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国家(上) の商品レビュー

4.2

58件のお客様レビュー

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2014/11/19

ソクラテスの口を借りてプラトンが主張していることは、結局のところ「神の視点」から脱しきれていないように感じる。 善い人間と悪い人間を判断することについて、本書の中でソクラテスは 「しかし人々はその点についてよく判断を誤り、実際には善い人間でないのにそう思ったり、あるいはその反対...

ソクラテスの口を借りてプラトンが主張していることは、結局のところ「神の視点」から脱しきれていないように感じる。 善い人間と悪い人間を判断することについて、本書の中でソクラテスは 「しかし人々はその点についてよく判断を誤り、実際には善い人間でないのにそう思ったり、あるいはその反対だったりすることが、しばしばあるのではないか?」(p41) と言っている。それなのに、知を愛する真の支配者・哲学者は決して判断を誤らない、とでも言いたげな後半の主張は矛盾している。 各人が分をわきまえて任に就く(適性に応じて働く)とか、支配者となるべき人物を支配者に据える、などというような考え方も示されているが、支配者に適している人物を判断し決定し教育するのは誰なのか?その判断を正しく下せるのは「神」に他ならないのではないか……? ともあれ、大昔のギリシア人たちの会話(=プラトンの思考過程)を眺めるのはおもしろい。 思っていたより訳文が平易なのも驚いた。教科書などのプラトン解説よりもずっとわかりやすい。

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2014/11/12

人間に正義はないが、国家は、みんなが分業して暮らしているので、利害調整のために正義が必要だ。正義は人間のためにあるのではなく、国家のためにある。政治は私利私欲のない、暇な人が、善意でやるべきで、そういう人じゃないと正義の守護者になれない。正義にみられるのではなく、正義であることが...

人間に正義はないが、国家は、みんなが分業して暮らしているので、利害調整のために正義が必要だ。正義は人間のためにあるのではなく、国家のためにある。政治は私利私欲のない、暇な人が、善意でやるべきで、そういう人じゃないと正義の守護者になれない。正義にみられるのではなく、正義であることが国家の正義の本質だ。だから政治家は音楽や文芸に親しむ感受性の強い人が良い。そういう人は権力に敏感だから、仮に他国と戦争になっても、第三国を巻き込んで同盟工作をかける知性を発揮するはずなので、大丈夫だ。などとソクラテスが語りまくる。

Posted byブクログ

2014/03/07

正義とは何か。この答えを探るためにプラトンは、適切な国家のあり方を示す。プラトンによれば、その国家では、三つの部分(階級)の調和がある。本書には、実現可能性に関する議論があるものの、彼がその国家の実現を具体的に意図していたようには見えない。イデア説をはじめとする個々の議論も、様々...

正義とは何か。この答えを探るためにプラトンは、適切な国家のあり方を示す。プラトンによれば、その国家では、三つの部分(階級)の調和がある。本書には、実現可能性に関する議論があるものの、彼がその国家の実現を具体的に意図していたようには見えない。イデア説をはじめとする個々の議論も、様々な解釈の余地があり、本書は、今後も論争を産み続ける著作であろう。

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2013/08/10

この時代に、ここまで考察している事に驚きを感じます。 これは紛れもなく、良書です。 今の政治家全員に精読していただきたい本ですね。

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2013/07/26

・「熱でふくれあがった国家」(p141)を「理想国」に浄化するための方法を考察することが本書の中心テーマ。 ・良い国家を作るためには良い教育が必要で、教育に悪影響を及ぼすものは徹底的に排除されなければならない。さらに、病弱な者は治療せずに死んでいくに任せ子孫も残してはならない一...

・「熱でふくれあがった国家」(p141)を「理想国」に浄化するための方法を考察することが本書の中心テーマ。 ・良い国家を作るためには良い教育が必要で、教育に悪影響を及ぼすものは徹底的に排除されなければならない。さらに、病弱な者は治療せずに死んでいくに任せ子孫も残してはならない一方で、有能な男女間には可能な限り多くの子種が作られるべきだ。そして、国家は有能な少数の者が支配するべきであり、国民全員が国家のために苦楽を共有すべきである。 ・言論統制と優生思想と少数支配と滅私奉公とに基づいたこの「理想国」は、プラトンの死から幾千年後の20世紀になってようやく実現した。「もしそのような国制が実現したとすれば、その当の国家にとってすべてがうまく行くだろう」(p399)というプラトンの夢想は果たしてどうであったか。 ・個人的には第2巻のグラウゴンの問いかけが本書最大の山場であるように思う(プラトンの中に既に社会契約説の萌芽があったことには驚いた)。「不正がバレなければ、正義よりも得ではないか」と冷厳たる事実を突きつけられたソクラテスは、真正面からこれに反論することはできず、倫理的見地から反駁せざるを得なかったという点も興味深い。

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2013/05/20

対話という形式、わかりやすい翻訳だからまだ読みやすい。紀元前400年代の人の思想に触れていることに歴史の厚みを感じた。 なかなか友達にはしたくないプラトン。正義について調べるつもりが理想の国家の話に・・・。 女・子どもの共有とか、選民思想などかなり奇天烈な発想。ここまで読み継...

