パーク・ライフ の商品レビュー
停車してしまった日比谷線の中で、間違って話しかけた見知らぬ女性。知り合いのふりをしてくれた彼女は同じ駅で降り……。東京のド真ん中「日比谷公園」を舞台に男と女の「今」をリアルに描く。 第127回芥川賞受賞作
Posted by
(2006年に読了したときの感想) 『パークライフ』と『flowers』の2作からなる。 『東京湾景』に引き続き読んだせいか、どことなく似たような場面があった。 東京湾を挟んだ向かいのビルからお台場を眺めるところと、公園のベンチから向かいのベンチを眺めるところとか。 (そういうの...
(2006年に読了したときの感想) 『パークライフ』と『flowers』の2作からなる。 『東京湾景』に引き続き読んだせいか、どことなく似たような場面があった。 東京湾を挟んだ向かいのビルからお台場を眺めるところと、公園のベンチから向かいのベンチを眺めるところとか。 (そういうの、みつけるのが楽しい) 『パークライフ』は「ぼく」という目からみた日常をさらりと描いていて、登場人物の細かな心情などは殆ど書かれていない、というかとても抽象的な表現が多く、どちらかというと風景や場面設定の方が細かく書かれているような感じ。 中盤に、別居中の先輩の家のリビングで音声を消したまま「ニュースステーション」を眺めるシーンがあるんだけど、 「ニュース映像、特に戦禍を伝える映像を音なしで眺めていると、人間とは体のことなのだ、とひどく当たり前のようで、新鮮な衝撃を与えられる。テレビのボリュームを上げていれば、ビン・ラディンもブッシュもパウエルもシャロンもアラファトもニュース解説者も、難しい言葉を並べ、あたかもその言葉が思考を生んで、生まれた思考で何かが起こっているように思えるが、その音を消してみれば、人間の思考などどこにも見えず、ただ歩き、座り、横たわる人間のからだしか映っていない、、、云々」 というところが、そうだなぁ~、すごいなぁ~、この感性!と思った。 『フラワー』は対照的に、「ぼく」の内面的なところを重視して語られているような感じ。ちょっと気持ち悪いところもあったけど、さらっと読める。 どちらの話も登場人物がみな、なんだか心がこもっていない人たちばかりだな~という印象を受けた。 結局誰とも和解しない、というかする気もないというか・・・すごく希薄な人間関係、人付き合い。 こんなふうに生きていても楽しくないだろうな~と思ったり。 でも、小説としてはすごくすんなりと読めてよかった。 ★★★
Posted by
表題作『パーク・ライフ』と『FLOWER』の2作が収録された作品集です。 『パーク・ライフ』は代127回芥川賞受賞作品でもあります。 『パーク・ライフ』は主人公のぼくと地下鉄で知り合ったスタバ女が日比谷公園で共に昼休みを過ごす描写を中心に話が進んで行きます。 「臓器移植ってぞっ...
表題作『パーク・ライフ』と『FLOWER』の2作が収録された作品集です。 『パーク・ライフ』は代127回芥川賞受賞作品でもあります。 『パーク・ライフ』は主人公のぼくと地下鉄で知り合ったスタバ女が日比谷公園で共に昼休みを過ごす描写を中心に話が進んで行きます。 「臓器移植ってぞっとしませんか?」という二人の初めての会話が示唆しているように、臓器に関連する描写が多く使われていて、少しグロテスクな印象もありました。 人間の外見と、臓器も含めた人間の中身、それはどちらが自分らしいということを示すのかそれをテーマにしているように感じます。 最後まで名前が明かされない主人公のぼくと、名前も年も働いているところも知らないスタバ女のやりとりで、人間同士の関係って何が一番大切なのかなと考えました。 『FLOWER』は主人公の石田くんと同じ清涼飲料水の配達の仕事をしている元旦という男性の交流を描いています。 作品の中では、生け花をするシーンがよく出てきます。 元旦も我流で生け花をするし、石田くんが一緒に住んでいたおばあちゃんも生け花をするので回想シーンでそのときのことも書かれています。 石田くんもおばあちゃんと一緒に生け花をしていたので、元旦が生ける花についてこうした方が風流じゃない、などと善し悪しを話しあったりしています。 でも、下ネタ満載の下劣な部分も多く書かれていて、人間としての正しさとはどういう姿なのか問われているような気がしました。
Posted by
筆致の緩急や視点移動の誘導が巧みでいて、さらりと読める自然さ。声域、筋肉、臓器、体格などの独特の肉体的なモチーフを含め、小説技巧が新鮮。何人かの女性が登場するが、決断や行動するのは女性のほうなのだな、と。そこは夏目漱石や村上春樹の作品との共通項かな/併録のflowersは、シャワ...
