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神様 の商品レビュー

4.2

274件のお客様レビュー

  1. 5つ

    102

  2. 4つ

    96

  3. 3つ

    42

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2020/06/03

星の光は昔の光が、一番好き。 えび男くんは両親の不和によって、短期間のうちに精神的にも年齢以上に大人びていかざるを得なかった。 昔のように家族団欒を望むえび男くんの様子は、何ともやりきれない気持ちになった。 全体を通して、掴みようがない雲のような作品という印象が強く残った。 ま...

星の光は昔の光が、一番好き。 えび男くんは両親の不和によって、短期間のうちに精神的にも年齢以上に大人びていかざるを得なかった。 昔のように家族団欒を望むえび男くんの様子は、何ともやりきれない気持ちになった。 全体を通して、掴みようがない雲のような作品という印象が強く残った。 また、薄い割に読むのに時間を要した。 初めて読んだ川上作品

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2021/05/30

「くまにさそわれて散歩に出る。」 こんな一文で始まる 夢の中にいるような ちょっと不思議な物語の短編集。 そのほとんどが 普通ならばありえない 〈生き物〉たちとのやりとり。  人間の世界で暮らすくま 梨が好きな小さなもの むこうの世界から姪のもとにやって...

「くまにさそわれて散歩に出る。」 こんな一文で始まる 夢の中にいるような ちょっと不思議な物語の短編集。 そのほとんどが 普通ならばありえない 〈生き物〉たちとのやりとり。  人間の世界で暮らすくま 梨が好きな小さなもの むこうの世界から姪のもとにやってくる叔父 河童の夫婦からの切実な相談 壺に住んでいる女子とのリアルな会話 好きじゃない本名に代わりえび男くんと 呼んでもらっている男の子 飲み屋「猫屋」のおばあさん 人間を離そうとしない人魚 故郷へ帰るくま。  ただただ時間が静かに流れ 多くを語らず 瞬間瞬間を共にして 心を通わせていく。 それはあまりに優しくて 文字1つ1つをそっと指でなぞりたくなる。  異彩を放っていたのが人魚の話 離れられない、離れたくない、離さない 人間との真剣勝負。  壺から出てきたコスミさんが ささやく言葉と涙に 自分のなにかを重ね合わせたり。  わたしとくまの話が特によかった。 雷からわたしを守るその様子は もう、尊い恋愛小説のようだった。  どうしようもなく心細くなったとき あたしは、きっとこの本を開くと思う。 

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2020/05/17

一行目から、最終行まで、 比喩ではなく真の意味で、 ずっと、ずーっと面白かった。 ふわふわしているような、 それでいてやけにくっきりしているような、 嬉しいような哀しいような、 ずっと、ずーっと読んでいたくなるような。 あぁ、これは夢だなと思っていたら、 解説の佐野洋子もそう...

一行目から、最終行まで、 比喩ではなく真の意味で、 ずっと、ずーっと面白かった。 ふわふわしているような、 それでいてやけにくっきりしているような、 嬉しいような哀しいような、 ずっと、ずーっと読んでいたくなるような。 あぁ、これは夢だなと思っていたら、 解説の佐野洋子もそう書いていた。

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2020/05/07

大島弓子の漫画みたいだなぁ、と最初思った。 夢と現実の世界の境目が曖昧になっているみたいな独特の感じ。 何しろ“熊に誘われて散歩に出る”ところから、この短編集は始まるのだから。 「ウテナさん」は河童に悩みを相談されるし、「わたし」は熊とハグをし、壺の中から出てくるコスミスミコと暮...

大島弓子の漫画みたいだなぁ、と最初思った。 夢と現実の世界の境目が曖昧になっているみたいな独特の感じ。 何しろ“熊に誘われて散歩に出る”ところから、この短編集は始まるのだから。 「ウテナさん」は河童に悩みを相談されるし、「わたし」は熊とハグをし、壺の中から出てくるコスミスミコと暮らす。 と言っても純然たるファンタジーものではない。ファンタジーと言うには、日常の空気感が満ち満ちているお話たちなのです。 頭の中で、わたし=片桐はいり、ウテナさん=小泉今日子のキャスティングで映像化して楽しんでみました。映画にしたら案外女の人には人気出そう。 最初、どういう世界観なのかわからず、ぽかんとしたまま読み進めたのですが、案外好きな作品でした。

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2020/04/19

不思議な生き物たちとの不思議な出会いと別れを描いた のんびりとぽかぽかする短編集 なかなか眠れない春の夜にぴったり

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2020/03/28

のどかで、にぎやか、ぬくくて、ひんやり。ふわふわ、かちかち、しろくて、とうめい。たのしく、さみしく、わくわく、はらはら。いきなり、ずーっと、むかしで、さいきん。くらくて、まぶしく、とおくて、ぴったり。 いきてるようで、それとははんたい。 そんなゆめ。

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2020/01/19

解説で、佐野洋子さんが無意識と意識下と言う言葉を使っている。川上さんの作品はそういう世界なのだろうか。 また「そんな事考えてない」と言うのに対して「無意識の思いが出たのよ」と言い返すこともあるという。 だが意識、無意識とは別に、川上さんの作品は、夢でもうつつでもない世界が共有でき...

