カフカ短篇集 の商品レビュー
ドイツ文学者・池内紀さん逝去 カフカやカール・クラウスらの翻訳で知られる池内さんが逝去。 ご冥福をお祈りします。
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カフカ寓話集の冒頭に収録されていた皇帝の使者にしても、こうしてカフカ短篇集の最後を飾る万里の長城に収まったこそ、その意図が明確になるのでは、と思ってしまう。やはりカフカは面白い。
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カフカの短編はほぼ読んだことがなかったのですが、ドイツ文学者の池内先生の編訳になるこの一冊で、カフカの作品世界は深く、広いのだと実感しました。
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特に印象に残った章を二つ。 ・判決 ゲオルグは父と話したことで、他者の視点による事実を知る。自分の見ていた現実がただの世界の一面に過ぎない事実を突きつけられる。 階段を転げ落ちるようなスピードで急速に崩壊してゆくゲオルグの現実。 ・流刑地にて ある流刑地にて犯罪者の処刑を行っ...
特に印象に残った章を二つ。 ・判決 ゲオルグは父と話したことで、他者の視点による事実を知る。自分の見ていた現実がただの世界の一面に過ぎない事実を突きつけられる。 階段を転げ落ちるようなスピードで急速に崩壊してゆくゲオルグの現実。 ・流刑地にて ある流刑地にて犯罪者の処刑を行ってきた将校は、自分の信念によって自らの命を絶つ。 自分の死によってその信念を立証するために。 しかし、その死すら最後に彼を裏切った。 絶望名人カフカによる悲しい、ユーモアのこもった作品集。
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2009年4月1日~2日。 これだよこれ! と思わず大声で叫びたくなるのは、数日前に読んだ「カフカ寓話集」の面白味の無さに呼応してのこと。 この「カフカ短篇集」を読むと「カフカ寓話集」は残りものを集めたんじゃないの? って疑問すら湧いてくる(強ち外れているとも思えないが)...
2009年4月1日~2日。 これだよこれ! と思わず大声で叫びたくなるのは、数日前に読んだ「カフカ寓話集」の面白味の無さに呼応してのこと。 この「カフカ短篇集」を読むと「カフカ寓話集」は残りものを集めたんじゃないの? って疑問すら湧いてくる(強ち外れているとも思えないが)。 各作品の面白さから解説に対する力の入れ方まで、なにから何までが雲泥の差としか思えないのだ。 「カフカ寓話集」の冒頭に収録されていた「皇帝の使者」にしても、こうして「カフカ短篇集」の最後を飾る「万里の長城」に収まったこそ、その意図が明確になるのでは、と思ってしまう。 やはりカフカは面白い。
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カミュに言わせれば、カフカの作品は極めてファンタジーであると言うが、決して単なるお伽噺に過ぎないというそういう侮蔑ではないと思う。カフカの想像は、人間の想像の限界を超えられないというところで超えてしまっている。 決して近未来や未知のテクノロジーだったりそういう類の想像ではない。い...
