懲戒の部屋 の商品レビュー
(Mixiより, 2010年) 今まで読んでこなくてごめんなさい、僕が馬鹿でした!めちゃめちゃ面白い!!!特筆すべき所は3つ。まず一つに、筒井作品は出だしが最高。どれもスッと落ち着いた雰囲気で入ってくる。感情の動きと共にどんどんヒートアップする展開に、自然と繋がる良い流れを作って...
(Mixiより, 2010年) 今まで読んでこなくてごめんなさい、僕が馬鹿でした!めちゃめちゃ面白い!!!特筆すべき所は3つ。まず一つに、筒井作品は出だしが最高。どれもスッと落ち着いた雰囲気で入ってくる。感情の動きと共にどんどんヒートアップする展開に、自然と繋がる良い流れを作ってます。二つに、会話が最高。登場人物の喋り口がユーモラスで良い。すっごく怖い場面でも、そのセリフ回しでついほころんでしまうことが多々あった。最後に、本の作り方が最高。短編の最後に、その作品が掲載された雑誌名が書いてある。これが"選んだ"感を出していてとても良い。さらに、短編集としての完成度の高さ。とんでもないテンポ感を持つ序盤、落ち着いた作品とグロテスクな作品が交互に繰り出される中盤、なんだか懐かしい雰囲気を醸し出す終盤。この構成が素晴らしい・・・。ホラーと銘打ってあるけど正統派に楽しめる作品も多くて、一冊としてのまとまりをすごく感じます。エンタメ小説、何が悪い!
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これも個人的ホラー特集の一環。そして旅のお供に。ストレスなく読み進めるという点では、旅行中に読むのには問題なかった。内容に関しても、著者ならではの短編集として、それなりに楽しめるものだった。ただ何というか、こういう不条理モノって、たまに触れる分には良いんだけど、繰り返し接している...
これも個人的ホラー特集の一環。そして旅のお供に。ストレスなく読み進めるという点では、旅行中に読むのには問題なかった。内容に関しても、著者ならではの短編集として、それなりに楽しめるものだった。ただ何というか、こういう不条理モノって、たまに触れる分には良いんだけど、繰り返し接していると、暴力に対する不快感が気になってしまって、どうもいけない。本書のように”ホラー”に特化したものより、色んなジャンルの短編がごちゃ混ぜになったものの方が、もっと楽しめるような気がした次第。
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ベストオブベスト的な短編10話。『走る取的』は筒井康隆の短編の中でも屈指の傑作。永遠に追いかけて来る相撲力士はもはやこの世のものでなく実に恐ろしい。宇宙衛生博覧会からの『蟹甲癬』『顔面崩壊』は強烈すぎる気持ち悪さ。『懲戒の部屋』はラストがアホすぎて笑った。やっぱり筒井康隆は面白い...
ベストオブベスト的な短編10話。『走る取的』は筒井康隆の短編の中でも屈指の傑作。永遠に追いかけて来る相撲力士はもはやこの世のものでなく実に恐ろしい。宇宙衛生博覧会からの『蟹甲癬』『顔面崩壊』は強烈すぎる気持ち悪さ。『懲戒の部屋』はラストがアホすぎて笑った。やっぱり筒井康隆は面白い。しかも解説はオーケン!!
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
筒井康隆のホラーとグロテスクを集めた選りすぐりの短編集。ホラーというよりは生理的な嫌悪感や後味の悪い話が多く、人を選ぶが筒井康隆の性格の悪さを存分に味わえるのはこの短編集だろう。 「走る取的」は居酒屋で居合わせた相撲取りを馬鹿にしたら走って追いかけてくるという、ただそれだけの短篇なのだが、相撲取りが追いかけてくるというワンシチュエーションだけでここまで面白く書けるのは一つの才能だろう。ほとんどパニックホラーの様相を呈しているが、その光景はシュールで妙なおかしみがある。相撲取りが街中で走るという違和感の集合体がその恐怖と笑いに拍車をかけているのだ。最後、何もできずに無残にぶち殺されるというオチも素晴らしく、オチがないのが逆にオチになっており、この理不尽さこそスラップスティックたる所以だろう。 「乗越駅の刑罰」もまた理不尽極まりない話で、これは都会へ出ていった人間に対する田舎者の恨みの寓話であろう。七年間音沙汰がなかった=七年間の無賃乗車という符号は面白い。駅員の病的なまでのねちっこさやしつこさは嫌なリアルさがあり、母親の面倒を弟に押し付けて都会で自由気ままに過ごしてきたことに対する負い目も手伝って、とにかく後味が悪い作品。猫スープの罪を押し付けられ、化け猫を前に死相を浮かべる主人公と、とにかく嫌な目に遭うだけの物語である。駅員に感じる不快感はずば抜けており、これが全短編の中で一番不条理な作品だと思う。 表題作「懲戒の部屋」は筒井康隆お得意のフェミニストをあざ笑った作品である。筒井康隆はとにかく女が嫌いなんだろう。キチフェミの手によって全てが気分で決められて痴漢冤罪が作られていくさまは見ていてゾットするが、その痴漢冤罪を通して善良に見えた主人公の男がどんどん女性蔑視や女性差別発言をむき出しにしていくのがとてもいい。