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アムリタ(上) の商品レビュー

4

152件のお客様レビュー

  1. 5つ

    49

  2. 4つ

    51

  3. 3つ

    36

  4. 2つ

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  5. 1つ

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2013/11/07

家族の在り方を考える本。自分を肯定したくなる本。 夕焼けの描写が素敵だった。 --- 時間は生き物だ。 何の気なしに私たちは街中を歩いていた。南国のように透明で乾いた日ざしが、オレンジを帯びつつあった。赤い空に、暗い町並みは影絵のように浮かびあがっていた。 しかしそれはほんの...

家族の在り方を考える本。自分を肯定したくなる本。 夕焼けの描写が素敵だった。 --- 時間は生き物だ。 何の気なしに私たちは街中を歩いていた。南国のように透明で乾いた日ざしが、オレンジを帯びつつあった。赤い空に、暗い町並みは影絵のように浮かびあがっていた。 しかしそれはほんの序曲だった。 私たちは普段、東京で夕空を見るとき「あっちの、はるか遠い方で、なんかきれいなことをやっているな」と思う。 TVの画面を見るように、パンフレットの絵画を見るように。 でも、それかた数分間の間に見たことは全然違った。 手で触れるかと思った。 透明で、赤くやわらかで、巨大なエネルギーが、町や空気の目に見えない壁を通り抜けて押してくるような迫力だった。息苦しいほどの、生々しさだった。一日は一日を終えるとき、何か大きくて懐かしくて怖いほど美しいことをいちいち見せてから舞台を去っていくのだ、と思い知った。実感した。 町に、自分にしみこんでくる。なめらかに溶けて、したたり落ちる。 そういう赤が刻々と色を変え、オーロラのように展開していく。 最も美しく透き通ったロゼのワインや、愛妻の頬の赤、そういったもののエッセンスが、西のほうから目くるめくスピードでぜいたくに迫ってきた。 路地のひとつひとつが、ひとりひとりの人の顔が。赤く照らされては満たされていく。激しい夕焼けだった。 私たちは何も言わずに歩いていた。 じょじょにその夕焼けが去っていくとき、何ともわかれがたい気持ちとすがすがしい感謝の気持ちが混じって、切なくなった。 これからの人生に、たとえ今日のような日はあっても、この空の具合、雲の形、空気の色、風の温度、二度とはないのだ。 同じ国に生まれた人々が、夕方の町をのんびりと歩いていく。夕食の明かりがともる窓が、夕闇の透明なスクリーンに浮かびあがる。 そこにあるすべてが、手を伸ばせば水のようにすくえそうだった。つやめいたしずくがぽたりぽたりとしたたり落ち、コンクリートにはねかえるとき、去ってゆく昼間の匂いと、濃い夜の匂いの両方をたたえていそうだった。 あたり前のことを、こんな力を持った夕暮れでも見ない限りなかなかわからない。(p204,205)

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2013/09/25

この小説にはUFOも霊も予知夢もが、ごく当たり前のように登場してくる。こうした日常と非日常との混在は、例えば小川洋子の世界なら、いつの間にか非日常の側に傾斜していくし、また川上弘美の世界では奇妙な均衡を保ったままで共存する。ところが、よしもとばななの世界は日常のキャパシティが大き...

この小説にはUFOも霊も予知夢もが、ごく当たり前のように登場してくる。こうした日常と非日常との混在は、例えば小川洋子の世界なら、いつの間にか非日常の側に傾斜していくし、また川上弘美の世界では奇妙な均衡を保ったままで共存する。ところが、よしもとばななの世界は日常のキャパシティが大きいのか、これらの通常は日常ではないものが、それほどの違和感もなくすっぽりと日常の中におさまったままでで語られるのだ。そして、ここでは近縁者の死も、物語の語り手である「私」自身の半分の死もまた等距離にあるかのようだ。

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2013/08/12

なにかしてやりたい。 どうして人は人に対してそう思うのだろう。 何もしてやれないのに。 思いはぐるぐる回る。 まだ起こってもいないことを案じるのは、ほんとうに体に悪い。

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2013/07/08

吉本ばなな「らしさ」とか「ならでは」なんだろうが、この作品に関しては、表現でいろいろ探りを入れているのが裏目に出てわかりづらくなっているような気がする。 ぶっとんだ設定が入っている分、非現実になりすぎないよう事細かに綴られているわけだが、もっとシンプルにしたほうがナチュラルなんじ...

吉本ばなな「らしさ」とか「ならでは」なんだろうが、この作品に関しては、表現でいろいろ探りを入れているのが裏目に出てわかりづらくなっているような気がする。 ぶっとんだ設定が入っている分、非現実になりすぎないよう事細かに綴られているわけだが、もっとシンプルにしたほうがナチュラルなんじゃないか?と思ってしまいました。

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2023/11/20

2023.11再読 家族と死と恋愛について。 父と妹を亡くし、弟が不思議な力に悩む中、自らも頭を打って記憶を一時失う。母と同居人との生活の中、それぞれに困難な経験をした友人と過ごす中、妹の元彼との恋に気づき、旅に出る。 生死に関わる出来事もある中、飄々とした空気感の中で話が進む。...