カミュに言わせれば、カフカの作品は極めてファンタジーであると言うが、決して単なるお伽噺に過ぎないというそういう侮蔑ではないと思う。カフカの想像は、人間の想像の限界を超えられないというところで超えてしまっている。 決して近未来や未知のテクノロジーだったりそういう類の想像ではない。いつも等身大の生活の中でふっと生じるものがカフカの想像である。彼の与える空間はいつだって閉塞的で、圧迫されているかのように感じられる。読んでいてとても息苦しい。離れられない、逃れられない、そういうしめつけがどこかまとぁりついてくる。彼が用いるのは「喩え」おそらく閉塞的な機構(システム)というのは喩えだったのだろう。万里の長城を読んでいて、この閉塞感というものは、カフカが求め、そして辿りつけなかった彼岸のことだったのではないかと思う。それを喩えて、ひとつの完結した閉塞システムを彼は書き上げたのではないか。 彼は職業作家では決してなく、書き上げた作品でさえ、焼却を願う人物だったことから、彼の思索や感覚というもののすべてを感じ取ることは大分難しい。しかし、書きかけのノートや断片、メモを見通すと、彼の想像が決して日常をかけ離れた荒唐無稽のものとは決して思えない。むしろ、日常の地に足着いた生活から生じていると思われる。彼のもたらすシステムは彼にとってのある種の楽園だったのではないか。辿りつけないからこそ、求めてやまない、息苦しいものだ。そうした機構をひとは太古の時代からもってしまっている。それゆえに、日常の中で見出したり、出会ってしまったりするのだ。これを不条理と呼ばずになんと呼ぶのか。カミュがカフカに惜しみない賛辞を与えたのは、ふたりとも同じように乾いていたからだ。それを喩えの中で勝ったのがカフカで、賭けに勝って喩えで負けたのがカミュなのだ。いずれにせよ、ふたりとも確かな理想をもって生活していたのだ。 ミロのビーナスのように、書きかけ以外の何ものでもない作品が多いが、作品化することなど考えておらず、ふと思いついたことを書きとめてやがて見返してまた考える、そういうことをしていたような気がする。デュラスのようにじっくりとことばを掘り起こしていくのではなく、モチーフをいくつか並べてみてdetailを増やしていく、そんな感じ。もっと先を読んでみたいが、今書きかけのものも、他のモチーフが並んだらきっとまた、少しずつ書き換えられるだろう、そんな気がする。
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仕事は忙しいし、官僚的なわけのわからいないプロセスのなかで、なにをやっているのか分からなくなる。 という状況のなかで、これってカフカ的だなと思い。仕事の合間に、短編をパラパラと読む。 すると、これがすごい。カフカって、幻想的というイメージだったのだが、これは、全くリアル以...
仕事は忙しいし、官僚的なわけのわからいないプロセスのなかで、なにをやっているのか分からなくなる。 という状況のなかで、これってカフカ的だなと思い。仕事の合間に、短編をパラパラと読む。 すると、これがすごい。カフカって、幻想的というイメージだったのだが、これは、全くリアル以外の何ものでもない。もちろん、わけのわからないシュールな展開が多いのだが、そういう不条理さまで含めて、これこそが現実である。 と、とりあえず、断言してみる。 カフカは、サラリーマンをやったり、親が老いたりしなければ、分からない作家であったのだ。
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物語には約束事などなく、だからだろうか、私にはこれが何か額縁に入った一つの絵を説明しているような、こんな表現は手抜きかも知れないが、だけれども、やはり、詩なのではないのだろうか、そう感じざるを得ない。 その吐き出された言葉を外野が意味付け、わかる人だけわかる、一種の会員制の趣は...
物語には約束事などなく、だからだろうか、私にはこれが何か額縁に入った一つの絵を説明しているような、こんな表現は手抜きかも知れないが、だけれども、やはり、詩なのではないのだろうか、そう感じざるを得ない。 その吐き出された言葉を外野が意味付け、わかる人だけわかる、一種の会員制の趣は、詩のように解釈の多義性をもたせた芸術が持つ性質そのものであり、作品の時代背景や作者のその時の心理状態を研究する立場にない読者は、主観を大事にすれば、それで良いのだと思う。しかし、それを紐解いた時、作品は最早資料に変質する。文学の楽しみは人それぞれで良いのだろう。
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切れ味抜群の文章。奇妙な寓話の世界へ引き込まれます。カフカの世界を覗かせてもらった不思議な体験でした。
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カフカは難解だ。しかし、それでも読者惹きつける何かが間違いなくある。その点でカフカ世界を、五感と想像力をもって感じられたから良かった。 「掟の門」 「判決」 「流刑地にて」 「夜に」 「橋」 「町の紋章」 「プロメテウス」 「喩えについて」 解釈を急がず、カフカ世界に入ってい...
カフカは難解だ。しかし、それでも読者惹きつける何かが間違いなくある。その点でカフカ世界を、五感と想像力をもって感じられたから良かった。 「掟の門」 「判決」 「流刑地にて」 「夜に」 「橋」 「町の紋章」 「プロメテウス」 「喩えについて」 解釈を急がず、カフカ世界に入っていく。 そして、そのまま物語の世界に独りで取り残されたかのような感覚を与えてくれる。 こんなにも不可思議で、乱暴な短編集は初めてだった。
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