筆致の緩急や視点移動の誘導が巧みでいて、さらりと読める自然さ。声域、筋肉、臓器、体格などの独特の肉体的なモチーフを含め、小説技巧が新鮮。何人かの女性が登場するが、決断や行動するのは女性のほうなのだな、と。そこは夏目漱石や村上春樹の作品との共通項かな/併録のflowersは、シャワー室での出来事の描写が秀逸。はだかの男たち。オーバーラップする墓石と花の対照。流れる水。暑さ、冷たさ、重力といったモチーフを通じて伝わる触感が印象深い。 2002年上半期 芥川賞受賞
Posted by
「パーク・ライフ」と「flowers」の2篇。 (パーク・ライフ) 地下鉄の駅から日比谷公園に出てくるときの景色が好きな主人公は, あるとき女性と出会う。 日比谷公園にはちょっと行ってみたくなるが, ストーリーは楽しめない。
Posted by
「私、決めた」って、何だか潔くっていいね。つま先だかヒールの先だったか、トントンする。やっぱり、きっかけが大切なんだなと感じた。
Posted by
芥川賞受賞ということで読んでみたが、淡々と物語が進んでいく印象。 物語は特に大きな起伏をもって進んでいくわけではないのに、結果一気読みしてしまった。 物語としての面白さはあまり感じられなかったが、文学的にはすぐれている作品なんだろう・・・きっと。
Posted by
文学。 吉田修一って、今旬な作家ですよね。 この本が芥川賞取ったとき、読もうと思っていました。 が、すっかり読まないまま、今に至る。 ようやく読んでみました。 感想は、ひとこと。文学。 小説の余韻、ってこういうものをさすんですよね。 この小説そのものだけでなく、背景...
文学。 吉田修一って、今旬な作家ですよね。 この本が芥川賞取ったとき、読もうと思っていました。 が、すっかり読まないまま、今に至る。 ようやく読んでみました。 感想は、ひとこと。文学。 小説の余韻、ってこういうものをさすんですよね。 この小説そのものだけでなく、背景を想像したり、小説の楽しみ方はたくさんあると感じました。 なぜか、文体が違うはずの村上春樹を思い出しました。
Posted by
都会に出るとアイデンティティーに関わる重要で微妙な感情が搔き消されて自分が自分でなくなってしまう感覚に陥ることが多い。この小説はそれを言い表しているんだろう。とそんなコメントを村上龍が言っていたような言っていないような。
Posted by
今週は過去の芥川賞・直木賞受賞作品を中心に読んでる。 つかみどころのない主人公の、公園でのヒトコマ。 誰もが「やってみたら人生オモロくなるかも」と妄想しつつも、やれないでいる事。とてもヨーロッパ映画的なストーリーと描写。 同時収録の「FLOWER」は、最後の「えっ?」ていう展...
今週は過去の芥川賞・直木賞受賞作品を中心に読んでる。 つかみどころのない主人公の、公園でのヒトコマ。 誰もが「やってみたら人生オモロくなるかも」と妄想しつつも、やれないでいる事。とてもヨーロッパ映画的なストーリーと描写。 同時収録の「FLOWER」は、最後の「えっ?」ていう展開にビックリ。 ワタシの大好きな寄藤氏が装画を書いている。
Posted by