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神様 の商品レビュー

4.1

280件のお客様レビュー

  1. 5つ

    104

  2. 4つ

    98

  3. 3つ

    44

  4. 2つ

    5

  5. 1つ

    4

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2020/04/19

不思議な生き物たちとの不思議な出会いと別れを描いた のんびりとぽかぽかする短編集 なかなか眠れない春の夜にぴったり

Posted byブクログ

2020/03/28

のどかで、にぎやか、ぬくくて、ひんやり。ふわふわ、かちかち、しろくて、とうめい。たのしく、さみしく、わくわく、はらはら。いきなり、ずーっと、むかしで、さいきん。くらくて、まぶしく、とおくて、ぴったり。 いきてるようで、それとははんたい。 そんなゆめ。

Posted byブクログ

2020/01/19

解説で、佐野洋子さんが無意識と意識下と言う言葉を使っている。川上さんの作品はそういう世界なのだろうか。 また「そんな事考えてない」と言うのに対して「無意識の思いが出たのよ」と言い返すこともあるという。 だが意識、無意識とは別に、川上さんの作品は、夢でもうつつでもない世界が共有でき...

解説で、佐野洋子さんが無意識と意識下と言う言葉を使っている。川上さんの作品はそういう世界なのだろうか。 また「そんな事考えてない」と言うのに対して「無意識の思いが出たのよ」と言い返すこともあるという。 だが意識、無意識とは別に、川上さんの作品は、夢でもうつつでもない世界が共有できる人だけに通じる、情感がある。 その世界では、まるで現実に広がる日常と分かちがたい、境界の見えない時間を、感じることができる。 川上さんの書いている宇宙に、その時々の悲しみや喜びの広がりの中に、誘い込まれていく、それが読書のひと時の快感だと思える。 神様 くまと散歩に出たり、河原の草の上でならんで寝転んで空を見たりした。熊の神様のお恵みが…とくまはいった。 夏休み 梨畑でアルバイトをした。足元に三匹の小さなものが走り回っている。くず梨を与えるとおいしそうに食べた。 花野 事故で死んだ叔父が時々出てくる。話をするが、叔父が思ってもいないことを口にすると影が薄くなって消えて行く。 河童玉 ウテナさんとお寺に精進料理を食べに行った、池から河童が出てきて、恋の悩みの相談を持ちかけた。恋と言うより性の悩みであった。霊験あらたかな河童玉でも効かないという。 クリスマス ウテナさんが壷をくれた。こすったら「ご主人さまぁ」とコスミスミコが出てきた。チジョウノモツレでこうなったんです、と言う。ウテナさんが旅から帰ってきた、クリスマスだから三人で酒を飲んだ、酒がなくなったらコスミスミコさんが壷を逆さにして飲み物を出した。 星の光は昔の光 コスミスミコが憂鬱そうで余り出てこなくなったら、となりの部屋のえび君が時々来るようになった。部屋で話したり散歩をしたりした。夜空にホシが出ていた。 「星の光は昔の光なんでしょ。昔の光はあったかいよ、きっと」といって少し泣いた。 「昔の光はあったかいけど、今はもうないものの光でしょ。いくら昔の光が届いてもその光は終わった光なんだ、だからぼく泣いたのさ」しっかりした声で言った。 春立つ カナエさんというおばあさんの店で酒を飲んで話をする、そこには猫が6匹いる。カナエさんは雪の深いところで若い男に出逢って暮らした話をする。春になっていってみると店が閉まっていて張り紙がしてあった。「……雪の降る途方で、これからの余生を過ごすつもりです。違うように出来るような気になりましたので」 離さない エノモトさんが小さな人魚を浴槽で飼っていた。留守にするので預かった。帰そうということになったが二人ともなかなか帰せない。人魚が「離さない」といった。 草上の昼食 熊が作ったお弁当を持って散歩に出た。熊は料理が上手だった。ワインを飲んで話をした。「故郷に帰るんです」とくまがいった。

Posted byブクログ

2020/02/14

 高橋源一郎の「非常時のことば」を読んで、ずっとモヤモヤしていた霧が晴れた気分だ。https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202002140000/

Posted byブクログ

2019/11/29

 川上弘美という名前だけは知っていた。  高橋源一郎と柴田元幸の対談本で両者が川上弘美の作品を推薦していたので手を出してみた。この『神様』という作品はそれとは別のあるブログで推薦されていたものだ。  読んでみると、なるほど確かに上手い。センス・オブ・ワンダーに溢れていて好きな感じ...

 川上弘美という名前だけは知っていた。  高橋源一郎と柴田元幸の対談本で両者が川上弘美の作品を推薦していたので手を出してみた。この『神様』という作品はそれとは別のあるブログで推薦されていたものだ。  読んでみると、なるほど確かに上手い。センス・オブ・ワンダーに溢れていて好きな感じの作品だった。くまとか梨の精みたいなやつとかコスミスミコとかかわいいやつも出てくるし、人魚なんかは今の携帯電話に近いような存在で身につまされる。読んでみてよかった。いい出会いだった。  表題作『神様』の「部屋に戻って魚を焼き、風呂に入り、眠る前に少し日記を書いた。」という一文にはかなり痺れた。

