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英仏百年戦争 の商品レビュー

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75件のお客様レビュー

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2018/03/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

何度も何度も挑戦しては挫折するのが、西洋史。 百年戦争も薔薇戦争も、何冊も本を読んでいても全く頭に入ってこない。 だって、イギリス人はヘンリーとエドワードとジョンばっかりだし、フランス人はルイとシャルルとフィリップばっかりなんだもの。 誰が誰やら、ちんぷんかんぷん。 それはこの本を読んでももちろん変わらず、ヘンリーとかアンリとかがたくさん出てきますが、でも、この本は一味違う。 まず最初に書いているのが、イギリス人のシェイクスピア症候群。 西洋史にあまり詳しくない日本人でも、劣勢だったフランスがジャンヌ・ダルクの登場で戦況を覆し勝利した、ことぐらいは知っていると思うけど、イギリス人にとっての百年戦争はイギリスの勝利が常識になっているのだそうだ。 それは、イギリスの司馬遼太郎とも目される(?)シェイクスピアが、数々の戯曲でそのように書いているから。 司馬史観ならぬ、シェイクスピア史観。 “ちょこざいなシャルルが歴史にフランス王として罷り通るのは、イギリス自身の不幸な内乱(薔薇戦争)のせい”だとシェイクスピアはほのめかしている。らしい。 でもって、シェイクスピアもびっくりなのが(しなかったかもしれないけど)、イングランド王って、イングランドの貴族たちって、みんなフランス人だったってこと。 フランスの、フランスによる、フランス人のための戦争が、英仏百年戦争だった。 そもそもフランスの王家と大貴族には、明確な格差がなかった。 侵略や結婚などで領地が増えたり減ったりしているなかで、王家より力の強い貴族が現れることもあり、そうなると反逆だ内乱だということになってしまうのは、当たり前の流れ。 その一つとして、フランスの貴族と、母方の遺産としてイングランドを領地として持つ貴族の娘が結婚したことにより、莫大な領土を治めるフランスの大貴族が出来上がる。 彼らとフランス王家とのいざこざが、そもそものはじまりなのだ。 つまりフランス貴族とフランス王家との争い。 このころのフランスって、鎌倉幕府のような感じ。 一応王様がいるけれど、分家や婚姻で関係が入り乱れて、一枚岩になれない。 つねに謀反や裏切りの危険にさらされている。 鎌倉幕府も、将軍や天皇はさておき、北条家がまさにそんな感じでずっとごたごたしていた。 オルレアンの少女、ジャンヌ・ダルクは、ナポレオンが見出すまでは決してメジャーな存在ではなかった。 これもまた、司馬遼太郎に見いだされるまで無名の若者だった坂本龍馬を思い出させる。 歴史って、事実の上に主観の上塗りをされるから、洋の東西を問わず似たようなストーリーが出来上がってくるのかもしれない。 シェイクスピアが書くヘンリー五世 “父親との不仲ゆえに非行に走り、身分卑しき悪漢どもと徒党を組んで、不良少年の一頃をすごしながら、父親の死で王位につくや、とたん君主の鑑に生まれ変わると、シェークスピアは日本史における織田信長ばりの神話を紡いでいる。あるいは一連の描写に、王子を気さくな庶民派たらしめる作為を読み取るなら、むしろ「暴れん坊将軍」のようだというべきか。” 史実なのか、物語なのか。 それの見極めは、かなり難しい。 それが常識とされてしまうと、もはや疑ってかかることすら至難の業だ。 ところで。 英語の単語の中には、フランス語由来のものが結構あるのだそうです。 大陸の、文化の中心である大国のフランスの言葉は、田舎の島国であるイングランドの言葉よりも論理的だったり、抽象概念を表す言葉が豊富だったから。 日常的な、単純な事柄は英語で表現できても、複雑な思考や公的な事柄を表すにはフランス語の力を借りなければならなかった。 この辺は、中国語と日本語の関係を見るようでもあります。 そして人名。 英語名のヘンリーがフランス語名になるとアンリであるとか、英語名のジョンがフランス語名のジャンだとかは知っていたけど、フランス語名のギョームが、英語名だとウィリアムになるってのはどうよ!? ムしか合ってないじゃないの。 しばらくしてまた西洋の本を読んだら、一から勉強しなくちゃならないくらいに忘れているんだろうなあ。 でも、英仏百年戦争が、フランス人同士の戦争であったことは、もう忘れないと思う。