対話という形式、わかりやすい翻訳だからまだ読みやすい。紀元前400年代の人の思想に触れていることに歴史の厚みを感じた。 なかなか友達にはしたくないプラトン。正義について調べるつもりが理想の国家の話に・・・。 女・子どもの共有とか、選民思想などかなり奇天烈な発想。ここまで読み継がれてきた理由には疑問が残るけど、頷ける所もあり、よくわからない魅力がある。 あと、ひとつひとつ言語や意味を突き詰めていく姿勢には学ぶものがある。

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2013/04/22

人類史において検討されなければならないあらゆる命題をうち揃えたのがプラトンで、たかだか2500年くらいで答えが出るようものはひとつもなく、ホワイトヘッドの言うように、後世のしてきたことはせいぜいその脚註作り程度で、そのせいでますますわかりにくくなったという気がしないでもない。従っ...

人類史において検討されなければならないあらゆる命題をうち揃えたのがプラトンで、たかだか2500年くらいで答えが出るようものはひとつもなく、ホワイトヘッドの言うように、後世のしてきたことはせいぜいその脚註作り程度で、そのせいでますますわかりにくくなったという気がしないでもない。従ってこれは今もって史上最もラディカルな書であり続けているのだ。 「正義」の果てしなく遠い21世紀。

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2012/10/17

古代哲学の重要人物であるプラトンの対話編の一つ。対話を通して“正義”について明らかにしようとする著作であり、プラトンの重要な概念(イデア)に関しても語られている。この著作では、プラトンは、人間が正義を実現する状況を分析するために、比喩として巨視的な対象として社会(国家)における正...

古代哲学の重要人物であるプラトンの対話編の一つ。対話を通して“正義”について明らかにしようとする著作であり、プラトンの重要な概念(イデア)に関しても語られている。この著作では、プラトンは、人間が正義を実現する状況を分析するために、比喩として巨視的な対象として社会(国家)における正義の実現を分析する。この著作は哲学の古典であり、また対話篇の形をとっていることからも読みやすく、初めて哲学の議論に触れるには良いと思います。

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2012/09/16

評価は下巻を読み終えてから。「プラトニック」の意味がよく分かるが、正直なところ、ここまでストイックだとついていけない。エソテリックささえ感じる。

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2012/04/20

正義とは何かという問で本書は始まる。 脚注によると、古代ギリシアでは「友を益し敵を害するのが正しいことだ」という考えが広く正義ととらえられていたようだが、プラトンはそうは思わなかったようだ(p42)。人を害することは不正なことだと言っている(害することによって、相手は正しくなる...

正義とは何かという問で本書は始まる。 脚注によると、古代ギリシアでは「友を益し敵を害するのが正しいことだ」という考えが広く正義ととらえられていたようだが、プラトンはそうは思わなかったようだ(p42)。人を害することは不正なことだと言っている(害することによって、相手は正しくなるのではなく、不正になるから)。 個人にとっての正義を考える上で、より包括的な存在――国家――にとっての正義を考えていく。 そのために「理想的な国家」を創りだした。 この「理性的な」というのは、「国の全体ができるだけ幸福になるように」(p261)ということ。 理想的な国家には4つの性質があるらしい:「知恵」「勇気」「節制」そして「正義」 勇気は「恐ろしいものとそうでないものについての、正しい、法にかなった考えをあらゆる場面を通じて保持すること」(p289)のことを言う。 また、自身の中で「すぐれた本性をもつものが劣ったものを制御している場合」(p292)に、そこに節制があるという。 それで、正義とはそれぞれが自分の生まれ持った才能に合った役目を全うすることだという。自分の分を越えてはならない。 終盤は難しくて何を言っているのかよくわからなかった。 ■ 余談 ・序盤で書かれている、お金持ちになることの効用が興味深かった。「たとえ不本意ながらにせよ誰かを欺いたり嘘を言ったリしないとか、また、神に対してお供えすべきものをしないままで、あるいは人に対して金を借りたままで、びくびくしながらあの世へ去るといったことのないようにすること、このことのために、お金の所有は大いに役立つのである。」(p26;ケパロス) ・神に世俗的な振る舞いをさせるような詩は守護者の教育によくないから、そういうものはチェックして世に出ないように書いている(p172のあたり)。国が作るべき/作ってはならない物語のルールを規定すべきだとも書いている(p159)。国家検閲を推奨しているように見える。詩に厳しいのは、プラトンが詩を挫折した過去もあるから? ・病気になったからといって、仕事を奪ってでも延命させることは医者のやることではないといっている(p233のあたり)。怪我や病気で役に立たなくなった大工は、諦めてさっさと死ぬべきだという。 ・男性の壮年期がp370において25歳~55歳となっているが、当時で55歳はまだ元気な部類だったのだろうか ・戦争をしても、それは善意を持って正すわけだと主張して、ギリシア人同士で奴隷にしたり、されたりすることは否定しているように思う(p398)

Posted byブクログ