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ローマ人の物語(7) の商品レビュー

3.8

74件のお客様レビュー

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  2. 4つ

    29

  3. 3つ

    19

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2016/06/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 ポントス王ミトリダテスはローマについてこう述べた。家屋であろうと妻であろうと耕地であろうと、ローマ人の持っているもののすべてが、周辺の住民からの強奪の結果であった。  それは一片の反論さえも許されない完成され尽くした真実である。  サビーニ族から強奪した女を妻と呼び、エルトリア人から盗んだ建築技術で家屋を作り、周辺民族を皆殺しにして手に入れた土地を耕地にした。ローマ人はその強欲により、際限ない膨張を自らに強いている。 「パンがなければ、奪えばいいじゃない」  ローマ人がそう言ったとしても、地中海では誰も驚かない。それどころか納得さえするだろう。奴らの野蛮さによってどれだけの都市が滅びたか、どれだけの人が殺されたか。  だが拡張しすぎたローマは、周辺の敵すべてを殺し尽くしてしまった。ために、今度は略奪の対象を同胞へと移した。そして始まったのは粛清の嵐である。武力により執政官の地位に就くのが半ば慣例となりつつあるローマ人は、自国民から略奪しつづける。敵対勢力の生命を略奪し、その財産を盗み、妻や子どもを奴隷にして満面の笑みを浮かべる。沈黙以外は許されず、政府が恐れるべき国民が政府を恐れるという世紀末となった。ここには法も秩序も良識すら存在しない。この無法者の集団を国家と呼べるのか……?  ポントス王ミトリダテスはローマについてこう述べた。ローマ人も昔は、難民だった。国家もなければ家族もない、はぐれ者の集団にすぎなかった。それが、周辺の人々の犠牲の上に、国家を築いたのだ。いかなる法も、いかなる人間の倫理も、いかなる神も、友人や同盟者から強奪し、この人々を破滅させる行為を許すはずがない。悪に満ちた眼で多民族を見、彼らを奴隷化することを許すはずがない。  彼は決意した。このようなヤンキー帝国の存在を認めれば、人類が発展させてきた良心はたちまち消え去ってしまうだろう。その前に、なんとしてもあのローマを滅ぼさねばならん。幸い、イタリア半島の情勢は不安定だ。ローマは自国民との略奪戦で動けない。この隙に小アジアをローマ人の圧政から解放し、反逆の狼煙をあげるのだ! 自由と正義は我らにあり!  次回『ミトリダテス、死す』――自由を望むものは少ないが、公正な主人を望む者は多いのが人間である。

Posted byブクログ

2016/06/20

読書録「ローマ人の物語7文庫版」3 著者 塩野七生 出版 新潮社 p52より引用 “また、戦争とは、それが続けられるに比例 して、当初はいだいてもいなかった憎悪まで が頭をもたげてくるものだ。前線で闘う者は、 何のために闘っているのかさえわからなくな る。” 目次から抜粋引...

読書録「ローマ人の物語7文庫版」3 著者 塩野七生 出版 新潮社 p52より引用 “また、戦争とは、それが続けられるに比例 して、当初はいだいてもいなかった憎悪まで が頭をもたげてくるものだ。前線で闘う者は、 何のために闘っているのかさえわからなくな る。” 目次から抜粋引用 “マリウスとスッラの時代(承前)  ポンペイウスの時代”  歴史作家である著者による、歴史に大きな 足跡を残した古代ローマについて記した一冊。  内輪もめに乗じた他国の侵略から剣闘士の 反乱まで、史実と著者の主観をまじえて書か れています。  上記の引用は、ローマ市民同士の戦争につ いて書かれた項での一節。 戦っている理由がわからなくなったら、戦闘 を止めてしまえれば良いのですが、軍律違反 で罰せられるのでしょうね。 大きな力を持った人に振り回されて、見方同 士で戦争をしなければならない、そんなこと にならないように、しっかりと歴史は勉強し ておいた方がいいのかもしれません。  内戦やそれに乗じたゴタゴタばかりが描か れていて、ローマはあまりいい時期ではな かったようです。 それでも地中海周辺を支配下に置いてしまっ たのですから、力のある国家だったのですね。 ーーーーー

