夢十夜 他二篇 の商品レビュー
追記 表題作「夢十夜」について学部で読書会を行なって随分理解が深まったので追加。 夢十夜はそれぞれを漱石が見た夢と考えてもいいが、よく読んでみると技工の優れた点や、後の作品の片鱗、漱石らしい主張などなど様々なものが盛り込まれている。 第一夜は、死や土の匂いなど負の要素が確か...
追記 表題作「夢十夜」について学部で読書会を行なって随分理解が深まったので追加。 夢十夜はそれぞれを漱石が見た夢と考えてもいいが、よく読んでみると技工の優れた点や、後の作品の片鱗、漱石らしい主張などなど様々なものが盛り込まれている。 第一夜は、死や土の匂いなど負の要素が確かにあるのにそれを全く意識させない美の連続、流麗な文章の巧みさは漱石ならでは。特に白い肌の色から白百合への色の流れの美しさと輪廻の象徴は脱帽。 他にも七夜八夜が表す英国文化に迎合する日本批判は十夜の庄太郎に見える「それから」の代助の片鱗などなど。たった数ページの文章でも読めば読むほど深みが知れて底が見えない作品でした。 漱石先生可愛い 表題作の夢十夜はずいぶんと暗示的で理解するのが難しいです。 ですが、一緒に収録されている文鳥と永日小品はとても面白い。 漱石先生がロンドンで道に迷ったり、道に迷ったり道に迷ったり。 先生の他愛も無い日常を垣間見るのは明治の世の人と今の人とが同じ「日本人」であることを感じられとても面白いです。
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心が冷えて硬くなったり魂と呼ばれているものの一部分が谷底へ音もなく落ちていったり、本を読んでいてこんな感覚を味わえるのかと常識を覆された 「おもしろい」とか「雰囲気がいい」といった言葉がぺらぺらになるほど神聖な高みに或る
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『文鳥』は、夏目漱石の中でもとりわけ好きな物語。表題作より好きなので、文鳥の感想だけ。 これを書いた人は随分と陰鬱で窮屈な思いをしていたのではないかな、と思う(漱石の生涯について聞いたことがあり、先入観が生まれてしまうのかもしれないけれど)。軽々しい話しっぷりやユーモアさえ...
『文鳥』は、夏目漱石の中でもとりわけ好きな物語。表題作より好きなので、文鳥の感想だけ。 これを書いた人は随分と陰鬱で窮屈な思いをしていたのではないかな、と思う(漱石の生涯について聞いたことがあり、先入観が生まれてしまうのかもしれないけれど)。軽々しい話しっぷりやユーモアさえ挟むストーリー、そして千代千代と鳴く可愛らしい文鳥。読んでいて楽しくなる要素はたくさんちりばめられているのに、悲しみがこっそりと、しかもずっと顔を覗かせている。 文鳥を脅かしてしまった自分の大きな手を厭だと思うシーン。書斎にいるときの、文鳥を眺める所とは対照的な寂しさ。そして文鳥の死。 最近うさぎを飼いたいなァと思うことが多いのだけど、これを読んでちゃんと飼える自信が無くなった。小説の主人公は、文鳥の世話を怠り結果的に死なせてしまったと言うより、意図的に殺したように思えるのだ。一方的な同朋意識と、それが間違いだったことによる失望・・・そう見えてしまう自分は狂っているのだろうか?
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夢十夜、好きです。 特に一夜目が好きです。 あの、突拍子もない話なのに、何時の間にか飲み込まれていく感じが好きです。
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夏目漱石の『夢十夜』。フロイト的解釈、ユング的解釈など、捉え方はいろいろあるようです。しかし、漱石が夢の世界に魅かれ、それをあの時代に小説として発表したということに深い意味があるかと思います。古い日本語の枠組みや、小説のしきたりを打破しようと模索し続けた漱石ならではの試みではない...
夏目漱石の『夢十夜』。フロイト的解釈、ユング的解釈など、捉え方はいろいろあるようです。しかし、漱石が夢の世界に魅かれ、それをあの時代に小説として発表したということに深い意味があるかと思います。古い日本語の枠組みや、小説のしきたりを打破しようと模索し続けた漱石ならではの試みではないかと思いますし、だからこそこのようなイメージを膨らませる源泉である“夢”に注目していたのではないでしょうか。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
DVDで観たしせっかくだから読む いやあやっぱり映像作品はおもいっきり脚色しているんだなあ あまり変わっていないものと言えば第2夜くらいだ こちらの方では好きなのは第一夜だった 夢十夜の他に「文鳥」と「永日小品」が入っていた どちらも日常を読ませる文章にするという点では凄いと思う しかし、文中では忙しいと書いてあったけど、実はかなり良い暮らしだったのではないか、と思った だって忙しいとか言いながら、寒くて一日中火鉢に当たっているし、てか、仕事の方もどちらかというと、果たしておかなければいけない義理に近いし なんだかなあ 良い生活だなあ 夏目漱石はあまり読んだことないけど、とりあえず虞美人草と三四郎は読みたいなと思う
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短編は苦手だなぁとは思ってたけども、やはり苦手だった。中編の「文鳥」は好きだ。千代、千代、かぁ・・。なんかもう羨ましいわ。この発想が。
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自分はこのときはじめて、人の海におぼれたことを自覚した。この海はどこまで広がっているのかわからない。しかし広い割には極めて静かな海である。ただ出ることができない。右を向いてもつかえている。左を見てもふさがっている。後ろを振り返ってもいっぱいである。それで静かに前の方へ動いていく。...
自分はこのときはじめて、人の海におぼれたことを自覚した。この海はどこまで広がっているのかわからない。しかし広い割には極めて静かな海である。ただ出ることができない。右を向いてもつかえている。左を見てもふさがっている。後ろを振り返ってもいっぱいである。それで静かに前の方へ動いていく。ただ一筋の運命よりほかに、自分を支配するものがないかの如く、幾万の黒い頭が申し合わせたように歩調を合わせて一歩ずつ前へ進んでいる。 今のような善知善能の金を見ると、神も人間に幸さんするんだから仕方がないかな。現代の神は野蛮だからな。
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夏目漱石の中では夢十夜が一番好きです。 掌編だけど深みがあって,どの作品からも抜け出せない。 上品なこの世界に浸るだけで,大人になれるような気がします。 ‘苦悩する知識人’な漱石じゃないところが,取っつきやすい。
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「女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかな瓜実顔をその中に横たえている。」・・・この文だけで、カラーの映像がクリアに浮かび上がってきませんか? 難しい言葉はひとつもなく、ひとつひとつの文は短いのに、圧倒的な描写力。さすが漱石先生。洗練された美しい日本語で綴られた短編は、夢オチゆえに...
「女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかな瓜実顔をその中に横たえている。」・・・この文だけで、カラーの映像がクリアに浮かび上がってきませんか? 難しい言葉はひとつもなく、ひとつひとつの文は短いのに、圧倒的な描写力。さすが漱石先生。洗練された美しい日本語で綴られた短編は、夢オチゆえにサラサラ読めて堅苦しくない。薄い本なのでいつも手許において気軽に読めます。
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