日の名残り の商品レビュー
カズオイシグロ氏の作品は「私を離さないで」につぎ2冊目。前書とは異なり、イギリスの伝統社会描写していて、違った趣を楽しめました。こうした社会背景を反映した小説を「英国の状態」小説、というそうです。 最近、縁あってイギリスの小説を数冊読みましたが、この国が階級社会であることを改めて...
カズオイシグロ氏の作品は「私を離さないで」につぎ2冊目。前書とは異なり、イギリスの伝統社会描写していて、違った趣を楽しめました。こうした社会背景を反映した小説を「英国の状態」小説、というそうです。 最近、縁あってイギリスの小説を数冊読みましたが、この国が階級社会であることを改めて思い知りました。主人公で執事のスティーブンスは、卿を敬い、仕事に誇りをもち、時代がいかに変容しようとも、人生を「執事」として生き抜きます。その彼がふとしたことから6日間のドライブ旅行に出掛け、現代のイギリス風景を楽しみながら、往年の輝かしき日々を振り返っていきます。 最後に、淡い思いを抱いていた女中頭に再会しますが、その時に彼女が過去、そして未来について語る言葉が、非常に深く温かく、胸にしみました。
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元Amazon CEOのおすすめ文学とあって読んでみた。 「後悔」について非常に考えさせられる作品であり、 この本の主人公がまるで反面教師のように見えた。 中身についての明言はここでは避けるが、 この本で主人公がすることになる旅についても、遅い「恋」についても、自分の信じてき...
元Amazon CEOのおすすめ文学とあって読んでみた。 「後悔」について非常に考えさせられる作品であり、 この本の主人公がまるで反面教師のように見えた。 中身についての明言はここでは避けるが、 この本で主人公がすることになる旅についても、遅い「恋」についても、自分の信じてきた「正しさ」についても、言い訳ばかりで「後悔」するような行動ばかりしていた。 また、読んでいて面白いなと思ったのは、天邪鬼な主人公の自己対話を除くとこの300ページ以上ある本が半分くらいで済むのではないかと思ったところだ。 まるで、行動せずに歳だけ重ねた主人公をこの本自体が体現しているかのように思えるのは私だけだろうか。 巷に多くの行動力についての本はあれど、多くは経営者の自慢話かのような内容のものが多く少し反発を覚える。 しかし、この本は主人公の失敗を追体験しながら自分は後悔しない選択をしたいなと読んでいる私自身から思わせてくれるような作品であった。
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人の記憶が曖昧なこととか、他人から見る自分と自分の思う自分が違うこととか、 人間らしさが美しく言語化されていて「あるある」ってなる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
品格を追求し、尊敬する主人にひたすらつかえてきた執事の回想録。語りから事実や人物像を推察する一人称小説です。 あくまで執事の仕事を重んじるプロ意識の中にも人間臭さが読み取れました。 葬った記憶の狭間で揺れ動く主人公の心情描写が素晴らしく、実直な主人公が愛おしかったです。 心地よい余韻が残る作品でした。今後何度も読み返しそうです。
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スティーブンスが途中で「もしかしてダーリントン卿のもとでかつて働いていた執事かい?」と聞かれ、「いいえ。一度も。フィラディという方にお仕えしております。」と答えるシーンがある。 これは決してダーリントン卿に仕えていたことを恥じて昔の関係を秘密にしているのではなく、イギリスでは執...
スティーブンスが途中で「もしかしてダーリントン卿のもとでかつて働いていた執事かい?」と聞かれ、「いいえ。一度も。フィラディという方にお仕えしております。」と答えるシーンがある。 これは決してダーリントン卿に仕えていたことを恥じて昔の関係を秘密にしているのではなく、イギリスでは執事と主人の関係は離婚歴のようなもので、前の主人のことを一切口にしないというのがマナーだということだった。しかし一方で、ダーリントン卿が主人だとはもう言うことが叶わないという哀しさが漂うシーンでもあり、個人的に好きなシーンだった。
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セリフメモ ・行けるうちに行っとくののが、利口ってもんでさ(p34) ・率直こそ最善の方策であると信じています。(p145) ・私にはその混乱を整理していける無限の時間があるよな気がしておりました。(p255) ・新しい挑戦を受けて立つには、古い方法を ーたとえ、どんなに...
セリフメモ ・行けるうちに行っとくののが、利口ってもんでさ(p34) ・率直こそ最善の方策であると信じています。(p145) ・私にはその混乱を整理していける無限の時間があるよな気がしておりました。(p255) ・新しい挑戦を受けて立つには、古い方法を ーたとえ、どんなに愛されてきた方法でもだー 投げ捨てねばならん。(p285) ・いろいろな問題に強い意見をもっているからどうかで、人間の品格の有無が決定されるということでした(p300) ・自分の意志で過ちをおかしたとさえ言えません。そんな私のどこに品格などがございましょうか(p350) 感想 人生における、多くの教訓を示唆してくれる作品。 強い信念は諸刃の剣である。 他人に人生を預け捧げることは、美徳なようで怠惰なだけなのかもしれない。おそらくスティーブンスも気づいていた事だろうが、気づかぬ振りをしたのだろう。その方が楽だから。
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文学として素晴らしい一冊。 執事のスティーブンスの語り口調に慣れるにしたがって、その言葉の裏にある彼の人間らしい心の機微が、文章には見えていないのだけれど、確かに読み手に伝わってくる。 人生の中で、振り返ってみるとあれはどうだっただろうかと悔いるような事は誰しもあるものだと思うが...