Posted byブクログ

2018/10/20

ローマ同盟国がその格差からローマ市民に反旗をひるがえした同盟者戦役は、同盟国に新市民としての権利を拡大することで終結した。だが、戦争の終結がただちに争いの終結を意味するとは限らない。その権利の範囲をめぐる反動は、ハンニバルでさえ達し得なかった首都ローマの武力制圧を許すまでに至った...

ローマ同盟国がその格差からローマ市民に反旗をひるがえした同盟者戦役は、同盟国に新市民としての権利を拡大することで終結した。だが、戦争の終結がただちに争いの終結を意味するとは限らない。その権利の範囲をめぐる反動は、ハンニバルでさえ達し得なかった首都ローマの武力制圧を許すまでに至った。物語的な価値観からすれば、旧権力の維持をはかる体制派は悪者にされ、民衆派が正義のもとに勝利するものだが、歴史はそうではない。民衆派が首都で反対派を虐殺している間、保守派は周辺国での反乱を一瞬で制圧し、その勢いのまま首都に戻り、今度は民衆派を圧殺する。 そうした武力による勝利により、スッラひきいる保守派が体制を維持することになったが、跡を継いだ者達が目指したのは、”共和制”の維持ではなく、個人の権力の維持だった。軍人であったポンペイウスは兵士に代表される一般市民の支持を、経済人であったクラッススは騎士階級に代表される経済界の支持を拡大することに専念した結果、中央集権体制と”ローマ”の範囲の拡大が進み、ここにこそ共和国が帝国に至る萌芽があったと見ることが出来るのではないだろうか。 スッラ、ルクルス、ポンペイウス、クラッスス。この時代の執政官達は政治の分野ではもちろん、戦いの分野においてもスペインのセルトリウス戦役で、スパルタクスの乱で、ミトリダテスとの戦いで、地中海の海賊一掃作戦で、時には10倍以上の敵に打ち勝ち、時には三カ年計画を三ヶ月で達成するなど、眼を見張るような活躍をしてきた。だが、共和制ローマの傑物としてスキピオの次に並べられるのは、彼らではない。常勝無敗の偉大なローマの英雄たちをも超えるユリウス・カエサルとは一体何物なのか。次巻に続く。

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2015/04/25

前一世紀初頭、ローマは内外で混迷の度を深めていた。同盟者戦役に続き、小アジアではミトリダス戦役が勃発、ローマも内乱状態に陥る。戦役に勝利した名称スッラは反対派は一掃。前81年、任期無制限の独裁官に就任し、ローマの秩序再建のため、国政改革を断行する。しかし「スッラ体制」は彼の死後間...

前一世紀初頭、ローマは内外で混迷の度を深めていた。同盟者戦役に続き、小アジアではミトリダス戦役が勃発、ローマも内乱状態に陥る。戦役に勝利した名称スッラは反対派は一掃。前81年、任期無制限の独裁官に就任し、ローマの秩序再建のため、国政改革を断行する。しかし「スッラ体制」は彼の死後間もなく崩壊。この後登場するポンペイウスは、ローマの覇権拡大を果たしたが。

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2014/04/30

あ、マリウスとスッラは相対立する二人の名前だったんですね。並記されているから、てっきり師弟関係なのかと。旧態依然とした制度では広がり続ける国家を支えきれず、新しい体制づくりに精を出した男たちの物語。で、次はいよいよカエサル登場です。

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2013/12/29

「ちなみに、古代のローマ人による奴隷の定義は、自分で自分の運命を決めることが許されない人、であった。」 ポンペイウスが強い。

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2013/09/25

ここまで続いてきた共和制による元老院体制も、もはや「古い革袋」となったようである。スッラによって再構築がなされたとはいえ、それは紀元前1世紀という時代には耐えられなかった。そもそもスッラが元老院体制の再建をなしえたことでさえ、自ら異例の独裁官に就任することによってはじめて可能にな...