解説で、佐野洋子さんが無意識と意識下と言う言葉を使っている。川上さんの作品はそういう世界なのだろうか。 また「そんな事考えてない」と言うのに対して「無意識の思いが出たのよ」と言い返すこともあるという。 だが意識、無意識とは別に、川上さんの作品は、夢でもうつつでもない世界が共有できる人だけに通じる、情感がある。 その世界では、まるで現実に広がる日常と分かちがたい、境界の見えない時間を、感じることができる。 川上さんの書いている宇宙に、その時々の悲しみや喜びの広がりの中に、誘い込まれていく、それが読書のひと時の快感だと思える。 神様 くまと散歩に出たり、河原の草の上でならんで寝転んで空を見たりした。熊の神様のお恵みが…とくまはいった。 夏休み 梨畑でアルバイトをした。足元に三匹の小さなものが走り回っている。くず梨を与えるとおいしそうに食べた。 花野 事故で死んだ叔父が時々出てくる。話をするが、叔父が思ってもいないことを口にすると影が薄くなって消えて行く。 河童玉 ウテナさんとお寺に精進料理を食べに行った、池から河童が出てきて、恋の悩みの相談を持ちかけた。恋と言うより性の悩みであった。霊験あらたかな河童玉でも効かないという。 クリスマス ウテナさんが壷をくれた。こすったら「ご主人さまぁ」とコスミスミコが出てきた。チジョウノモツレでこうなったんです、と言う。ウテナさんが旅から帰ってきた、クリスマスだから三人で酒を飲んだ、酒がなくなったらコスミスミコさんが壷を逆さにして飲み物を出した。 星の光は昔の光 コスミスミコが憂鬱そうで余り出てこなくなったら、となりの部屋のえび君が時々来るようになった。部屋で話したり散歩をしたりした。夜空にホシが出ていた。 「星の光は昔の光なんでしょ。昔の光はあったかいよ、きっと」といって少し泣いた。 「昔の光はあったかいけど、今はもうないものの光でしょ。いくら昔の光が届いてもその光は終わった光なんだ、だからぼく泣いたのさ」しっかりした声で言った。 春立つ カナエさんというおばあさんの店で酒を飲んで話をする、そこには猫が6匹いる。カナエさんは雪の深いところで若い男に出逢って暮らした話をする。春になっていってみると店が閉まっていて張り紙がしてあった。「……雪の降る途方で、これからの余生を過ごすつもりです。違うように出来るような気になりましたので」 離さない エノモトさんが小さな人魚を浴槽で飼っていた。留守にするので預かった。帰そうということになったが二人ともなかなか帰せない。人魚が「離さない」といった。 草上の昼食 熊が作ったお弁当を持って散歩に出た。熊は料理が上手だった。ワインを飲んで話をした。「故郷に帰るんです」とくまがいった。

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2020/02/14

 高橋源一郎の「非常時のことば」を読んで、ずっとモヤモヤしていた霧が晴れた気分だ。https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202002140000/

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2019/11/29

 川上弘美という名前だけは知っていた。  高橋源一郎と柴田元幸の対談本で両者が川上弘美の作品を推薦していたので手を出してみた。この『神様』という作品はそれとは別のあるブログで推薦されていたものだ。  読んでみると、なるほど確かに上手い。センス・オブ・ワンダーに溢れていて好きな感じ...

 川上弘美という名前だけは知っていた。  高橋源一郎と柴田元幸の対談本で両者が川上弘美の作品を推薦していたので手を出してみた。この『神様』という作品はそれとは別のあるブログで推薦されていたものだ。  読んでみると、なるほど確かに上手い。センス・オブ・ワンダーに溢れていて好きな感じの作品だった。くまとか梨の精みたいなやつとかコスミスミコとかかわいいやつも出てくるし、人魚なんかは今の携帯電話に近いような存在で身につまされる。読んでみてよかった。いい出会いだった。  表題作『神様』の「部屋に戻って魚を焼き、風呂に入り、眠る前に少し日記を書いた。」という一文にはかなり痺れた。

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2019/11/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

川上弘美のデビュー集だという。あれあれ、という間に書けてしまったという通り、するすると読みやすかった。 9篇とも、登場人物や設定のどこかに、なにかおかしなとこがある。 そんな一癖ある状態なのに、日常の会話やテンションが滞りなく行われていく。 (ちょっとしたバイト先で「それ持って帰っていいよ」と言われたり、気になっている人とお茶したり、失恋した友達と相手の悪口を言い合ったり) そんな馴染みのある空気のなかで、「いやそれにしてもおかしいぞ」という、だんだん空想の世界がたえられなくなってきて、物語が進んでいく、そのふくらみ方が見事である。 川上さんは筆が固いというか、ちょっと古めかしい言葉や文体をユーモラスに交えてくる。そこも好きなところ。 子どもが妙におとなっぽくて、大人が妙にこどもっぽい。 主人公の女性は、 「だって、しょうがないじゃない」と開き直り、 「あれれ、なんでそうなっちゃうの」と呆れ返る。 私のマンションには熊は越してこないけど、この二つがあれば、まあまあ変なことが起こっても、ふふっとわらえて楽しくなるのではないか、と思わせてくれる。 大好きな作家さん。短編集&デビュー作ということで、川上さんの読み始めに。ちょっと疲れたとき、小説を読みたいときにおすすめです。

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