Posted byブクログ

2019/11/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

川上弘美のデビュー集だという。あれあれ、という間に書けてしまったという通り、するすると読みやすかった。 9篇とも、登場人物や設定のどこかに、なにかおかしなとこがある。 そんな一癖ある状態なのに、日常の会話やテンションが滞りなく行われていく。 (ちょっとしたバイト先で「それ持って帰っていいよ」と言われたり、気になっている人とお茶したり、失恋した友達と相手の悪口を言い合ったり) そんな馴染みのある空気のなかで、「いやそれにしてもおかしいぞ」という、だんだん空想の世界がたえられなくなってきて、物語が進んでいく、そのふくらみ方が見事である。 川上さんは筆が固いというか、ちょっと古めかしい言葉や文体をユーモラスに交えてくる。そこも好きなところ。 子どもが妙におとなっぽくて、大人が妙にこどもっぽい。 主人公の女性は、 「だって、しょうがないじゃない」と開き直り、 「あれれ、なんでそうなっちゃうの」と呆れ返る。 私のマンションには熊は越してこないけど、この二つがあれば、まあまあ変なことが起こっても、ふふっとわらえて楽しくなるのではないか、と思わせてくれる。 大好きな作家さん。短編集&デビュー作ということで、川上さんの読み始めに。ちょっと疲れたとき、小説を読みたいときにおすすめです。

Posted byブクログ

2019/09/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

絵のない絵本。ことばの芸術。すてきなことばの粒たちが、現実とファンタジーの境目を行き来して、読んでいるわたしでさえ、どこにいるのかわからなくなる。ふわふわした心地がして、自分の日々の言語化できない感情がことばたちでしっくりくるような、不思議な気持ち。すごく好きだなぁ。

Posted byブクログ

2019/07/07

川上さんの書くストーリーもいい加減浮世離れした感じが多いかと思うのですが、不思議に一文で泣かされてしまいます。とりとめのないような話の中のちょっとした文章が胸をかきむしる。凶器です。 もちろん神様にも泣かされました。 これが小説家というものですね。

Posted byブクログ

2018/12/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

大きな熊が私の住むアパートに引っ越してきた。律儀に引っ越しそばをもってご挨拶にきた。その熊と日を改めて散歩に出た。時は夏。汗ばむ日だった。行き交う子どもが、あっ、熊だ!と声をあげ、遠慮なくお腹を殴ってきたりする。邪気がないからなぁ、かないませんなぁ、ウオッ、ホッ、と愉快そう。熊は川で採った魚を、私にくれた。アパートに戻って、別れ際に熊がなにやらモジモジしている。抱擁してくれませんか?とのお願い。故郷の習慣だそうな。 お安い御用です、はい、ハグ!  ありがとう、お嬢さん。あなたに熊の神さまのご加護がありますように。  熊の神さまとは一体どんなものなのやら、見当もつかない。魚を焼いて食べ、風呂に入り、日記をつけた。  悪くない一日だった。

Posted byブクログ

2018/08/18

・「抱擁を交わしていただけますか」 くまは言った。 「親しい人と別れるときの故郷の習慣なのです。もしお嫌ならもちろんいいのですが」 わたしは承知した。 くまは一歩前に出ると、両腕を大きく広げ、その腕をわたしの肩にまわし、頬をわたしの頬にこすりつけた。くまのにおいがする。反対の頬も...

・「抱擁を交わしていただけますか」 くまは言った。 「親しい人と別れるときの故郷の習慣なのです。もしお嫌ならもちろんいいのですが」 わたしは承知した。 くまは一歩前に出ると、両腕を大きく広げ、その腕をわたしの肩にまわし、頬をわたしの頬にこすりつけた。くまのにおいがする。反対の頬も同じようにこすりつけると、もう一度腕に力を入れてわたしの肩を抱いた。思ったよりもくまの体は冷たかった。 ・「会うの、ひさしぶりだよね」これも大人の口調である。 ほんとにひさしぶり。チョコウエハース、しけっちゃった。言うと、えび男くんは今度は声を出して笑った。 「また買っておいて。行くから」 もう大丈夫なの、その、とりこみごと。聞くと、えび男くんはわずかに頷いた。 そう、大丈夫なの。よかった。 「ほんとはね、大丈夫じゃないんだけど」しばらくして、えび男くんが小さな声で言った。火が大きな音ではぜている。 「ぼく」さらに小さな声である。 「ちょっとのあいだ」子供の声に戻っている。 「ニンゲンフシンになってみてたんだ」 ・「みかんって、ひやひやするね」 見ると、えび男くんは、二つのみかんをズボンの両ポケットに入れているのだった。 「足までひやひやが伝わってくるよ」そう言って、ズボンの上からそっとみかんを撫でる。だいじにだいじに、撫でる。 みかんはね、おいしいっていう感じをかたちにしたんだと思う。 「それじゃそのままじゃない」 そのままのこともあるよ、そういうこともあるよ。 ・「好きだったのよねえ」カナエさんは一つにまとめておだんごにした髪にかけたネットをさわりながら、言った。 はあ、好きだったんですね。その、男の人っていうか、あの。 「雪が溶けるころにいなくなっちゃう、そういう存在のものをね」 存在。 「そう、存在」 その、存在を、カナエさんは、好きだったんですか。 ・呼ばわれば帰される、好きと言えば拒まれる、カナエさんは男の側にはいるのだが、男に触れることができないのと一緒なのだった。 帰されることが恐ろしく、カナエさんは必要以上に男に触れまいと努めるようになった。それでも、いつか男の琴線に知らずと触れてしまい、雪の終わるころになればカナエさんは必ず元の場所に帰されてしまうのだった。

Posted byブクログ