神様 の商品レビュー
川上弘美は「ことば」にこだわりすぎててあまり好きじゃない気がしたけど、これは良かった。日常と、少しのこの世にないものたちとが同居している。梨木さんの家守奇潭を思い出す。題名が「神様」なので、なぜか個人的に「わたし」が神様であるような、そういう素朴で普通の人として生活しているような...
川上弘美は「ことば」にこだわりすぎててあまり好きじゃない気がしたけど、これは良かった。日常と、少しのこの世にないものたちとが同居している。梨木さんの家守奇潭を思い出す。題名が「神様」なので、なぜか個人的に「わたし」が神様であるような、そういう素朴で普通の人として生活しているような不思議な感覚になる。 神様(「くまにさそわれて散歩に出る。」)、夏休み(三匹め「まだぼくだめだよ」)、河童玉(「いたしませんか」)の三つ、つまり前半が良かった。
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くまにさそわれて散歩に出る。川原に行くのである。(p.1) この文章から小説は始まり、梨の収穫時期に現れる不思議な生き物、五年前に死んだ叔父、河童、壺から出てくるコスミスミコ、えび男くん、「猫屋」のカナエさん、人魚、などたくさんの人や生きもの達と「わたし」は邂逅する。それこそ散...
くまにさそわれて散歩に出る。川原に行くのである。(p.1) この文章から小説は始まり、梨の収穫時期に現れる不思議な生き物、五年前に死んだ叔父、河童、壺から出てくるコスミスミコ、えび男くん、「猫屋」のカナエさん、人魚、などたくさんの人や生きもの達と「わたし」は邂逅する。それこそ散歩に行くような気軽さで、ちょっとした「非日常」に会いに行く短編集でした。 この本は学生時代振りに再読しましたが、不思議な体験を通して劇的に何かが変わるということはないけれど、なんだかちょっと楽しい気持ちになれたり前を向けるようになれたりするような、そんなお話が詰まっておりとても好きです。 中でも一つだけ異色の『離さない』の人魚は、現代でいうと『推し』なのかな、と考えてみました。突然魅入られてしまい何も手がつかなくなって、生活が破綻しそうな程の誘惑。エノモトさんの「ずっと離さないでいるだけの強さがぼくにはなかったのかな」という言葉が好きです。短編集の最後の『草上の昼食』は切なくて胸がぎゅっとなり、また読み返す日が来るだろうなと思いました。 川上さんも小さい子どもの育児中にこの短編集を執筆されたとのことで、学校や職場、育児中など変わり映えのしない毎日にちょっと疲れたな、という人におすすめの一冊です。 (Kindle)
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くまと人間の柔らかい関係性が素敵。大好きな一冊。これを読んで川上弘美にハマった。ちょこっと不思議でなぜだか平凡で、奇妙な味わい深さがある。
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「神様」の冒頭の、「くまにさそわれて散歩に出る」 を読んで、童謡の「森のくまさん」を思い出したが、何やら感じは、ちょっと違う。ファンタジーまでは行かない不思議な世界観なんだけど、やたら現実感を主張していて、その中に漂うシュールなおかしみや哀愁がたまらない。ああ、そこの僕、腹に「パ...
「神様」の冒頭の、「くまにさそわれて散歩に出る」 を読んで、童謡の「森のくまさん」を思い出したが、何やら感じは、ちょっと違う。ファンタジーまでは行かない不思議な世界観なんだけど、やたら現実感を主張していて、その中に漂うシュールなおかしみや哀愁がたまらない。ああ、そこの僕、腹に「パーンチ」するのは、やめてあげてね。 独特の口調がくせになるんですう、「コスミスミコ」の純粋な一途さや、五年前に死んだ叔父の自分勝手に見えそうで、実は温かみのあるところや、「えび男くん」の素朴な人柄の裏に、両親への思いが見え隠れする切なさ等、いずれも味のある個性の強さ。しかも、えび男くんの場合は詩人でもある。星を見て語ったのが 「昔の光はあったかいけど、今はもうないものの光でしょ。いくら昔の光が届いてもその光は終わった光なんだ。」 深読みしそうだよ、えび男くん。みかんの食べ方が違ったのは、見なかったことにするから。 実は、ここまで書いておいて、いちばん好きなのは、タイプの異なる「離さない」です。「夏休み」もそれに近い感じが少しあったけれど・・二度と戻れないかもしれない危険は、夏休みのような、長期の休みの時に感じる異世界感を思わせられて寒気がしたが、「離さない」はそれ以上の極寒で、「わたし」が「うわあ」と言った同じタイミングで、まさしく私も「うわあ」って言いそうになった。こういうところはストレートなのね。 最後に、作品全体の共通点として、「わたし」の台詞だけ、カギ括弧(「こういうの」)が無いのは、わたしはあくまで傍観者で、主役は他の人たちですよと言っているようにも感じられて、こうした味のある方々を、控え目に持ち上げる奥ゆかしさも好きです。
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くまとさんぽいく話ってだけに惹かれて読んだ。著者の世界観にはやっぱり馴染めないけれど、梨の屑食べる謎の生き物の話はなんかよかった。
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人魚の話はまるで世にも奇妙な物語を見ているようでした。全ての作品不思議な世界観だけどあまり深く考えないで素直に受け取ったままにしておきたいと思います。せっかく自由によんだのだから…
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「くまに誘われて散歩に出る」から始まり、何か不器用な、周囲になじめないでいる存在である「くま」や、それに続く連作短編集。「くま」が何を指すのか、真っ先に思い浮かんだのはマイノリティの比喩としての受け止めだったが皮相な見方だろうか。あまりそのようなことを考えなくともするすると読める...
「くまに誘われて散歩に出る」から始まり、何か不器用な、周囲になじめないでいる存在である「くま」や、それに続く連作短編集。「くま」が何を指すのか、真っ先に思い浮かんだのはマイノリティの比喩としての受け止めだったが皮相な見方だろうか。あまりそのようなことを考えなくともするすると読める短編だし、不思議な世界を味わえる。なおこのくまは語り手の部屋の3つとなりに越してきたという設定で、その他の登場人物たちもその集合住宅に住んでいる人が多く出てくるという意味では、この短編集はアパートものとしてもとらえられる。
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様々な動物や生き物、亡くなった人、等との不思議な交流のお話。短編集ですが、読んでいるといくつかは話がつながっている連作であると気付いたり、主人公は同じ人物なのか?等、疑問もありながらも、世界観に惹き込まれ、どの話も一気に読んでしまった。 温かな交流の中でも、それぞれが送ってきた人...
様々な動物や生き物、亡くなった人、等との不思議な交流のお話。短編集ですが、読んでいるといくつかは話がつながっている連作であると気付いたり、主人公は同じ人物なのか?等、疑問もありながらも、世界観に惹き込まれ、どの話も一気に読んでしまった。 温かな交流の中でも、それぞれが送ってきた人生や抱えているものにせつない気持ちになったり、不思議な読後感がありました。 理解しきれずぼんやりとした部分もあるので、また時期をみて再読したいです!
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こんな現実味をおびた夢、夢のような現実?ハマりました。人魚の話『話さない』はファンタジーでありホラーであり。どの話も一気読みです。
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初めて読んだ川上弘美さんの本。くまが日常に出てくるが、変なのに違和感を感じされなくて、不思議な世界に引き込まれていく。 かなり昔に読んだけど、印象に残っている本。
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