ここまで続いてきた共和制による元老院体制も、もはや「古い革袋」となったようである。スッラによって再構築がなされたとはいえ、それは紀元前1世紀という時代には耐えられなかった。そもそもスッラが元老院体制の再建をなしえたことでさえ、自ら異例の独裁官に就任することによってはじめて可能になったのであり、そこには本質的な矛盾があった。ポンペイウスを経て、終身独裁官カエサルの時代、そして彼の死後、ローマはオクタヴィアヌス(アウグストゥス)による帝政へと移行してゆく。カエサルだけはその後のローマを見とおしていたのだろう。

Posted byブクログ

2013/09/10

 急激に強大になり過ぎたがゆえの成長に伴う数々の課題に見舞われた共和制後期のローマの物語の続きです。課題への対応を,これまでのシステムの見直しで解決しようとしたスッラと,その後を受けながらもスッラの確立した体制をはからずも崩壊させてしまうポンペイウスの物語が中心になっています。 ...

 急激に強大になり過ぎたがゆえの成長に伴う数々の課題に見舞われた共和制後期のローマの物語の続きです。課題への対応を,これまでのシステムの見直しで解決しようとしたスッラと,その後を受けながらもスッラの確立した体制をはからずも崩壊させてしまうポンペイウスの物語が中心になっています。  ローマの成長に適した統治システムへの対応を目指したこの巻の主役たちの取り組みの目的,進め方,そして結果を知ることは,成長に適した統治システムの確立という問題への解決への道筋を示し,そして新しいシステムの確立を進めた,次の巻以降の主人公たちの取り組みの目的,進め方,結果を知るには大切なことだと思います。

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2013/06/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

今回は、マリウスとスッラの時代と、ポンペイウスの時代の話。 しかし、いかに有能な人でも、全てを持ち合わせるのは無理なのか。スッラについて書かれた文章をそう思ってしまう。 何でスッラは、元老院体制の維持を固辞したのか。時代に合わなくなったシステムを切り捨てることをしなかったのか。そこまで、すべてを見通せる人は、なかなかいないということなのか。 それでも、優先順位をはっきりさせて、実行していった所は凄い。ミッションを達成するのが楽しかっのかも。

Posted byブクログ

2013/03/11

今まで元老院を中心としてまとまりのあるように見えたローマがかなり混沌とした時代に突入している。 その中でスッラはローマを外的から守り、さらに腐敗しつつあるように見える内部の体制も、少数寡頭制を再度実現するための行動をとる。 スッラの国政改革は、無期限独裁官という点ではかなり強行で...

今まで元老院を中心としてまとまりのあるように見えたローマがかなり混沌とした時代に突入している。 その中でスッラはローマを外的から守り、さらに腐敗しつつあるように見える内部の体制も、少数寡頭制を再度実現するための行動をとる。 スッラの国政改革は、無期限独裁官という点ではかなり強行ではあったが、彼の意思をはっきり反映させるためには必要であったのであろう。 見事なまでに改革を実現した後の引き際は気持ちのいいものであった。 その後に登場するポンペイウス。 彼も過去に登場したローマの執政官たちに負けず劣らない戦略家であり、見事な外交力を発揮しているが、スッラの目指していた元老院を中心とした少数寡頭制の実現とは別の方向に向いてしまっているのがまたおもしろい。 この時代にローマの悩みの種のミトリダテスを倒し、オリエントを平定したポンペイウスがこの語どのようにローマを導くのか楽しみなるが、実際は別の人物が中心になってくるようでる。 強大国となったローマの今後がさらに楽しみである。

Posted byブクログ