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2016/08/16

「歴史とはフィクションである。」という著者の言葉に、 確かに…と深く深く頷かざるおえない。 何方という視点、天のごとき視点、恣意的な視点という様々な見方の1つとして国民国家的視点という歴史の見方・解釈は面白く考えさせられた。 高校時代に歴史の授業で習ったよね〜となんとはなく憶...

「歴史とはフィクションである。」という著者の言葉に、 確かに…と深く深く頷かざるおえない。 何方という視点、天のごとき視点、恣意的な視点という様々な見方の1つとして国民国家的視点という歴史の見方・解釈は面白く考えさせられた。 高校時代に歴史の授業で習ったよね〜となんとはなく憶えていた英仏百年戦争。英仏という国の成り立ちを考える上での良い指針になりました。

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2016/02/29

著者は歴史家ではなく、歴史小説家。 それがために語り口は全然学者っぽくない。 あえて言えばべらんめぇ調である。 ぼく自身、百年戦争は過去に読んだことがある。 それもとても良い本だったが、殆ど忘れてしまった。 覚えていることと言えば、登場人物が錯綜してヤヤコシイ。 イギ...

著者は歴史家ではなく、歴史小説家。 それがために語り口は全然学者っぽくない。 あえて言えばべらんめぇ調である。 ぼく自身、百年戦争は過去に読んだことがある。 それもとても良い本だったが、殆ど忘れてしまった。 覚えていることと言えば、登場人物が錯綜してヤヤコシイ。 イギリスもフランスも沢山の家系が出てきて、それぞれが組んずほぐれつの争いを繰り広げる。 以前読んだ時はまだ若かったので、家系図を見比べながらかなり真剣に理解に勤めた。 今はもう歳なのでそんなエネルギーがないことは分かっているし、すぐに忘れることを知っているから、読み飛ばすに限る。 そして結局はフランス人同士の戦争であったことが記憶に残っている。 今回読んでも、同じ結論に至る。アタリマエだ。 だが、この本において、実は当時イギリスもフランスも国として存在せず、各有力な領主たちの緩い集合でしかなかったこと。(封建国家) この百年戦争を経ることによって、国民の中にナショナリズムが芽生え、中央集権国家、即ち現代に通じる国家が形成されるきっかけになったのだと説明される。 ぼくが国家とは何かについて、ぼんやりした疑問を懐いていたものを、この本が、百年戦争を例にとって明確に提示してくれた。 さらに、歴史は現代からの視点や尺度ではなく、その時代の尺度に立って見なければ見誤ることを再認識させられた。

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2015/07/27

フランスはいつからフランスか、イギリス人はいつイギリス人になったのか。 うーむ、刮目の一書。 百年戦争のはじまりの頃、それは「フランス人」同士の戦いであった。 ノルマンコンクウェストがフランス人によるイングランドの征服であったこと、イングランド王室の宮廷ではフランス語が話され...

フランスはいつからフランスか、イギリス人はいつイギリス人になったのか。 うーむ、刮目の一書。 百年戦争のはじまりの頃、それは「フランス人」同士の戦いであった。 ノルマンコンクウェストがフランス人によるイングランドの征服であったこと、イングランド王室の宮廷ではフランス語が話されていたこと、一つ一つの知識はあったはずなのに、それがどういうことなのか理解してなかった。 失地王ジョンは何をなぜ失ったのかも、全然わかってなかった。 非常に勉強になった。

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2015/02/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

石川雅之『純潔のマリア』から「英仏百年戦争」へ。 イングランドを治めていたのは、フランス人。と言うことは、英仏と言いながら、実はフランス人とフランス人の戦いであった訳だ。まだまだ知らないことは、多い。 また、「〇〇史」(←〇〇には国名が入る)とカテゴライズしてしまっているが故に見えなくなってしまっているものがあるという指摘も納得。文学も又然りである。 このまま「百年戦争」に関する小説を読んでみたいと思う。

