかったもの。 罪を犯してしまったのは無知が原因ではあるんだけど、それを償おうと必死の様子が伝わってきて、、 本当に愛...
面白かった。 すごい生々しい描写が多いと思ったけど、裁判の話になってからはそんなこともなく。 生きる上でのプライド、他の人にはわからない部分。 そこまでして守りたかったもの。 罪を犯してしまったのは無知が原因ではあるんだけど、それを償おうと必死の様子が伝わってきて、、 本当に愛してたからこそ、相手の負担になりたくなくて身を引いたんだよね。
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何年ぶりかに再読。 なぜか何度も読み返したくなる好きな本です。 ハンナの 「……あなただったら何をしましたか?」 この真剣な問いに自信を持って答えれる人はなんて答えるのだろう? 裁判長 「この世には、関わり合いになってはいけない事柄があり、命の危険がない限り、遠ざけておくべき事...
何年ぶりかに再読。 なぜか何度も読み返したくなる好きな本です。 ハンナの 「……あなただったら何をしましたか?」 この真剣な問いに自信を持って答えれる人はなんて答えるのだろう? 裁判長 「この世には、関わり合いになってはいけない事柄があり、命の危険がない限り、遠ざけておくべき事柄もあるのです」
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