2023.11再読 家族と死と恋愛について。 父と妹を亡くし、弟が不思議な力に悩む中、自らも頭を打って記憶を一時失う。母と同居人との生活の中、それぞれに困難な経験をした友人と過ごす中、妹の元彼との恋に気づき、旅に出る。 生死に関わる出来事もある中、飄々とした空気感の中で話が進む。会話の軽やかさを失わない。 ◯海はいつも予想の20%くらい大きい。そうとうの大きさを予測して見に行くと、更にその20%大きい。もっと大きいと思って行っても、そのかくごの20%大きい。一面の波で心をいっぱいにしていっても、小さなビーチを想像していっても、やっぱり20%。 こういうのを無限っていうのかな。 ・敗者にならない人生のやり方  事実や内心がどうあれ、態度として、表現として、優雅で、余裕を失わない ◯自分の限界を知る、ということは新しいレベルの真実の領域を見つけるということだ ◯体の言葉を聞いてやる ◯あんたは理屈っぽすぎるのよ。考えすぎなの。右往左往してタイミングを逃してはすり減るだけ。どーん、とそこにいて、美しく圧倒的にぴかーっと光ってればいいの。愛っていうのは、甘い言葉でもなくって、理想でもなくて、そういう野性のありかたを言うの。 ◯何もかも触ってから確かめたい ◯人生のチェックポイント(目を見て、言葉だけでなく全体で) 食べ物おいしい?食べ物の味を、ちゃんと感じてる? 朝起きると楽しい?一日が楽しみ?夜寝るとき、気持ちいい? 友達が前から歩いてきます。楽しみ?面倒? 目に映る景色がちゃんと心に入ってきてますか? 音楽は? 外国のことを考えてみて。行きたい?わくわくする?それとも面倒? 明日が楽しみですか?三日後は?未来は?わくわくする?憂鬱?今は?今はうまくやってる? 自分のこと気に入ってる? (再読) ◯愛ってね、形や言葉ではなく、ある一つの状態なの。発散する力のあり方なの。求める力じゃなくて、与えるほうの力を(家族)全員が出してないとだめ。

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2013/03/02

『食べ物美味しい食べ物の味をちゃんと感じてる 朝起きると楽しい1日が楽しみ夜寝るとき気持ちいい 友達が前から歩いてきます。楽しみ面倒目に映る景色がちゃんとこころに入ってきますか音楽は外国のことを考えてみて。行きたいわくわくするそれとも面倒 明日が楽しみですか3日後は未来はわくわ...

『食べ物美味しい食べ物の味をちゃんと感じてる 朝起きると楽しい1日が楽しみ夜寝るとき気持ちいい 友達が前から歩いてきます。楽しみ面倒目に映る景色がちゃんとこころに入ってきますか音楽は外国のことを考えてみて。行きたいわくわくするそれとも面倒 明日が楽しみですか3日後は未来はわくわくする憂鬱 今は今をうまくやってる自分のこと気にいってる』 毎日はただ過ぎていくから自分が誰なのかなんなのかわからなくなる時がある。 アムリタ。 神様が飲む水

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2013/02/18

日常の中に潜む非現実がとても愉快。 久しぶりに読んだらこんなにスピリチュアルな内容だっけー? ぶっとんでます。ある意味ロック。

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2013/01/22

「わたしはかなりの夜型なので、たいてい明け方になってから床につく。そして基本的に、午前中には決して目覚めない。」 冒頭から。まるで自分のことだ! と強い共感を覚えて、いざ、 キッチン以来のばななさん読み始め。 「病院の白く空ろな壁にこだました」 とろとろと流れる素敵な文調が...

「わたしはかなりの夜型なので、たいてい明け方になってから床につく。そして基本的に、午前中には決して目覚めない。」 冒頭から。まるで自分のことだ! と強い共感を覚えて、いざ、 キッチン以来のばななさん読み始め。 「病院の白く空ろな壁にこだました」 とろとろと流れる素敵な文調が大好きです。 「わたしは客だった時もこの店に来るのが好きだった」 今、勤めている病院が、 患者だった時も好きだったので これまた強い共感を。

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2013/01/21

なんとなく、設定は現実から離れてるんだよ。 だけど、何故こんなに惹かれるかというと、 それは、吉本ばななの表現力の魔法にかかるから・・・。 頭打って記憶なくしたことないし、 私の兄弟に芸能人はいないし、 身内に変な超能力を持った子はいないし、 たそがれてる小説家もい...

なんとなく、設定は現実から離れてるんだよ。 だけど、何故こんなに惹かれるかというと、 それは、吉本ばななの表現力の魔法にかかるから・・・。 頭打って記憶なくしたことないし、 私の兄弟に芸能人はいないし、 身内に変な超能力を持った子はいないし、 たそがれてる小説家もいない。 だけど、頭を打った主人公の無から始まる心の進化が、手に取るようにわかるんだよ。 私、記憶飛んだことないのにね。 弟のつらい気持ちもわかるし、 させ子やコズミの気持ちもわかる。 だけど、それって作者のさじ加減で理解不能になっちゃうくらい、設定が難しいお話だった。 やっぱり、この作者の表現力(そう言い括っていいのかわからない)は素晴らしい。 そう実感した1冊。

Posted byブクログ

2012/09/23

実際目に見えなくても、わかってしまうことや、感覚的でうまく説明できないことなんてたくさんある。それが嫌だと思っていたけど、それでも大丈夫だよーまぁ大丈夫じゃないかもしれないけど、それでも生きていけるよって言ってくれてる作品。下巻の方が好き。

Posted byブクログ