カフカ短篇集 の商品レビュー
20100710 実は有名な「変身」すら読んでなかった。じゃあまず短編から、という理由で手を出したというわけでもないのだが、短編集でもカフカはカフカ、難解だ。でも奇を衒っただけの薄っぺらなシュール小説ではないと感じた。真剣な通奏低音があるんだろうな。 超短編「橋」で思いがけず涙...
20100710 実は有名な「変身」すら読んでなかった。じゃあまず短編から、という理由で手を出したというわけでもないのだが、短編集でもカフカはカフカ、難解だ。でも奇を衒っただけの薄っぺらなシュール小説ではないと感じた。真剣な通奏低音があるんだろうな。 超短編「橋」で思いがけず涙を誘われた。この橋は橋であって橋でない。谷の上に手足をかけて、誰かが通るのを待っていた人間だ。人間だからこそ、思いもかけない「なんと、橋が寝返りをうつ」ことだってあるわけで、崖の上から<男>はどこへ落ちて行ったのだろうか、それを考えるとこみ上げてくるものがある。 超短編ながら、これは小説一般の凝縮、この世の見取り図、あらゆる悲劇と喜劇の設計図とも呼べる作品なのではないだろうか。人間の苦悩は人を殺す力を持っているけれど所詮それだけで、私たちの悲しみも喜びもこのわずか1ページ半ほどの間に閉じ込められてさまよっているのではないか? ほかには「流刑地にて」「掟の門」「判決」「火夫」「父の気がかり」「夢」あたりが好きだった。「こま」だけはほんとにどうしようもない、何だかわからないのが悔しい。
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20世紀を代表する作家の一人、フランツ・カフカの文字通り短編集です。 4ページからなる「掟の門」から始まり、「万里の長城」で終わる作品のチョイスがステキな、 カフカの作品集として1番のオススメ。 ステキな発想と、突然の不条理も違和感を感じさせない文章力で、普通の文学作品とは異なっ...
20世紀を代表する作家の一人、フランツ・カフカの文字通り短編集です。 4ページからなる「掟の門」から始まり、「万里の長城」で終わる作品のチョイスがステキな、 カフカの作品集として1番のオススメ。 ステキな発想と、突然の不条理も違和感を感じさせない文章力で、普通の文学作品とは異なったおもしろさがあります。 活字は苦手な方やライトノベルならって方にも、短編集で発想がおもしろいので、おすすめしたい一冊です♪ バランスよく収録されているので、試しにって方でも、お値段もお手ごろでオススメできちゃいます。
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読みやすい短編集なうえに、カフカの頭の中が(理解できなくても構造をある程度眺めるくらいには)解る一粒で二度美味しい本でした。
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カフカは僕にとっては難解すぎて困惑することばかりですが、読んでいるうちに癖になってくる不思議な作家です。 「流刑地にて」が好きです。意味わからんけど面白い。
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「流刑地にて」がとにかく衝撃的だった。 不条理ではなくて、ひとりの人の人生を残酷に語っていて、思考回路が止まるかと思った。
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意味がよくわからない短編が多くて、おとぎ話しのような教訓が感じられるものもあれば、そういうものがまったく見当たらない、オチの意味が皆目わからない話しもある。 全20編の短編の長さはかなりまちまちで、50ページぐらいの長めの話しがあったり、1ページで完結してしまうものもあったりす...
意味がよくわからない短編が多くて、おとぎ話しのような教訓が感じられるものもあれば、そういうものがまったく見当たらない、オチの意味が皆目わからない話しもある。 全20編の短編の長さはかなりまちまちで、50ページぐらいの長めの話しがあったり、1ページで完結してしまうものもあったりするのだけれど、短くまとまったものほどシンプルでひねりがきいていて面白いと思う話しが多かった。 「掟の門」 「橋」 「プロメテウス」 の3つが良かった。いずれも1〜4ページ程度の、極端に短い短編だ。 特に、「掟の門」は、実に様々なことを考えさせられる。 要点だけを抜き出しても、響いてくるものがある。 ・門には門番がいて「今はたぶんダメだから後にしろ」と門番は言う。 ・門はどうしても通れないというわけではない。 ・ただし、見るからに強そうな門番を倒さなければいけないらしい。 ・最初の門を過ぎても、順番にどんどん強力な門番が現れるらしい。 ・永い年月の間に、その最初の門番のこと以外は考えられなくなった。 ・門が開くのを待ち続けたまま、ついに男は息絶えてしまう。 ・その門は誰でも通れるものではなく、その男のためだけのものだった。 そこから何を感じて、何を教訓とするかという解釈は人それぞれというところが、この種類の短編の良さだと思う。 「誰もが掟を求めているというのに」 と、男は言った。 「この永い年月のあいだ、どうして私以外の誰ひとり、中に入れてくれといって来なかったのです?」 いのちの火が消えかけていた。うすれていく意識を呼びもどすかのように門番がどなった。 「ほかの誰ひとり、ここには入れない。この門は、おまえひとりのためのものだった。さあ、もうおれは行く。ここを閉めるぞ」(p.12)「掟の門」 この先、いったい、どうなることやら。かいのないことながら、ついつい思案にふけるのだ。あやつは、はたして、死ぬことができるのだろうか?死ぬものはみな、生きているあいだに目的をもち、だからこそあくせくして、いのちをすりへらす。オドラデクはそうではない。いつの日か私の孫子の代に、糸くずをひきずりながら階段をころげおちたりしているのではなかろうか?誰の害になるわけでもなさそうだが、しかし、自分が死んだあともあいつが生きていると思うと、胸をしめつけられるここちがする。(p.105)「父の気がかり」 ところで人魚たちは、歌よりもはるかに強力な武器をもっていた。つまり、沈黙である。たしかにこれまであったためしはないにせよ、彼女たちの歌声から身を守れないことはなさそうだ。しかし、沈黙にはとうていだめである。自力で人魚に打ち勝ったという感情と、そのあとにこみあげてくる昂然とした気持には、誰であれ手もなくやられてしまうものだから。(p.228)「人魚の沈黙」
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流刑地にて が一番好き。 あと二個ボール出てくるやつ。 おかしくてたまらなかった。
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内容(「BOOK」データベースより) 実存主義、ユダヤ教、精神分析、―。カフカ(1883‐1924)は様々な視点から論じられてきた。だが、意味を求めて解釈を急ぐ前に作品そのものに目を戻してみよう。難解とされるカフカの文学は何よりもまず、たぐい稀な想像力が生んだ読んで楽しい「現代の...
内容(「BOOK」データベースより) 実存主義、ユダヤ教、精神分析、―。カフカ(1883‐1924)は様々な視点から論じられてきた。だが、意味を求めて解釈を急ぐ前に作品そのものに目を戻してみよう。難解とされるカフカの文学は何よりもまず、たぐい稀な想像力が生んだ読んで楽しい「現代のお伽噺」なのだ。語りの面白さを十二分にひきだした訳文でおくる短篇集。20篇を収録。
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本人が死後に出版されるなど思いもよらずに、思いつくままに走り書きした物をまとめた物なので、完成度的には低いというか、書きっぱなしで終わっている話が多いのはしょうがない。しかし、読んでみて、この人は本当に物語を考えたり、空想したりするのが好きだったんだなって思った。
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私の一押しは「掟の門」、最後は衝撃的だった。恐らく10年後に読み返せば、また違う解釈が出来る。自分の人生経験にあわせて本の方でも成長してくれる本。カフカにはまりそうです。池内紀さんの翻訳も雰囲気が出ていて素晴らしい。
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