Posted byブクログ

2014/07/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 英仏百年戦争に対して抱いていたイメージが一変した。まずこの戦争は出自的にフランス人同士の戦いであるということが驚き。またフランス人といっても当時は今の国民国家の意識はない。してみるとイギリスとフランスが国家の誇りを賭けて戦ったというロマンあふれるイメージはなんと的外れだっただろうか。一方で百年戦争の過程で国民国家の意識が醸成されていった側面もあるようで歴史認識を改めさせられた。  全体的に史実の羅列という印象で退屈ではあった。人名、地名が雪崩のように出てきて途中から分からなくなってしまったし。予備知識があると違うんだろうけど、世界史でも詳しくやる項目ではないし…。読んでいてヴィジュアルイメージがないのが辛かった。テレビで百年戦争を扱った番組があるといいんんだけど、  

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2014/04/27

歴史についてというより雑学本な感じがした。 戦争についての細かい所が描かれてなくて少し読み足りない

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2014/04/18

「王妃の離婚」や「物語フランス革命」などヨーロッパを題材とした小説で有名な佐藤賢一。エンターテイメント小説を手掛けているためか、大変読みやすく100年戦争が描かれている。 100年戦争が終結する以前のヨーロッパは、地方領主がひしめく中、ローマ教皇や神聖ローマ皇帝が歴史を動かす軸と...

「王妃の離婚」や「物語フランス革命」などヨーロッパを題材とした小説で有名な佐藤賢一。エンターテイメント小説を手掛けているためか、大変読みやすく100年戦争が描かれている。 100年戦争が終結する以前のヨーロッパは、地方領主がひしめく中、ローマ教皇や神聖ローマ皇帝が歴史を動かす軸として存在感や影響力を持ってきた。それが100年戦争の終結によりフランス・イギリスという国民国家の萌芽が生まれてくる。 ここにおいて、それ以降の歴史がイギリスやフランスのイタリアとドイツに対する優位という構図となる。ある意味で歴史の主役が逆転してくる。戦争を継続的に行ってきたためか、それまでより強い王権のもとで現在で言うところのイギリスとフランスは国内を統一していく。その一方でドイツ、イタリアの国民国家の萌芽はウエストファリア体制を経てさらにナポレオン戦争を待たなければならなかった。そう考えるとこの100年戦争の結果がフランスとイギリスにとって後の歴史における大きなアドバンテージを生み出す要因であることが理解できる。 本書を読んでとりわけフランスの影響の大きさを感じるのは、まずイギリスはフランスの地方領主が征服した国であること、そして100年戦争中動員できる兵力はなんだかんだでフランスが上回り続けていたこと、それから後世においてフランスの統一された国家は、ドイツ領邦に刺激を与え続けてきたことなど。100年戦争以降のヨーロッパ史の主役がフランスであることを思った。 本書が現代に投げかける課題も目をひく、ひとつは後世で歴史は自国に都合よく書き換えられること。もうひとつは忘れられた救国の英雄は、時の権力によって都合よく偶像化されること。確かに今でもそんな感じ。

Posted byブクログ

2014/01/27

英仏が百年戦争を戦ったのではなく、フランス的なところの諸侯がくんずほぐれつやって、落着してみたらあら不思議、イングランドとフランスなる国家が出来ていましたよ、という方が正しいというお話。 国民国家なんてなかった中世ヨーロッパが近代国民国家制度を産み落とす過程のひとつが鮮やかに描...

英仏が百年戦争を戦ったのではなく、フランス的なところの諸侯がくんずほぐれつやって、落着してみたらあら不思議、イングランドとフランスなる国家が出来ていましたよ、という方が正しいというお話。 国民国家なんてなかった中世ヨーロッパが近代国民国家制度を産み落とす過程のひとつが鮮やかに描かれていると思います。

Posted byブクログ

2014/01/22

2014.1.21 中世ヨーロッパの英仏を知るための入門。これをよんで面白く感じれば、入っていける。 結の そろそろ国民国家の次の分岐点が訪れてもよい ということに賛同できる。

Posted byブクログ