文学として素晴らしい一冊。 執事のスティーブンスの語り口調に慣れるにしたがって、その言葉の裏にある彼の人間らしい心の機微が、文章には見えていないのだけれど、確かに読み手に伝わってくる。 人生の中で、振り返ってみるとあれはどうだっただろうかと悔いるような事は誰しもあるものだと思うが、自分もそういうことを考えながら、スティーブンスが旅をする中で自分の人生を静かに回顧し、悔いたり、恥じたり、改めて誇りに思ったりする様をじっと見守る。 ラストは自然と涙が出た。静かな、それでいてとても大きな感動。
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あらすじ 1989年ブッカー賞 (ブッカーしょう、Booker Prize) イギリスの文学賞。 世界的に権威のある文学賞の一つ。 the Bookerなどの通称もある。 日系の英国作家K・イシグロのブッカー賞受賞作を基に「眺めのいい部屋」のJ・アイヴォリー監督が、侯爵に忠実...
あらすじ 1989年ブッカー賞 (ブッカーしょう、Booker Prize) イギリスの文学賞。 世界的に権威のある文学賞の一つ。 the Bookerなどの通称もある。 日系の英国作家K・イシグロのブッカー賞受賞作を基に「眺めのいい部屋」のJ・アイヴォリー監督が、侯爵に忠実な執事として徹底的にストイックに生きた一人の男の悲哀を描いた物語。恋を知らぬ彼は安っぽい恋愛小説に慰めを得、それを女中頭に見つかり頬を赤らめる。互いに愛情を感じながらもその感情を抑えこんでしまう彼に、彼女は待ちきれず、彼の友人と結婚し町を去る。戦後、侯爵がこの世を去り、ようやく自由を感じた彼は女中頭を訪ねるのだが。 第二次世界大戦が終わって数年が経った「現在」のことである。執事であるスティーブンスは、新しい主人ファラディ氏の勧めで、イギリス西岸のクリーヴトンへと小旅行に出かける。前の主人ダーリントン卿の死後、親族の誰も彼の屋敷ダーリントンホールを受け継ごうとしなかったが、それをアメリカ人の富豪ファラディ氏が買い取った。ダーリントンホールでは、深刻なスタッフ不足を抱えていた。なぜなら、ダーリントン卿亡き後、屋敷がファラディ氏に売り渡される際に熟練のスタッフたちが辞めていったためだった。人手不足に悩むスティーブンスのもとに、かつてダーリントンホールでともに働いていたベン夫人から手紙が届く。ベン夫人からの手紙には、現在の悩みとともに、昔を懐かしむ言葉が書かれていた。ベン夫人に職場復帰してもらうことができれば、人手不足が解決する。そう考えたスティーブンスは、彼女に会うために、ファラディ氏の勧めに従い、旅に出ることを思い立つ。しかしながら、彼には、もうひとつ解決せねばならぬ問題があった。彼のもうひとつの問題。それは、彼女がベン夫人ではなく、旧姓のケントンと呼ばれていた時代からのものだった。旅の道すがら、スティーブンスは、ダーリントン卿がまだ健在で、ミス・ケントンとともに屋敷を切り盛りしていた時代を思い出していた。 今は過去となってしまった時代、スティーブンスが心から敬愛する主人・ダーリントン卿は、ヨーロッパが再び第一次世界大戦のような惨禍を見ることがないように、戦後ヴェルサイユ条約の過酷な条件で経済的に混乱したドイツを救おうと、ドイツ政府とフランス政府・イギリス政府を宥和させるべく奔走していた。やがて、ダーリントンホールでは、秘密裡に国際的な会合が繰り返されるようになるが、次第にダーリントン卿は、ナチス・ドイツによる対イギリス工作に巻き込まれていく。 再び1956年。ベン夫人と再会を済ませたスティーブンスは、不遇のうちに世を去ったかつての主人や失われつつある伝統に思いを馳せ涙を流すが、やがて前向きに現在の主人に仕えるべく決意を新たにする。屋敷へ戻ったら手始めに、アメリカ人であるファラディ氏を笑わせるようなジョークを練習しよう、と。 感想 執事が主役の小説
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海外小説なのにすんなり入ってくる。 翻訳がいいのはもちろん、品格とか忠誠心にこだわる感覚的なところ、 郷愁や美しさを感じる風景が、なんだか日本人的な気がする。 日本的というよりユニバーサルなのか。 ノーベル賞作家の中で最も読みやすい。
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"英国貴族に仕える伝統的な執事" 真面目で超完璧主義。しかも自己肯定感高め。 滅私奉公を厭わず主人に仕える。誇り。品格。 と最初は文章のまま受け取ってたんだけど、どうやら違う。人生の夕暮れ時「自分の人生、こんなか」「頑張ってきたのにもしかしてどこかで間違えた...
"英国貴族に仕える伝統的な執事" 真面目で超完璧主義。しかも自己肯定感高め。 滅私奉公を厭わず主人に仕える。誇り。品格。 と最初は文章のまま受け取ってたんだけど、どうやら違う。人生の夕暮れ時「自分の人生、こんなか」「頑張ってきたのにもしかしてどこかで間違えたのか?」誰もがきっと感じたことがあるそんな漠然とした絶望を、上品な物腰で突きつけてくる。 それを受け入れて今までの自分のまま「さぁ。ジョークを勉強するぞ」そんな感じの本。 面白い本かって聞かれたら面白くないんだけど(←苦笑)、良さはそこじゃないし結構好きだった。 最後まで飽きずに読める。 和訳素晴らしい。
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