女を馬鹿にしつつ、そんな女を馬鹿にする男すら滑稽なものとして笑い飛ばす。この一段上のメタな意地悪こそが筒井康隆の真骨頂で、全婦連支部や女権委員会が女性蔑視のブタ野郎を「腎虚刑」と称して、電極で強制的に射精させられて踊り狂うという見るも無残な結末になる。女の天井知らずの残酷さと、男の根強いミソジニーが融和しあったまことに皮肉な短篇だろう。 「顔面崩壊」は博士の語り口で淡々進む話だが、タイトルにもなっている顔面崩壊の描写は抜群に気持ち悪く、生理的嫌悪感を催してしまう。煮上がってはじけ飛んだ豆が顔面へとめりこみ、グズグズになった顔面に沸いた蛆が、顔の表皮の下の脂肪を食い荒らすという、読むもおぞましき短編である。たぶん圧力鍋は使えないし、読めば当分豆は食えないだろう。 「蟹甲癬」はクレール蟹という蟹を食べたら、蟹の甲羅がほっぺたにできるという奇病を扱った短篇だが、その甲羅は取り外し可能で、中のミソを啜って食べると美味いという描写がとにかく気持ち悪くて最高である。誰しも剥がしたかさぶたを口に入れた経験はあるだろうし、自分の身体の一部を食べるというのは不思議なことではないため、より気持ち悪さが際立つのだ。そしてそのミソが実は細菌によって分解結合した自分の脳みそという真相がエグい。そこから急速に痴呆が始まり、緩やかに滅びを迎えるさまは一種の退廃的芸術のようでもある。 以上のように、生理的嫌悪感に訴えかける作品の多い短篇ではあるが、どの短篇も趣向を凝らした名作ばかりである。読めばますます筒井康隆の狂いっぷりが好きになるだろう。
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身の毛もよだつ、血も凍る、鳥肌が立つ ホラー、というわけではないと感じる。 ただ最初の数作品は、日常の中で、 一歩踏み越えてしまったような 異常な世界で何もできないまま、という恐怖、 これって何かの比喩か揶揄じゃないの、という空気も。 その後は、ナンセンスやグロテスクを感じるもの...
身の毛もよだつ、血も凍る、鳥肌が立つ ホラー、というわけではないと感じる。 ただ最初の数作品は、日常の中で、 一歩踏み越えてしまったような 異常な世界で何もできないまま、という恐怖、 これって何かの比喩か揶揄じゃないの、という空気も。 その後は、ナンセンスやグロテスクを感じるものから ノスタルジックな味わいの作品も。 自選ということなので、「ホラー」という言葉に こだわらずに手に取ってみればよいと思う。
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舞台を見たので感化されて. 不条理劇のオンパレード. 特に初っ端の力士のお話は見た目の面白さと裏腹に一番怖い. 途中からはむしろグロテスクな感じが多かったかな.
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何でこんな目に・・気分が悪くなりますが、よくこんな設定を思いつくな〜と作家に対する興味が。『世にも奇妙な物語』でいくつか見ましたが、面白くてタイトルロールで作家名を確認したのを思い出しました。他の作品も読んでみたい。
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自選ホラー短編集1。推す人が多いと思いますが、自分にははまらなかった。たぶん筒井さんの「怖い」と私の「怖い」が違うのだろう。 笑いと紙一重というか…面白いんだけど、怖くはない。 ただ、少し毛色が違って良かったのは「かくれんぼをした夜」と「風」。両方ともせつなくなるいい話でした。
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不条理なシチュエーションで主人公がどんどん追い込まれていく表題作や、思わず顔をしかめてしまうグロテスクな「顔面崩壊」「蟹甲癬」など、思わず背筋に寒気が走る作品を集めた短編集。 サイコな展開を見せる「乗越駅の懲罰」は、明日にでも起こってしまいそうな不思議なリアリティがあって怖かっ...
不条理なシチュエーションで主人公がどんどん追い込まれていく表題作や、思わず顔をしかめてしまうグロテスクな「顔面崩壊」「蟹甲癬」など、思わず背筋に寒気が走る作品を集めた短編集。 サイコな展開を見せる「乗越駅の懲罰」は、明日にでも起こってしまいそうな不思議なリアリティがあって怖かったし、不快感がすごかった。 読む人を選ぶけど、好きな人にはたまらない極上のホラー作品ばかりです。
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傑作集とあるとおり、どの作品もとても面白かった!これぞホラー!というものはもちろん、ちょっと不思議な感じがするものや、sfチックなものなどもありバラエティに富んでいる。怖いながらもどこかコミカルだったりもするのがニクい。オーケンの解説は予期せぬ嬉しいサプライズだった♡
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